春日局

春日局

堀和久による同名小説のコミカライズ作品。将軍、徳川家光の乳母であり、江戸城の大奥の女傑として知られる「春日局」ことお福の一代記を描く。オリジナル要素などはさほどなく、大筋はおおむね史実ないしは歴史学上の通説に従っている。

正式名称
春日局
ふりがな
かすがのつぼね
原作者
堀 和久
漫画
ジャンル
自伝・伝記
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概要・あらすじ

戦国武将、斉藤利三の娘であるお福は、稲葉正成の妻となったが、正成とは夫婦仲が悪く離縁し、乳母の職を求めて江戸城の大奥に入った。のちに三代将軍、徳川家光となる竹千代の乳母となったお福は、竹千代の母親である阿江与とは対立しつつも、大奥に確固たる地歩を築いていく。竹千代が自殺未遂を起こすという大事件の後、これに衝撃を受けたお福は徳川家康を説得し、竹千代の将軍就任を確固たるものにする。

竹千代が元服して名を家光と改め、また将軍に就任した後、お福の主な任務は家光に世継ぎを作らせることとなった。世の人に「鬼婆」と嘲られつつも、すべては家光のためと心得るお福は、多くの女を後宮に入れるなど尽力。幕閣の間でも重きを置かれるお福は、やがて幕府の朝廷工作も任せられ、「春日局」の称号を得、時の天皇に謁見する栄誉にさえ浴することになるのだった。

登場人物・キャラクター

お福 (おふく)

徳川家光の乳母。江戸城の大奥において強大な政治力を持ち、徳川家康を説得して、家光の将軍就任に大きな貢献を果たした。のちに「春日局」の称号を与えられる。家光になかなか嫡子ができなかった頃、江戸城の城下で器量の良い娘を見つけては片端から大奥に入れたため、世人には「鬼婆」とあだ名されるに至った。戦国武将、斉藤利三の娘であり、お福自身もそれなりに身分の高い武家の出身なので、その過去を知る人の中には「お福姫」と呼ぶ者もいる。 実在の人物、春日局がモデル。

徳川 家光 (とくがわ いえみつ)

徳川幕府三代将軍。幼名は「竹千代」。幼い頃、「国千代」こと徳川忠長派の阿江与らによって廃嫡されそうになる。それを悩んで自殺未遂騒動を起こしたが、お福によって止められた。お福の奔走と徳川家康の意により、将軍の座を得ることになる。実在の人物、徳川家光がモデル。

徳川 忠長 (とくがわ ただなが)

徳川家光の弟。幼名は「国千代」。幼い頃には兄である「竹千代」こと徳川家光よりも母親の阿江与から愛された。また徳川家の家臣たちにも人気があり、兄を差し置いて三代将軍になるのではないかと目されていた。のちに駿河55万石を与えられ、また従二位大納言に叙せられたので、「駿河大納言忠長」とも呼ばれる。将軍になれなかったことに不満を抱いており、不祥事を起こして幽閉され、28歳にして自害を遂げることとなる。 実在の人物、徳川忠長がモデル。

阿江与 (おえよ)

徳川秀忠の正室。そのまま「御台所」と呼ばれることもある。織田信長の妹であるお市の方と浅井長政の娘にあたる。叔父の仇である斉藤利三の娘、お福を敵視しており、何かと辛辣な態度を取る。また、実の子でありながら、徳川家光を幼少期から疎んじており、徳川忠長を三代将軍にしようと図った。 さらに家光が将軍になった後、今度は死の床で忠長の子を四代将軍にしようと図る。家光の正室が子をなしても密かに流産させるようにと、侍医に密命を与えて息を引き取った。実在の人物、崇源院がモデル。

徳川 秀忠 (とくがわ ひでただ)

徳川幕府二代将軍。徳川秀忠自身は徳川家康の三男であり、次男の秀康をさしおいて将軍になっている身であるが、大御所たる家康の命を受け、三代将軍選定にあたっては長幼の序に従って「竹千代」こと徳川家光を後継者に選んだ。実在の人物、徳川秀忠がモデル。

徳川 家康 (とくがわ いえやす)

徳川幕府初代将軍。将軍職を徳川秀忠に譲って以降は「大御所」と呼ばれるようになる。駿府城で隠居していたが、お福の懇願を受けて江戸城に向かい、三代将軍たるべきは「竹千代」こと徳川家光であるということを諸人の前で宣言する。実在の人物、徳川家康がモデル。

お勝の方 (おかつのかた)

