あらすじ
第1巻
ごくふつうの女子高校生である由仁井シズカは毎晩のように、額の右側に大きな傷痕のある男性が夢に出てきていた。シズカは見知らぬその男性を「運命の王子様」と呼んで、いつか出会えるはずと夢見ていた。そんなある日、夢の男性に酷似した教師の帝塚善一郎がクラスの担任として赴任してくる。額の傷は見えないものの、運命の相手かも知れないと心躍らせるシズカだったが、その日、幼なじみでトラブルメーカーの汚久田タクヤが、事故で死亡したことを知らされる。
第2巻
汚久田タクヤの死亡事故に続き、暗森ジュンイチの重傷事故、満福ヒロアキによる帝塚善一郎への暴力事件など、二ノ峰高校2年1組では次々と不審な事件が起こる。それでも由仁井シズカの周囲だけは、比較的平和な日常を送っていた。そんな中、善一郎は自らに好意を寄せている、顔にコンプレックスを持つ為池ミヨシを刺激し、シズカに憎悪を抱くように仕向けていく。
登場人物・キャラクター
由仁井 シズカ (ゆにい しずか)
二ノ峰高校2年1組に在籍する女子。黒髪のセミロングヘアで、為池ミヨシから憎悪されるほどには整った容姿の持ち主。母親から父親について何も聞かされておらず、そのことにわずかながら不満を持っている。昔から帝塚善一郎によく似た、額の右側に大きな傷痕のある男性が登場する夢を見ており、「運命の王子様」と称して探し続けていた。善一郎の着任当日から夢の人物に酷似していることに気づいており、運命の王子様は善一郎なのではないかと考えている。
帝塚 善一郎 (てづか ぜんいちろう)
二ノ峰高校2年1組の担任を務める男性教諭。明るい髪色で右側の前髪だけが少し長く、額が隠れている。かつて二ノ峰高校に通学しており、学生寮に入寮していた。その頃は黒髪をセミロングに伸ばし、顔を隠して過ごしていた。由仁井シズカの夢に登場する「運命の王子様」に酷似しているため、初対面時にシズカをときめかせた。かつては夏目漱石の著書を愛読しており、特に『こころ』に記述された「精神的に向上心のないものは馬鹿だ」という一節を非常に気に入っている。シズカを偏愛しており、シズカが自分に恋心を抱くように仕向けている。また、汚久田タクヤや暗森ジュンイチが被害に遭った事件の犯人であり、現場に大量のライラックを残している。
横照 キミヤ (よこてる きみや)
二ノ峰高校2年1組に在籍する男子。由仁井シズカの幼なじみであり、向かい側の家に住んでいる。通りを挟んでお互いの部屋が見えるため、小さい頃はよく糸電話で遊んでいた。シズカに思いを寄せており、シズカが帝塚善一郎の話をするたびに複雑な思いを抱いている。
耳淵 エリ (みみぶち えり)
二ノ峰高校2年1組に在籍する女子で、由仁井シズカの友人。前髪を真ん中分けにした黒髪セミロングで、眼鏡を掛けている。新聞部に所属しており、次期エースを自称している。帝塚善一郎が女子生徒に人気があり、そのファンたちからのリクエストを受けたことから、善一郎だけをクローズアップした「帝塚新聞」を作り上げた。シズカからは「ミミ子」と呼ばれている。
空撫 ユキ (そらなで ゆき)
二ノ峰高校2年1組に在籍する女子で、由仁井シズカの友人。明るい髪色で、もみあげ部分を残したポニーテールにしている。バスケットボール部に所属しており、一試合で20点を獲得するほどのポイントゲッター。大食いで知られているが、食べ過ぎによる腹痛で学校を休むこともある。シズカからは「ソラ」と呼ばれている。
暗森 ジュンイチ (くらもり じゅんいち)
二ノ峰高校2年1組に在籍する男子で、黒髪のロングヘアにしている。美術部に所属しており、つねにスケッチブックを持ち歩いている。コンクールで金賞を獲るほど絵がうまいが、賞賛されることが目的ではなく、由仁井シズカの笑顔を見たいから絵を描いていると自称している。シズカに恋しており、毎日シズカをストーカーしながらスケッチを続けている。美影からは「暗くて嫌な子」と評されている。
満福 ヒロアキ (まんぷく ひろあき)
二ノ峰高校2年1組に在籍する男子。色志田トモカズとよくつるんでいる。エラの張った厳つい顔立ちで、金髪をツーブロックヘアにしている。政治家である満福男矢の息子であるため、万引きや校内暴力、飲酒や無免許運転などの悪行がすべて揉み消されてきた。暗森ジュンイチを脅していたこともある。
色志田 トモカズ (いろしだ ともかず)
