世界観
本作『Elysion 二つの楽園を廻る物語』は、Sound Horizonの4th Story CD『Elysion ~楽園幻想物語組曲~』のコミカライズ作品で、レテとムネーモシュネーの泉など、ギリシア神話が物語の根幹になっている。しかしSound Horizonの楽曲は、聞く者それぞれの持つ解釈を大切にしており、かつ制作者であるRevoは楽曲の背景を明確にしない作風であるために、本作で描かれる物語や世界観、キャラクターの関係性などは十文字青独自の解釈によるものとなっている。またSound Horizonの楽曲の特徴として、アルバムやシングルの枠を超えたすべての楽曲がなんらかのつながりを持っていることから、あえて本作中で説明されない不明瞭な部分もある。
あらすじ
第1巻
背筋が凍るほど美しい少女のラフレンツェは、冥府と現世の境に流れる嘆きの川の守り手の後継者として、魔女のオルドローズに育てられた。守り手は純潔を守り通さねばならない制約があるが、オルドローズの死後、ラフレンツェは美しい青年のオルフェと出会う。恋に落ちたラフレンツェはやがてオルフェに純潔を捧げ、嘆きの川を干上がらせてしまう。(エピソード「魔女とラフレンツェ」。ほか、5エピソード収録)
第2巻
農村で暮らすエリス(Yield)には、父親であるデューイを愛し、性行為に及んだという秘密があった。しかし娯楽が少なく、噂話の絶えない村の中で露見するわけにはいかない。そんなある日、ほかの村人たちがエリス(Yield)とデューイが似ていないこと、そしてエリス(Yield)は母親であるアデラが浮気をしてできた子ではないかと、噂していることを知る。(エピソード「Yield」。ほか、5エピソード収録)
ヒロイン像
本作『Elysion 二つの楽園を廻る物語』のヒロインは毎話変更されるが、全員が「エリス」という名前であること、心に深い傷を負うということ、またエピソード「魔女とラフレンツェ」においてオルフェが追い求める死んだ恋人、エリスの生まれ変わりであることが共通している。
関連作品
講談社キャラクターズAから発行されている『旧約Marchen』、またはマガジンエッジKCから発行されている『新約Marchen』内のエピソード「薔薇の塔で眠る姫君」には、本作『Elysion 二つの楽園を廻る物語』に収録されているエピソード「魔女とラフレンツェ」に登場するラフレンツェがオルドローズに拾われるに至った物語が描かれている。ほかに、ヤングジャンプコミックスから発行されている『Roman』および角川書店から発行されている『Roman 冬の朝と聖なる夜を廻る君の物語』には、エピソード「Lの天秤」などに登場するロレーヌのその後の人生が描かれる。角川コミックス・エースから発行されている『Nein~9th Story~』にはエピソード「StarDust」に登場するエリス(StarDust)が別の人生を歩む物語が描かれている。
関連商品
CD
本作『Elysion 二つの楽園を廻る物語』は、Sound Horizonの4th Story CD『Elysion ~楽園幻想物語組曲~』が原作となっている。同作品はSound Horizonのメジャーデビューアルバムで、物語性のある歌詞とオーケストラを起用した壮大な音楽、そして声優や歌手による演技と効果音を用いて、さながらミュージカルかオペラのような作品となっている。またエピソード「Lの天秤」などに登場するロレーヌは、5th Story CD『Roman』に収録されている「歓びと哀しみの葡萄酒」にも登場し、エピソード「StarDust」に登場するエリス(StarDust)は、9th Story CD『Nein』に収録されている「憎しみを花束に代えて」にも登場している。
登場人物・キャラクター
ラフレンツェ
エピソード「魔女とラフレンツェ」に登場する。赤ん坊の頃、果ての森に捨てられてオルドローズに育てられた少女。透けるような白い肌、燃えるような緋色の目、絹のような銀のロングヘアの持ち主で、背筋が凍るほど美しい。生涯純潔でいなければならない冥府の番人の守り手の資格を継承し、オルドローズの死後は孤独に耐えながら嘆きの川を見守っていた。だがオルフェに恋をし、純潔を捧げたために守り手の資格を失った。オルフェとのあいだにもうけた一人娘のエリス(娘)を愛している。しかし、オルフェはエリス(娘)が恋人のエリスの生まれ変わりであると信じており、エリス(娘)を連れ去ろうとしている場面を目撃してしまう。それをきっかけに、オルフェに呪いをかけたが、呪いの詳細については描かれていない。
