ぬらりひょんの孫

ぬらりひょんの孫

大妖怪ぬらりひょんの孫である奴良リクオが、妖怪たちの起こす騒動や勢力争いに巻き込まれながらも、祖父が築いた奴良組をまとめ成長していく姿を描く。任侠の世界をモデルとして、現代における妖怪の組織を描いているのが特徴。

正式名称
ぬらりひょんの孫
ふりがな
ぬらりひょんのまご
作者
ジャンル
バトル
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あらすじ

魑魅魍魎の主(第1巻)

一見、平凡な中学生である奴良リクオは、実は妖怪の極道一家「奴良組」の跡取りだった。幼い頃、自らの血を覚醒させ妖怪総大将としての才の片鱗を見せたものの、リクオは人間の血が濃いため一日の4分の1しか妖怪になる事はできない。そこで周囲の人々の目を恐れて成長したリクオは、自然と「立派な人間」になる事を目指すようになっていた。そのため、祖父のぬらりひょんや周囲の妖怪から跡を継いでほしいといわれても、リクオは聞く耳を持たず、普通の中学生として過ごしていた。しかし、幼なじみの妖怪であるの必死の頼みと、彼を狙う邪悪な妖怪の所業を見てリクオの妖怪の力は再び覚醒。妖怪となったリクオは、奴良組の三代目を継ぐ事を宣言するのだった。しかし人間に戻ったリクオは、それを知らずに浮かれる奴良組の面々を前に戸惑いを覚える。一方、リクオが三代目を継ぐ事に反対する面々は密かに暗躍を始めていた。

牛鬼との対峙(第2巻~第3巻)

奴良リクオ奴良組の三代目大将を襲名することに反対する牛鬼は、妖怪達にリクオのクラスメイトを襲わせたりして、少しずつ魔の手をリクオへと伸ばしていた。そんなある日、リクオは清十字怪奇探偵団と共に妖怪博士に会うために、捩目山へと合宿へ行く事になった。しかし実は妖怪博士は、牛鬼の配下である馬頭丸にあやつられており、リクオが誘い込まれた捩目山は牛鬼の本拠地ともいうべき地だった。クラスメイトに襲いかかる馬頭丸は、花開院ゆらの活躍で退けられ、リクオも妖怪へと変化して襲いかかって来た牛頭丸を退ける事に成功する。そしてリクオは、牛頭丸を倒した足でそのまま牛鬼の館に乗り込み、牛鬼と対峙する。そこで牛鬼はいかに自分が奴良組を愛しているかを語り、リクオを殺したあと自らも自刃するという、本心を打ち明けるのだった。壊れ始めている奴良組はいずれ滅びてしまうという危機感を抱いた牛鬼は、自ら敵になる事でリクオを真の妖怪総大将へと育てあげようとしていたのだ。牛鬼の本心を知ったリクオは、その心意気を汲み、共に歩む事を誓う。

対決・四国八十八鬼夜行(第3巻~第6巻)

奴良リクオは人間の姿に戻ったが、これまでと違い妖怪の時の記憶もあり、改めて三代目を目指すための第一歩として若頭の襲名と牛鬼へのお咎めなしを宣言する。牛鬼の件で反発を受けるリクオだったが、奴良組の面々をやり込め、徐々に総大将としての才覚を見せ始める。一方、奴良組の幹部の一人である狒々が、四国八十八鬼夜行に襲われる事件が発生する。四国八十八鬼夜行を率いる隠神刑部狸・玉章は、奴良組を打倒し妖怪の頂点を取る事を目論んでおり、配下の妖怪達を使い奴良組に襲いかかる。ぬらりひょんは襲いかかって来た妖怪を撃退するも、敵の正体を探るため姿を消す。その所為で総大将不在となった奴良組であったが、戸惑う妖怪達を若頭としてリクオがまとめ上げ、四国八十八鬼夜行の襲撃を返り討ちにしていく。そしてついに四国八十八鬼夜行と総力戦を行う奴良組。仲間と盃を交わし魑魅魍魎の主としての頭角をあらわにし始めたリクオは、仲間と力を合わせる事で四国八十八鬼夜行を打ち破る事に成功する。しかし、追い詰められた玉章は「魔王の小槌」を使い、仲間の妖怪達を斬り捨て、異形の力でリクオに襲いかかる。リクオは玉章の圧倒的な力に苦戦しながらも、仲間を守るため新たな力に開眼する。

陰陽師(第7巻)

四国八十八鬼夜行を打ち破った事は、妖怪達のあいだであっという間に話題となり、奴良リクオ奴良組を着々と再興していた。しかしそんなある日、花開院ゆらを迎えに花開院の陰陽師達が浮世絵町にやって来た。ゆらの兄・花開院竜二は一目でリクオが妖怪である事を見抜き、滅するため襲いかかる。ゆらはリクオの事を信じ、彼を守るため兄と戦うが熟練した技術を持つ竜二を前に敗北を喫する。リクオもゆらの危機を見ていられず、ゆらを守るために竜二と戦う。リクオと竜二は一進一退の戦いを繰り広げるが、竜二はリクオが持つ刀「祢々切丸」の存在に疑問を抱き、戦いを止めるのだった。そして竜二は、京都で強大な力を持つ妖怪・羽衣狐が動き出した事をゆらに伝える。家族や仲間を助けるべく、京都に戻る決心をするゆらと、リクオは再会の約束を交わし、その旅立ちを見送るのだった。

ぬらりひょんと羽衣狐(第7巻~第8巻)

羽衣狐は、ぬらりひょんにとっても因縁深い存在だった。400年前、魑魅魍魎が跋扈する京の都で、ぬらりひょんは不思議な力を持つ少女・珱姫と出会う。公家の姫である珱姫は、人を癒やす力を妖怪や人間双方から狙われ、自由のない日々を過ごしていた。ぬらりひょんは、そんな珱姫に自由を教え、二人で賑やかな日々を過ごしていく。そして二人は徐々に惹かれ合っていくが、そんな二人を引き裂くかのように珱姫がさらわれてしまう。珱姫をさらったのは、当時、魑魅魍魎の主として名を馳せていた羽衣狐だった。人間に化け、権力者に取り入った羽衣狐は、大阪城を支配し珱姫の生き胆を喰らって新たな力を得るつもりだったのだ。絶大な力を持つと知りつつ、珱姫を救うため羽衣狐に挑むぬらりひょんは、いたぶられながらも羽衣狐に一太刀届かせる。ぬらりひょんの奮戦を知り、駆けつけた花開院秀元の援護もあり、ぬらりひょんは遂に羽衣狐を倒し珱姫を助ける事に成功するのだった。

遠野での修行(第8巻~第9巻)

花開院ゆらを心配し、奴良リクオは京都に向かおうとぬらりひょんに相談する、しかし返って来た答えは、力不足というものだった。ぬらりひょんに叩きのめされたリクオは、そのまま遠野の赤河童に預けられ、無理矢理修行させられる事となる。当初こそ反発していたリクオだったが、の新たな段階である「ひょうい」がこれからの戦いに必要な事を確認し、遠野の妖怪達に教えを乞う。そんなある日、厳しい修行を続けるリクオの前に遠野を訪れた鬼童丸が現れ、襲いかかる。かつての宿敵に似たリクオを殺そうとする鬼童丸だったが、その戦いの中、リクオは自らのひょういを発動させ、鬼童丸を撃退するのだった。新たな力を身につけるのと同時に、過去を思い出したリクオは、羽衣狐が父親の死にもかかわっているのを確信。遠野で知り合った仲間達を引き連れ、遠野をあとにする。そして奴良組の本家に帰り着いたリクオはぬらりひょんにも認められ、ついに因縁渦巻く京都の地へと足を踏み入れるのだった。

強敵・土蜘蛛(第10巻~第14巻)

京都にたどり着いた奴良リクオが目にしたのは、羽衣狐によって妖怪を封じる結界が壊され、変わり果てた京の都の姿だった。怨念渦巻く京都では昼間でも妖怪達の力は弱まらず、リクオもいつもより妖怪の姿を取る事ができるようになっており、リクオは百鬼夜行を引き連れて伏目稲荷神社を目指す。神社に巣食っていた妖怪を倒し、駆けつけた花開院の陰陽師達が封印を張り直す事で一息ついたリクオは、花開院秀元から結界を張り直す事が羽衣狐を倒す一番の近道だと教えられる。しかし、そこに突如として土蜘蛛が襲来。その圧倒的な力で奴良組は蹂躙されてしまう。「ひょうい」すら通じず百鬼夜行ごと粉砕されるリクオ。だが土蜘蛛はそんなリクオに興味を示し、及川氷麗を人質にして相剋寺で待つと言い残し、その場を去っていくのだった。さらに打ちのめされた奴良組の前に牛鬼が現れる。そしてリクオに、彼の父親・奴良鯉伴の編み出した「鬼纏」の事を教え、その伝授のための修行をつける。修行に付き合ってくれたとの絆によって新たな力を習得したリクオは、氷麗の囚われた相剋寺に行き、氷麗、イタクとの鬼纏を披露。土蜘蛛を退け、羽衣狐のいる弐條城への足がかりを得るのだった。

決戦の弐條城(第14巻~第16巻)

弐條城に踏み入れた奴良リクオは、鬼童丸茨木童子との激闘を経て遂に羽衣狐のもとにたどり着く。しかし羽衣狐は、すでに目的である安倍晴明の出産を終えていた。リクオと花開院の陰陽師達は、まだ晴明が完全ではない状況に望みをかけて、羽衣狐との決戦を行う。転生の度に力を増す羽衣狐は400年前の時の戦いより苛烈な力を持っており、鬼纏の力すら退けリクオを追い詰める。しかし羽衣狐は、リクオとの戦いの中で、奴良鯉伴の姿を見た事で錯乱し、その隙を突かれて敗れるのだった。羽衣狐は敗れ去るのと同時に肉体から魂を切り離し、狐の姿を現す。完全に覚醒した晴明に喜びの声を掛ける羽衣狐だったが、その魂はそのまま地獄に叩き落とされるのだった。さらに一連の事件は、山ン本五郎左衛門が裏で糸を引いており、山ン本と手を組んでいた晴明は魔王の小槌を手に取り、闇の世界を作る事を宣言する。晴明はその圧倒的な力を振るって京都の町を蹂躙し、リクオの祢々切丸も難なく破壊する。窮地に陥ったリクオだが、羽衣狐の魂から解放された山吹乙女によって九死に一生を得て、不完全な状態だった晴明も一時的に撤退する事となった。山吹乙女の事情を知ったリクオは、現世を破壊する晴明との決戦を誓う。

はびこる都市伝説(第17巻)

安倍晴明が攻めて来るまでに力を蓄える事を決心した奴良リクオだったが、その周りに少しずつ都市伝説が浸透し始める。「切裂とおりゃんせ」や「喰らう村」など、実際に妖怪となって人を襲うケースも現れ始め、花開院竜二は事件の裏に意図的に都市伝説を広めている存在があると推理する。一方、清十字怪奇探偵団も独自に都市伝説について調べ始めていたが、その最中、探偵団の一人である鳥居夏実が行方不明になってしまう。「地下鉄の幽霊少女」の都市伝説の核にされかかった鳥居だったが、黒田坊の活躍によって救出され、奴良組はその背後にうごめく柳田江戸百物語組の存在に行き着くのだった。怪談をはびこらせて妖怪を「産む」江戸百物語組に、リクオは新たな敵に強い警戒心を抱く。そして江戸百物語組に与していた時期のある黒田坊はリクオに、かつて江戸百物語組と戦った奴良鯉伴の過去を語って聞かせるのだった。

