月華国奇医伝

月華国奇医伝

ひむか透留による初の中華風世界を舞台にした作品。舞台は唐代の中国を基にした中華風国家「月華国」。月華国の蘭州に住む医術師の娘、郝胡葉が、皇太子の白景雲の近侍を手術したことをきっかけに王都で医術所を開き、病を治す手段が祈祷という古い価値観の中で、新進気鋭の医術師として成長していく姿を描いた宮廷医術ファンタジー。天才でありながら人の機微に疎い胡葉と、国をよくしようと奔走する皇太子の景雲とのコミカルなやりとりを楽しむことができ、さらに、作者が綿密に取材したリアルな医術シーンが本作の大きな魅力となっている。KADOKAWA「月刊ASUKA」2018年3月号から連載の作品。2021年6月にはYouTubeの「KADOKAWAオフィシャルチャンネル」でボイスコミックスが公開された。胡葉役を花守ゆみり、景雲を佐藤拓也が演じている。

正式名称
月華国奇医伝
ふりがな
げっかこくきいでん
作者
ジャンル
医者・看護師
 
ファンタジー
レーベル
あすかコミックスDX(KADOKAWA)
巻数
既刊11巻
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古代中華風国家での現代医術の挑戦

唐代の中華風国家「月華国」を舞台に、国外の医術を父親から学んだ新米医術師の胡葉が、祈祷が医療行為として認められている国の常識に挑む姿を描いている。作中に登場する医療行為の多くは、作者が医療関係者から取材したものであり、現代の医術を唐代の中華風世界に応じてアレンジしている。しかし、胡葉は現代の知識を持っているわけではなく、あくまで父親から学んだ医術を基にしている。切開手術や皮膚移植など、月華国の常識から大きく逸脱した医療行為をどのように再現していくのかが本作の見どころであり、失敗する不安を抱えながらも患者を救おうと懸命に奮闘する胡葉の姿が、魅力的に描写されている。

悩める皇子と女性医師の交流劇

胡葉を見出した景雲は、月華国の第1皇子という立場にある。この国では、異彩を放つ胡葉の医術が宮廷での謀略に役立つと考えた景雲は、彼女に価値を見出す。しかし、共に過ごす時間が増えるにつれて、景雲は次第に、胡葉に心惹かれていく。胡葉を田舎から都へと誘い、医術所まで用意しておきながら、景雲は彼女を宮廷の争いに巻き込まないように、自らの身分を明かさずにいる。本作では、身分を明かせずに悩む景雲が、そんな気持ちを知らずに自由奔放かつ天真爛漫に振る舞う胡葉に振り回される、いじらしくも微笑ましいエピソードが数多く描かれる。

魅惑の家人との確執

胡葉には、幼少期から共に過ごしてきた家人のシングダム・セーンサクがいる。シングダムは月華国や西胡とは異なる国にルーツを持ち、褐色の肌を持つエスニックな美男子で、帰る家を失ったことで胡葉の家に引き取られた。学問を教わっていた知人に才能を妬まれた胡葉が命を狙われた際、シングダムが彼女を救ったという過去がある。それ以来、二人は兄妹以上の絆で結ばれ、共依存に近い関係を築いていた。そのため、胡葉に思いを寄せる景雲にとって、シングダムは最大の障害となって立ちはだかっている。

登場人物・キャラクター

郝 胡葉 (かく こよう)

月華国の西南に位置する、蘭州の蘭陽に住んでいる医術師の娘。年齢は15歳。月華国人と西胡人のハーフで、銀髪と碧の瞳に透けるような肌を持つ。書物を一度見ただけですべてを記憶することができ、父親にして医術師のノアの行う手術と書物を傍らで見続けてきた。そのため、医術をはじめとした豊富な知識を身につけているが、天才として異質であり過ぎたために周囲から孤立気味で、人としての機微に疎い部分がある。父親から一人で手術することを禁じられていたため、執刀したことはなかったが、蘭州の近くで刺客に襲われた白景雲の近侍・柳時英の切創を手術したことで、その禁を破ることとなる。また、その時の出来事をきっかけに、国家中枢で病や傷の治癒を行う教団として台頭しつつあった「輪教」の影響力を排除したい景雲の思惑と合致し、月華国の王都である華陵へ家人であるシングダム・セーンサクと共に招かれ、「胡葉医術所」を開くことになる。非常に好奇心旺盛な性格で、価値観が常人と異なる以外は明朗闊達な少女。しかし、筋肉に対して異常な執着心を持ち、筋肉の楽園を追い求めている変人でもある。景雲に対しては、貴族ながらに心優しい人と感じており、その人柄を評価している。一方で筋肉に物足りなさを感じ、郝胡葉自身の趣味には合わないところがあるが、自らの医術師としての腕を認めてくれたため、大きな感謝の念も抱いている。

白 景雲 (はく けいうん)

月華国三十二代皇帝・白子儀の子で第一皇子。年齢は18歳。切れ者で宮中や国の将来を憂いており、皇族の身でありながら武芸も嗜むが、体力がないという弱点を抱えている。母親は毒殺された徳妃である柳雨嘉。しかし、幼い頃に目の前で毒殺されたにもかかわらず、事件は宮中で病死と判断されたため、現在でも真相と真犯人を捜し求めている。母親が不在であるために立場が不安定で、日頃から対立する蘆貴妃から刺客を送られるなど、油断ならない日々が続いている。蘭州の付近で近侍の柳時英が刺客に重傷を負わされ、立ち寄った蘭陽で評判だった医術師を訪ねた際に郝胡葉と出会う。初見ではその西胡人特有の異国風の外見に月季神と見間違ったが、胡葉の医術によって時英の傷が治ったのを確認すると、その術が蘆貴妃と関係の深い輪教の影響力を削ぐのに使えると考え、彼女を王都へと招き「胡葉医術所」を開かせる。当初こそ胡葉を謀に利用していた景雲であったが、率直で自由奔放な彼女と触れ合ううちに、やがて胡葉を異性として意識するようになる。一方で、彼女と出会って王都へ誘ってからも自らの身分について、胡葉には伏せたままにしている。

書誌情報

月華国奇医伝 11巻 KADOKAWA〈あすかコミックスDX〉

第1巻

(2018-08-24発行、 978-4041070710)

第9巻

(2022-07-23発行、 978-4041126653)

第10巻

(2023-02-24発行、 978-4041134313)

第11巻

(2023-11-24発行、 978-4041142295)

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