概要・あらすじ
戦後間もない日本を舞台に、貧乏な母子家庭の様子を描いた作品。つげ義春の実体験を元に描かれたフィクションで、自伝的要素を含んでいる。主人公である少年春男は、タバコを拾ったり、近所の内職を手伝ったりと、兄弟とともに家計の手助けをしていた。やがて義父として家族に加わることになった孫六と反りが合わず、居場所を失った春男は親切にしてくれた若夫婦の家を訪ねる。
登場人物・キャラクター
春男 (はるお)
小学三年生。兄と弟が2人、赤ん坊の妹が1人いる。タバコの吸い殻を拾ったり、ニクロム線とブリキでパン焼き器を作ったりして家計を助ける。近所の若夫婦の家で内職の手伝いもする。母と関係のあった中耳炎のオジさんに、煙草を手足に押し付けられるなどの虐待を受ける。また、義父となった孫六とも反りが合わない。 落書きを怒られて家の外に出され、以前「養子に来ないか」といってくれた若夫婦の家を訪ねるが、玄関先の電灯の中にヤモリの影を見つけ、怖くなって逃げ出す。
母ちゃん (かあちゃん)
春男の母親。海産物の行商や仕立物の内職などを行うが生活は貧しい。中耳炎のオジさんと関係を持っていたが、ある日を境に、孫六と夫婦になる。
中耳炎のオジさん (ちゅうじえんのおじさん)
短髪でランニングシャツの男。左耳の後ろに大きな穴がある。春男の母の内縁の夫。春男の母と孫六の関係を疑っており、母が孫六に会いに行くたびに、春男の手足に煙草を押し付ける。
孫六 (まごろく)
春男の義父。中耳炎のオジさんが出て行ったあと、春男の母と夫婦になる。頭の薄いYシャツの男。春男に厳しく当たる。
若夫婦 (わかふうふ)
春男の家の近所に住む若い夫婦。近所の子供を集め、台紙にホックをとめる仕事をする。子供がいないため、春男に自分たちの養子にならないかと誘う。