江戸の華(第18巻~第19巻)

江戸の時代、奴良鯉伴はのらりくらり遊びまわりながら、江戸の闇を奴良組二代目総大将として席巻していた。しかし、人の増えた江戸の町では見慣れぬ妖怪が増え、少しずつ奴良組の領分を侵し始めていた。百物語を利用して人を襲う新たな妖怪を生み出していたのは、豪商の山ン本五郎左衛門だった。山ン本は生み出した妖怪を利用して、江戸の人々を恐怖に陥れ、「百鬼の茶釜」にを集めていたのだ。茶釜で作った茶を飲んだ人間は、その中毒性から山ン本の意のままに動くあやつり人形となるため、山ン本はより畏を集めるべく黒田坊を奴良組に差し向ける。そして鯉伴は、黒田坊との戦いを利用して自分が死んだ事にして、敵の本拠地を突き止めるべく隠れて江戸を走り回り、ついに山ン本が妖怪を生み出す現場を抑えるのだった。鯉伴を前に恐慌状態に陥った山ン本は、己を怪談に組み込み妖怪になる事に思い至り実行、「魔王・山ン本五郎左衛門」として降臨する。醜悪な姿で暴れまわる山ン本を見て、無辜の民を守るため黒田坊も参戦し、鯉伴に力を貸す。そして山ン本は鯉伴と黒田坊の鬼纏によって滅ぼされるのだった。

対決・江戸百物語組(第19巻~第21巻)

闇の中から忍び寄る江戸百物語組の魔の手は、遂に奴良リクオとその周囲に牙を剥く。ある場所で生まれた予言の妖怪「件(くだん)」は日本の滅亡を予言し、回避するには「リクオを殺せ」と語ったのである。その噂はインターネットを通じて民衆のあいだに広がり、リクオは暴徒と化した民衆に襲われる。そして表に出た圓潮達は、正義の味方としてリクオを倒すと宣言するのだった。清十字怪奇探偵団やリクオの家族など、リクオの人間としてのつながりを攻める江戸百物語組の狡猾さに苦戦するリクオと奴良組だったが、リクオを信じぬくと決めた清十字清継家長カナの後押しもあり、仲間達と共に反攻ののろしを上げる。妖怪に襲われる人々を助けながら、江戸百物語組の幹部を次々と倒したリクオは、別口から都市伝説を追っていた花開院竜二が合流した事で、ついに敵の本拠地である深川の地下へとたどり着く。待ち受けていた圓潮は、己の目的のため仲間も裏切り、新たな怪談「青行灯」を紡ぎ出すのだった。リクオは絶大な力を持つ青行灯に苦戦するが、清十字怪奇探偵団の活躍で青行灯の怪談に綻びが生まれ、辛くも勝利を手にする。青行灯を倒した勢いで一行はさらに圓潮をも倒そうとするが、圓潮は新たな敵である御門院家と共に姿を消してしまう。

新たな敵と新しい祢々切丸(第22巻)

奴良リクオは、花開院竜二から花開院秋房が新しい祢々切丸を完成させたことを聞き、受け取るために恐山を目指す。圓潮といっしょにいた御門院家の正体も探るべく、リクオは恐山に行くついでに「遠野」へと足を伸ばすのだった。全国につながりを持つ遠野の妖怪・赤河童、妖怪界の書記係・文車妖妃の話を聞き、リクオは御門院家が安倍晴明の意志を継ぐ者達である事を知る。新たな敵と晴明の復活が間近に迫った事を知ったリクオは、祢々切丸を手にするため恐山を目指す。しかしそこには、御門院家の刺客が待ち受けていた。襲いかかる御門院泰世を前に危機に陥るが、仲間達は身体を張ってリクオをその場から離脱させるのだった。こうして秋房のもとにたどり着いたリクオは、遂に新しい祢々切丸を手にする。花開院の陰陽師達の魂を脈々と受け継いで来た祢々切丸を手にしたリクオは、泰世を退けて晴明を打倒する事を改めて誓う。

清浄の時(第23巻)

安倍晴明が、自らに従わぬ妖怪と人間をまとめて粛清する「清浄」を行おうとしていると知った奴良リクオは、全国の妖怪に協力を呼びかける。リクオの呼びかけに集まった中には、かつての敵である隠神刑部狸・玉章の姿もあり、全国の妖怪は一堂に会して清浄対策を話し合う。しかしそこには、呼びかけたはずの九州の妖怪達の姿がなかった。リクオは九州で異変が起きていると推測し、有志を募って九州へ遠征する。そして九州にたどり着いたリクオが見たのは、御門院家の清浄に敗れ去った土蜘蛛の姿だった。九州出身の妖怪だった土蜘蛛は晴明に受けた傷を癒やすため、たまたま近くにいた花開院ゆらに道案内して九州に舞い戻っていたのだ。しかし土蜘蛛の故郷は、御門院水蛭子安倍雄呂血によって見る影もなく破壊されており、自らも水蛭子によって完膚なきまで叩き潰されてしまう。リクオは九州妖怪・九十九夜行の生き残りや、隠神刑部狸・玉章達と協力して、御門院家の陰陽師達を迎え撃つ。そしてリクオは、土蜘蛛と鬼纏を行って水蛭子を打ち倒し、九十九夜行の協力を取りつけるのだった。

真の畏を纏う者(第24巻~第25巻)

各地で清浄が行われている中、京都では清浄の真っ只中で羽衣狐が復活していた。山吹乙女と羽衣狐の魂が合わさり新たな生を得た羽衣狐は、京都の惨状を見て安倍晴明を問いただす事を決意し、晴明のいる決戦の地へと赴き始めるのだった。各地の妖怪も清浄の被害を目の当たりにした事で、奴良組と共に戦う事を決断して、奴良リクオの百鬼夜行として決戦の地に赴く。花開院の陰陽師達も妖怪達に協力し、晴明の居城である葵螺旋城への血路を開き、リクオは多くの人々の思いを背負いながら、遂に晴明と人と妖怪の運命を決める最後の一戦を繰り広げる。

メディアミックス

TVアニメ

2010年7月から12月にかけて、読売テレビ系列ほかで本作『ぬらりひょんの孫』のTVアニメ版が放送された。また2011年7月から12月にかけて、『ぬらりひょんの孫 千年魔京』のタイトルで、第2期が読売テレビほかで放送された。

登場人物・キャラクター

奴良 リクオ (ぬら りくお)

浮世絵中学校に通う1年生の男子。眼鏡をかけた平凡な少年だが、実はぬらりひょんの孫で人間と妖怪のクォーター。妖怪任侠一家・奴良組の跡取りとして期待されているが、奴良リクオ本人は「立派な人間」になりたいため、これを拒絶している。妖怪の血を引いているため一日の4分の1、夜の時間だけ妖怪の姿になる事ができる。妖怪になると髪が伸び、顔つきも精悍なものになるほか、性格も極道者らしい男気あふれたものになる。当初は妖怪になった時の事を夢のように思っていたが、牛鬼の件を境に自覚。その後は人間のリクオも奴良組を継ぐ事を受け入れ、若頭を襲名している。四国八十八鬼夜行の戦い以降は、ぬらりひょんに「祢々切丸」を渡され、これを武器として戦っている。また遠野での修行で己の妖怪としての本質に気づき、「鏡花水月」と呼ばれる敵の認識をずらす「ひょうい」を習得した。また京都での戦いでは父親の編み出した「鬼纏」を身につけ、百鬼夜行の主として着々と力をつけている。

及川 氷麗 (おいかわ つらら)

妖怪任侠一家・奴良組に所属する雪女。つねにマフラーを身につけている長い黒髪の少女で、奴良リクオには幼い頃から仕えている。感情表現が豊かで、リクオへの忠誠心は高く、危機的な状況でも一途にリクオを信じる健気さがある。しかし同時に嫉妬深く、「鬼纏」が自分とリクオしかできない業と勘違いしたり、リクオがほかの妖怪と鬼纏をしようとした際には動揺したりしていた。母親はぬらりひょんの時代から奴良組に仕えている雪麗。当初は組を持たずにいたが、京都での戦い以降、自らの力でかき氷の器に宿る付喪神を実体化できるのを知り、付喪神を集めたつらら組を結成している。戦闘では雪女の畏を解放し、敵を氷付けにする「風声鶴麗」、凍った敵を粉々にする「雪化粧」を使って戦う。またリクオと鬼纏する事でリクオの斬撃に何倍も威力を跳ね上げた吹雪を上乗せする「雪の下紅梅(ゆきのしたべにうめ)」を放つ事ができる。青田坊と共に人間のリクオの護衛を任されており、リクオと同じ浮世絵中学校に「及川氷麗」という名で通っている。

家長 カナ (いえなが かな)

浮世絵中学校に通う1年生の女子。奴良リクオの幼なじみで、美少女として学校でも人気を集めている。怖いものが嫌いだが、清十字清継に半ば無理矢理、清十字怪奇探偵団に所属させられ、彼等と行動を共にするうちに妖怪の起こす騒動に巻き込まれている。当初は妖怪に興味がなかったが、妖怪と化したリクオとの出会いで彼に惚れ、彼に会うために清十字怪奇探偵団の活動に積極的に参加するようになった。ただし、リクオの正体には全然気づいていない。江戸百物語組との戦いでは、ついに目の前でリクオの変身を目の当たりにし、その正体に気づく。当初は戸惑いこそしたものの、彼の存在を受け入れ、助けるために奔走した。戦いのあとは、リクオの人間として日常を守る役目を及川氷麗から託され、それに応えている。

ぬらりひょん

妖怪任侠一家・奴良組の初代総大将で奴良リクオの祖父。普段は飄々とした好々爺で、リクオが幼い頃はよくいっしょにいたずらをして遊んでいた。400年前の若かりし頃は、牛鬼や雪麗、一ツ目入道を率いて気ままに生活していたが、珱姫に惚れ、彼女を守るため羽衣狐に戦いを挑んだ。その際には普段の飄々とした態度はどこへやら、無謀と言われつつも当代の魑魅魍魎の主と戦い、倒す事に成功している。ただしその際に、羽衣狐に「子を成せぬ呪い」を受けたうえに、戦いの後遺症で寿命を多く減らしている。呪いは妖怪とのあいだに子供が生まれない呪いだったため、ほどなくして珱姫とのあいだに奴良鯉伴を儲けたが、寿命の減りはそのまま肉体に現れており、現代で老人の姿をしているのはこれが原因となっている。戦闘ではぬらりひょんの畏である「真・明鏡止水」「真・鏡花水月」を使用。技そのものはリクオと同じだが、熟達としているため打ち破るのは容易にはいかない。安倍晴明との最終決戦では、リクオを助けるため寿命が尽きる覚悟で往年の姿に戻り、御門院家と戦った。

青田坊 (あおたぼう)

