挑戦者

挑戦者

ボクシング界の頂点を目指す高校生、神話海彦が恵まれた環境をすべて失い、それでも高い気位のままライバル打倒に執念を燃やす。国体出場に掛けた若者たちの生き様を鮮烈に綴る、愛と暴力の青春ロマン。

正式名称
挑戦者
ふりがな
ちょうせんしゃ
原作者
笠原 和郎
作者
ジャンル
ボクシング
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概要・あらすじ

全国高校ボクシング大会のフェザー級決勝戦でライバルの荒沢俊介に敗れた神話海彦は、それまでの栄光ばかりか両親と家までも失って横浜の高校に転校。それでもプライドを捨てずにボクシング部を新設した神話海彦だったが、彼を恨む不良たちによって右手裂傷の大ケガを負ってしまう。だが荒沢俊介との再戦を目指してなおも再起し、右手をかばって戦い続けた神話海彦は、とうとう国体出場を果たすのだった。

登場人物・キャラクター

神話 海彦 (しんわ うみひこ)

裕福な神話家の一人息子で、尊大な性格のエリート至上主義者。山の手の旭星高校二年生でボクシング部に所属し、高校ボクシング界のサラブレッドと呼ばれている。だが全国高校ボクシング大会のフェザー級決勝戦で、ライバルの荒沢俊介にKO負け。そのためリング上で狂乱したことが原因となって父親が自殺し、病院に駆けつけようとした母親も交通事故で死んでしまう。 茫然自失した神話海彦は借金の抵当となっていた自宅からも追い出されて横浜の叔父の元に引き取られ、そこからも飛び出した後で、ボクシング部のない明和高校に転校させられてしまう。だが明和高校の不良たちを仕切る輝男との試合に勝ってボクシング部を新設したものの、不良たちの仕返しによって右手裂傷の大ケガを負うことに。 それでも野沢キックボクシングジム会長による手術とコーチを受け、国体出場をかけた東京大会に臨んだ神話海彦は、左手のパンチだけで勝ち進み、旭星高校ボクシング部の強敵トニー・ウィリアムスをも打倒。 夏の宮崎で開催された国体の一回戦で、ついに荒沢俊介との再戦を果たすのだった。

神話海彦の父 (しんわ うみひこのちち)

4000万円の借金を抱えて傾いた会社再建のため心労を重ねる、東西造船の社長。全国高校ボクシング大会のフェザー級決勝戦で敗れた息子の神話海彦が醜態を晒したため、彼がチャンピオンになることを条件に取引先の佐伯コンツェルンの会長と交わしていた、30億円の融資の約束が破綻。 そのことに落胆して、首吊り自殺をしてしまう。

荒沢 俊介 (あらさわ しゅんすけ)

関東工業高校ボクシング部部長の三年生で、「リングの魔術師」の異名を持つ神話海彦のライバル。同じ横浜スラムに住む部員たちを率い、国体優勝によって人生を這い上がることを目指している。全国高校ボクシング大会選手権のフェザー級決勝戦で、スリップしたことにより神話海彦のパンチを外して勝利するが、後にスリップしなくても「見切り」で勝てたことを、偶然出会った神話海彦に見せつけた。 だがエリートのプライドに命懸けでこだわる神話海彦をライバルとして認め、密かに応援もしている。後にプロレスラーの振り回すハンマー投げの鉄球を受ける過酷な特訓に耐え、強さを増強。さらに神話海彦の後釜として佐伯百合子の交際相手となり、ボクシング部ぐるみの支援も受けたが、後に神話海彦との再戦に備えて彼女と別れている。 国体選抜ボクシング神奈川大会での優勝を経て、国体の一回戦で神話海彦と戦ったが、最後にスピンパンチのアッパーカットをくらって敗退している。

トニー・ウィリアムス

横須賀のアメリカンスクールのナンバー1ボクサーだったが、神話海彦の代わりに旭星高校ボクシング部にスカウトされた。猛牛に脳震盪を起こさせるほどのパンチの持ち主で、「消えるパンチ」と「超スローアッパー」の必殺パンチを持つ。外科医の姉が日本にいて、弟をチャンピオンにするという父親の夢をかなえるため、ボクシング部を支援している。 そのため「前山クリニック」にたまたま運ばれてきた神話海彦を再起不能にしようとした姉を見つけてとがめ、正々堂々の勝負を望んだ。やがて国体選抜ボクシング東京大会に勝ち残ってライバルの神話海彦とのフェザー級国体出場決定戦に臨むが、得意のパンチを右腕でブロックされ、さらにコークスクリューパンチをくらって倒されてしまった。

佐伯 百合子 (さえき ゆりこ)

佐伯コンツェルン会長の孫娘にして、学生美女コンテストの女王。全国高校ボクシング大会のフェザー級準決勝戦で荒沢俊介に無様に敗れた神話海彦に失望して、エリートどうしの関係を築いた彼との婚約の約束を解消している。以後、神話海彦に勝つことを条件に荒沢俊介と交際し、さらにスポンサーとなって彼が部長のボクシング部も支援していたが、神話海彦の戦いぶりを知って目を覚ました彼に捨てられてしまう。

