名探偵シャードックは元捨て犬
主人公の輪島尊は、そそかっしい性格ながら責任感の強い少年。もう一人の主人公のシャードックは、外見はかわいらしい子犬ながら、実は誇り高き英国紳士。そんな二人の出会いは保健所だった。その保健所で尊はバカ犬扱いされていたシャードックを引き取ることにする。保健所からの帰路、交通事故に遭遇した尊は、それがある事件の発端であることをシャードックの指摘によって知り、見事に事件を解決する。自らをシャーロック・ホームズの魂が宿っていると称するシャードックに振り回されながらも、二人は協力してさまざまな事件に立ち向かう。
犯人視点で描かれる「倒叙ミステリー」
本作はホームズ役の子犬、シャードックと、ワトソン役のふつうの男子高校生、尊がバディを組んで犯人が築いたアリバイトリックに挑戦するが、読者には事件開始時点で犯人が明かされる。シャードックと尊が協力して犯人のアリバイトリックの謎にせまり、最終的に犯人に決定的な証拠を突きつけてトリックを暴くという、倒叙ミステリーのストーリー構成となっている。シャードックと尊、そして犯人の視点で描かれているため、読者は謎解きの爽快感と犯人側の苛立(いらだ)ちを同時に味わうことができる。
ホームズ愛用のパイプが意思疎通の秘密
尊の自宅には、祖父のイギリス土産のパイプがあった。それは生前シャーロック・ホームズが愛用していたパイプであり、これを口に咥(くわ)えることでシャードックは人の言葉で尊と意思疎通を図ることができるようになる。しかし、なぜこのパイプが輪島家にあるのかは不明で、シャードックもいずれはこの謎を解明したいと考えている。
登場人物・キャラクター
輪島 尊 (わじま たける)
倫敦学園高校に通う2年生の男子。年齢は16歳。祖父から続く警察一家に生まれ育ち、父親と姉も警察に所属している。犬が大好きで、保健所にいる全頭を保護したいと考えていたが、保健所の担当者が手を焼いていた子犬に心惹(ひ)かれて引き取った。この子犬に名前を付けようとした時、なぜか「シャーロック」の名が無意識に尊の頭に閃くが、聞き間違いから「シャードック」と名付けた。シャードックからは「ワトソン君」と呼ばれて助手扱いされているが、尊自身は飼い主のプライドから、助手扱いされていることを嫌っている節がある。さまざまな事件に巻き込まれることを面倒くさがっているが、シャードックには世界一有名な名探偵シャーロック・ホームズの魂が宿っていることから、その推理力の高さには感服している。エリート警察官の姉や生真面目な父親へのコンプレックスから将来は警察官以外の道を考えていた。しかし、シャードックと共に事件を解決していくうちに、警察官として事件の被害者に寄り添いたいと考えるようになり、刑事になることを決意する。
シャードック
名探偵シャーロック・ホームズの魂を宿した雑種の小型犬。捨て犬として保健所で殺処分を待つ身だったが、尊に引き取られる。尊に「ポチ」「ジロ」「ハチ公」とベタな名前を付けられそうになった際に、テレパシーのようなもので自ら「シャーロック」と名乗るが、尊の聞き間違いで「シャードック」と名付けられた。尊の祖父のイギリス土産のパイプを口に咥えると、尊と言葉でコミュニケーションを取れるようになる。犬としての自覚が薄く、椅子に座ったり新聞を読んだりするため、尊の母親からは気味悪がられている。外見はかわいらしい子犬ながら、内面は誇り高き英国紳士で、女性の扱いについては細心の注意を払っているものの、排泄はやむを得ず野外で済ませている。また、強いショックを受けたり、人間から正体を疑われたりするとふつうの犬に戻ってしまうことがある。6か国語をあやつり、その読解力で自転車に書かれていた「輪島尊(ワトソン)」という漢字から、尊のことを「ワトソン君」と呼ぶようになる。
クレジット
- 原作