概要・あらすじ
ある日突然、新宿上空に巨大な球体が出現する。球体は何をするでもなく、空中に浮遊していただけだった。ところが、普通のサラリーマンである宮迫享一が、それを見上げた瞬間、突然、彼に向かって謎の光線を放射する。発光が収まった後、その場には享一が9年前に別れた元カノの天堂明日が、別れた当時のままの姿で立っていた。
さまざまな疑問を抱きつつも享一は再会を喜び、明日との奇妙な同居生活をスタートさせる。
登場人物・キャラクター
宮迫 享一 (みやさこ きょういち)
30歳の男性。都内のシステム管理会社でシステムエンジニアとして働いている。仕事面では非常に優秀であり、会社のエースとして将来を有望視されている。しかし、優柔不断な性格から、自分の許容範囲を超えて無理な仕事を請け負ったリするため、何日も会社に泊まり込むような、多忙な生活を送っている。9年前に付き合っていた天堂明日が忘れられず、今でも独身で彼女なし。 新宿上空に謎の球体が出現した際、その非日常感と過去の明日の発言を思い出してワクワクしていた。そこへ、光線の放射を受け、その中から現れた明日に出会う。
天堂 明日 (てんどう あした)
謎の女女性。新宿上空に出現した、謎の球体が放射する光線の中から姿を現した。見た目は、宮迫享一が9年前に付き合っていた天堂明日そのもの。9年前に別れた当時そのままの姿をしている。しかし、指先から高エネルギーのレーザーを射出したり、高層マンションから、数メートル先の隣家の屋根に軽々と飛び移るなど、およそ人間とは思えない行動をする。 享一のことは認識しており、付き合っていた当時の記憶も持ち合わせる。しかし料理が上手く、素直な性格で享一にベタ惚れしていることを隠さないなど、享一が知るかつての明日とは、若干の相違がある。
銀河 流星 (ぎんが りゅうせい)
超売れっ子の女性小説家。「銀河流星」のペンネームでライトノベルを執筆し、ベストセラーを連発している。都内に「ラヴィアン・ローズ」というメイド喫茶を経営する実業家でもある。抜群のスタイルに整った顔立ちの、人を惹きつけるカリスマ性を持ち併せた人物。しかし、自分勝手で横暴、思ったことを素直に口に出せないツンデレな性格。 本名は「天堂明日」で、その正体は、過去に宮迫享一と付き合っていた本物の明日。新宿上空に謎の球体が出現したことを受け、自身の趣味でもあり、生きがいでもあるSF・オカルトの愛好者を募るオフ会を開催。そこで、享一と再会し、過去の自分と瓜二つである天堂明日に出会う。
室井 (むろい)
宮迫享一の後輩の女性。享一が所属するシステム管理会社に勤めている。髪型はミディアムボブで、メガネをかけている。身を粉にして激務をこなす享一を尊敬しており、「先輩」と呼び慕っている。仕事面では享一には及ばないものの、細かいことにもよく気が付くできた部下。天堂明日と享一が付き合っていた話を聞いており、球体から明日が現れた際は、「この容姿だと9年前なら中学生だったのでは?」と、享一をロリコン扱いしたりする。 しかし、明日と関わるうちに、その天真爛漫な性格に触れ、次第に2人の仲を応援するようになる。
部長 (ぶちょう)
宮迫享一の上司。額から頭頂部まで広く禿げた中年男性で、分厚く尖った唇が特徴。明らかに許容範囲を超えた仕事を部下に押しつけたり、非常時だろうが出勤しないと減給すると脅すなど、嫌な上司として周囲の人間から嫌われている。しかし、会社が抱えていた仕事を、天堂明日が全部1人で片づけてしまった後は、その手際の良さと可愛い容姿に惚れて態度が軟化。 以降は、ただの明日の一ファンのおじさんに成り下がる。
美矢 (みや)
銀河流星の秘書を務める女性。髪型は黒髪のショートカット。だらしない私生活と突拍子もない振る舞いをする流星を諌めながらも、その実力とカリスマ性に惹かれて、甲斐甲斐しく職務をこなしている。かつて流星と同じ脚本学校に通っており、彼女の後輩にあたる。
暁 省悟 (あかつき しょうご)
30歳の男性。自衛隊の北海道支部第23特別航空科部隊、コードネーム「ニンジャ」の隊長を務める。階級は空佐。額から左頬にかけて傷痕を持つ、厳めしい顔つきをしている。エリートのヘリパイロットだが、歪んだ正義感の持ち主。自衛隊の武力による、日本を中心とした世界統一が実現できる、と信じて止まない。その信念から、ロシアにミサイルを3発発射、北朝鮮への領空侵犯を4回も試みた、という経験がある。 これらの問題行動から僻地へと転属された。宇宙人、つまり天堂明日の存在を、どこからか嗅ぎ付けて独断で出撃。その身柄を確保しようと試みる。明日に言うことを聞かせられる宮迫享一のことを「鍵」と呼び、何らかの情報を知っている様子を見せる。 生まれてこの方、女性に花を贈ったことも贈られたこともないという。
鈴原 奈々子 (すずはら ななこ)
