概要・あらすじ
長州勤皇派に父兄を殺害された蘭方医の娘 富永 セイは、敵討ちを誓い、男子として新選組に身を投じる。その決死の覚悟は、隊でも一二を争う剣豪、沖田 総司と斎藤 一の助力を得て早々に報われる。だが、沖田 総司を慕い、彼と共に歩むという離れがたい生き甲斐を見出したセイは、新選組隊士であり続ける道を選ぶのだった。
登場人物・キャラクター
富永 セイ (とみなが せい)
神谷清三郎の名で新選組に身を投じた、かわいらしい顔立ちの乙女。入隊時の年齢は15歳。掃除や洗濯などの細かな雑事にも労を厭わないがんばり屋で、たちまち新選組のアイドル的存在となる。そして、日夜、隊士たちを衆道(男色)の恋で悩ませている。剣士としの成長ぶりは著しく、「池田家事変」では、新撰組の阿修羅と恐れられた。 一方で、父親の手伝いで身につけた医療分野での活躍も目覚しく、徐々にその能力が重視されていく。本人も命を生かす仕事に充実感を覚え、勉学に励んでいる。本懐は、武士として沖田総司と共に生き、果てること。
沖田 総司 (おきた そうじ)
天然理心流免許皆伝の強者で、新選組の一番隊隊長を務めている。子供と甘味が大好物という人当たりのよい人物だが、剣を握らせると鬼と化す。富永セイにとっては、父親の診療所が襲撃された時に助けに現れた恩人に当たる。セイの正体を知りながら、配下として守り、かわいがっているため、いつしか二人は、一番隊公認の衆道カップルということになってしまう。 セイのことは、次第に異性として意識しはじめるが、結婚を断った女性に自殺未遂された苦い過去がトラウマとなり、正面から向き合う覚悟ができずにいる。モデルは、実在の人物沖田総司。
斎藤 一 (さいとう はじめ)
京都の「太子流吉田道場」の師範代を勤めていた酒好きの剣豪。神谷清三郎こと富永 セイの兄富永 祐馬の友人で、清三郎には兄上と呼ばれ慕われている。長い間、男である清三郎に惚れた自分に苦悩していたが、祐馬との語らいを思い返すうち、清三郎が祐馬の妹だと気づく。 だが、沖田総司を庇って傷を負う姿を目の当たりにし、そのまま気づかぬふりを通している。本来の職務は、会津容保に派遣された隠密の監察官。その優れた洞察力は土方歳三にも高く評価され、時とともに、新選組隊士としても隠密活動に従事する機会が多くなる。モデルは、実在の人物斎藤一。
里 (さと)
富永セイの兄富永祐馬のかつての恋人。以前は、祇園の芸姑だったが、花屋の天神明里として、島原でセイと再会した。祐馬の存命中は疎遠だった二人だが、愛する者を亡くした悲しみをわかちあったあと、互いに支えあって生きる仲となった。公には、神谷清三郎の恋人として振る舞っている。 「池田屋事変」後に山南敬助と恋仲になり、セイも祝福していた。だが、幸せもつかの間、愛する人と再び死別してしまう。新選組遺聞の登場人物明里がモデル。
近藤 勇 (こんどう いさみ)
天然理心流の宗家4代目で、新選組の局長。徳川幕府への忠誠心が人一倍強い実直な人物で、人望が厚い。旧知の間柄となる土方歳三や沖田総司とは、特に深い絆で結ばれている。知り合って間もないが、神谷清三郎への評価も高く、近藤家への養子話を切り出したこともある。実在の人物近藤勇がモデル。
土方 歳三 (ひじかた としぞう)
智謀を一手に引き受ける新選組の副長。局中法度の発案者で、大の衆道嫌い。十代の頃、自身が女顔で苦労した経験を持つため、素っ気ない態度とは裏腹に、一向に男らしくならない神谷清三郎のことを気にかけていた。知略のライバルである参謀の伊東甲子太郎を、毛嫌いしている。モデルは実在の人物土方歳三。
芹沢 鴨 (せりざわ かも)
壬生浪士組で近藤勇と並んで、局長を務めていた人物。神道無念流の免許皆伝者で弁がたつが、昼間から酒に酔い、恐喝じみた金策を行っていた。そのため、新選組へと隊名を改めた際に、粛清されてしまう。浅葱色の隊服も、無理な金策で芹沢が作らせたもの。実在の人物芹沢鴨がモデル。
山南 敬助 (やまなみ けいすけ)
北辰一刀流の免許皆伝者。禁門の変後、新選組の総長に就任した。恋仲になった明里から神谷清三郎の秘密を打ち明けられ、身を守る手立てをさまざまに講じた、心やさしい人物。最後には、近藤勇が示す「誠」と伊東甲子太郎が掲げる「正義」の板ばさみで悩み、脱走後、切腹する。実在の人物山南敬助がモデル。
