世界観
恋愛が題材。交通事故に遭い、かつての知り合いと思われる謎の女性に助けられた社会人の男性、芹澤祐輔が主人公。謎の女性の正体を探るため、祐輔がかつて恋した女性たちのことを思い出し、当時の思い出を振り返るという構成になっている。
あらすじ
法律事務所に勤める芹澤祐輔は、ある日交通事故に遭ったところを謎の女性に助けられる。女性の発言から、祐輔は彼女が以前親交のあった女性であることに気づくが、該当する女性が複数いるために、どうしても特定できない。そして過去を振り返るうち、祐輔は自分にとって最も大切な人と向き合うことになる。
登場人物
本作『それでも僕は君が好き』に登場するヒロインたちの名前は、有名小説、漫画、映画、ドラマなどに登場するキャラクターから名付けられている。たとえばチ・スヒョンの小説『私の名前はキム・サムスン』の主人公の「キム・サムスン」、神尾葉子の漫画『花より男子』の主人公の「牧野つくし」など。また、各キャラクターの設定も一部名前の元ネタになったキャラクターと一致しており、それぞれの作品を知っていると、より楽しめる内容になっている。
単行本の装丁
カバー下の本体表紙には、毎巻カバーイラストとは表情の違う、別バージョンのイラストが収録されている。また、最終巻である7巻には、本体裏表紙に作品の「真のラストシーン」ともいえる1ページが収録されており、ファンには見逃せない内容になっている。
テレビドラマ
登場人物・キャラクター
芹澤 祐輔 (せりざわ ゆうすけ)
安藤法律事務所に勤める、眼鏡をかけた若い男性。前髪を左寄りの位置で斜めに分け、髪を襟足が見えるほどの長さに切っている。バイクを運転している最中に事故に遭い、謎の女性に助けられたのをきっかけに、かつて交際していた女性たちについて思い返すようになる。真面目で努力家だがやや独善的なところがあり、それが原因で何人もの女性を傷つけてきたことを深く悔やんでいる。 以前芹澤祐輔の父親が不倫し、それが原因で芹澤祐輔の母親が精神を病んでしまったことから、父親を強く恨んでいる。
野ブタ (のぶた)
芹澤祐輔の中学時代の同級生で、当時想いを寄せていた女性。TVドラマ版「野ブタ。をプロデュース」に登場するヒロイン「野ブタ」に雰囲気が似ていることからそう呼ばれている。前髪を眉の高さで切り揃え、顎の高さまで伸ばした茶髪内巻きボブヘアをしている。非常に内気で目立たないが大の読書好きで、利用者が少ないことで知られている図書室で、よく1人で本を読んでいる。 祐輔が試合に負けた罰ゲームとして野ブタのメールアドレスを聞こうとしたことから知り合い、本の話題を通じて親しくなる。自身も小説を書くのが趣味だが、内容に自信がなく、誰にも読ませていない。
猟奇的な彼女 (りょうきてきなかのじょ)
芹澤祐輔が高校時代に交際していたイギリス人女性。怒りっぽく言動が攻撃的なところから、キム・ホシクの小説『猟奇的な彼女』になぞらえて「猟奇的な彼女」と呼ばれている。前髪を右寄りの位置で斜めに分けて髪飾りで留め、肩より下まで伸ばした金髪をゆるく巻いた髪型をしている。華やかで目立つ美人だが非常に気が強くわがままで、怒るとすぐに手が出る暴力的なところがある。 イギリスから日本にやってきて一人暮らし中で、日本語がまともに話せないために周囲から孤立している。そんな折、偶然祐輔と知り合い親しくなるが、やがて言葉でうまくコミュニケーションを取れないゆえのトラブルが起きてしまう。
エルメス
芹澤祐輔が高校3年生の頃に想いを寄せていた、予備校「京進ゼミナール」で講師を務めていた女性。当時は中央大学に通う大学生だった。いつもブランド物の服を着ていたことから、中野独人の小説『電車男』のヒロインになぞらえて「エルメス」と呼ばれている。担当教科は数学。前髪を目の上で切り、肩の下まで伸ばした明るい茶髪セミロングヘアをゆるく巻いてハーフアップにした髪型で、口元にほくろがある。 誰もが認める絶世の美女だが無愛想で授業内容もいまいちなことから、生徒たちからの評判は芳しくない。しかし、実際は極度のあがり症で、生徒の目もまともに見られないことを非常に気に病んでいる。偶然自分の悩みを知った祐輔と加速度的に親しくなっていくが、やや無神経で人の気持ちを慮れないところがあり、祐輔を振り回すようになる。
牧野 つくし (まきの つくし)