三つ編みにしたおさげ髪に大きな眼鏡をかけた女の子。東北から東京へと上京してきた。メイド喫茶「ラヴィアン・ローズ」のスタッフを募集していた天堂明日と出会い、スカウトされる。このとき、美人なうえに自分を認めてくれた明日に一目惚れ。以後は猛烈な憧れを抱いて、付きまとうようになる。
黒明日 (くろあした)
第二の天堂明日。鈴原奈々子の「自分と明日の仲を邪魔する宮迫享一を排除してほしい」という願いに呼応して生まれた。明日の若い頃の姿で、ルーズソックスにガングロという、一昔前のギャルのような格好をしている。性格は乱暴で自己中心的であり、呼び出した奈々子の言うことも聞かない。自分の身体を、ガトリングガンなどの武器に自在に変換することができ、周囲の被害もお構いなしに、享一に攻撃を仕掛ける。 その後、明日によって攻撃を阻まれ体を真っ二つに割られた。一時は戦意を喪失するが、享一に興味を持ち、潜伏したまま生き永らえている。
総理 (そうり)
日本の総理。突然、新宿上空に出現した球体対策や、指揮の全権をゆだねられた男性。アメリカを中心として、各国から球体に関する情報を集め、球体が宇宙から飛来したものであり、生物であることを知っている。他国からは、球体との接触を控えるよう勧告されている。しかし、球体から現れた天堂明日を、「人類史を書き換えるほどのパワーとテクノロジーを有する存在」と考え、何としてでも自国で占有しようと企む。 その野望とは裏腹に、自衛隊の「ニンジャ」が独断で明日と接触した際には、慌てて攻撃を控えるように命令していた。
完全版明日 (すていぶるあした)
新たな天堂明日。事前にベータ版として送り出した「鍵」の願望としての明日のデータと、「鍵」の記憶を抜き取ったリアルな明日のデータを、統合して作り上げられた。理想と現実双方が統合することによって、より現実的で理想を叶える力を持つ存在とされる。しかし、完全版明日が作られるということは、宮迫享一から明日に関するすべての記憶が抜け落ちることを意味する。 そのため、享一と銀河流星は最後まで、その存在が生まれることを拒み続けた。
川原 (かわはら)
宮迫享一部下の女性。享一が天堂明日の記憶をなくした後に部下となった。困難な仕事をいくつも引き受けながら、それをそつなくこなす宮迫に憧れており、意を決して食事に誘うが玉砕。
大塚 (おおつか)
宮迫がいなくなったシステム管理会社に勤める男性。道端で体調を崩した老人を見捨てられず、その面倒を見たため、新規開拓した取引先のプレゼンに遅刻。そのせいでクライアントからの受注を逃してしまった。その件で部長に頭を下げるが、丸くなった部長に咎められることはなかった。
集団・組織
ニンジャ
北海道の自衛隊に所属する一部隊。正式名称は「第23特別航空科部隊」。本来は対テロ用に編成された部隊。キャプテンである暁省悟が、ロシアや北朝鮮へ何度も独断侵攻を試みるという問題行動を起こしたため、僻地に再編されていた。しかし、独自の情報網から、天堂明日を宇宙人と判断。その身柄を拘束しようと独断で攻撃、接触を目論む。 隊員の搭乗するヘリの各機には、「漢」「誠」「愛」「友情」「勝利」など、それぞれ正義感溢れる文言のエンブレムデザインが刻まれている。
アニメ研究会 (あにめけんきゅうかい)
宮迫享一と天堂明日が通っていた大学に存在したサークル。享一と明日が出会うきっかけになった。明日は、同サークルのアイドルとして皆から好かれていたが、奇想天外な言動から、手の届かない存在として扱われていた。サークルメンバー同士の仲は比較的良く、享一は明日と付き合ったことに、嫉妬と同時に応援もされていた。
ロシア科学アカデミー (ろしあかがくあかでみー)
ロシアの研究機関。ツングースカ大爆発を引き起こした球体を軍事転用すべく研究をしていた。球体が、近づいた者たちの想念を読み取り、実体化させる機能を持った生命体であることを突き止める。また、球体を自在に操ることができる鍵の存在まで知るに至った。
銀河流星のファン (ぎんがりゅうせいのふぁん)
銀河流星先生オフ会に集まった銀河流星のファンたち。流星の作品に対するファンというより、流星の人柄などに憧れ、信奉している者たちが多い。その会話の端々を聞いた宮迫享一が、「ファンというよりカルト宗教のそれ」と称するほど、熱狂的な思想を持つ。流星の一言で、見知らぬ一般人である享一を追い立て捕縛した。
場所
ラヴィアン・ローズ (らゔぃあんろーず)
銀河流星自らが経営しているメイド喫茶。この場所で開かれた銀河流星先生オフ会は、宮迫享一と流星が9年ぶりに再会し、天堂明日と流星が初めて出会うきっかけとなった。のちに、享一と明日が一線を超えないよう画策した流星の指示で、明日が働くことになる。しかし、享一と流星のただならぬ関係を察した明日の嫉妬と、「ニンジャ」の襲撃によって、店舗の入ったビルもろとも半壊する。