伊東 甲子太郎 (いとう かしたろう)
北辰一刀流の達人で、禁門の変以降に入隊し新選組の参謀となった。知的な雰囲気を漂わせる美男子だが、衆道の趣味がある。土方歳三と神谷清三郎にとっては、天敵といえる存在。後に、徳川幕府を見限り、御陵衛士として隊を離れ、土方の手で暗殺される。実在の人物伊東甲子太郎がモデル。
松本 良順 (まつもと りょうじゅん)
西洋医学に精通した徳川幕府の御殿医で、富永セイの名付け親といえる存在。新選組とは、屯所を京都西本願寺に移してから深く関わるようになる。セイの正体を顔を会わせたその日のうちに見抜き、日を追うごとに女性らしくなる身を案じて、神谷清三郎は「如心遷(男子の体が女身になる病・変生女子)」であると、病をでっちあげた。 その奇策のおかげて、セイの新選組での生活は、格段に気安くなる。その後も、セイを自身の娘と思い、さまざまな便宜をはかり続けている。実在の人物松本良順モデル。
大坂屋 与兵衛 (おおさかや よへい)
新選組を偽る集団に襲われた写真師で、京都寺町で「西洋伝方写真処」を営んでいる。新選組への誤解を解くため、神谷清三郎と沖田 総司の二人が連れだって訪ね、親しくなった。セイはその際、店にあった小道具を使い女性の姿で沖田と二人寄り添う記念写真を撮っている。だが、写真は土方歳三の手に渡ってしまい、清三郎はしばらく、土方の思惑に振り回される羽目に陥る。 実在の人物堀与兵衛がモデル。
坂本 龍馬 (さかもと りょうま)
土方歳三の密命を受けた神谷清三郎こと富永セイが、女性の姿で探索していた幕府のお尋ね者。土佐出身だが、薩摩藩士才谷梅太郎と名乗っていた。書状好きの眼鏡をかけた好人物だが、書の宛名を盗み見たセイの手柄で、薩摩と長州のつながりが判明。後に、一番隊が寺田屋へ捕縛に向かっている。 その際、龍馬を善人と信じるセイは隊への裏切りといえる行動を取り、切腹の危機に陥る。実在の人物坂本龍馬がモデル。
春 (はる)
伏見の船宿寺田屋の養女分で、坂本龍馬の恋人。父親が勤皇派の町医者で獄死したため、龍から春へと名を改めている。密命任務中に体調を崩した富永セイを親身に世話した心やさいい女性。加えて気が強く、度胸も人一倍ある。セイが坂本龍馬の捕縛騒動で切腹の危機に陥った際には、敵の本拠地である新選組の屯所へと、救出のため忍び込んできた。 実在の人物楢崎龍がモデル。
集団・組織
新選組 (しんせんぐみ)
『風光る』に登場する組織。京都守護職会津容保の配下として、治安維持活動に従事している。発足当初の約半年は壬生浪士組を名乗っていたが、8月18日の政変で行動を評価され、正式に新撰組の隊名が下された。この出来事をきっかけにして、局中法度が導入され、血の粛清が繰り返された。発足当初は、壬生村の「八木邸」と「前川邸」を屯所にしていたが、隊の規模拡大に伴い、西本願寺へと拠点を移した。
書誌情報
風光る 23巻 小学館〈コミック文庫(女性)〉
第9巻
(2011-08-12発行、 978-4091918192)
第10巻
(2011-08-12発行、 978-4091918208)
第11巻
(2011-09-15発行、 978-4091950215)
第12巻
(2011-09-15発行、 978-4091950222)
第13巻
(2022-04-08発行、 978-4091916402)
第14巻
(2022-04-08発行、 978-4091916501)
第15巻
(2022-05-10発行、 978-4091916594)
第16巻
(2022-05-10発行、 978-4091916600)
第17巻
(2022-06-10発行、 978-4091916785)
第18巻
(2022-06-10発行、 978-4091916792)
第19巻
(2022-07-08発行、 978-4091916808)
第20巻
(2022-07-08発行、 978-4091916822)
第21巻
(2022-08-10発行、 978-4091916839)
第22巻
(2022-08-10発行、 978-4091916846)
第23巻
(2022-08-10発行、 978-4091916853)