野沢会長 (のざわ かいちょう)

野沢キックボクシングジムの会長。神話海彦が明和高校に転校してきたことで、夢にまで見た彼との出会いを喜び、彼と輝男との試合に立ち会った。戦時中に軍医の助手をしていた経験を活かし、神話海彦の右手の裂傷を手術し、家出した彼の面倒をみるようになったうえ、彼が立ち上げた明和高校ボクシング部の臨時コーチも務めている。 試合でもセコンドとなって神話海彦を助け、国体に出場した彼が荒沢俊介に勝利するまで指導を続けた。

野沢 マコ (のざわ まこ)

野沢キックボクシングジム会長の娘。明和高校の不良グループセイガク会のメンバーだったが、神話海彦との出会いを経て彼を応援する側に回り、やがて愛するようになる。そのためセイガク会を抜けたことで元の仲間たちのリンチにあい、強姦されてしまう。その後は父親に神話海彦を託して、一人旅立っていった。

ペルセウス

『挑戦者』の登場動物。神話海彦に忠実に仕え、守るばかりか諌めることもある賢い愛犬。血統書付きの名犬で誇り高く、交通事故などの被害から何度も神話海彦を救っている。横浜スラムの野良犬たちに襲われた時は、神話海彦譲りのフットワークとスピン攻撃を見せてたった一匹で殲滅。その戦い方をヒントに神話海彦は荒沢俊介との最後の戦いで、スピンパンチのアッパーカットを編み出すことになった。

只熊 猛男 (ただくま たけお)

全国高校ボクシング大会フェザー級準決勝に進出した北海道代表。札幌中央工業高校の生徒で、雪の中で熊と戦った経歴を持つ強者だったが、準決勝戦で神話海彦に敗北している。

佐伯 泰三 (さえき たいぞう)

佐伯コンツェルンの年老いた会長。若いころは世界チャンピオンを目指すボクサーだったが、夢を捨てて事業家に転身し、コンツェルンを築いた。クィーンエリザベス号の6倍もある超豪華船の甲板にボクシングジムを作り、神話海彦がチャンピオンになった際にタイトルマッチを行う計画を密かに持っていたが、全国高校ボクシング大会のフェザー級準決勝戦で無様に敗れた神話海彦に失望。 計画を破棄すると共に、神話海彦の父親の会社への融資も断って自殺のきっかけを作った。

本多 由紀子 (ほんだ ゆきこ)

旭星高校二年生の少女。クラスメートの神話海彦を密かに愛していたが、彼に復讐しに来た暴走族の一団に一緒にいるところを襲われ、失意のさなかの神話海彦に助けてもらえないまま強姦されてしまう。それでも再会した神話海彦に愛していることを伝え、以後も見守り続けて、ついに結ばれるまで愛を貫き通した。

神話 省吾 (しんわ しょうご)

神話海彦の死んだ両親の生命保険を養育費にする条件で彼を引き取った、横浜に住む叔父。横浜中華街のレストランを経営している。妻に兄の隠し財産を狙っていることを話していたところを神話海彦に聞かれてしまい、怒った彼が家を飛び出すという失態をおかした。さらに授業料が払えないという理由で、神話海彦をボクシング部のない明和高校に転校させる手続きを旭星高校に対して行い、そのため転校させられた神話海彦はみずから部を作ることになった。

定森 竜二 (さだもり りゅうじ)

横浜スラムを縄張りとする銀波組の幹部で「人斬り定」の異名を持つ。元全日本ウェルター級一位のプロボクサーだったが、1973年の全日本タイトルマッチで判定負けをしたことから、その場でレフリーの片目を潰してボクシング界から追放された。ペルセウスの強さを見て闘犬にしようとするが神話海彦に断られ、組員たちをボクシングで倒した彼にボクシングで挑む。 戦いの当初は、階級差で圧倒していたが、実戦を離れて体を鍛えていなかったため、反撃されて敗退し、潔く神話海彦の強さを認めて去っていった。

輝男 (てるお)

横浜の明和高校の校長の息子で、同校の不良グループ、セイガク会を仕切っている。また野沢キックボクシングジムに所属する全日本ライト級二位のキックボクサーでもあり、負けたらボクシング部を作ることを条件に神話海彦とリングで戦い、スピンパンチに敗れてやむなく約束を守る羽目になった。 そのことを恨んで仲間と共に神話海彦に襲いかかり、暴行を加えたばかりか一人のナイフが彼の右手を切り裂いてしまう。そのため野沢キックボクシングジムから破門にされ、さらに国体出場が決まった神話海彦を手のひらを返したように学校が自慢したことで、不良仲間からも見捨てられてしまう。

クレジット

原作

笠原 和郎

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