妖怪任侠一家・奴良組に所属する妖怪。僧衣をまとった大男で、屈強な肉体を持つ力自慢。人間から変化した妖怪で、人間だった頃は1000人の野武士を殺した破戒僧だった。処刑される寸前にある聖人に諭され、罪の数だけ人を生かそうと孤児を集めて育てていた。しかし孤児が野盗に殺されたため、禁を破って戦い、妖怪に成った。「青田坊」の名は彼を諭した聖人によって名づけられ、名の由来は「青二才」と「田舎くさい」が由来となっている。妖怪となったいきさつから子供の危機を見逃す事ができず、京都では清十字怪奇探偵団を守るため単身しょうけらと戦った。普段から無双の怪力を誇るが、「骸の数珠」を外す事でさらに力を発揮する事ができる「剛力礼讃(ごうりきれいさん)」を使用する事ができる。及川氷麗と共に人間の奴良リクオの護衛を任されており、リクオと同じ浮世絵中学校に「倉田」という名で通っている。陰ながらリクオをパシリにしようとしていた不良を排除していたが、それを繰り返すうちに気づいたら暴走族「血畏無百鬼夜行(ちいむひゃっきやこう)」のリーダーになっていた。

黒田坊 (くろたぼう)

妖怪任侠一家・奴良組に所属する妖怪。僧衣をまとった優男だが、見た目に反して奴良組でも青田坊に並ぶ武闘派である。仲間内では「黒」の愛称で呼ばれる。実は元江戸百物語組の幹部。山ン本五郎左衛門によって生み出され、彼の意のままに暗殺を繰り返していた。しかし、実は江戸百物語組の中では唯一、山ン本が作った怪談ではなく、子供達が作った純粋な願いから生まれた妖怪で、妖怪と化した山ン本から子供を守った事で己の本質を思い出し奴良鯉伴に協力した。鯉伴と共に戦った経験から「鬼纏」についても詳しく、奴良リクオが鬼纏を習得したてで不慣れな時は、身をもってレクチャーした。戦闘では自らの畏を無数の武器にして戦うのを得意とする。リクオと鬼纏をすると一振りで千の刃が飛び出すと形容されるほど大量の武器を放出する事ができ、「畏砲」としても「畏襲」としても非常に使い勝手のいいものとなっている。

首無 (くびなし)

妖怪任侠一家・奴良組に所属する妖怪。首のない美丈夫の姿をしており、首がないのを隠すようにつねにマフラーを身につけている。人間から変化した妖怪で、生前は義賊だったが妖怪に仲間達と共になぶり殺された恨みで妖怪を殺す妖怪になってしまった。江戸の時代、首無の噂を聞きつけた奴良鯉伴と出会い、彼と毛倡妓に説得され、のちに盃を交わした。毛倡妓とは生前からの付き合いであるため、お互いに気心の知れた仲となっている。黒弦と呼ばれる黒い糸を意のままにあやつる「殺取(あやとり)」と呼ばれる弦術を得意とする。普段は穏やかな性格をしているが、本性は「妖怪を狩る妖怪」であるためその戦闘能力は高く、たった一人で妖怪の集団を壊滅させるほどの力を持つ。また付き合いの長い毛倡妓とは、息の合ったコンビネーションを見せる。

毛倡妓 (けじょうろう)

妖怪任侠一家・奴良組に所属する妖怪。濡羽色の長髪の美女で、人間と遜色ない姿をしているため、人前に出ても正体がばれなかった。人間から変化した妖怪で、首無とは生前からの付き合い。妖怪となって暴れている首無の事を心配しており、奴良鯉伴との戦いでも彼をかばった。その後、紆余曲折の末、首無と共に奴良組に身を寄せた。首無とは気心の知れた仲で、二人っきりの時は彼から生前の名前である「紀乃」と呼ばれている。妖怪となった経緯から「守る事」に長け、首無が一人突っ走り窮地に陥った際も、ためらいもせず鉄火場に潜り込み首無に説教をする肝の強さを見せつけた。妖怪としての畏は髪の美しさで、毛倡妓の髪を少しでも美しいと思うと傷つける事ができなくなる守りに適した能力を持つ。また髪は自由自在に伸ばし、あやつる事ができるため、糸をあやつる首無とは抜群のコンビネーションを見せる。

牛鬼 (ぎゅうき)

妖怪任侠一家・奴良組傘下の牛鬼組の組長。凛とした雰囲気を漂わせた長髪の中年男性で、奴良組でもかなり古参に入る大幹部。奴良リクオの三代目襲名に一ツ目入道と共に反対の立場を取っており、その阻止のため暗躍していた。実は人間から変化した妖怪で、生前は「梅若丸」という平安時代の少年だったが、母親を捩目山の主の妖怪・牛鬼に食われてしまった。この時、自らも妖怪に食われたが、恨みで鬼と化し妖怪の腹を食い破った。牛鬼を倒した事で、いつしか新たな牛鬼となり、捩目山に拠して人を襲っていたが、ぬらりひょんとの戦いに敗れ、彼に惚れ込み盃を交わした。このため、奴良組には人一倍思い入れがあり、リクオの襲名反対の立場を取っていたのも奴良鯉伴が死んで弱体化した奴良組を立て直すため、リクオを鍛えるつもりだった。最後は罰せられて自刃する腹積もりだったが、リクオにその罪を許され、以降彼のために働く事を誓う。熟練の妖怪であるためその実力は確かなもので、幻術と剣術を用いた戦いを得意とする。また京都では、リクオに鬼纏について教えた。

隠神刑部狸・玉章 (いぬがみぎょうぶだぬきたまずき)

四国八十八鬼夜行の組長。八百八狸の長・隠神刑部狸の88番目の嫁の八人目の息子で、普段は高校生ぐらいの少年の姿をしている。名前の「玉章」はもとの読みは「たまずさ」だったが、「玉座を狙う」という意味を込めらて自ら読みを「たまずき」へと変えた。四国では覇者の証とされる「魔王の小槌」を手に入れ、その力で兄達を殺して四国妖怪をまとめ上げた。その後、日本の妖怪の頂点に立つべく奴良組に襲撃をかけた。奴良リクオとの百鬼夜行対決では、趨勢が悪くなった際に味方の妖怪を魔王の小槌で切り殺し、己の力を高めるという戦いをしたが、新たな力に目覚めたリクオに敗れ去った。戦いのあとは、隠神刑部狸の嘆願で味方を弔うのと引き換えに手打ちとなった。真の姿は歌舞伎役者のような長髪と衣装をまとっており、隠神刑部狸由来の神通力を使って戦う。安倍晴明との最終決戦ではリクオの呼び掛けに応えて参戦。そこで四国八十八鬼夜行の奴良組への襲撃は夜雀を通じて、圓潮と安倍有行によって仕組まれたものだったと知った。

花開院ゆら (けいかいんゆら)

浮世絵中学校に転向して来た1年生の女子中学生。花開院本家の陰陽師で、修行の一環で妖怪が多いと言われる浮世絵町にやって来た。百鬼夜行の主を探しているため、目的を同じくする清十字清継に半ば無理矢理に清十字怪奇探偵団の特別軍事顧問として加入させられた。普段はおっとりとした性格をしているが、妖怪は人に仇なす「悪」と考えており、妖怪を倒す際には並々ならぬ信念と精神力を見せる。陰陽師としての才能は京都でも屈指のものとされているが、経験不足から搦め手や強敵相手には通用せず、妖怪相手に敗北を喫する事も珍しくなかった。しかし戦いの中で成長し、複数の式神を同時に使うなど陰陽師としての非凡な才能を見せつけている。また京都での戦いでは、羽衣狐を倒す切り札となる花開院陰陽術秘儀である「破軍」を習得し、勝利に大きく貢献した。安倍晴明との最終決戦では破軍の力をさらに引き出し、複数の式神を融合する技「黄泉送葬水包銃・改 神獣奉弓(よみおくりゆらまっくすかい かみアロー)」を編み出し、安倍雄呂血の式神を破壊した。TKG(玉子かけご飯)が好物。

清十字 清継 (きよじゅうじ きよつぐ)

浮世絵中学校に通う1年生の男子中学生。奴良リクオの幼なじみで、幼い頃は妖怪を信じておらずぬらりひょんの存在も馬鹿にしていた。しかし、妖怪に襲われたところを妖怪の姿のリクオに助けられて以降、百鬼夜行の主の存在に心酔し、彼の存在を追うために妖怪の存在に傾倒している。研究家で知識を鼻にかけた言動が多いが、自らが間違っている際には相手に謝る器量は持っている。行動力もあり、妖怪を追い求めるために自ら部員を集めて清十字怪奇探偵団を結成したり、サイトを立ち上げて全国の妖怪研究家と交流を持ったりしている。また実家は金持ちで、清十字怪奇探偵団の活動費は彼が実費を支払っている。生徒会長選挙では立候補し、妖怪騒ぎが彼の演出だと誤解され、一般生徒から多くの支持を集め1年生にもかかわらず生徒会長に当選した。江戸百物語組が噂を流した際には、情報通なだけあって真っ先にそれに気づいたが、リクオの正体を知って愕然とする。当初は戸惑いから距離を取っていたが、無責任に噂を流す民衆に義憤を抱き、リクオの無実を証明するため妖怪がうごめく町へ単身飛び込んだ。清十字清継のこれらの行動が結果的に「青行灯」を倒す大きなきっかけとなっている。

羽衣狐 (はごろもぎつね)

京妖怪の総大将。転生妖怪と呼ばれる特殊なタイプの妖怪で、本体は狐の魂で幼い少女の体に取り憑き転生する事で世に現れる。400年前も大阪城に陣取り安倍晴明の復活のため動いていたが、ぬらりひょんに敗れた過去を持ち、奴良組とは因縁深い存在となっている。転生する度に尾が増え、力が増す妖怪で、現在は9度目の転生で九尾の狐となっている。現代では山吹乙女の肉体に憑依しており、黒いセーラー服を着た黒髪の美少女の姿をしている。京都妖怪の大願である晴明の復活を行うため京都に施された封印を破り、京都を妖怪と怨念渦巻く魔都へと変貌させた。京都での戦いの終盤、弐條城で晴明を産み落とすが、山吹乙女の意識が表に出た隙を突かれリクオとの戦いに敗れた。その後、羽衣狐の魂は肉体から追い出され、晴明にも拒絶されて地獄に叩き落とされる。山吹乙女も静かに息を引き取ったが、のちにぬらりひょんの手によって半妖の里に運ばれ、そこで術を施され復活した。その際には羽衣狐と山吹乙女の意識が混ざり合い、新しい「母性」の妖怪となった模様。晴明との最終決戦では、晴明の真意を確かめるべく決戦の地に赴いた。

山ン本 五郎左衛門 (さんもと ごろうざえもん)

