十二人の死にたい子どもたち

十二人の死にたい子どもたち

冲方丁の小説『十二人の死にたい子どもたち』のコミカライズ作品。集団安楽死をするための集いに参加した12人の少年少女は、会場となった廃病院で正体不明の少年、ゼロ番の死体を発見する。ゼロ番の正体、そしてゼロ番を連れてきた犯人を推理する中で、自分と他人の命の在り方について見つめ直していく参加者たちの姿を描いたミステリー。「good!アフタヌーン」2017年7号から2018年12号にかけて掲載された作品。2019年1月に実写映画化。

正式名称
十二人の死にたい子どもたち
ふりがな
じゅうににんのしにたいこどもたち
原作者
冲方 丁
漫画
ジャンル
推理・ミステリー
 
自殺
関連商品
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あらすじ

序編

廃病院に12人の少年少女たちが、集団安楽死をするために集まっていた。管理者のサトシをはじめ集いに参加した面々は、そこに本来いるはずのない、誰も素性を知らないという少年、ゼロ番の死体を目にする。集団安楽死実行の前にゼロ番の素性の話し合いを求めたケンイチに応じ、各自がゼロ番に関しての違和感やサトシに対する疑問を口にし始める。そんな中、シンジロウは状況的にも、ゼロ番は何者かによって殺害されたうえで、ここに連れて来られたのではないかと発言する。それをきっかけとなり、ゼロ番がどうやってここに運ばれたかを検証するため、全員で廃病院の中を散策することになった。その結果、タカヒロがある事実を思い出す。

破編

タカヒロからゼロ番を殺した犯人ではないかと疑われたノブオは、「自分がやった」と告白する。しかしその後、再び多目的ルームに戻る直前に、ノブオは何者かによって階段から突き落とされ、姿を消してしまう。定刻になっても姿を見せないノブオを、集いの目的である集団安楽死を邪魔したくないために居なくなったと発言したアンリに従い、全員がノブオがゼロ番の死体をどうやって運び、その目的はなんなのかを推理していた。しかしそれでも辻褄(つじつま)が合わないことが多く、シンジロウは「ゼロ番の存在を知っていた人間は少なくとも二人はいたのではないか」と発言する。さらに話し合いが続く中で、ずっと顔を隠し続けていたリョウコが女優の「リコ」であることが判明し、これまで集団安楽死の実行に積極的だったミツエが拒絶するようになる。

急編

不用意な一言でマイを激昂させてしまったシンジロウは、意気消沈していた。そんなシンジロウの姿を目にしたメイコは、自分が集いの主導権を握り、早々に多目的ルームを閉め切って集団安楽死の実行に向けて準備を進めようと画策するが、サトシゼロ番のゲップを聞いたことで、ケンイチから「集いを中止すべきではないか」という意見が出され、事態が急変する。そんな中、メイコは自殺動機が曖昧なアンリと、ゼロ番を追い出すことができれば集団安楽死を実行できるはずと目論んで、アンリに次々と疑問をぶつけ始める。しかし、その会話からシンジロウが一つの真実を導き出し、居なくなった思われていたノブオも、再び多目的ルームに姿を現す。

関連作品

小説

本作『十二人の死にたい子どもたち』は、冲方丁の小説『十二人の死にたい子どもたち』を原作としている。原作小説版は文春文庫から刊行され、カバーイラストをwatabokuが担当している。漫画版とはアンリが自殺を考えるようになった理由や、各キャラクターのセリフなど、若干異なるところもある。

実写映画

2019年1月より、原作小説『十二人の死にたい子どもたち』の実写映画版『十二人の死にたい子どもたち』が、ワーナーブラザースジャパン配給で全国の劇場で上映された。監督は堤幸彦、脚本を倉持裕が務めている。キャストは、サトシを高杉真宙、アンリを杉咲花、マイを吉川愛が演じている。