芹澤祐輔が大学1年生の秋に知り合い、当時親しくしていた女性で、九州弁で話す。神尾葉子の漫画『花より男子』の主人公、「牧野つくし」と同姓同名。前髪を左寄りの位置で斜めに分け、オレンジ色のポニーテールヘアをしている。母親を亡くし、父親も入院中であることから、幼い兄弟たちの面倒を見ながら生活費捻出のためアルバイトに明け暮れる生活を送っている。 それにもかかわらず疲れを見せない明るく元気な性格で、偶然家庭の事情を知った祐輔と、友人として仲良くなっていく。しかし、やがて祐輔に想いを寄せる山口が現れ、三角関係になってしまう。
山口 (やまぐち)
芹澤祐輔が大学1年生の冬に知り合い、当時親しくしていた女性。前髪を左寄りの位置で斜めに分け、肩につくほど伸ばしたセミロングヘアをゆるく巻いている。ややエルメスに雰囲気が似ており、あだ名も同じ「ブランド名から取ったあだ名」という共通点を持つ。あることをきっかけに、会話したこともない祐輔に想いを寄せるようになり、友人がセッティングした合同コンパで祐輔に告白する。 一途で献身的な性格で、祐輔にあまり関心を寄せられていないと知りつつ、懸命にアプローチする。その過程で牧野つくしと3人で仲良くなるが、内心ではつくしを大切に想いつつも、祐輔と親しいつくしへの嫉妬に苦しむようになる。両親が非常に厳しく、大学進学までは両親の言いなりになる形で生きてきた自分を変えたいと思っている。
サムスン
芹澤祐輔が大学生時代に交際していた女性。当時は27歳で、インポートアパレル企業に勤めていた。チ・スヒョン原作のTVドラマ『私の名前はキム・サムスン』の大ファンであることから、周囲からは作品の主人公の「キム・サムスン」からとって「サムスン」と呼ばれている。髪型は前髪を右寄りの位置で斜めに分けたショートカットヘアをしている。 祐輔とは間違い電話がきっかけで知り合い、不倫に悩んでいるのを打ち明けたところを祐輔に説教され、関心を持つ。祐輔よりも年上であることから、さばさばした大人の女性として振る舞おうとしているが、実際はプライドが邪魔して素直になれないところがある。祐輔とは性格的に似たところがあり、意図せず2人揃って同じ行動を取ったりすることも多い。
奥村 奈々 (おくむら なな)
酒造会社「奥村酒造」社長の一人娘。芹澤祐輔が「奥村酒造」入社後に知り合った女性で、当時は大学生だった。矢沢あいの漫画『NANA』に登場する「小松奈々」と容姿の雰囲気が似ているうえ、友人に「ナナ」という自分と同名のミュージシャンがいるなど、その背景も類似している。前髪を目の高さで切って内巻きにし、肩につくほど伸ばした桃色のボブヘアを内巻きにしてカチューシャを付けている。 周囲に非常に大切に育てられた生粋のお嬢様で、礼儀正しいが極端にマイペースでおしゃべり。友人のナナの作曲した楽曲が別のプロミュージシャンに盗作されていると感じ、訴訟する方法を聞くため祐輔と知り合う。世間知らずで思い込みが激しく、無自覚に人を振り回す困ったところがある。
ナナ
奥村奈々の友人で、インディーズバンドでギターボーカルを務める若い女性。矢沢あいの漫画『NANA』に登場する「大崎ナナ」と容姿の雰囲気が似ており、職業も同じミュージシャンで、「奈々」という自分と同名の友人を持つ点など、その背景も類似している。前髪を右寄りの位置で斜めに分け、肩につくほど伸ばした黒髪ボブヘアを内巻きにしている。 ミュージシャンとして素晴らしい才能を持つが、性格は不愛想でぶっきらぼう。奈々とは、彼女が誘拐されそうになっていたところを助けたことがきっかけで親しくなるが、周囲に恵まれ、悪気なく他者を利用する奈々にコンプレックスを感じている。ミュージシャンとしては非常に誠実でファンも大切にしていたが、自作の曲に盗作疑惑をかけられたことがきっかけで人生が思わぬ方向に変化してしまう。
芹澤祐輔の母親 (せりざわゆうすけのははおや)
芹澤祐輔の母親。前髪を左寄りの位置で斜めに分け、胸のあたりまで伸ばしたストレートロングヘアをしている。結婚前は地味で暗い雰囲気だったが、夫との交際で容姿が劇的に変わり、性格も明るくなった。しかし、夫の不倫を機に精神を病み、まともに生活できない状態になってしまった。
芹澤祐輔の父親 (せりざわゆうすけのちちおや)
芹澤祐輔の父親。作中では、意図的に顔が見えない状態で描かれる。非常に多忙で、祐輔が幼い頃から家にはほとんど戻れないほど働きづめの日々を送っていた。それは借金返済や、祐輔のために貯金を増やす目的のものだったが、次第に家族とすれ違うようになり、不倫してしまう。その結果妻と離婚し、祐輔からは軽蔑されている。
清水 (しみず)
