概要・あらすじ
生き物好きの女子高生・結城讃良はある日、食虫植物のような怪物と、それを保護しようとする少年・外堂祭門に出会う。外堂が頭部だけ発達した頭脚人間であり、首なし人間の外堂賀亜夫安来と二人で一人の人間に擬態していると知って驚く讃良。だが、擬態で人間の目を逃れながら生きる未確認生物たちに愛着がわき、外堂の真摯さにも触れて、共に未確認生物のため尽力するようになる。
だがその一方、外堂の故郷では頭脚人間のかかる死病が蔓延しており、外堂には幻の未確認生物・フェニックス発見という使命が課せられていた。
登場人物・キャラクター
外堂 祭門 (げどう さいもん)
頭から手足が生えたような肉体を持つ頭脚人間の少年。共生関係にある外堂賀亜夫安来と二人で一人の人間に擬態する。人間社会で未確認生物を見つけては怪我や病気を治す医師でもあり、将来は未確認生物を治す大病院を作ることを夢見ている。その旅の中で結城讃良と知り合い、彼女の家に居候して同じ学校に通うことになった。 やや人間社会の常識に疎いが、性格はきわめて善良。外見は、瞳が大きくエジプト壁画のような顔立ちが異様に目立つものの、擬態によって一般人には普通の美少年に見えるようになっている。特技は、発達した眼球を突き出す攻撃や、眼から出る多彩な光線といった「眼力」の技。後に故郷の村から、死斑病治療のカギとなるフェニックスを探す捜索者(シーカー)に任命された。 好きな食べ物は冷奴。
外堂 賀亜夫安来 (げどう があふあんくる)
首が胴体に埋め込まれたような肉体の首なし人間。共生関係にある外堂祭門と二人で一人の人間に擬態しており、普段はマフラーで首にあたる部分を覆い隠している。筋骨隆々の逞しい体つきで、運動神経も高く、時速120キロで走り、ゲドーを時速270キロで投げることができる。「ガー」としかしゃべれないが、ゲドーとは意思疎通ができる模様。
結城 讃良 (ゆうき さらら)
生き物好きの女子高生。外堂祭門と出会い、未確認生物の治療や捜索に関わることになった。ゲドーの助手として彼の人間社会における活動をフォローする。プロポーションが良く、長い黒髪をもつ美少女だが、人間の男性には興味が薄い。生物への観察眼に優れており、擬態によって一般人には美少年に見えるゲドーも、彼女には「エジプト壁画のような顔をした異様な顔つきの人物」という正しい姿で見えている。 未確認生物に対しては、初見でグロテスクな姿や異常な能力に驚くことはあるものの、ひと度理解すれば惜しみない優しさを注ぐ。その一方で、普段の行動は大胆かつ大雑把。名前を「有機サラダ」とよく間違えられることにコンプレックスを持つ。
鬼逐 城司 (きちく じょーじ)
外堂祭門と同郷出身の頭脚人間の青年。安怒竜(あんどりゅう)という首なし人間と共生している。己の能力に強い自信を持っており、自分を差し置いて死斑病治療の期待を寄せられたゲドーをライバル視している。生物の遺伝子情報を瞬時に解読する特殊な眼力を持ち、ゲドーより先にフェニックスを発見しようとするが、その目的を優先するあまり、他の未確認生物をないがしろにする一面がある。 助手は大角豆あずさ。
大角豆 あずさ (ささげ あずさ)
結城讃良の通う高校で、創立以来の天才と言われる女生徒。眼鏡を着用。鬼逐城司を「鬼逐サマ」と呼ぶ忠実な助手であり、携えたノートパソコンで鬼逐をサポートする。父は大会社の社長で古い飛行機を集める趣味があり、外堂祭門たちが絶海の孤島を目指した時は飛行艇を提供した。
外堂 玲奈 (げどう れな)
外堂祭門の妹の頭脚人間で11歳の少女。樹理亜(じゅりあ)という首なし人間と共生している。ゲドーに村からのメッセージを伝えるため故郷を出てきた。ゲドーに再会してからは近くの小学校に通っている。頭脚人間がかかる死病・死斑病に冒されるが、ゲドーが開発した薬で進行が抑えられ、やがてフェニックスの尾羽から特効薬が作られて完治する。 兄と同じく、本来は瞳が異様に大きい顔だが、普段は擬態への力を強めに注いでいるため、可愛らしい美少女に見えている。直観力に長けた結城讃良でさえ見抜くことができない。見ているものを凍らせる、冷気の眼力を持つ。
偽田 茂時 (にせだ もどき)
結城讃良の通う高校で、男子生徒に擬態していた未確認生物。その正体は、13種14体の生物が脳、腕、足など体のパーツを分担しながら合体した「ヒトモドキ」という生物群。人間に対して卑屈な感情を抱いており、校内ではいじめられていたが、外堂祭門の励ましを受けて自分に誇りを持つようになった。
震臼 上院 (ぶるうす うえいん)
外堂祭門が半年前に助けた未確認生物で、ゲドーに恩義を感じている紳士。「コウモリ人間」という種族の男性で、人間と同じ霊長目ヒト科ではあるが、常時逆立ちして活動している。そのため股間にあたる部分に本物の頭があり、人間社会では作り物の頭を尻の上に置いて行動している。一見貧弱な中年男だが、常に逆立ちしているため意外と腕力が強い。 頭を上にした状態では血圧が足りず貧血になるという弱点もあるが、性的に興奮することで中和されるという解決策が編み出された。