オルフェ (ぱぱ、もんぺりえのだうれ)
エピソード「魔女とラフレンツェ」「Lの天秤」「Lの楽園→side:E→」「Lの楽園→side:A→」に登場する。嘆きの川のほとりで竪琴を奏でる青年。外側に跳ねた明るい茶色の髪をしている。死んだ恋人のエリスと再会するためにラフレンツェに近付き、純潔を奪って嘆きの川を干上がらせた。しかし、冥府にも恋人のエリスがもういないことを知ると、ラフレンツェの孕んだ子供を育てることを約束する。やがてエリス(娘)が生まれると、恋人のエリスの生まれ変わりであると信じ、連れ去った。そのため、ラフレンツェから呪いをかけられている。以降はオルフェとしての記憶をなくし、「お父様」として病弱なエル(エリス(娘))を庇護している。彼女の治療費を稼ぐためには手段も選ばないことから「モンペリエの悪鬼」とも呼ばれている。そのかたわらで、何度も生まれ変わっては不幸になり続ける恋人のエリスを追いかけている。
エリス(娘)
エピソード「魔女とラフレンツェ」「Lの天秤」「Lの楽園→side:E→」「Lの楽園→side:A→」に登場する。ラフレンツェとオルフェの娘。透けるような白い肌、燃えるような緋色の目、絹のような銀のロングヘアをした幼い少女。ラフレンツェに瓜二つ。赤ん坊の頃、オルフェに連れ去られた。病弱で、つねにベッドの上で過ごしている。少女に成長してからは「エル」と呼ばれており、留守がちなオルフェを待ち続けている。楽園の絵本を好み、誕生日プレゼントにもねだった。
オルドローズ
エピソード「魔女とラフレンツェ」に登場する。果ての森に住み、嘆きの川を見守る冥府の番人である、守り手を務める年老いた魔女。かつては果ての森の外側にある王国に住んでいたが追放され、前任者から守り手を引き継いだ過去を持っている。また、その頃は「真紅の髪の魔女」と呼ばれて恐れられる存在である一方で、賢女としても敬われていた。カラスのムニンを唯一の友として生きていたが、木の股に捨てられていたラフレンツェを拾い、愛情を注いで育て上げた。ラフレンツェが一人前の守り手になったのを見届けて死去した。
エリス(Ark)
エピソード「Ark」に登場する。黒髪をミディアムボブにした少女。大災禍後の2月、汚れた雪が降る日に兄に売られ、救いを求めて箱舟教団の施設の箱庭を訪れた。箱庭の中では記憶を操作されて過去を忘れ、「ソロル」もしくは「被検体1096」と呼ばれている。ソロルとは妹という意味。フラーテルを本当の兄として慕う一方で、性的関係に誘惑した。しかし妹であるソロルと性的関係を結んだことに葛藤するフラーテルに拒絶され、悲嘆に暮れているところを監視卿に声を掛けられた。その際、「Ark」と称してナイフを手渡され、直後にフラーテルを刺殺している。症例番号12、過剰投影型依存における袋小路の模型(モデル)、即ち虚妄型箱舟依存症候群(Ark)の被検体だった。A.E.2015に生まれた。
フラーテル
エピソード「Ark」に登場する。黒髪をショートボブ風にした青年。エリス(Ark)よりも先に箱舟教団の施設の箱庭を訪れていた。本名はあるはずだが、箱庭の中では記憶を操作されて過去を忘れ、フラーテルもしくは「被検体1076」と呼ばれている。「フラーテル」とは兄という意味。エリス(Ark)をソロルと呼び、本当の妹として慈しむ一方で、誘惑に抗えず性的関係を結んだ。しかし、エリス(Ark)があくまでも兄としてフラーテルを慕っていることを理解し、エリス(Ark)との関係に葛藤していた。その様子を見ていた監視卿によって被検体として不的確と判断され、エリス(Ark)によってナイフで刺殺された。症例番号12、過剰投影型依存における袋小路の模型(モデル)、即ち虚妄型箱舟依存症候群(Ark)の被検体だった。
監視卿 (うぉっちゃー)
