謎の異能者「ワンダー」
本作には「ワンダー」と呼ばれる特殊な能力を持つ人間が登場し、彼らが多種多様な力を行使する。具体的には、他者の記憶を操作したり、知能が未成熟な生物をあやつったり、念動力によって物体を自在に動かす能力などがある。特にアリスの能力は、物質の質量を自在に変えることができ、質量保存の法則を無視した現象を引き起こすことも可能であり、その気になれば生物や物質を痕跡すら残さずに消滅させられる。このため、アリスの力は「神の力」として恐れられ、日本政府は彼女を秘密裏に管理し、国際的な影響力を強化しようと目論んでいる。 しかし、ワンダーの使用にはリスクが伴い、使用者が許容範囲を超えた力を行使すると、しばらくのあいだ眠りにつく必要がある。そしてこの間は、身体が通常の人間の数倍から数十倍の速度で成長または老化するという副作用が存在する。
非常事態下での出会い
平穏な日常を送っていた由希子は、ある朝目覚めると自分の身体が小さくなっていた。さらに、父親の幸男と母親のも同様に小さくなっており、飼い猫のミーに襲われて命を落としてしまう。ショックのまま外に飛び出した由希子は、小型化した人間たちが動物に襲われている光景を目の当たりにして、恐怖に駆られる。 その後、由希子は飼い犬のポコと共に動物たちから逃げる中で、窮地に陥っていた際にアリスと名乗る少女に助けられる。さらに逃亡中に出会った滝研太郎や源田千春と協力し、この異常な状況から脱出すべく奔走する。
「ワンダー」を巡る日本政府の陰謀
由希子は、逃亡の末に元の大きさに戻ることに成功した。そして由希子は、人間が小型化した原因がアリスの持つ「質量を自在にあやつる力」の暴走によるものであることを知る。由希子は、親友のアリスが両親の死に間接的に関与していることを察し、彼女に対して辛く当たってしまう。そんな中、由希子は自衛隊によってアリスと一時的に引き離される。自衛隊の陸幕である乾は、アメリカやロシアに対抗するためにアリスの能力を軍事利用しようと企んでおり、腹心のワンダーである麻宮やアリスの旧友であるヨシフを利用して計画を進めていた。乾の行動はさらにエスカレートし、最終的には由希子を人質に取り、アリスに無理な要求を強いる状態に発展する。
登場人物・キャラクター
本田 由希子 (ほんだ ゆきこ)
立花高校に通う2年生の女子。友人や家族から「ゆっこ」のあだ名で呼ばれている。非常事態においても冷静を保ち、現状を打開しようとする行動力を発揮する。また、大切なものを奪われても相手に悪気がない限り、咎(とが)めない心の広さを持つ。また、他者を助けたり協力することに躊躇(ちゅうちょ)がないが、その一方でボーイフレンドの北卓也の連絡先を知らず、彼から指摘されるまで意識すらしていないなど、どこか抜けた一面もある。人間だけが小型化する事件に巻き込まれた際にアリスと出会い、ワンダーを巡る騒動に関与することになる。
アリス
「ワンダー」の少女。黒海とカスピ海に挟まれたジョージア出身。年齢は12歳ながら、由希子と同年代に見えるほど大人びている。感情豊かな人懐っこい性格で、優しく接してくれた人に対してすぐに心を開いてしまう。正義感が強いため、自分の力を悪用する者を敬遠する傾向にある。当初はロシア語しかしゃべれなかったが、短期間で日本語をある程度理解するようになるなど、高い学習能力を持つ。アリスは有機物と無機物の質量を変化させる特異な能力の持ち主で、この能力を利用して自分自身やほかの物体を巨大化または縮小させることができる。しかし、能力を完全に制御できるわけではなく、精神的に不安定な状態になると、広範囲の人間をまとめて縮小させてしまうこともある。アリスの能力は唯一無二であり、ほかのワンダーの能力よりも強力なため、ワンダー関連の研究施設では「悪名高い怪物」を意味する「NM」のコードネームで呼ばれている。