江戸時代に材木問屋を営んでいた豪商。肥満体の大男で、世を己の意のままにあやつろうとする野望を持っていた。実は「怪談」から妖怪を生み出す能力を持ち、自らが生み出した妖怪で世に混乱をもたらす江戸百物語組の組長という裏の顔を持つ。畏を集める「百鬼の茶釜」と呼ばれる道具を持ち、この茶釜に配下の妖怪を使って畏を集め茶を作っている。この茶には強い中毒性があり、幕府の要人に飲ませて権勢を意のままにあやつろうとしていたが、奴良鯉伴に阻止された。鯉伴との戦いで自らを怪談に組み込み巨大な妖怪「魔王・山ン本五郎左衛門」となったが、鯉伴と黒田坊の鬼纏によって、体の大半を消し飛ばされてしまう。しかし、残った体からそれぞれ圓潮や三ツ目八面、魔王の小槌が生まれ、新たな江戸百物語組を結成した。山ン本五郎左衛門と生み出された妖怪の意識は別らしく、山ン本本人の意識は地獄に存在し、現世へは三ツ目八面を通じて干渉していた。山ン本を復活させるべく長いあいだ暗躍していたものの、鯉伴によってそのことごとくを阻止されてしまったため、似たような境遇の安倍晴明と手を組んだ。

安倍 晴明 (あべ の せいめい)

御門院家の初代当主にして、平安時代の凄腕陰陽師。その正体は羽衣狐から生まれた半妖で、昼は陰陽師「安倍晴明」、夜は百鬼夜行の主「鵺」として活躍していた。もとは人と妖怪、光と闇の共存を目指していたが、自らの寿命が有限である事を憂え、永遠の共存と調和を目指すべく「反魂の術」の完成を目指していた。しかし、欲深い人間に羽衣狐を殺された事で憤慨。不要な人や妖怪を清浄し、闇が頂点に立つ世界を作る決意をする。現代で遂に復活するも、自らの弱さの象徴ともいえる羽衣狐の存在を拒絶し、地獄に叩き落とした。圧倒的な力を振るい奴良リクオ達を追い詰めるも、復活が不完全でだったため一時的に地獄に舞い戻る。その後、傷を癒やして自らの居城である「葵螺旋城」に降臨し、御門院家の陰陽師や自らに付き従う妖怪達と共に人と妖怪の粛清を始めた。重力をあやつる「天文操作」、触れたものを削り取る「永劫輪廻」など多彩な術をあやつり、羽衣狐とリクオを同時に相手しても手玉に取るほどの圧倒的な力を誇る。

御門院 心結心結 (ごかどいん ゆいゆい)

御門院家の六代目当主。黒いゴシックロリータ風のドレスをまとった女性。優雅な立ち振る舞いをしているが、仲間をあっさり見捨てて呪術の道具にするなど、冷酷な性格をしている。クマのぬいぐるみをつねに持ち歩いており、ぬいぐるみを使って敵をあやつる術を持つ。この術で妖怪達を同士討ちさせたり、死にかけている味方の体を無理矢理動かして敵の不意を突いたり、残酷な戦法を得意とする。最終決戦では葵螺旋城で奴良リクオ達を待ち受け、リクオを送り出し、足止めに残った黒田坊や青田坊、妖怪達を同士討ちさせていたが、駆けつけた首無が仲間を外に逃がし、同士討ちできない状況にされた事で一対一の戦いを繰り広げ、敗北した。

河童 (かっぱ)

妖怪任俠一家、奴良組に所属する妖怪。奴良組本家の池に暮らしており、大きな皿を頭に乗せている。マイペースな性格で、周囲に流されず、自分のリズムで行動している。変装が得意で、ヘッドフォンを付け、今時の若者風のファッションに身を包む事で、怪しまれずに人間社会でも行動する事ができる。また河童らしく、水のある場所では無類の強さを誇り、「河童忍法」と呼ばれる技を使いこなす。

花開院 秀元 (けいかいん ひでもと)

400年前の花開院家十三代目当主の男性。故人。歴代当主の中でも屈指の天才で、奴良リクオの持つ祢々切丸や京都の「らせんの封印」は花開院秀元が生み出したもの。その一方で性格はノリが軽く、飄々とした性格をしており、陰陽師でありながら妖怪でもあるぬらりひょんに対しても分け隔てなく接し、兄の花開院黒光を悩ませていた。400年前の大阪城の戦いではぬらりひょんが羽衣狐と戦うのを知って駆けつけ、「破軍」を使って彼を援護した。現代では他の歴代当主に倣って自らを式神化して破軍に組み込まれており、花開院ゆらが破軍を使った事で現れた。歴代当主の中で唯一式神化しても会話する事ができ、ゆらや花開院竜二達に、羽衣狐とどのように戦えばいいのか助言した。

珱姫 (ようひめ)

400年前に京の都で暮らしていた公家の姫。美しい少女で、京都でも一番の美女と評判だった。箱入りで育てられたため、性格は世間知らずで無邪気。自分に襲いかかって退治された妖怪にも、哀れみの念を向けるなど優しい心を持っている。病やケガを癒やす不思議な能力を持っているが、父親にその能力を利用されて金儲けの道具にされ、貧しい人々を癒やせないのを悩んでいた。また当時、妖怪達に流行っていた「生き胆信仰」の所為でつねに妖怪に狙われる立場になっており、窮屈な館暮らしを余儀なくされていた。そんな珱姫の噂を聞いて、館に侵入して来たぬらりひょんと出会い、交流を重ねていく。彼から夫婦にならないかと誘われたが、その直後に生き胆を集めていた羽衣狐の一派にさらわれてしまう。目の前で痛めつけられても自分を救おうと懸命に戦い、羽衣狐を倒したぬらりひょんの思いを受け入れ、戦いのあと結婚した。その後、ぬらりひょんとのあいだに奴良鯉伴を授かる。現代では既に故人だが、ぬらりひょんの中には彼女への思いが色あせずに残っており、安倍晴明との最終決戦では黄泉の世界からぬらりひょんに呼びかけ、危機に陥った彼を助けた。

花開院 黒光 (けいかいん これみつ)

花開院秀元の兄。剃髪をしたまじめな男性で、花開院家の陰陽師として妖怪退治の仕事を専門に請け負う。珱姫の護衛を引き受け、彼女に護身刀として祢々切丸を渡した。秀元は、優秀な陰陽師としてその能力は認めているものの、軽いノリでとんでもない事を行うため頭を悩ませている。珱姫を助けたが妖怪であるためぬらりひょんの事も快く思っておらず、羽衣狐の祝勝会を花開院本家で勝手に行われた際には、妖怪達に振り回されて激怒した。その事を根に持っており、子孫に対して「ぬらりひょんが家に来ても絶対に飯を食わしてはならない」という言葉を残している。

奴良 鯉伴 (ぬら りはん)

妖怪任俠一家、奴良組の二代目総大将を務める男性。ぬらりひょんと珱姫のあいだに生まれた息子で、奴良リクオの父親。黒髪の美丈夫で、半妖の人間の部分を自らの強みと考え、百鬼夜行の主の御業である「鬼纏」を編み出して、父親から受け継いだ奴良組を最強の百鬼夜行へと押し上げた。また母親から受け継いだ癒やしの能力を持っている。江戸時代、江戸の町では遊び人として通っており、のらりくらり町を練り歩いては騒動に首を突っ込んでいた。首無や黒田坊は彼と出会い、奴良組に加入している。山吹乙女と呼ばれる女性の妖怪と恋に落ち、夫婦として暮らしていたが、羽衣狐の呪いの所為で子供を成せず、責任を感じた山吹乙女は自ら姿を消した。その後、現代で奴良若菜と出会い、リクオを授かった。山ン本五郎左衛門とは江戸時代から因縁のある相手で、彼の復活を目論む江戸百物語組と度々衝突し、これを退けている。そのため奴良鯉伴の存在を疎ましく思った山ン本と安倍晴明が手を組み、鯉伴にとって特別な存在である山吹乙女の存在を利用されて殺された。鯉伴の死後、奴良組は急速に弱体化の一途を辿っているとされる。

御門院 天海 (ごかどいん てんかい)

御門院家の七代目当主。顔全体を覆う奇妙なマスクをした男性。一人称は「僕(やっこ)」で、特徴的な笑い方をする。結界術の専門家で、御門院姓の中でも御門院水蛭子と並んで別格の実力を持つとされ、葵螺旋城は彼が築いた最高傑作。また葵螺旋城を中心に広がる「螺旋の結界」は日本全国に広がっており、御門院天海はそれらがどのように広がっているのかをすべて把握している。また才能ではなく努力で成り上がった秀才で、花開院竜二は彼の残した資料から、彼を理想の陰陽師として尊敬していた。実は才能に恵まれなかったため「泰山府君祭」の習得に時間がかかり、素顔は老人。自身の素顔に強烈なコンプレックスを抱いており、素顔を見られると錯乱するほど怒りをあらわにする。戦闘ではすぐに罠が見破られたり、敵の強さに動揺したりと情けない部分が目立つが、実はそれらはすべて演技で、十重二重に罠を張り巡らす策士。清浄では京都で竜二や京妖怪達と戦ったが、騙まし討ちして来た竜二を逆に騙し返す実力を見せた。しかし葵螺旋城の戦いでは、逆に竜二に結界の仕組みを見破られ、敗北した。

淡島 (あわしま)

奥州遠野一家の妖怪。細かい事にこだわらないさっぱりとした性格。あまのじゃくの妖怪で、昼は男、夜は女になる性質を持つが、普段は青年の姿で男として振る舞い、風呂も男湯に入っている。イタクと同じくリクオと盃を交わす気はないが、リクオの事は気に入っており、彼に頼まれて京都での戦いにも力を貸した。あまのじゃくの畏は鬼神の力を持つ男の畏「伊弉諾(いざなぎ)」、天女のように舞う女の畏「伊弉冉(いざなみ)」の2種類あり、戦闘ではこの二つを状況に応じて使い分けて戦う。昔は男と女を合わせ持つ自分の本質を淡島自身嫌っていたが、今ではその本質を受け入れ、戦闘でも使える技へと昇華している。

御門院 水蛭子 (ごかどいん ひるこ)

御門院家の九代目当主。ドレッドヘアの少年。負けん気の強い性格をしている。御門院水蛭子自身が御門院姓で一番強いと豪語し、それに見合った実力を持つ。ほかの御門院家の者達からも御門院天海と並んで、その実力は別格だと認められているほどである。安倍姓の陰陽師は年上であるため、基本的にかしこまった態度で接するが、安倍有行はだらしない態度が多いためよく苦言を呈している。当主を務めた期間は短いが、これは大政奉還で当主の座をやむなく降りたからであり、幕末の動乱期、凶悪化した妖怪達を相手に立ち回っている猛者で、その力は安倍吉平からも頼もしく思われていた。修行の結果、自らの右腕を「水」、左腕を「火」、右足を「金」、左足を「土」、頭を「木」と、陰陽五行の属性へと変換しており、これらを自在にあやつる事で圧倒的な戦闘能力を誇る。また得意技である「五蘊皆球(ごうんかいきゅう)」は相性の悪い属性を敢えて組み合わせて生み出す光弾で、土蜘蛛ですら一瞬で吹き飛ばす絶対的な威力がある。清浄では九州地方を担当している。九十九夜行を襲い、土蜘蛛を撃退したが、駆けつけた奴良リクオとの激闘で、リクオと土蜘蛛の鬼纏を喰らって敗れた。

御門院 泰世 (ごかどいん たいせい)

