刑務所の前

刑務所の前

作者である花輪 和一自身が、銃刀法違反によって実刑判決を受けるまでの経験に、鉄砲伝来後の日本を舞台にした物語などのフィクション要素を交えて描いた作品。実際に服役した際の経験を描いた、同作者による漫画作品『刑務所の中』の前日譚にあたる。

正式名称
刑務所の前
ふりがな
けいむしょのまえ
作者
ジャンル
自伝・伝記
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概要・あらすじ

鉄砲が日本に伝来した時代のある地方。鍛冶屋の娘は祈とう師のもとで修行する米問屋の一人娘うめと親しくなる。うめは両親への激しい憎しみに苦しんでいた。修行するうちにうめの家が背負う罪業が明らかになっていく。鍛冶屋の娘うめの業をめぐる仏教説話と並行して、作者花輪和一の銃への愛好や腐食した銃の修復過程が丹念に綴られる。

登場人物・キャラクター

ハナワ

漫画家で極度のガンマニア。腐食したコルトガバメントM1911A1の実銃を修復したことで、銃刀法違反容疑で逮捕され、実刑判決を受けて服役した経験がある。その経験を漫画として描くように編集者から持ちかけられ、執筆を開始するが、いつの間にか鍛冶屋の娘を主人公にした時代劇を描いてしまう。 作者である花輪和一自身がモデル。

鍛冶屋の娘 (かじやのむすめ)

鉄砲を作る鍛冶屋の父親と2人暮らし。幼い少女で、髪を左右2つのお団子にまとめている。感受性が強く明るい性格。鉄砲を撃つことは好きだが、父親の仕事を手伝うことは嫌がっている。自分が幸せでいると父親が沈み込んでしまうことが悩み。家の近くで修行をしているうめとは仲がよい。

うめ

米問屋の一人娘だが、家を離れておばばのもとで仏道修行を行っている。両親と折り合いが悪く、精神的に不安定な面がある。そのため両親からは狐憑きと思われている。修行の末に両親や先祖、自分自身の持つ「業」と向き合い始める。

鍛冶屋 (かじや)

火縄銃・種子島の製造を請け負っている。妻が浮気をし、家を出たことを気に病んでいる。基本的には明るい性格だが、自分の娘が妻のことに触れるたびに沈み込んでしまう。

おばば

鍛冶屋の娘の家近くにある滝のたもとに一人で住み、仏道修行を行っている女性。自分自身も両親によって苦しんだ過去を持つことから、両親との仲違いで苦しむうめを弟子にし、助けようと指導している。

うめの父 (うめのちち)

米問屋の男。跡継ぎのために一人娘のうめを無理に結婚させようとしているが、うめからは嫌われている。家を飛び出したうめのことを狐憑きだと思い込んでおり、様々な手段を使って家にうめを引き戻そうとしている。実は愛人と隠し子がおり、そのことが露見して以降はうめの母とも関係が悪化する。

うめの母 (うめのはは)

当初は夫であるうめの父と共にうめの身を案じ、仏道修行から家に連れ戻そうとしていた。しかし、うめの父の浮気を知ってからは、うめにも辛く当たるようになる。嫉妬のあまり拝み屋・柳石を頼るが、柳石からは騙される結果に終わる。その後は、隠し子を連れて家に入り込んだ夫の愛人から、下女同然の扱いを受ける。

柳石 (りゅうせき)

初老の男性で、占いがよく当たると町で評判の拝み屋。しかし、陰では法外な謝礼を要求している。夫の浮気に対する嫉妬に駆られたうめの母にとり込もうとするが、おばばによって自分の弱みを看破され、発狂する。

保吉 (やすきち)

うめの家の近所に住む男。仕事につかずぼんやりと過ごしている。柳石の見立てによってうめとの縁談が持ち上がるが、柳石が発狂したことによって縁談が流れ、「はあ~、だめだ~い」が口ぐせになってしまう。しかし、その様子を見ると元気が出てくると評判になり、新興宗教「駄芽大講」の教祖として祭り上げられる。

愛人 (あいじん)

うめの父の愛人。うめと両親が仲違いしているうちに、隠し子を連れて米問屋に入り込み、うめの父に取り入ろうとしていた。一時は正妻であるうめの母を下女同然に扱うなど、立場を逆転させたが、米問屋が火事になったことで見切りをつけ、うめの父やうめの母を罵倒したのちにどこかへと立ち去る。

(たけ)

鍛冶屋の娘の友人の少女。いたって普通の少女だが、鍛冶屋の娘と違って物事に対して深く悩まない性格。そのため、鍛冶屋の娘を驚かせるような言動をとることがある。

花子 (はなこ)

ガンマニアの少女。同じくガンマニアの友人つや子から、錆びて腐食したコルトガバメントM1911A1の実銃を譲り受ける。やはり作者の花輪和一がモデルであり、ハナワと入れ替わるようにして登場する。

つや子 (つやこ)

ガンマニアの少女。友人の花子に腐食したコルトガバメントM1911A1の実銃を譲るが、知人のガンマニアが逮捕されたことがきっかけとなって、逮捕されてしまい、花子にも捜査の手が伸びることになった。作者の花輪和一の知人がモデルと思われる。

その他キーワード

コルトガバメントM1911A1

『刑務所の前』に登場する拳銃。実銃だが、全体が錆びて、一部には穴が空くほど腐食が進んでおり、欠損している部品も多い。ハナワの手によって分解、修理がなされる様子が克明に描かれた。

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