二ノ峰高校2年1組に在籍する男子。満福ヒロアキとよくつるんでいる。セミロングヘアの金髪で、それなりに顔立ちは整っている。秘密にしているが、前担任の美影と交際して性的な交渉を持っていた。行方不明となった美影が恋しくなり、合鍵で部屋に入り浸っていることもある。過去に暗森ジュンイチを脅していた。
為池 ミヨシ (ためいけ みよし)
二ノ峰高校2年1組に在籍する女子。クラスでのカースト上位に位置しているが、同調圧力に弱いため、他人からの評価に過敏に反応し過ぎる傾向が見られる。また顔にコンプレックスを持っており、自分に自信を持てずにいた。帝塚善一郎に恋心を抱いているが、善一郎が顔のかわいい由仁井シズカにばかり構うことに嫉妬し、二重まぶたに整形した。しかし、それでも善一郎が自分をまったく眼中に入れていないことに気づき、シズカへの嫌がらせを始めた。
汚久田 タクヤ (おくだ たくや)
二ノ峰高校2年1組に在籍していた男子。由仁井シズカや横照キミヤの幼なじみで、昔はよくいっしょに遊んでいた。しかし、高校に入学してからは毎晩暴走バイクで走り回り、その騒音で近所に迷惑がられていた。帝塚善一郎にブレーキオイルをすべて抜き取られ、彼が赴任する前日の深夜に事故死した。
公苑寺 (こうえんじ)
二ノ峰署に勤める男性刑事。黒髪のマッシュルームボブヘアで、目が非常に細い。上司である箱崎と共に汚久田タクヤが事故死した件について捜査している。体力がなく、ビルの階段をのぼるだけで倒れ込むほど疲労する。
箱崎 (はこざき)
二ノ峰署に勤める女性刑事。黒髪のポニーテールで、右目に眼帯をしている。部下である公苑寺と共に汚久田タクヤが事故死した件について捜査している。現場にライラックの花が残されている事件がすべて同じ犯人によるものと考え、すべて書籍「放課後ストレイシープ」を模倣しているのではないかと推測している。
網野 (あみの)
二ノ峰高校に勤める男性教諭で、科学を担当している。人体模型に愛撫や性交を行うなど、並々ならぬ執着を見せている。女子生徒の制服を着た人体模型が破壊されてから、2年1組の生徒の仕業だと決めつけ、職員会議でもその推測を披露していた。
美影 (みかげ)
二ノ峰高校に勤める女性教諭。2年1組の担任を務めていたが、行方不明になり、後任として帝塚善一郎が着任した。善一郎の自宅の地下室に監禁されており、善一郎からは「ミーちゃん」と呼ばれている。昨年、生徒たちのSNSをすべて監視する中で、ひそかに思いを寄せていた色志田トモカズと連絡先を交換して交際するに至り、性的な交渉も持っていた。善一郎に監禁されているのを恨み、殺害しようとスキをうかがっている。
清 (きよ)
帝塚善一郎と同居している老齢の女性。白髪のセミロングで、ふくよかな体型をしている。痴呆症のため、あまり他人の区別がついていない。かつて二ノ峰高校の学生寮に寮母として勤めており、善一郎からは実の祖母のように慕われている。善一郎の自宅に侵入した満福ヒロアキに暴行を受けたことで、ヒロアキが善一郎の怒りを買うこととなった。
場所
二ノ峰高校 (にのみねこうこう)
由仁井シズカたちが通っている高校。かつては学生寮があり、清が寮母を務めていた。またその頃、帝塚善一郎は生徒として通っていた。現在2年1組は問題児が多いクラスとして、教師間でも話題になっている。20年前に起こった羊男連続怪死事件の被害者全員が二ノ峰高校の生徒だったことで知られている。
その他キーワード
羊男連続怪死事件 (ひつじおとこれんぞくかいしじけん)
20年前の4月から約1年にわたって発生した事件。二ノ峰高校の生徒ばかりが襲われた事件で、現場には必ずライラックの花が残されていた。当時、羊のマスクを被った犯人がたびたび目撃されており、連日マスメディアをにぎわしていた。しかし、警察の捜査が厳しくなる中、犯人と目される「羊男」が忽然と姿を消し、現在も行方不明となっている。のちに、犯人の手記を交えて事件の概要を記した書籍「放課後ストレイシープ」が発売され、大きな話題となった。
放課後ストレイシープ (ほうかごすとれいしーぷ)
20年前に起きた羊男連続怪死事件の概要を記した本。乃那加宗助というルポライターが、羊男連続怪死事件の犯人と目されている「羊男」とひそかに連絡を取り合い、通報しないという約束で犯行の手記を発表した。100万部の大ヒットとなり、当時はかなりの話題となった。「放課後ストレイシープ」によれば、犯人が犯行を重ねたのは、とある女性のためとされている。バイク事故をはじめとした、現在の二ノ峰高校で起きている事件と内容が酷似しているため、箱崎は犯人がこの放課後ストレイシープを模倣して事件を起こしていると考えている。