日本を創った男～渋沢栄一 青き日々～

本作は、「日本資本主義の父」と称される実業家、栄一の生涯を描いている。物語は大きく2部構成になっており、栄一が外国の脅威に揺れる日本を救うため、若き志士として身を投じる「幕末編」と、宿敵、岩崎弥太郎率いる三菱財閥との熾烈な競争を繰り広げながら、実業家として日本の未来を切り拓く「明治編」がある。また、黒船来航や桜田門外の変、明治維新、日清戦争、日露戦争、関東大震災など、栄一が生きた時代の重要な歴史的事件も物語に織り込まれており、彼の激動の生涯を追体験することができる。なお、本作では栄一の幼名や、20代から30代の頃に名乗っていた別名「篤太夫」は使われておらず、物語を通じて「渋沢栄一」の名前で統一されている。

幼い頃から農民が侍に理不尽な扱いを受ける姿を目の当たりにして育った栄一は、従兄弟の喜作や友人の尾高長七郎と共に、この世をよくするため、学問と剣術に励んでいた。しかし、黒船の来航と不平等条約の締結という国の危機が、彼らをより過激な攘夷運動へと駆り立てる。幕府による志士への弾圧が激化する中、栄一と喜作は玉砕覚悟で立ち向かおうとするが、長七郎の命がけの説得によって計画を思いとどまる。しかし、その後長七郎が幕府に捕らえられたことを知った栄一は、彼を救うためにあえて幕府の重鎮である一橋家に仕えることを決意する。

一橋家の家臣となった栄一は、主君の一橋慶喜の命を受け、慶喜の弟、昭武と共にパリ万国博覧会に赴く。日本や江戸幕府の存在を世界に示すための重要な使命だったが、現地では薩摩の五代友厚に先んじられ、パリでは既に薩摩が日本の中心と見なされる風潮が生まれつつあり、厳しい現実を痛感する。帰国後、栄一は明治政府の官僚となるが、その内情は権力争いに明け暮れ、かつての幕府となんら変わらない状況だった。理想とかけ離れた現実に失望した栄一は、官の道を捨て、実業家として生きることを決意する。栄一は「道徳と経済は両立する」という『論語と算盤』の精神を掲げ、日本第一銀行や共同運輸会社など、日本の未来の礎となる事業を次々と成功させる。その情熱は実業にとどまらず、静岡で隠棲する恩君、慶喜の名誉回復や、戦争を回避するための民間外交にも注がれる。その後も栄一は、日本のすべての人々が豊かに暮らせる社会の実現に、その生涯を捧げた。