徳川家康の側室の1人。お福と親しく、お福が駿府城の家康のところに直訴しにやって来た時、その手引きをした。家康の死後、出家して「英勝院」と号し、江戸城の大奥にあってお福のブレーン役を務めた。実在の人物、英勝院がモデル。

稲葉 正勝 (いなば まさかつ)

お福と稲葉正成の子。幼名は「千熊」。お福が江戸城に入り、「竹千代」こと徳川家光の乳母となった後、お福とはまた別に江戸城に入り、竹千代に仕える小姓となった。竹千代に対し心からの忠誠を誓っており、幼いながらも、お福にとっては心強い味方としてさまざまな役割を担う。のちに相州小田原城主となるが、お福に先立ち、38歳で病死。 実在の人物、稲葉正勝がモデル。

稲葉 正成 (いなば まさなり)

小早川秀秋に仕えた戦国武将であり、お福の夫。傲慢で思慮の浅い男性で、「関ヶ原の戦い」において秀秋に裏切りを演じさせ、徳川家康に勝利をもたらしたのは自分である、と自惚れているが、家康からは軽んじられている。お福との間に子はいたが、女癖が悪く、あまり仲は良くなかった。実在の人物、稲葉正成がモデル。

斉藤 利三 (さいとう としみつ)

明智光秀に仕えた戦国武将であり、お福の父親。「本能寺の変」に参加して、織田信長の死に深く関わり、その後、明智軍が羽柴秀吉の軍勢に敗れた後、自身も追いつめられて切腹。死後、その亡骸は晒し者とされた。実在の人物、斉藤利三がモデル。

三条西 実枝 (さんじょうにし さねえだ)

名門の公家、三条西家の当主である男性。官職の「大納言」の通称で呼ばれることもある。お福とは幼なじみであり、また義理の兄妹の関係にある。「武家伝奏(ぶけでんそう)」という、天皇家と将軍家の間の橋渡しの使者をする任を務め、三代将軍、徳川家光の将軍就任の儀に際しても勅使を務めた。実在の人物、三条西実枝がモデル。

天海僧正 (てんかいそうじょう)

川越の喜多院の住職を務める高僧。お福がまだ幼い頃、天海僧正自身が「随風」と名乗っていた頃に付き合いがあり、戦乱に巻き込まれたお福が城から落ち延びるのを助けたことがある。のちに、大御所、徳川家康によってお福と引き会わされ、数十年ぶりに再会する。実在の人物、南光坊天海がモデル。

大久保 彦左衛門 (おおくぼ ひこざえもん)

徳川家に仕える旗本の侍。同じく旗本である稲葉正勝と屋敷が隣同士という縁からお福とも親しくなり、「竹千代」こと徳川家光を将軍に擁立すべく協力者となる。お福が駿府城に向かった時はその伴を務めた。実在の人物、大久保忠教がモデル。

狩野 探幽 (かのう たんゆう)

徳川家に仕える絵師の男性。江戸城に出入りすることを許された身であり、城内にさまざまな作品を制作した。また、将軍・徳川家光からの直々の命令を受け、「春日局」という官位を得た後のお福の肖像画を描いた。実在の人物、狩野探幽がモデル。

場所

江戸城 (えどじょう)

歴代の将軍たちが暮らす、徳川将軍家の居城。徳川家光の乳母となったお福は、この江戸城に入り、大奥と呼ばれる場所で暮らすようになった。お福がやって来た当初は、まだ建造中の部分が多く、また大奥にも徳川家康が晩年に儲けた数多くの幼い子供たちがいて、随分と騒々しい有様であった。

駿府城 (すんぷじょう)

将軍職を退き、大御所となった後の徳川家康の居城。天下人がその隠居所とするに相応しい、優雅を極めた壮麗な城であった。竹千代(徳川家光)の自殺未遂騒動の後、お福は「お伊勢参り」と称してこの駿府城に向かい、家康に竹千代の窮状を訴えた。

その他キーワード

鴨の吸い物 (かものすいもの)

徳川家光の将軍就任が決定された後、将軍、徳川秀忠の食膳に供された吸い物。徳川忠長が、江戸城の西丸(にしのまる)の堀のあたりで鉄砲で撃って仕留めた鴨の肉を使ったもの。鴨の出所を聞いた秀忠はにわかに顔色を変え、鴨肉を吐き捨てると、「家臣たる弟の身で、主筋たる兄の城に鉄砲を撃ちかけるとは何事か」と忠長を叱った。

クレジット

原作

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