脱獄囚となった天才医師
「蛍島」と呼ばれる島で医師をしていた冬間零時は、大量殺人の疑いで警察に逮捕される。裁判時に自らの罪を否定しなかった零時は、検察の求刑どおり死刑を宣告され、日本最大の「関東第六刑務所」に収監される。そんなある日、羽川総合病院に勤務する医師の月島琴乃は、院長の羽川誠の依頼で零時の診察を行うこととなる。そこで琴乃は収監されていたテロリストの真壁真二が企てた爆弾騒ぎに巻き込まれた挙句、外傷性心タンポナーデを発症してしまう。命の危険にさらされた琴乃だったが、零時の的確な処置で一命を取り留め、彼と共に機能を失った関東第六刑務所から脱出する。こうして出会った二人は、羽川の陰謀によって羽川総合病院で働くことになり、やがて日本の医療界に革命を起こすことになる。
執刀に生きがいを感じる主人公
死刑囚だった医師・零時は、圧倒的な医療技術を誇る一方で、自他共に認める手術マニアという異常な一面を持つ。零時にとって手術でメスを持つことが最優先事項で、自らが危険な状況であっても、目の前に患者がいるときは迷わず手術を敢行する。しかし患者自身にはあまり興味がなく、周囲からは「遊び感覚」で手術を行っているように見えるため、琴乃から激しく非難されることもある。ただし、手術に失敗することは決して許されないものであると考えており、その信念のもとであらゆる難手術を成功に導き、零時がかかわった患者のほとんどが一命を取り留めている。
冬間零時を取り巻く曲者たち
元死刑囚という異色な経歴を持つ零時は、彼が起こしたとされる事件で兄を失った刑事・久我登や、かつての医者仲間で零時に愛憎入り混じった感情を向けている赤森要、零時を利用して高額の報酬を得ようともくろむ羽川など、さまざまな人物から付け狙われている。零時の同僚となった月島琴乃もまた、彼らと零時の確執に巻き込まれては災難に見舞われている。そんな中、琴乃は零時が死刑囚になった経緯を知り、医者としての信念を貫く姿を目の当たりにする。なお、零時は時折「ヒトミ」と呼ばれる人物の行方を気にする素振りを見せるが、その理由は決して語ろうとしない。
登場人物・キャラクター
冬間 零時 (とうま れいじ)
日本最大級の関東第六刑務所に死刑囚として収監されていた青年。死刑判決を受けた際に、刑を宣告した裁判官の喉頭ガンを見抜き、自ら手術を申し出た。また、監獄内に潜んでいたネズミの命を救うなど、卓越した医療技術でメスを持つことに並々ならぬ執着を見せる。クールで無愛想な性格ながら、医者としての絶対的な自信を持ち、有無を言わさず患者の手術をしようとすることから、周囲からは異端視されている。一方、手術以外のことに関しては自制心が強く、自分の役割をまっとうするには、私情や倫理に心を動かされてはいけないと考えている。また、自らの死を偽装したり、爆弾騒ぎに紛れて脱獄しようとしたりするなど、目の前の事態を打開するためなら、善悪を問わずあらゆる手段を講じる。
月島 琴乃 (つきしま ことの)
羽川総合病院に勤務する医師の女性。自らの仕事に誇りを持っており、患者を助けることを最優先している。一方で、自分が医師として未熟であることも自覚しており、不測の事態に対応することを苦手としている。問診で訪れた関東第六刑務所で死刑囚の冬間零時と出会うが、当初は強い恐怖心を抱いていた。しかし、零時の緊急手術によって命を救われたことから、本当に彼が大量殺人を犯したのか疑問視するようになる。のちに零時と共に羽川総合病院で働くことになり、彼の超人的なテクニックに舌を巻きながらも、零時の破天荒な言動でトラブルに巻き込まれることを憂いている。
クレジット
- 原作
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石川 小松
書誌情報
Dr.プリズナー 4巻 講談社〈講談社コミックス〉
第1巻
(2016-09-16発行、 978-4063957396)
第2巻
(2016-11-17発行、 978-4063957952)
第3巻
(2017-01-17発行、 978-4063958461)
第4巻
(2017-03-17発行、 978-4063958904)