御門院家の陰陽師の男性。長い前髪で片目を隠した青年で、恐山に居を構えていた。妖刀作りの達人で、妖怪を討つという花開院秋房の志に感銘を受け、彼に妖刀作りの方法を指導していたが、それがよりにもよって自らの主君である安倍晴明を斬るためのものだと知って決裂。秋房と奴良リクオに襲いかかった。凄腕の陰陽師で、戦闘では口寄せの応用で骸骨をあやつったり、自らが鍛えた妖刀「歯狂鎌(はぐるまかま)」を用いて戦う。「歯狂鎌」は武器を破壊する事に特化した能力を持ち、歯車のように刃が回り、持っている武器ごと敵を叩き斬るのを得意とする。リクオを追い詰めたが、新しい祢々切丸によって歯狂鎌を破壊され、敗れた。

巻 紗織 (まき さおり)

浮世絵中学校に通う1年生の女子中学生。年齢の割りに発育のいい体型をした金髪少女で、勝気な性格をしている。鳥居夏実とはなかよしで、彼女と共に清十字清継の取り巻きをしていたが、それが原因で、巻き込まれる形で清十字怪奇探偵団に所属させられてしまう。当初は清継を持ち上げる発言をしていたが、妖怪騒ぎに巻き込まれるうちに、清継への接し方が徐々にぞんざいなものになっている。友人思いで行動力があり、鳥居が柳田と鏡斎の手によって行方不明になった際には、街中を駆けずり回って彼女を探し、妖怪がいても引かない意志の強さを見せつけた。妖怪騒ぎに巻き込まれ過ぎた所為で、土壇場で機転を利かす肝の強さを持ち、渋谷で鏡斎に襲われた際も鳥居と共に多数の妖怪から逃げ、奴良リクオが到着するまでの時間を稼いだ。また件の予言で、学校中で噂されるようになったリクオを、学校では守ってやると決意している。

圓潮 (えんちょう)

江戸百物語組の幹部の一人。黒い短髪の青年で、表では人気の噺家として活躍している。山ン本五郎左衛門の「口」で、「都市伝説」を噺家として広める役割を持ち、その語り口調には、人々の認識に都市伝説を刷り込ませる「言霊」の力が宿っている。都市伝説を広めて着々と人々の認識を変える準備をしたうえで、「件の予言」と「救世主の噂」を利用して一気に奴良リクオを民衆から孤立させ、奴良組の畏を奪おうとした。策は功を奏し、山ン本復活寸前まで行ったが、実は圓潮自身は山ン本復活に興味がなく、三ツ目八面を殺害。怪談の締めくくりともいえる「青行灯」を生み出し、リクオへけしかけた。実は安倍有行と裏でつながっており、噺家として伝説を語りたいという野望を持つ。安倍晴明の復活という伝説を見て、語るため、自らの生みの親とも言える山ン本を利用していた。圓潮は自身の「語りたい」癖は、山ン本の嫌な部分ばかり似ていると自嘲している。復活した山ン本との戦いでは有行と共に逃げ延びているが、左半身を山ン本に食われ、以降は左半身に包帯を巻いている。

柳田 (やなぎだ)

江戸百物語組の幹部の一人。着物を羽織った青年で、「都市伝説」の裏で暗躍している。江戸百物語組の中で唯一、人間から変化した妖怪。山ン本五郎左衛門が人間だった頃から仕える最も忠誠心の厚い部下で、彼の死を知ったあと、自らを妖怪化し、ほかの江戸百物語組の妖怪達と共に闇に潜んだ。山ン本五郎左衛門の「耳」で、山ン本の復活のため都市伝説のネタを集め、それを噺家である圓潮や、絵師である鏡斎に提供する役割を担っている。奴良組との戦いでは圓潮の裏切りに愕然としたが、戦いの終盤、「青行灯」を吸収して復活した山ン本を見て、再び山ン本を復活させる事を決意。崩れ去る洞窟へ走り去り、姿を消した。実は身につけている鈴は、山ン本五郎左衛門の「鼻」で、匂いで怪談や妖怪を探す事が可能。安倍晴明との最終決戦では奴良組と晴明の戦いの裏で、鼻を使って裏切り者の圓潮を探し出し、殺している。

安倍 雄呂血 (あべの おろち)

御門院家の三代目当主。角飾りの付いた頭巾をかぶった長髪の女性。この世で最も偉大な式神使いを自称する。その自信に見合った力を持ち、地を覆い尽くすほどの巨大な蛇の式神「雄呂血(おろち)」を何匹もあやつる実力者。安倍晴明の清浄が始まった際に、九州や京都など全国に安倍雄呂血を送り込み、各地の妖怪を屠(ほふ)った。最終決戦では雄呂血や妖怪と共に奴良組本家を襲撃。ぬらりひょんとその仲間達と激闘を繰り広げる。奥の手として「古代大魚 悪樓(こだいたいぎょ あくる)」という、自らの身を引き換えにする強力な式神を放つが、ぬらりひょんに一蹴されて敗北した。

(ぜん)

妖怪任俠一家、奴良組に所属する妖怪。奴良組傘下の「薬師一派」の頭首で、青年の姿をしているが、本来は「毒の羽」を持つ鳥の妖怪となっている。その性質から毒と薬のエキスパートで、「薬鴆堂」という病院を営み、奴良組の医療の分野を担当している。毒の羽は自らも蝕む諸刃の剣(つるぎ)なため、鴆の一族は体が弱く、代々短命となっている。鴆自身も吐血したり、体調を崩したりして自身の寿命が長くないと自覚しているが、力の弱い鴆の一族を守ってくれた奴良組に恩義を感じており、その忠誠心は固い。奴良リクオとは幼なじみで、奴良組のあとを継いでほしいと思っているが、人間のリクオの態度を見て失望。しかしその後、妖怪のリクオが自らを守った姿を見て、彼なら三代目を継げると確信し、義兄弟の盃を交わした。その後はリクオがケガをした際には治療を担当したり、助言を行ったり、身近で彼を支える存在となっている。京都では牛鬼がリクオに課した試練に付き合い、リクオが初めて「鬼纏」をする相手となった。鬼纏をした際には毒の鱗粉をまとった羽が背中に生え、敵を一撃で行動不能にする毒を撒き散らすが、消耗が激しく多用はできない。

安倍 吉平 (あべの よしひら)

御門院家の二代目当主。額当てをつけた中年の男性で、安倍晴明の実の息子。晴明の遺言を直接聞き、愚直にそれを守り続けており、晴明がいないあいだの御門院家をまとめている。奴良リクオと同じく妖怪のクォーターで、妖怪としての姿を現すと狐の耳と尾が生える。人でも妖怪でもない我が身を呪っており、父親の意志が薄々間違っていると実感しながらも、己の存在意義を全うするために、ただひたすらに父親の命に従っていた。父親である晴明と違って仲間思いで、亡くなった御門院家の当主に哀悼の意を抱いており、人知れず弔っている。1000年間の基礎の積み重ねで、陰陽術の基礎にして最終目標である「天候制御」を習得しており、雨雲を呼び、雷を降らせるなど天を意のままにあやつる能力を持つ。葵螺旋城でリクオと激戦を繰り広げ、お互いに共感を抱きながら戦い、敗れた。最後は人と妖怪の意志を背負うというリクオの覚悟に満足し、彼等を晴明のもとへと送り出した。

牛頭丸 (ごずまる)

牛鬼の配下の妖怪。若頭である馬頭丸の補佐を務める。馬の頭蓋骨をかぶった少年の姿をしており、糸を使って人や妖怪をあやつる能力を持つ。奴良リクオを誘(おび)き寄せるため、妖怪博士をあやつり、捩目山へ清十字怪奇探偵団を誘った。清十字怪奇探偵団に妖怪をけしかけるが、花開院ゆらに返り討ちにされた。その後は牛鬼がリクオに協力する姿勢を見せたため、馬頭丸と共に奴良組本家預かりとなり、リクオに協力している。馬頭丸と違い、リクオが総大将になる事を認めているため、意地を張って突っ走る馬頭丸のフォローをする事が多い。普段は顔を隠しているが、実はかなりの女顔で、女装が得意。ただし牛頭丸本人は、恥ずかしいからあまりやりたくないと言っている。

鬼童丸 (きどうまる)

羽衣狐に付き従う京妖怪の一人。1000年前から羽衣狐と安倍晴明に忠誠を誓う古強者の妖怪で、スーツを着た中年の男性の姿をしている。実は酒呑童子と人間のあいだに生まれた半妖で、本気を出すと鬼のような姿へと変貌する。京都に住まう鬼の棟梁で、畏を解放する事で鬼達の住み処である羅城門を顕現させる事ができる。また鬼童丸自身、歴戦の剣士でもあり、新しい力に目覚めたばかりで使いこなせていなかった奴良リクオの弱点を見抜き、追い詰めた。無数の斬撃を飛ばす剣技をあやつり、さらに羅城門から巨大な刃を生み出して敵を切り裂くなど、強敵としてリクオの前に立ち塞がったが、黒田坊と鬼纏したリクオに敗れた。復活した晴明に付き従い、共に地獄へと行った。最終決戦では晴明と共に現世へと舞い戻り、奴良組本家を襲撃した。

土蜘蛛 (つちぐも)

羽衣狐に協力する妖怪の一人。巨大な体軀と四つの腕を持つ大男で、強い者との食うか食われるかの戦いを好むバトルジャンキー。羽衣狐に力を貸すのも復活した安倍晴明と全力で戦うのが目的で、ほかの京都妖怪と違い、羽衣狐への忠誠心はない。その力は妖怪の中でも屈指のもので、一人で百鬼夜行を破壊する妖怪と言われ、天災に例えられる事もあるほどである。京都で戦いを始めた奴良リクオを見つけ、彼を率いる百鬼夜行ごと叩き潰すが、リクオの存在に興味を持ち、及川氷麗を人質に取って相剋寺で彼を待ち受けた。氷麗、イタクと鬼纏したリクオの攻撃を受け、戦いに満足して退いた。その後、晴明が復活し覚醒するまで羽衣狐に力を貸したが、晴明が完全復活した際にはまっさきに戦いを挑む。しかし晴明に返り討ちに遭い、地獄へと叩き落された。実は完全には地獄に落ちておらず、のちに復活。たまたま側にいた花開院ゆらに道案内させ、故郷である九州へと戻った。そこで故郷を襲う御門院水蛭子に、体の大部分を消し飛ばされた。敗北後は、かつて兄に言われた言葉を思い出して新たな力を得て、さらにリクオと鬼纏をし、水蛭子を倒した。

茨木童子 (いばらきどうじ)

羽衣狐に付き従う京妖怪の一人。1000年前から羽衣狐と安倍晴明に忠誠を誓う妖怪で、卒塔婆で顔半分を隠した青年の姿をしている。血気盛んで口が悪く、しょうけらとはそりが合わないのか、よく喧嘩をしている。実は父親と慕っていた酒呑童子を晴明に殺された鬼で、酒呑童子が望んだ鬼の世界を作るため晴明に従っている。戦闘では二刀流で戦い、鬼の畏を刀に纏わせ、鋭い斬撃を放つ。また日本の刀を鋏のように組み合わせて敵を真っ二つに切り裂く「鬼太鼓桴・仏斬鋏(おんでこばち ぶつぎりばさみ)」という技を持つ。京都での戦いの終盤、復活した晴明に付き従い、共に地獄へと行った。最終決戦では晴明と共に現世へと舞い戻り、奴良組本家を襲撃した。

