概要・あらすじ
高校2年生の国重葉月は、美しい容姿から異性に非常に人気が高いが、女性が近づくだけで身体が震える、という極度の女性恐怖症。そんな彼はある日、転校生の菊池舟に運命的なものを感じて、すぐさま恋に落ちる。それ以来、記憶や身体に異常をきたし、見知らぬ女性に親しげに迫られたり、突如目が見えなくなる、という怪奇現象に見舞われるようになる。
困惑する葉月だったが、そこには、葉月と舟が紫式部の小説『源氏物語』の登場人物、光の君と紫の君の転生した姿であるという、信じがたい秘密が隠されていた。
登場人物・キャラクター
国重 葉月
男子高校生で、クラスは2年3組。前髪を真ん中で分けて、目が隠れそうなほど伸ばした黒髪ショートカットヘアをしている。女性に非常にもてるが、女性が自分に近づき、身体に触れそうになっただけで、手の震えが止まらなくなるという特異体質の持ち主。その特異体質を隠すため、女性に興味がない風を装い、クールに振る舞っている。しかし、転校生の菊池舟と出会って恋に落ちたのをきっかけに、自分の意思とは無関係に、小説の登場人物であるはずの光の君に、頻繁に意識を乗っ取られるようになってしまう。 意識を乗っ取られている間の記憶はなく、光の君が葉月の身体を使って女性と関係を持っても身に覚えがなく、混乱することになる。
菊池 舟 (きくち しゅう)
国重葉月の通う高校の、同じ2年3組に転校して来た女子。前髪を左寄りの位置で分けて目の上で切り、肩につくほどまで伸ばした茶髪セミロングヘアをしている。熊田二郎からは「菊池ちゃん」と呼ばれている。非常にかわいらしい容姿をしており、男子にもてるが、やや子供っぽく天然気味なところがある。転校初日に遅刻してしまい、さらに誤って男子更衣室に入ってしまった。 覗きの疑いをかけられ、困っていたところで葉月と知り合う。しかし、葉月と親しくなったのを機に、小説の登場人物であるはずの紫の君と精神がリンクするようになってしまう。たとえば紫の君が泣いていると、舟も漠然と悲しい気分になり、涙が流れてしまうようになる。
光の君 (ひかるのきみ)
紫式部の小説『源氏物語』の主人公である17歳の少年で、本名は「光源氏」。周囲からは主に「光の君」と呼ばれ、紫の君からは「お兄さま」と呼ばれている。服装と髪型以外は国重葉月に瓜二つだが、性格は真逆で大の女好き。藤壺の宮への想いが成就しなかったのを境に、藤壺の宮の代わりを求めて、多数の女性と関係するようになる。 紫の君を想っているが、それでも女性関係を改善せずにいたところ、夢の中で無意識に葉月の意識を乗っ取れるようになる。そして、わけがわからないまま、現代日本でも多数の女性と関係するうちに、紫の君に瓜二つの菊池舟に想いを寄せるようになる。
紫の君 (むらさきのきみ)
紫式部の小説『源氏物語』の登場人物である15歳の少女で、本名は「紫の上」。周囲からは主に「紫の君」と呼ばれる。服装と髪型以外は菊池舟に瓜二つ。身内を亡くしたのを機に光の君に引き取られた。光の君を兄のように慕い、「お兄さま」と呼んでいたが、やがて男女の関係になる。光の君に最も愛されつつも、多数の女性と関係する光の君の生き方が理解できず、深く苦しむようになる。
ヒロシ
国重葉月の友人で、同じ高校に通う2年生の男子。前髪を真ん中で分けて額を全開にし、肩につくほどまで伸ばした長髪をしている。見た目は派手だが、お人好しで真面目な性格。葉月が菊池舟に恋をしたことを知り、2人の関係を応援している。恋愛の参考書として、葉月に冗談で勧めた『源氏物語』に、ヒロシ自身が夢中になったのを機に、たびたび様子がおかしくなる葉月と光の君との関連性に気づく。 独自に、葉月と光の君の意識の入れ替わりの真相を解明しようとする。やや忘れっぽいため、「おれさま日記」という日記をつけて常に持ち歩いている。日記には通常の日記に加え、周囲の人物の誕生日や、葉月の描いたイラストなども載っている。
藤壺の宮 (ふじつぼのみや)
紫式部の小説『源氏物語』の登場人物である若い女性。前髪を真ん中で分けて額を全開にし、腰まで伸ばしたストレートロングヘアで、着物を着ている。帝の妻となり、さほど年齢の変わらない光の君の継母になったことに戸惑っていた。光の君に「自分は髪も長く女性のようだし、息子ではなく、妹だと思ってほしい」と提案されたのを機に親しくなる。 やがてお互いを異性として意識するようになるが、光の君の元服を機に、会えなくなってしまう。
熊田 二郎
国重葉月と同じ高校に通う2年生の男子。前髪を右寄りの位置で斜めに分け、癖のある髪の毛を肩につくほどまで伸ばしている。くりくりとした癖のある髪型から「クリクリ頭」、または、学年で葉月に次いで2番目に格好いい男子、という意味で「No2」と呼ばれている。学年で最も格好いい男子である葉月に勝つためには、葉月の想い人である菊池舟を奪うのが最適、と考えて舟に近づくが、いつしか本気で舟を恋するようになってしまう。
1年生の女子 (いちねんせいのじょし)
国重葉月と同じ高校に通う1年生の女子。前髪を眉上で短く切り、ロングウェーブヘアを高い位置でツインテールにしている。葉月に想いを寄せており、催眠術をかけて意のままにしようと、葉月を襲う。その後も葉月と菊池舟の関係を快く思っておらず、何かにつけて妨害しようとする。葉月の前では可愛らしく振る舞っているが、実際は攻撃的で意地悪な性格。
国重葉月の義母
国重葉月の義母。前髪を真ん中で分けて額を全開にし、胸まで伸ばしたストレートロングヘアをしている。セクシーで派手な雰囲気の、明るい性格の女性。葉月が中学生の時に後妻としてやってきた。葉月を溺愛しており、毎日学校への送迎をしようとしたり、お風呂にまで入ってこようとしたりと、過激な愛情表現をしている。これが葉月が女性恐怖症気味になった原因であり、結果的に葉月が逃げるようにして一人暮らしするきっかけにもなっている。