享一の会社 (きょういちのかいしゃ)
都内に事務所を置くシステム管理会社。会社全体の規模は不明だが、1フロアに数10名以上の人員を抱える中規模以上の会社である。一時は業績が低迷していたが、最近になって徐々に盛り返しており、新規の事業も含めて多くの案件を抱えている。このため、新宿上空に謎の球体が出現しても出社するよう、部長から厳命が下るほどだった。 のちに、天堂明日の人間離れしたプログラム処理によって、すべての仕事が処理され、しばらくの間まったく仕事をしなくてもよくなった。
イベント・出来事
銀河流星先生オフ会 (ぎんがりゅうせいせんせいおふかい)
秋葉原にあるメイド喫茶「ラヴィアン・ローズ」で行われたオフ会。銀河流星がSF・オカルト愛好者、および自身のファンに向けて、呼びかけて開催されたもの。流星は、事前に「このオフ会にはどんな願いでも叶える力を持った宇宙人が現れる」と確信、公表しており、それを信じる銀河流星のファンたちで会場が溢れ返っていた。
ツングースカ大爆発 (つんぐーすかだいばくはつ)
謎の大爆発。1908年6月30日7時17分に、シベリア地方ツングースカ川の上流で起きたと記録されている。爆発による衝撃で、2000平方キロにわたって樹木がなぎ倒され、数百キロ離れた場所からでもキノコ雲が確認できたという。爆発後は数日間にわたって白夜が続き、ヨーロッパでは、夜間で明かりがなくても本が読めたと伝えられる。 しかし、のちの調査では、爆発の原因となった落下物やクレーターが存在せず、謎の爆発として伝承に残った。現実に起きた出来事であり、現在では、その原因は隕石が大気中で爆発したものとされている。作中では、その原因が球体によるものであるとされている。
その他キーワード
球体 (つぁーる)
突如、新宿上空に現れた巨大な黒い球体。総理は、アメリカを含む他国から何かしらの情報を受けており、それが宇宙から飛来した物体であること、また生物であることを知っている。日本に出現してからも特に動きはなかったが、宮迫享一が、その存在を確認した瞬間に光線を放射。その光線の中から天堂明日が現れることになる。 明日が出現してからは沈黙したものの、ずっと消えないまま新宿上空に停止している。メディアでは報道規制が敷かれているため、特に呼称はなく、一般的には「UFO」と呼ばれている。
分解 (ぶんかい)
天堂明日の存在が消滅することを指す。宮迫享一が銀河流星を「明日」と呼ぶと、明日の体がうっすらと消えていくような現象に見舞われ、これが進むと、完全に分解が成されると考えられる。流星は、この現象の理由を以下のように考えている――明日は、享一の呼びかけに応じて、球体がその記憶や理想を反映して作り上げた存在であり、自分が作り物であることを認識してしまうと、存在意義がなくなってしまうため、分解していく。
鍵(概念) (くりゅーち)
当初は暁省悟が宮迫享一を指すために用いた呼称。のちに球体を研究していたロシア科学アカデミーが、「超常現象を引き起こす球体を意のままに操ることができる者」として名付けたものであることが明らかになる。暁は球体の研究者から情報を引き出していたため、それを知っていた。
コブラ
対戦車攻撃ヘリ。重火器を装備し、自衛隊で使用されている。型式名は「AH・1S」。銀河流星によれば、自衛隊で正式採用されている機体だが、関東には配備されていないはずだった。しかし、球体と天堂明日の出現を知った暁省悟が独断で持ち出し、はるばる北海道から新宿までコブラに乗って飛来。明日の捕縛、および攻撃作戦に使用された。
白いバラ (しろいばら)
宮迫享一が天堂明日にプレゼントした花。享一が明日と付き合っていた頃にプレゼントした。初めて享一らが自衛隊の「ニンジャ」から攻撃を受けた際、明日が銃弾を受けそうになった享一をかばって、銃弾をすべて白いバラに変えた。
銀河流星オフィシャルウェブサイト (ぎんがりゅうせいおふぃしゃるうぇぶさいと)
銀河流星が運営しているオフィシャルウェブサイト。謎の球体が出現してからは、トップページのサイトメニューが書き換えられ、「宇宙人さんいらっしゃい」というキャッチコピーを中心に、非常に悪趣味なデザインになっている。一方で、累計7億8000万アクセスを誇る超有名サイトとなっており、小説家・流星のファンのみならず、SF・オカルト愛好者の交流の場としても機能している。 宮迫享一は、このサイトに訪れたときに、銀河流星先生オフ会の告知を見つけ、天堂明日の情報を探るべく参加することを決めた。
明日泥棒 (あしたどろぼう)
銀河流星の小説のタイトル。9年前に宮迫享一と別れたばかりの流星が書き上げた。天堂明日らしき主人公の女流小説家が、UFOの力を借りて2人に分裂し、享一らしき男性と共に、世界を救うために大冒険に旅立つという内容のもの。
クレジット
- 原作