冷麗 (れいら)

奥州遠野一家の妖怪。及川氷麗と同じく雪女の妖怪で、桃色の長い髪をお団子状にまとめた髪形をしている。落ち着いた性格で、仲間達をやさしくフォローする気づかい上手。紫と行動を共にする事が多い。イタクと同じくリクオと盃を交わす気はないが、彼に頼まれて京都での戦いにも力を貸した。氷麗よりも雪女の畏をコントロールするのが上手で、畏を操作してお風呂も入れる。雪女の仲間といっしょにお風呂に入るのが夢で、氷麗とはなかよくなりたいと思っている様子。戦闘では雪女の畏を解放し、敵を氷漬けにする戦法を得意とする。京都での戦いでは土蜘蛛の攻撃を受け、かばってくれた土彦と共にケガを負ってしまう。

土彦 (どひこ)

奥州遠野一家の妖怪。「経立(ふったち)」と呼ばれる猿の妖怪で、鉢巻をして着物を羽織った猿の姿をしている。厳しい環境から各地に武闘派の人材を派遣して身を立てている遠野の実情を受け入れているが、京都の妖怪は上から目線で自分達を兵隊のように扱う事から嫌っている。イタクと同じくリクオと盃を交わす気はないが、彼に頼まれて京都での戦いにも力を貸した。仲間思いな性格をしており、土蜘蛛に冷麗が狙われた際には真っ先にかばい、彼女を守って負傷した。

雨造 (あめぞう)

奥州遠野一家の妖怪。甲羅を背負った沼河童の妖怪で、トカゲのような顔をしている。遠野の外に出た事はないが、好奇心旺盛な性格をしており、外の事情に通じている。一人称は「オイラ」で、特徴的な笑い方をする。イタクと同じくリクオと盃を交わす気はないが、彼に頼まれて京都での戦いにも力を貸した。奴良組の河童とは微妙に性質が違い、池よりも沼を好む。またミーハーな部分もあり、「常州の弦殺師」の異名を持つ首無を見た時は興奮をあらわにした。

三ツ目八面 (みつめやづら)

奴良組の幹部の一人。三つ目の妖怪で、奴良リクオの大将襲名には懐疑的な立場で、一ツ目入道と意見を同じくする事が多い。その正体は江戸百物語組の幹部で山ン本五郎左衛門の「脳」。山ン本が奴良鯉伴に倒される寸前に残した分身ともいうべき存在で、ほかの部位と違い、地獄にいる本体と意識を同じにする存在となっている。敵である奴良組の内部に入り込み、組織の弱みを調べ、数々の暗躍を行っていた。普段の顔は精巧に作った仮面で、その素顔は大きな脳が露出した姿をしており、江戸百物語組の攻勢が始まった際には素顔を現し、圓潮と行動を共にしていた。しかし、皮肉にも自らの生み出した圓潮に裏切られ、瀕死の重傷を負わされる。崩れかけた青行灯を吸収し、新たな「魔王・山ン本五郎左衛門」として降臨するが、リクオと及川氷麗の鬼纏に一刀両断された。

鏡斎 (きょうさい)

江戸百物語組の幹部の一人。褐色肌の青年で、独自の美学を持つ芸術家。山ン本五郎左衛門の「腕」で、怪談の絵を描き、それを使って怪談を広める役割を持つ。また山ン本と同じく描いた絵を妖怪として具現化する能力を持ち、人の体に絵を描く事で人を妖怪化する事も可能で、「狂画師」の異名を持つ。鳥居夏実が「地下鉄の幽霊少女」のモデルにされたように、人を使って都市伝説を作るなどしていた。奴良組との戦いでは渋谷に陣取り、女性を捕らえて妖怪化していた。鳥居を再び捕らえて妖怪化するなど外道な行為を繰り返していたが、駆けつけた奴良リクオに妨害される。リクオとの戦いでは、人が死に行く様を描いた「九相図(くそうず)」と呼ばれる絵を使った呪術でリクオを苦しめるが、成長していたリクオの畏を描ききる事ができずに威力が半減。最後は敗因を悟り、リクオの畏が美しいと思いながら敗れた。

狂骨 (きょうこつ)

羽衣狐に付き従う京妖怪の一人。骸骨を手に持った幼い少女の姿をしており、比較的若い妖怪で、父親の跡を継いで羽衣狐に仕えている。人間に対しては冷酷な妖怪だが、羽衣狐を姉と慕い、彼女に無邪気に付き従っている。妖怪としての畏は無数の骸骨を生み出すもので、その雰囲気に飲まれ、彼女を恐れた者を骸骨に隠れた蛇に襲わせる。京妖怪の中でも珍しく安倍晴明ではなく羽衣狐に忠誠を誓っている妖怪で、京妖怪が復活した晴明に付き従って地獄に行く中、羽衣狐の側にいた。羽衣狐の魂が抜け出し、山吹乙女も息を引き取った亡骸を奴良リクオから受け取り、残った京妖怪をまとめ上げ、羽衣狐が戻るまで京都を守る事を誓った。その後、実は秘かに訪れたぬらりひょんの羽衣狐を復活させるという提案に乗り、山吹乙女の遺体を彼に預けた。晴明の清浄が始まった際には京都を守るため、花開院家の陰陽師と協力して御門院天海と戦うものの敗北。危機に陥ったが、復活した羽衣狐に助けられた。その後はほかの京妖怪と共に羽衣狐に付き従い、晴明との決戦の地に向かった。

花開院 秋房 (けいかいん あきふさ)

花開院家の陰陽師の男性。長髪の青年で、花開院竜二と共に次期当主と目されるほどの腕を持つ実力者。妖刀作りにおいては現代の花開院家で並ぶ者がいないとされるほどの天才で、戦闘では妖槍「騎億(きおく)」を振るって戦う。さらに禁術とされる「憑鬼槍(ひょうきそう)」を使用し、「騎億(きおく)」と一体化する事で強力な力を振るう事ができるが、使用すると存在そのものが妖怪へと近くなるため、竜二からは妖怪に近い「灰色」の存在と見られている。復活した羽衣狐を倒すため「鹿金寺」に花開院雅次、花開院破戸と共に罠を張って待ち受けるが、返り討ちに遭ってしまう。また花開院秋房自身も鏖地蔵に、自らが花開院ゆらに抱いていた劣等感を暴かれ、乗っ取られてしまう。その後は鏖地蔵に取り憑かれた状態で、「相剋寺」を襲撃。竜二とゆらと戦い、彼等の手によって救われた。助けられたあとも、これらの経緯から自身の力不足を嘆いていたが、奴良リクオに折られた祢々切丸の修復を依頼された事で、自身の力でできる事を見つけて奮起した。そして花開院秀元の知識を受け取り、恐山で御門院泰世の指導を受け、新しい祢々切丸を鍛えた。

夜雀 (よすずめ)

四国八十八鬼夜行の「七人同行」の一人。顔に文字が書かれた布を巻いた少女の姿をしている。寡黙で無表情な妖怪で、隠神刑部狸・玉章の命に唯唯諾諾と従っている。鳥妖怪で背中から鳥の羽が生えており、羽根に触れた者の視力を奪う能力を持ち、奴良組との戦いでは、その能力で奴良リクオと及川氷麗を苦しめたが、氷麗の機転で反撃を喰らい、敗れた。実は安倍有行が生み出した式神で、戦いが終結したあと、隠神刑部狸の玉章が使っていた「魔王の小槌」を回収し、三ツ目八面のもとへ届けた。以降、山ン本五郎左衛門の命に従って各地で暗躍していた。

鴉天狗 (からすてんぐ)

妖怪任俠一家、奴良組に所属する妖怪。奴良組傘下の「高尾山天狗党」の党首で、奴良家の「お目付役」に就いている。小さな人型の烏のような姿をしており、ぬらりひょんの側に仕えている事が多い。奴良組の諜報、情報伝達に重大な役割を果たしている鴉天狗達の元締め。子供である「三羽鴉」共々、重要な役割を果たしているが、気がついたらいなくなるぬらりひょんに頭を抱えたり、実家に帰ると、妻の濡鴉(ぬれがらす)が酔った際に一人家に残される恨みをぶつけられたり、苦労が絶えない。そのため、400年前は人並みにあった身長がどんどん縮まり、現在の小さな姿となってしまった。

しょうけら

羽衣狐に付き従う京妖怪の一人。神父のような黒衣を着た金髪の青年で、羽衣狐をマリアとして崇め、クリスチャンのような言動をする。茨木童子とは仲が悪く、よく喧嘩をしている。普段の姿は人間だが、本性は虫の妖怪、しょうけら。「庚申の日」に人が寝ているあいだに、罪を告げて命を奪うとされる妖怪で、それを回避するには「青面金剛(しょうめんこんごう)」を祀って、徹夜して過ごさなければならないとされる。羽衣狐を封じる力を持つ花開院ゆらを殺すため、花開院本家を襲撃。そこにいた家長カナ達をさらおうとするも、それがかつて「青面金剛」にも例えられた青田坊の逆鱗に触れ、彼に殴り飛ばされて敗北した。

雪麗 (せつら)

妖怪任俠一家、奴良組に所属する妖怪。及川氷麗の母親で、妖艶な色気のある美女の姿をした雪女。ぬらりひょんに惚れ込み、奴良組に所属した古参の妖怪で、400年前は羽衣狐との戦いにも傘下している。珱姫には嫉妬の感情をあらわにしたが、仲睦まじい二人の様子を見て身を引いた。現代では氷麗に役目を任せ、奴良組本家から離れており、自分が叶えられなかった恋を氷麗と奴良リクオが叶えてほしいと思っている。安倍晴明との最終決戦では、ぬらりひょんの呼びかけに応じてほかの戦友達と共に合流。ドサクサ紛れに「リクオの唇を奪え」と、氷麗に言いながら送り出し、ぬらりひょんと共に安倍雄呂血の式神と戦った。

奴良 若菜 (ぬら わかな)

奴良鯉伴の妻で、奴良リクオの母親。童顔で穏やかな性格をしており、普段は奴良組本家の家事を取り仕切っている。昔はたちの悪い悪霊に家が取り憑かれて苦労していたが、鯉伴に救われたのをきっかけにしてなかよくなった。山吹乙女との過去から暗い影を落としこんでいた鯉伴に笑顔を再び取り戻した人物で、リクオが妖怪任俠の道に進むのも、父親である鯉伴に似て来たと肯定的に捉えて応援している。普段は荒事にまったくかかわらないが、用心のために実は懐に拳銃を忍ばせ、つねに持ち歩いている。

隠神刑部狸 (いぬがみぎょうぶだぬき)

四国の八百八狸の長。神通力を持つ巨大な狸の妖怪で、現在は年老いて気力も弱くなっているが、かつては四国の妖怪を率いて松山城を我が物にせんとしていたほど血気盛んだった。化け狸であるため人間に変化する事もでき、人間時はスーツを着た品のある老人の姿になる。ぬらりひょんとは300年前、松山城を手に入れようとしていた際に会っており、彼から手を組まないかと誘われたが断っている。隠神刑部狸・玉章は自らの息子。自らを弁えて生きてほしいと願って、崇徳上皇の逸話になぞらえて「玉章」の名を与えたが、魔王の小槌を手に入れて人が変わった玉章の所業に心を痛めている。ぬらりひょんの来訪で玉章が奴良組を襲っている事を知り、彼を止めるためぬらりひょんと共に浮世絵町にやって来た。奴良リクオに敗れ去った玉章の前にたどり着き、彼をかばって土下座し、助命を嘆願した。