芹澤祐輔の中学時代の同級生。前髪を目の上で切り、耳の下まで伸ばした髪を外にはねさせている。他者を見下したところがあり、祐輔とは同じグループの友人として親しくしていたものの、祐輔に対しても小馬鹿にした態度を取ったり、攻撃的な振る舞いをすることがある。
古屋 (ふるや)
芹澤祐輔の高校時代の友人で、同じバスケットボール部で活動していた男性。前髪を眉上で短く切った短髪ヘアをしており、顎ひげを生やしている。明るく話しやすい性格だがややいい加減なところがあり、交際している女性が頻繁に変わる。
法律相談に来た女性 (ほうりつそうだんにきたじょせい)
ある日突然、安藤法律事務所にやってきた若い女性。前髪を真ん中で分けて額を全開にし、肩につくほどに伸ばしたストレートセミロングヘアをしている。派手な容姿に加え口調が乱暴なことから、芹澤祐輔には「ヤンキー」と評されている。婚約者と喧嘩をし、衝動的に婚約破棄の方法を聞きに安藤法律事務所を訪れる。しかし実際はまだ婚約者を想っており、彼と揉めるのは自分の性格に問題があるからではないかと気に病んでいる。
王子 (おうじ)
芹澤祐輔が高校3年生の頃に、予備校「京進ゼミナール」で出会った同級生の男性。前髪を目の上で切り、襟足のあたりまで伸ばしたストレートヘアをしている。非常に美しい容姿をしていることから周囲からは「王子」と呼ばれているが、本名は不明。明るく爽やかで異性にも非常に人気があるが、なぜか祐輔のことを気に入り積極的に声をかけてくる。 密かに想いを寄せる人物がおり、エルメスに恋する祐輔を「仲間」と呼んでいるが、誰に恋をしているのかは決して教えようとしない。
元地 (もとじ)
エルメスの交際相手で、エルメスと同じ中央大学に通う男子大学生。前髪を右寄りの位置で斜めに分けたストレートヘアを、毛先だけ外にはねさせている。プライドが高く周囲の評価を気にする性格。やや危なっかしく頼りないエルメスに手を焼いている。
川窪 (かわくぼ)
芹澤祐輔の大学時代の友人。前髪を目の高さまで伸ばして右寄りの位置で斜めに分けたストレートヘアをしている。祐輔がエルメスへの想いを引きずっていることを「女々しい」と感じており、山口と知り合わせた張本人でもある。少々薄情なところがあり、基本的に祐輔が困っていても助けない。
クラブで知り合った女性 (くらぶでしりあったじょせい)
芹澤祐輔が大学時代にクラブで知り合った若い女性。前髪を目の上で切り揃え、肩のあたりまで伸ばしたボブヘアをしている。当時は恋人と別れたばかりで、偶然知り合った祐輔と親しくなるが、恋愛の話題がきっかけで口論になってしまう。その後なぜか一夜を共にすることになるが、そこでもトラブルが発生する。
羽生 (はにゅう)
安藤法律事務所に勤める女性。前髪を左寄りの位置で斜めに分けて上げ、額を全開にして、後ろで長髪を1つにまとめている。三白眼で、やや太めの体型。芹澤祐輔が事務所にインターンとしてやってきた頃からの知り合いで、仕事には非常に厳しい。
作本 (さくもと)
サムスンの勤める会社の社長で、サムスンの不倫相手でもある若い男性。前髪を上げて額を全開にし、撫でつけ髪にしている。サムスンと不倫中に一緒に旅行へ行く約束をしており、別れた後もその予約を取り消さずにいた。しかし、その予約が、サムスンと芹澤祐輔の関係を大きく変えることになる。
安藤 (あんどう)
安藤法律事務所の弁護士で、中央大学で講師もしている年配の男性。羊のようなふんわりとした白髪と細い目が特徴。ふごふごと聞き取りにくい話し方をするため伝わりにくいが、授業は非常に面白い。芹澤祐輔は、牧野つくしの勧めがきっかけで安藤の講義の面白さに触れ、その後彼のもとで働くことになる。
牧野 なずな (まきの なずな)
牧野つくしの妹。前髪を左寄りの位置で斜めに分け、耳の下まで伸ばした内巻きボブヘアをしている。芹澤祐輔とつくしが親しかった頃はまだ子供だったが、のちに看護師となり、交通事故に遭った祐輔と再会。祐輔に、つくしのその後を伝えることになる。
クレジット
- 原作
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徐 譽庭
書誌情報
それでも僕は君が好き 6巻 講談社〈講談社コミックス〉
第1巻
(2014-04-17発行、 978-4063950892)
第4巻
(2015-03-09発行、 978-4063953299)
第5巻
(2015-07-09発行、 978-4063954296)
第6巻
(2015-12-09発行、 978-4063955514)