概要・あらすじ
カビのはえたパンを食べたケン一とヒゲオヤジは、ばい菌の大きさに体が縮んでしまう。少年の体にとりこまれた二人は、そこで繰り広げられる結核菌と白血球軍との戦いを目の当たりにする。結核菌の娘モードは、自分たちに囚われの身となった二人に同情するが、ケン一とともに白血球軍の捕虜となり、そこで人間と結核菌は敵同士であることを知らされる。
あわや結核菌に溶かされようとするケン一とヒゲオヤジだが、その時、体が元の大きさに戻り始め、逆に結核菌たちを撃退し、それによって病から快復した少年の咳とともに外の世界へ飛び出す。そして、奇跡的に快復した少年を囲む人々の前で、自分たちの体験を語るのだった。
登場人物・キャラクター
ヒゲオヤジ
ケン一の叔父。カビのはえたパンを食べ、その中に体を小さくするばい菌が入っていたため、体がばい菌なみの大きさにミクロ化してしまう。少年の体内に取り込まれ、そこで、結核菌と白血球軍の戦いに巻き込まれる。少年が快復するとその中から飛び出して、もとの大きさに戻り、自分の体験を語り出す。
ケン一 (けんいち)
ヒゲオヤジの甥。カビのはえたパンを食べ、その中に体を小さくするばい菌が入っていたため、体がばい菌なみの大きさにミクロ化してしまう。少年の体内に取り込まれ、そこで、結核菌と白血球軍の戦いに巻き込まれる。少年が快復するとその中から飛び出して、もとの大きさに戻り、自分の体験を語り出す。
少年 (しょうねん)
過労から肺病に罹ってしまった勤労少年。椿姫や剣客・平手造酒、友人の吉川などの支離滅裂な夢を見た後、奇跡的に快復し、自分の体内から現れたヒゲオヤジとケン一に、自分が肺病から蘇った顛末を聞かされる。
モード
結核菌。イヨア副司令の娘。ケン一とともに少年の体の白血球軍に捕まり、結核菌が、人間にどれほど害を与えるかを聞かされるが、「人間だって自分のために森や野を焼いたり、けものを殺したりする」と反論する。
イヨア副司令 (いよあふくしれい)
結核菌。ミクロ化したケン一とヒゲオヤジから、人間の脳と白血球のことを聞き出そうとする。娘のモードの居場所を聞き出すために、捕らえていたヒゲオヤジをケン一に渡したため、ダダプート司令に溶かされてしまう。
ダダプート司令 (だだぷーとしれい)
結核菌の司令官。ヒゲオヤジから、人間の脳と白血球のことを聞き出し、裏切り者のイヨア副司令を原形質溶解液で溶かしてしまう。
カリエス
結核菌。イヨア副司令の部下。
マルグリッド
肺病に罹った少年の記憶再生室に保管されていた記憶。小デュマの小説であり、また、それを元にしたジュゼッペ・ヴェルディのオペラ『椿姫』の主人公。結核に体を冒される。
平手 造酒 (ひらて みき)
肺病に罹った少年の記憶再生室に保管されていた記憶。幕末の剣客。酒と労咳(結核)で身を滅ぼす。歴史上の実在の人物、平手造酒がモデル。
吉川 (よしかわ)
肺病に罹った少年の記憶再生室に保管されていた記憶。少年の友人で水泳選手。肺病をおして水泳大会に出場して優勝するが、病気が悪化して倒れる。姿は、肺病に冒された少年本人そのままであり、熱に浮かされた少年が、自分自身の思い出を他人の物として思い起こしているとも捉えられる。
場所
記憶再生室
『38度線上の怪物』に登場する部屋。人間の脳の中で、読んだ本や見たことが、書類として残されている部屋。肺病に冒された少年の体内で、ミクロ化したケン一と結核菌の娘モードは、結核によって命を落とした椿姫や平手造酒、水泳選手の吉川などの話を白血球の兵士から聞かされる。同時に、闘病中の少年の脳裏にはそれらが夢として現れる。
その他キーワード
原形質溶解液 (げんけいしつようかいえき)
『38度線上の怪物』に登場する液体。結核菌たちが少年の体の中で作り出す液体。体の組織を溶かし、肺を穴だらけにしたり敵を溶かしたりするのに使用される。
リンパ艇
『38度線上の怪物』に登場する乗り物。結核菌たちが少年の体の中で作った高速艇。体に張り巡らされたリンパ腺の中をリンパ液にのって疾走する。
凝固銃
『38度線上の怪物』に登場する武器。少年の体の白血球軍が使う武器。この銃で相手に液体を浴びせ、それが凝固することによって身動きできなくする。ミクロ化したケン一と結核菌の娘モードがこの武器によって白血球軍に捕らわれる。