魑魅魍魎が跋扈する戦国時代
時は永禄7年、戦の絶えない戦国時代。人心は荒廃し、野盗や荒くれ者が世にはびこっており、魑魅魍魎の妖怪変化たちも跋扈していた。彼らは気づけば人のそばにひっそりと居つき「闇(かたわら)」と呼ばれ、時に人と共生し、時に人に仇を成していた。人に仇なす闇の中でも特に凶悪な者は「障怪(さわり)」と称され、乱世に乗じて人知れずさまざまな悪行の限りを尽くしている。
人間好きの妖狐・たまと人間嫌いの少年・山戸迅火
仙道を修めつつも人間嫌いの少年・山戸迅火と、200年以上生きる妖狐でありながら人間好きの少女・たまの二人は義姉弟の契りを交わし、人間と闇が争わない平和な世の中を目指して「世直し姉弟」を名乗っている。野盗や荒くれ者相手に改心を促す説教をしながら、人に仇なす障怪を退治する旅をしていた。また、たまの言うことを渋々聞きつつも人間嫌いな迅火は、闇と人間との狭間で戦い、各地を旅しながら闇になる方法を探していた。
断怪衆の非道な行い
僧侶集団「断怪衆(だんがいしゅう)」は障怪から人を守ることを使命とするが、人は元来、闇よりも霊力が低く、力が足りていなかった。そのため断怪衆は、障怪に対抗するべく人為的に人を闇化させた存在「霊力強化改造人間」を作り出す研究を始める。農民の少女・灼岩はその実験体に選ばれるが、闇化した灼岩は暴走して故郷の農村を襲い、追手の僧侶たちを次々返り討ちにしていた。その現場を目撃した山戸迅火とたまは、闇化した灼岩を助け出し、非道な実験を行う断怪衆に宣戦布告する。そしてその戦いは迅火にとって、人と闇の在り方について考えさせる大きなきっかけとなるのだった。
登場人物・キャラクター
山戸 迅火 (やまと じんか)
仙道をあやつる青年。黒い髪を長く伸ばした偉丈夫。たまとは義姉弟の契りを交わしており、彼女の弟として行動している。ひょうひょうとした態度ながら、人間への嫌悪感を抱いている。「闇(かたわら)」と呼ばれる物の怪や妖の類いを友として育ったため、闇の者たちにはかなり友好的に接している。人間嫌いなのは幼い頃、友の闇を人間に殺されたのが原因で、現在は自らも完全な「闇」になる方法を探している。たまの力を借りることで、彼女の闇としての力を借り受ける「精霊転化」を使うことが可能となる。この力によって髪が白くなり、狐の尻尾が生える闇の姿となるが「未完成な術」らしく、完全な闇になることはできない。師匠は「不死鳥殺し」と呼ばれる伝説的な武仙で、師匠からさまざまな武術と仙術を受け継いでいるため、戦闘能力は非常に高い。
たま
狐から転じた闇「妖狐」の女性。見た目は人間の童女のような姿で、妖狐の証である狐の耳と尻尾を生やしている。毛並みは明るめの小麦色で、小柄な容姿も相まって、事情を知らない者からは子供扱いされることが多い。しかし実年齢は200歳を超え、山戸迅火とは義姉弟の契りを交わしており、義姉として扱われている。迅火とは正反対に人間好きで、盗賊にすら説法をして、改心をせまるようなお人よし。迅火の人間嫌いにもたびたび苦言を呈し、彼の心変わりをうながしている。現在は乱世の世を憂い、迅火と共に世直しの道中、危険な賊や闇を退治している。同じ闇でも、人間に危害を加える闇「障妖(さわり)」とは明確に区別されており、僧兵たちからも無害な存在として見逃されている。迅火が「精霊転化」をする際に自らの力を貸し与えているが、その際は存在が人間に近づくため、黒髪の童女のような姿となる。大根が好物で、生でかじるほど目がない。