登場人物・キャラクター

サトシ

集いサイトの管理者を務める中学2年生の男子。ワイシャツを身につけている。誰に対してもつねに公平であろうとし、他人の感情に左右されることはない。父親は廃病院の院長を務めていたが、鬱病を患って院長室で自殺した。また年の離れた兄は医大受験で三浪した結果、母親に刺され、一命を取り留めたものの一家離散している。そのため「死にたくなる」という気持ちに強い興味を持ち、集いを開催するに至ったと、集いに参加した面々に語る。廃病院に到着した際、裏口近くにあるベンチ下にメンソールの煙草の吸い殻が二つ落ちているのを確認している。

ケンイチ

集いに参加した少年。廃病院の小型金庫から2の数字を取った。年齢は16歳。ブレザーの制服にネクタイを締めている。気になったことは納得するまで追求しなければ気の済まない性格で、空気が読めずに中学校時代からひどいいじめを受けており、自殺を決意した。廃病院に到着した際、2階のカウンターにキャップ帽と使い捨てマスクが置かれているのと、誰かが転んだような音を確認している。

ミツエ

集いに参加した少女。廃病院の小型金庫から3の数字を取った。長い茶髪を縦巻きロールのハーフアップヘアにしており、ゴシックロリータドレスを身につけている。自殺したタレントの後追い自殺をするために集いに参加した。リョウコが女優の「リコ」だと知った際には、自分のように悲しみで後追い自殺する人を増やさないため、リョウコに自殺を思い留まるよう説得する。廃病院に到着した際、女子トイレの中にメンズ用バスケットシューズの左片方が落ちているのを確認している。

リョウコ

集いに参加した少女。廃病院の小型金庫から4の数字を取った。帽子の中に髪をまとめ、つねにマスクを付けている。女優の「リコ」として活躍しているが、世間や母親の望むままにいい子を演じている自分に嫌気が差し、ふつうの「リョウコ」に戻るための手段として自殺を決意した。集いが始まる時間より早く廃病院に到着しており、屋上や喫煙所で時間を潰していた。その際、2階で誰かが転んだような音と、廊下を走り去る人影を確認している。

シンジロウ

集いに参加した少年。廃病院の小型金庫から5の数字を取った。スキンヘッドにハンチング帽をかぶっている。ある重い病で、長く入院生活を送っており、髪も投薬の副作用で抜け落ちている。両親共に警視庁に勤務しており、両親から探偵並の推理力を受け継いでいる。思考することを生き甲斐(がい)としているため、難解な問題や身の回りの出来事、人間関係に至るまでパズルと見なして解明することを喜びとしている。今後悪化すれば思考すら満足にできなくなると覚悟しており、自分の意思で命の終わりを決めることを望んでいる。ゼロ番が車椅子を使用しているのに、靴が見当たらなかったことで他殺体ではないかと推理した。廃病院に到着した際、エントランスの自動ドアが作動していることと、エレベーターが動かないことを確認している。

メイコ

集いに参加した少女。廃病院の小型金庫から6の数字を取った。茶髪のおかっぱヘアで、花のヘアピンでまとめている。長いものには巻かれるタイプで、状況次第ですぐに相手を裏切り、それに対して罪悪感や疑問を持つこともない。基本的に他人に対して悪感情しか持っておらず、自分が利用できる相手か、そうでないかでしか物事を考えていない。父親の経営する会社が倒産寸前となっているため、1年以上前からメイコ自身に生命保険をかけられており、自殺することで父親に貢献し、父親の記憶に自分の存在を刻みつけようと考えている。

アンリ

集いに参加した少女。廃病院の小型金庫から7の数字を取った。黒髪ストレートロングヘアで、黒いスーツを身につけている。最後まで自らの自殺を決意した具体的な理由を話そうとせず、頑(かたく)なに集団安楽死を実行しようとしている。効率的で無駄のない行動と規律正しいことを好み、他人にもその姿勢を求めている。ただし、自分の意見に対して誰からの共感も求めておらず、自分の主張を押し通そうとするため、集いに参加したメンバーに煙たがられている。