馬頭丸 (めずまる)

牛鬼率いる牛鬼組の若頭。黒髪の少年の姿をしている。牛鬼に心酔しており、彼の命には忠実だが、それ以外の者の命には従わない勝気な性格をしている。捩目山では奴良リクオと及川氷麗をほかの者達と分断して襲いかかった。「爪」と呼ばれる刀と、得意とする幻術でリクオを翻弄したが、妖怪の血を覚醒させたリクオに敗れた。その後は牛鬼がリクオに協力する姿勢を見せたため、牛頭丸と共に奴良組本家預かりとなり、リクオに協力している。ただし、牛鬼の命で渋々リクオに従っている部分が強く、独断専行したりするなど我の強い部分が目立つ。また氷麗とは初対面の印象から犬猿の仲で、顔を合わせるとにらみ合う事が多い。周囲からは、その様子から氷麗に気があるのではないかと思われている。

イタク

奥州遠野一家の妖怪。鉢巻をした青年の姿をしているが、「鎌鼬」といわれる妖怪で、本来はイタチの姿をしている。遠野に送り込まれた奴良リクオの教育係を任され、彼にひょういについて教えた。厳しいが責任感の強い性格をしており、やる気を出したリクオを鍛えた。強くならなければ生きていけない、厳しい遠野の環境で育ったため、余所者に対して警戒心が強く、リクオに対しても無条件で心を許す事はなかった。しかし、ひょういを身につけ遠野を出て行くリクオに、「まだ教える事があるから」と理由を付けて同行した。ただし、盃は交わす気はないとリクオに宣言している。鎌鼬の畏を鎌にまとわせ、敵を切り裂く戦法を得意とする。京都では土蜘蛛との戦いに苦戦したが、修行を終えたリクオと鬼纏を行い、土蜘蛛を倒した。鬼纏である「襲色紫苑の鎌(かさねいろしおんのかま)」を行うと、イタクの畏が鎌の形となってリクオの祢々切丸に宿り、土蜘蛛すら一刀両断する強力な斬撃を放てる。京都での戦い以降も、奴良組本家に通ってリクオの修行相手を務め、安倍晴明との最終決戦にも参戦している。

鳥居 夏実 (とりい なつみ)

浮世絵中学校に通う1年生の女子中学生。黒髪を後ろで一つにまとめた少女で、家族や仲間を大切に思う優しい性格をしている。巻紗織とはなかよしで、彼女と共に清十字清継の取り巻きをしていたが、それが原因で、巻き込まれる形で清十字怪奇探偵団に所属させられてしまう。清十字怪奇探偵団の中でも妖怪のトラブルに巻き込まれやすい人間で、祖母の快気を祈ってお参りに行って「袖モギ様」に襲われたり、たまたま柳田、鏡斎と遭遇して都市伝説「地下鉄の幽霊少女」のモデルにされたり、危機的な状況に何度も陥っている。また、その際に黒田坊に助けられたため、いつか自分を助けてくれた「お坊さん」にお礼を言いたいと思っている。渋谷で鏡斎に襲われた際も巻と共に多数の妖怪から逃げ、奴良リクオが到着するまでの時間を稼ぐ。しかし、鏡斎の手により妖怪「滝夜叉姫」に変貌させられてしまう。その後、あやつられるままリクオ達に襲いかかったが、リクオに畏のみを断ち切られ、無事に生還した。

一ツ目入道 (ひとつめにゅうどう)

妖怪任俠一家、奴良組に所属する妖怪。奴良組傘下の「独眼鬼組」の組長で、着物を羽織ってまげを結った、一つ目の大男の姿をしている。幹部の中でも奴良リクオの奴良組三代目総大将襲名に強硬に反対している立場で、牛鬼の暗躍を知りつつ見逃していた。また組内でも強引なやり口や保身的な立ち回りが多く、リクオには非協力的で批判ばかりしていた。だが京都での戦い以降は、リクオを総大将として認めた模様。実は400年前から奴良組に所属する古参の妖怪で、初代ぬらりひょんと戦場を駆け回った古強者。戦闘では刀や銃を使って戦う。かつては強大な羽衣狐の一派に挑む際にも臆せず、牛鬼に発破をかけるなど勇敢な性格をしており、珱姫といっしょに救出された苔姫を、さり気なく気づかったり、男気あふれる妖怪だった。土地神となったあとも苔姫とは交流があり、江戸百物語組によって彼女の神社が荒らされた際には、悪漢達を退けている。安倍晴明との最終決戦では、若かりし頃のぬらりひょんの姿を見て感涙し、彼と共に安倍雄呂血の式神と戦った。

山吹乙女 (やまぶきおとめ)

奴良鯉伴の妻だった女性の妖怪。おしとやかで美しい姿をしており、50年ほど鯉伴と仲睦まじく暮らしており、江戸時代では寺子屋の先生として子供達の世話をしていた。鯉伴が羽衣狐の呪いの所為で子供を成せないのを知らず、自分の責任だと誤解し、自責の念に苛まれる。その後、古歌の書置きを残して失踪し、人知れず亡くなった。その存在を山ン本五郎左衛門と安倍晴明に利用され、反魂の術で現世に復活した。鯉伴の娘であるという偽りの記憶を植えつけられ、幼い奴良リクオや鯉伴と夢のような楽しい時間を過ごしつつも、最後は鏖地蔵にあやつられて鯉伴をその手で殺してしまう。その後、正気を取り戻して錯乱するが、その体を羽衣狐に乗っ取られた。京都での戦い最終盤で羽衣狐が抜け出したため正気を取り戻し、リクオを晴明の攻撃からかばい、彼に看取られながら息を引き取った。晴明との最終決戦では羽衣狐の魂と共に肉体に舞い戻り、新たな妖怪となって最終決戦に参戦した。

苔姫 (こけひめ)

浮世絵町の神社に祀られている土地神。着物を羽織った幼い少女の姿をしており、一人称は「ワラワ」で、古めかしい言葉でしゃべる。四国八十八鬼夜行の襲来の際には「袖モギ様」に襲われたが、黒田坊によって助けられた。実はもとは400年前の人間で、生前は涙が真珠になる不思議な能力を持っていた。しかし、その能力が羽衣狐に目を付けられ、珱姫と共に生き胆を食われる寸前だったが、そこに乱入して来たぬらりひょんと奴良組によって救われた。一ツ目入道に懐いており、彼等や珱姫と共に江戸に天寿を全うし、死後、土地を守護する守り神となった。土地神となったあとも一ツ目入道と交流がある模様で、江戸百物語組の所業で神社が荒れた際にも一ツ目入道が苔姫を守るため訪れている。

花開院 竜二 (けいかいん りゅうじ)

花開院家の陰陽師の男性。花開院ゆらの実兄。目つきの鋭い黒髪の青年で、妖怪を「悪」と考え、完全に滅する事を信念としている。周囲からは非常に優秀な陰陽師と思われており、花開院秋房と共に次期当主と目されている。ただし花開院竜二自身は、妹のゆらの才能を目の当たりにして才能の限界を悟っており、搦め手や策略を自らの戦法に取り組んで、足りない部分を補っている。戦闘では虚言を織り交ぜた「言霊」の術を使って敵を翻弄し、水に宿した式神「言言(げんげん)」で罠をはって敵を攻撃する戦い方を得意とし、強力な妖怪とも互角以上の戦闘を繰り広げる。奴良リクオも妖怪として滅しようとしたが、彼が持つ刀がかつて羽衣狐をほふった祢々切丸である事を知り、思いとどまった。その後、京都では花開院秀元の助言に従って、復活した羽衣狐一派と戦うためリクオと協力体制を築いた。江戸百物語組との戦いでも独自に「都市伝説」について調べて敵の本拠地を暴いたり、安倍晴明との最終決戦では「葵螺旋城」の結界を破壊したり、リクオ達の戦いに力を貸している。

鏖地蔵 (みなごろしじぞう)

羽衣狐に付き従う京妖怪の一人。頭の大きな老人の姿をした妖怪で、頭の部分には巨大な目があり、人の心の闇を見つけて乗っ取る能力を持つ。実は羽衣狐の仲間のように振る舞っているが、ほかの妖怪達の記憶にはない存在。催眠能力を使って周囲の妖怪の記憶をあやつり、本来は鞍馬天狗が座るポジションを乗っ取って暗躍していた。その正体は山ン本五郎左衛門から生まれた妖怪。「山ン本の目玉」に位置する存在で、地獄から山ン本の指示を受けて暗躍していた。復活した山吹乙女を奴良鯉伴のもとに送り込み、鯉伴の暗殺と羽衣狐の復活を主導した。また、隠神刑部狸・玉章から回収した魔王の小槌を夜雀から受け取り、復活した安倍晴明に手渡すなど数々の事件の裏で暗躍していたが、勝利に酔ったところを奴良リクオに斬られ、断末魔の悲鳴をあげながら消えていった。

花開院 魔魅流 (けいかいん まみる)

花開院家の陰陽師の男性。無機質な表情の青年で、花開院竜二の言葉に従順に従う。花開院の分家の陰陽師で、花開院ゆらの親戚に当たり、幼い頃から付き合いがある。本来は穏やかで明るい性格をした好青年だが、羽衣狐の復活に呼応して凶悪化する妖怪達からゆらを守るべく、式神「雷獣」を体内に宿す禁術を使用。莫大な力を得る代償として感情を失い、現在の姿になった。花開院魔魅流のその変わり果てた姿を見たゆらは、すぐに自分の知っている魔魅流と同一人物だと判断できなかったほどである。戦闘では主に雷を利用した術を使い、その力は強烈無比となっている。

猩影 (しょうえい)

妖怪任俠一家、奴良組に所属する妖怪。奴良組傘下の「関東大猿会」の二代目会長で、正体は大猿だが、普段は2メートルを超える大柄な青年の姿をしている。奴良リクオ、鴆とは同年代の若い妖怪で、父親の方針で人間として育てられたため、妖怪や任俠の常識には疎い部分がある。父親である狒々が四国八十八鬼夜行に襲われて死亡したため、二代目会長を引き継ぎ、奴良組に助力した。ただし当初は、父親から聞いた話と奴良組の実情が食い違い、失望するなど複雑な心境を抱いていた。リクオの活躍を見て徐々に心境が変化し、彼を支えていこうと決心する。戦闘では父親と同じ能面をかぶり、大柄な体に見合った怪力で日本刀を振るって戦う。

安倍 有行 (あべの ありゆき)

御門院家の四代目当主。のんきな性格をした小柄な少年。御門院水蛭子からはよく苦言を呈されている。圓潮とつながり、式神の夜雀を使って暗躍していたが、圓潮と知り合って力を貸したのも趣味で寄席を見に行って、たまたま圓潮のファンになったのが理由だと語っており、基本的に性格は非常にマイペース。ただし実力は確かなものを備えており、「暗闇鏡」と呼ばれる術で鏡を使って敵を闇の中へと引きずり込み、心の闇に敵を閉じ込めるのを得意とする。最終決戦では葵螺旋城で奴良リクオ達を待ち受け、隠神刑部狸・玉章と戦った。