矢番 影人 (やばん かげと)
結城讃良の通う高校で、校内一の暴力男と呼ばれていた男子生徒。正体は恐竜のステノニコサウルス(※トロオドンの古称)から進化したとされる「トカゲ人間」(※恐竜が爬虫類という認識に基づく)。先祖代々の土地で病身の母や未確認生物を守って暮らしており、本来は義侠心ある性格。だが未確認生物を狩ろうとする人間を嫌い、人間に味方するゲドーを試すため最初は凶暴に振舞い、人類滅亡の計画を持ちかけてみせた。 自分と母の病気をゲドーに治療されたことに恩義を感じ、以後は我が身も惜しまぬ協力者となる。
羽田 つばさ (はねだ つばさ)
「鳥人間」と呼ばれる未確認生物の女性。分類学的には人間と同じ霊長目ヒト科だが、両腕が羽毛の生えた翼に進化している。結城讃良が天使のイメージを重ねて憧れる容姿の持ち主だった。羽を持っていながら空を飛べないことにコンプレックスを募らせており、飛べるような身体改造を外堂祭門に依頼した。ゲドーの指導による特訓の結果、上半身はボディビルダーのように筋肉で膨れ上がり、なぜかアゴが割れてヒゲも生えるという、雄々しい肉体に変貌。 野太い声での気合と激しい助走で飛行する生物となった。
まゆ
山村で暮らす老人に育てられていた幼い少女。老人が亡くした孫娘に似ていたため、その名を引き継ぎ「まゆ」と呼ばれ育てられてきた。その正体は未確認生物の「フェニックス」が擬態したもの。10年以上も成長しない、人間を個別に認識できないという特徴が伝わり、フェニックスを狙う組織に奪われていた。完全に復活した際、外堂祭門に尾羽を渡して死斑病の特効薬を作らせる。
完顔 飛龍 (わんやん ふぇいろん)
未確認生物を捕えて密売する国際的組織の、東アジア地区支部長を務める少年。未確認生物に気に入られ、命令に従わせることができる特殊能力を持つ。フェニックスをめぐって外堂祭門たちと対立し、冷酷非情な態度を示したが、内心では未確認生物たちを深く愛しており、傷ついた未確認生物に涙し、売り物にならず処分される生き物は支部長権限で保護していた。 正体は未確認生物「ドラゴン」の破片が再生した存在で、人間に擬態した上、自らも人間と思いこんでいた。子どもの頃から「ワンニャン」と言い間違えられており、こう呼ばれると怒る。
集団・組織
未確認生物 (みかくにんせいぶつ)
人間社会でまだ公式に知られていない生物の総称。ネッシーやツチノコといった、噂や都市伝説ではよく知られているものから、この『未確認少年ゲドー』オリジナルの生物まで多数が登場する。本作においては一部の例外を除き、既知の生物が環境に適応するなどして変化したものと捉え、奇異な生物についても科学的用語を交えた説明がなされている。
その他キーワード
頭脚人間 (とうきゃくにんげん)
頭から手足が生えたような霊長目ヒト科の未確認生物種族。外堂祭門が属している。南方で栄養豊富かつ消化の良い果実を主食にしたため、消化器官が不要となり胴体が縮小化した種族と言われている。眼が発達しており、眼力という個別の特殊能力を持つ。クロマニヨン人に淘汰され、逃げているうちに首なし人間と出会い、合体して一人の人間になりすますことで生きのびてきたとされている。 現代日本でも隠れ里で首なし人間と暮らしているが、正体を隠して人間社会に出る者もいる。内臓が小さいため、冷奴や離乳食のような消化が良いものしか食べることができない。
首なし人間
首から上が胴体にめり込んだような霊長目ヒト科の未確認生物種族。外堂賀亜夫安来が属している。眼は鎖骨の下、口はみぞおちのあたりにある。極寒の雪山で生きるため、体温の放散を防ぐべく頭と胴体が一体化した。クロマニヨン人に淘汰され、逃げているうちに頭脚人間と出会い、合体して一人の人間になりすますことで生きのびてきたとされている。 肉体労働を担当するため、概ね体力や運動神経に優れる。現代日本でも隠れ里で頭脚人間と暮らしているが、正体を隠して人間社会に出る者もいる。無口な者が多いが、パートナーの頭脚人間とはコミュニケーションが取れている模様。
眼力 (がんりき)
頭脚人間に特有の、発達した眼を使った特殊な能力。頭脚人間が胴体を退化させたため、そこを管理していた脳の部分が暇になり、眼球の動きや視力などを強化することに力を注いだため芽生えた能力とされている。通常は頭脚人間一人につき一種類の眼力しか持たないが、外堂祭門は「奇跡眼(ミラクルガン)」という強力すぎて使いにくい能力を、「望遠眼(ボウエンガン)」、「麻酔眼(マスイガン)」、「治療眼(ヒーリンガン)」、「透視眼(レントガン)」、「破壊光線眼(レーザーガン)」の5つに分割している。
死斑病 (しまだらびょう)
頭脚人間と首なし人間の隠れ里で外堂祭門の故郷でもある泣き別れ村で広まった死病。体の一部にできたアザが次第に増え、患者の年齢と同じ数になったとき確実に死が訪れるという。特効薬となる物質は未確認生物であるフェニックスの身体からしか採れないが、トビクラゲという未確認生物から抽出した成分によって、完治はできないが進行を抑制する薬が開発された。