タカヒロ

集いに参加した少年。廃病院の小型金庫から8の数字を取った。虚(うつ)ろな目で頰が痩(こ)け、どもり癖がある。母親から大量に薬を飲まされているため、その副作用でつねに朦朧(もうろう)としており、自殺に救いを求めている。かつて服薬自殺を図ったことがあるが、あまりの苦痛から救急車を呼び、一命を取り留めた。廃病院に到着した際、すべてのエレベーターが4階で止まっていることを確認している。

ノブオ

集いに参加した少年。廃病院の小型金庫から9の数字を取った。坊主頭で目が大きく、丸眼鏡をかけている。つねに笑みを浮かべ、参加したメンバーにも気やすく接している。かつていじめに遭い、いじめの主犯格の生徒を階段から突き落として殺害したため、その罪悪感から自殺を決意した。廃病院に到着した際、すべてのエレベーターが4階で止まっていることを確認している。

セイゴ

集いに参加した少年。廃病院の小型金庫から10の数字を取った。年齢は15歳。浅黒い肌に筋肉質な体型で、金髪のツーブロックヘアにしている。性に奔放な母親の新しい恋人のコスタリカ人の男が、自分に多額の保険金をかけたことを知り、保険金が無効になる期間に自殺しようと考えている。廃病院に到着した際、すべてのエレベーターが4階で止まっていることを確認している。

マイ

集いに参加した少女。廃病院の小型金庫から11の数字を取った。年齢は17歳。日焼けした肌を持ち、長い金髪を低い位置でツインテールにしている。基本的になにも考えておらず、難しい話は大胆に要約して理解したつもりになっている。また、ほかのことに気を取られ過ぎて大事な話を聞いていないことが多い。口唇ヘルペスを不治の病だと思い込み、自殺を決意した。参加者全員で廃病院の中を散策していた際、エレベーターの中にメンズ用バスケットシューズの右片方が落ちているのを発見した。

ユキ

集いに参加した少女。廃病院の小型金庫から12の数字を取った。ウェーブがかった肩までの髪をヘアバンドで留めている。かつて交通事故に遭った後遺症で左腕にケロイドが残っており、左手の握力もほとんどない。非常に無口で、誰の話を聞く時もずっとうつむいている。

ゼロ番 (ばん)

故人の男性。集いの会場である廃病院の多目的ルームで、一番のベッドに横たわって死亡していた。ベッドの近くにはゼロ番が使用したと思われる車椅子が放置されており、ゼロ番が素足で靴も見当たらないことから、シンジロウはゼロ番が他殺されたのではないかと考察した。

場所

廃病院 (はいびょういん)

集いが開催された会場。現在使われていない病院で、地上4階、地下1階建てで、カフェや多目的ルームなどがある。現在は常時ブレーカーが落とされているものの電気は通っており、配電盤を操作することでエレベーターや自動販売機、エントランスの自動ドアを作動させることができる。またトイレや給湯室、喫煙所以外は施錠されており、入るためには警備室にある金庫内の鍵が必要となる。

その他キーワード

集い (つどい)

サトシが企画したサイト。集団安楽死するために12人が参加した。廃病院の地下にある多目的ルームを会場として開催されている。廃病院に入るための暗証番号やフロアマップの詳細が添付され、カウンターにある小型金庫の中から数字を取って地下の多目的ルームへ進むなど、参加者全員に細かく指示されたメールが届いていた。しかし、ゼロ番のことは主催者のサトシをはじめ、ほかの誰もがいっさい知らされていなかった。開催前には全員分の遺書や、集団安楽死をするための共同声明をフリーサーバーにアップしている。サーバーパスワードはサトシの自宅にある遺書に書き残されており、死後発見される予定となっている。12人全員で集団安楽死を実行するかを決め、全員が賛成しなければ話し合いをするという取り決めになっている。

クレジット

原作

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