(ゆかり)

奥州遠野一家の妖怪。幼い黒髪の少女の姿をした座敷童子の妖怪で、冷麗といっしょにいる事が多い。無表情で毒舌な性格をしており、初対面の妖怪にも遠慮せずズケズケと物を言う。イタクと同じくリクオと盃を交わす気はないが、彼に頼まれて京都での戦いにも力を貸した。直接的な戦闘能力はないが、座敷童子の畏である「運を引き込む」を使いこなし、敵の来ない安全な場所を見つけたり、逃げ道に適した道を選んだり、味方の運勢をいいものにする事ができる。京都では土蜘蛛によって負傷した土彦と冷麗を守るため、傷ついた二人の側にいた。

集団・組織

清十字怪奇探偵団

清十字清継が結成した妖怪を研究する部活動。清継が幼い頃に遭遇した「妖怪の主」に出会うのが目的で、清継の実家の財力を利用して、各地の有識者と連絡を取ったり、妖怪が目撃されるパワースポットを探索にしに行ったりしている。そのせいで各地の妖怪騒ぎにも巻き込まれており、捩目山や京都では妖怪に襲われた。江戸百物語組に東京が襲われた際には、それらの経験が活き、妖怪のはびこる町で部員達はそれぞれ危機を脱したり、無関係の人々を助けたりと活躍した。また、清継が情報収集のため部のサイト「妖怪脳」を作っていた事が功を奏し、青行灯との戦いでも大きな貢献を果たした。

四国八十八鬼夜行 (しこくはちじゅうはっきやこう)

隠神刑部狸・玉章が率いる四国の妖怪任俠組織。「七人同行(しちにんどうぎょう)」と呼ばれる七人の幹部が存在し、奴良組の畏を奪うため浮世絵町に来訪した。奴良組との百鬼夜行大戦に敗れ、さらに玉章が「魔王の小槌」を使うため、味方の妖怪を殺し回ったため壊滅的な被害を受けてしまう。隠神刑部狸の取り成しで手打ちとなって玉章と共に四国へと帰ったが、安倍晴明との戦いではリクオの呼びかけに応えて、玉章と共に浮世絵町に駆けつけた。

江戸百物語組 (えどひゃくものがたりぐみ)

山ン本五郎左衛門が生み出した妖怪の組織。生前の山ン本に付き従っていた柳田以外は、山ン本の体がそれぞれ独立した存在となっており、その数は無数に存在する。山ン本の本体亡きあとは、復活のための畏を集めるための行動をしていたが、奴良鯉伴と奴良組に邪魔され続けていた。そのため邪魔者である鯉伴を殺し、奴良組を弱体化すべく、地獄の山ン本五郎左衛門本体が安倍晴明と手を組み、現世で暗躍を続けていた。「目」「耳」「口」「面の皮」「骨」「鼻」「脳」の七人が幹部として君臨している。

場所

奴良組

ぬらりひょんが率いる妖怪任侠一家。関東一体の妖怪を傘下に入れており、奴良組傘下の組は70団体以上、構成員は末端を含めると1万人以上となっている。本拠地は浮世絵町に存在する。400年前にぬらりひょんが初代総大将として結成し、羽衣狐を討った事で一躍、一大勢力となった。その後、奴良鯉伴が二代目総大将を受け継ぎ、江戸の町で活躍し、最強と謳われるほど巨大勢力となった。しかし奴良リクオが幼い頃に、安倍晴明と山ン本五郎左衛門の姦計で鯉伴が死亡して以降、その威光は急速に陰りを見せ、組織として大幅な弱体化をしてしまっている。鯉伴が死亡してからは、ぬらりひょんが再び総大将を務めている。奴良組の基盤を奪いたい者はあとを絶たず、また組内部もリクオを後継者として相応しくないと思っている者達が存在し、内憂外患といえる状態にまで陥っている。牛鬼の事件以降、リクオが正式に若頭を襲名し、組をまとめるべく動いている。

浮世絵町 (うきよえちょう)

奴良リクオが暮らす東京都に存在する町。「奴良組」の本家があり、本家以外にも街中に妖怪が人間に隠れて暮らしている。浮世絵町の東口には繁華街である一番街が広がっており、そこは奴良組傘下の「化猫組」が取り仕切る賭博場となっている。

葵螺旋城 (あおいらせんじょう)

御門院家の本拠地であり、安倍晴明の居城。東京にある葵城の上空にあるとされ、いくつもの岩の浮島の上に建物を作り、それらが螺旋状に配置されている。結界術の天才である御門院天海が設計を担当し、城を螺旋状に配置する事で「螺旋の結界」を構築し、葵螺旋城を中心に広がっている結界は日本全国に広がっている。またその結果は強固そのもので、結界を破壊しなければ葵螺旋城は立ち入る事はおろか、触れる事も見る事も不可能となっている。螺旋の結界は葵城内堀、外堀を使った二重螺旋が結界の要になっているように見えるが、これは天海が作り出したカモフラージュで、真の結界の要は地下水道となっている。花開院竜二はこの仕掛けに気づき、堀の水を式神化して新たな螺旋の流れを作る事で結界を無効化し、葵螺旋状の姿を表舞台に引っ張り出した。

その他キーワード

(おそれ)

妖怪の力の根源となるもので、人間からの恐怖や信仰、あこがれによって生まれる。多くの人を畏怖させればそれだけ妖怪の大きな力となるが、逆に人々から忘れ去られたり、より大きな妖怪の畏で畏怖を上書きされたりするとその妖怪の力は失われ、いずれは消滅してしまう。そのため妖怪同士の戦いでは、この「畏の奪い合い」が何より重要とされる。十分に畏を集めた妖怪が、それを利用して自らの本質に由来する力を振るう事を「はつ」といい、「鬼(きにょう)に發」という一文字で表される。また奴良鯉伴は信頼関係を築いた妖怪の畏を自らが背負う事でさらに畏を高める「鬼纏」を編み出した。

御門院家 (ごかどいんけ)

安倍晴明を初代当主として、その意志を引き継いだ陰陽師集団。晴明の遺言に従って時の権力者に取り入り、晴明が定めた聖地を守り、その地に「葵螺旋城」の築いた。歴代当主は「泰山府君祭」と呼ばれる延命の術で現代まで生き延びて腕を磨いており、白い装束を着た「白装安部姓」、黒い装束を着た「黒装御門院」が幹部として君臨している。ちなみに安部姓を名乗っているのは四代目当主までで、それ以降は御門院姓を名乗っている。御門院泰世のように当主ではない陰陽師も存在し、また五代目当主は御門院家の方針に反発し、出奔した模様。

鬼纏 (まとい)

奴良鯉伴が編み出した百鬼夜行の主の御業。人間と妖怪、両方の血を持つ鯉伴が人間の部分に百鬼夜行の畏をまとわせる事で、自らの畏と合わせてより大きな畏を生み出す。半妖にしかできない技で、大将と百鬼夜行の畏が強ければ強いほどより強大な畏となる。ただし、畏を与え合うにはお互いを信じ合う絆が必要で、大将と配下の妖怪が真の意味で気持ちを通じ合わせるのが必要とされる。またこの技を使用すると、大将の背中に心を通じ合わせた証拠として、その妖怪を象徴する紋様が背中に浮かびあがる。奴良リクオは鴆と鬼纏した際には「羽根」、及川氷麗と鬼纏した際には「雪」の紋様が浮かび上がった。鬼纏には、大将と配下の高まった畏を一気に放つ「畏砲(いづつ)」、大将と配下の妖怪の力を合わせる事で新たな力を引き出す「畏襲(かさね)」が存在する。「畏砲」は威力は高いものの消耗が激しいうえにスキが多く、「畏襲」は安定度は高いものの爆発力が少ないという一長一短の特徴があるため、状況に応じて使い分ける事が大切とされる。

祢々切丸 (ねねきりまる)

ぬらりひょんが持つ長ドス。実は人間は斬れず、妖怪のみを斬れる退魔の刀で、400年前、花開院秀元が鍛えた生涯最高の一振り。珱姫に護身刀として渡されていたが、紆余曲折の末、ぬらりひょんの手に渡り、羽衣狐を倒す大きな力となった。本来の銘は「鵺切丸」と言い、安倍晴明を打倒するという歴代当主の研鑽と思いが詰まっている。現代ではぬらりひょんから奴良リクオの手に渡り、彼の愛刀として活躍したが、京都での戦いで復活した晴明に通じず、一度は叩き折られる。その後、リクオに頼まれて花開院秋房が「恐山」で修行しながら鍛えなおし、新たな祢々切丸として生まれ変わった。

魔王の小槌 (まおうのこづち)

隠神刑部狸・玉章が持っていた古びた刀。伝説の神宝の一つで、300年前、四国妖怪はこの刀を持つ者に殺された伝説を持つため、四国の妖怪達のあいだでは「覇者の証」とされている。斬った妖怪の血肉を吸収し、自らの力として振るう事ができる「妖怪を滅ぼす力」を持ち、振るえば振るうほど強大な力を得るのと引き換えに、妖怪の骸を背負い、歪(いびつ)な異形の存在へと変わっていく。その正体は山ン本五郎左衛門の心臓。山ン本が妖怪化した際に、自らの心臓を使って生み出した刀で、かつては妖怪化した山ン本が振るっていた。三ツ目八面から玉章の手に渡ったが、玉章が敗れたあとは夜雀に回収され、京都で復活した安倍晴明の手に渡った。

ひょうい

「鬼(きにょう)に憑」の一文字で表記される対妖怪用戦闘術。妖怪が畏を発動する「はつ」に対し、「ひょうい」はそこからさらに一歩、自らの本質に踏み込んで「技」として昇華したものといえる。「ひょうい」は固有のもので、己の畏を理解し、受け入れるのが大切とされ、奴良リクオのように自らの本質への理解が不十分だったり、淡島のように自身の本質を拒絶したりすると十全に発揮する事はできない。「ひょうい」が発動されると、その妖怪の畏は武器や自身へとまとわれ、それを利用する事で敵の畏を打ち破る事ができる。また「ひょうい」は熟練して行く事で攻撃と防御など、畏の性質を自在に使い分ける事も可能で、リクオは京都での戦い以降、イタクと修行し、自らの畏を攻撃に転じる技を編み出した。

アニメ

ぬらりひょんの孫

浮世絵町の屋敷に住む中学生奴良リクオは、妖怪たちのトップに立つぬらりひょんの孫で、奴良組の三代目総大将と目される若頭。人間として暮らしたい奴良リクオだが、彼を信じる組員の妖怪たちや、奴良組に変わって妖... 関連ページ:ぬらりひょんの孫

ぬらりひょんの孫 〜千年魔京〜

浮世絵町の屋敷に住む中学生奴良リクオは、妖怪たちのトップに立つぬらりひょんの孫で、奴良組の三代目総大将と目される若頭。他の妖怪たちの派閥との抗争の中で、宿敵・羽衣狐と出会い、新たなる壮絶バトルが始まっ... 関連ページ:ぬらりひょんの孫 〜千年魔京〜

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