エピソード「Ark」に登場する。箱舟教団の施設の箱庭を管理している、頭からすっぽりとローブをかぶっているために素顔の見えない男性。左手の薬指がない。エリス(Ark)にソロルという名を与え、フラーテルとペアにした。二人を虚妄型箱舟依存症候群(Ark)の被検体として扱い、海馬に手を加えることで記憶の操作なども行っている。また、監視卿自身もフィリアとのペアで、症例番号1、深層共鳴型依存における人格統一の模型(モデル)、実存型箱舟依存症候群(プロトタイプArk)の被検体だった。「被検体4」「フィリウス」と呼ばれていた過去がある。また、この実験は失敗したと記述がある。「フィリウス」とは息子という意味。
フィリア
エピソード「Ark」に登場する。監視卿が保管している、頭部だけの少女の遺体。監視卿の使用するコンピュータールームで、液体の満たされた筒に入れて安置されている。口内には監視卿の薬指が入っている。監視卿が「被検体4」「フィリウス」と呼ばれていた頃にペアとなって、症例番号1、深層共鳴型依存における人格統一の模型(モデル)、実存型箱舟依存症候群(プロトタイプArk)の被検体だった。「被検体7」とも呼ばれていた過去がある。また、この実験は失敗したと記述がある。「フィリア」とは娘という意味。
ロレーヌ
エピソード「Lの天秤」「Lの楽園→side:E→」に登場する。伯爵の娘。緩いウエーブがかった長い金髪の少女で、クロードを心から愛している。金持ちの男性との結婚が決まった矢先に出奔し、船に乗って他国に逃亡しようとしていたところ、船長に扮していたオルフェによってクロードを殺害された。その後、ジャン=バティストの手引きによって、結婚式の日にウエディングドレス姿でオルフェを待ち伏せし、ナイフで重傷を負わせた。本名は「イザベル」だが、逃避行に際して素性が露見しないようにロレーヌと名乗っている。
クロード
エピソード「Lの天秤」「Lの楽園→side:E→」に登場する。伯爵の家に仕える使用人で、赤毛のそばかすのある少年。ロレーヌを心から愛している。ロレーヌが金持ちの男性と結婚することが決まった矢先に出奔し、船に乗って他国に逃亡しようとしていた。しかし、船長に扮していたオルフェによって殺害された。本名は「テオドール」だが、逃避行に際して素性が露見しないようにクロードと名乗っている。
ジャン=バティスト
エピソード「Lの天秤」「Lの楽園→side:E→」に登場する。「お父様」となったオルフェの仕事相手の男性。黒髪で右目だけを隠しており、燕尾服にハットとリボンタイを身につけている。つねに皮肉屋っぽい態度で人に接している。依頼人とオルフェを仲介する役を担っており、オルフェからは仕事相手としては有能だが信用ならないと評価されている。オルフェから始末される気配を察知して、実家に連れ戻されたロレーヌを唆し、逆にオルフェ殺害を企てた。
エルネスト・カスタニエ
エピソード「Lの天秤」に登場する。「お父様」となったオルフェに誘拐および殺害された大商人で、肥満体形の中年男性。店を任せていた番頭と妻が気づかぬうちに恋仲になっており、二人がエルネスト・カスタニエの全財産を奪うために、オルフェに誘拐を依頼した。
伯爵 (はくしゃく)
エピソード「Lの天秤」に登場する。ロレーヌの父親。ウエーブがかった長い白髪の初老男性で、燕尾服にジャボタイを身につけている。若くてワガママな性格の派手な女性を後妻にめとってから、放蕩三昧で湯水のように財産を使っている。そのため借金が嵩んでおり、ロレーヌは身売り同然で金持ちの男性に嫁入りさせる予定だった。その矢先にロレーヌが使用人のクロードと出奔したため、クロードの殺害とロレーヌを連れ戻すことをオルフェに依頼した。
エリス(Baroque)
エピソード「Baroque」に登場する。ショートボブヘアの若い修道女で、眼鏡をかけている。A.E.2103に生まれた。人に合わせて話すことが苦手で、つねに孤独を感じていた。本を読むのが趣味で、好きなことはじっくりと楽しむタイプ。初めて声を掛けてくれたメーネに特別な思いを寄せている。その後はメーネに思いを伝えるが拒絶され、立ち去ろうとしたメーネに追いすがった結果、二人そろって階段から転落してメーネを事故死させてしまう。
メーネ
エピソード「Baroque」に登場する。黒いロングヘアの若い修道女。肌から輪郭、声に至るまで美しいと評されており、たくさんの友人がいる。以前からエリス(Baroque)のことを知っており、エリス(Baroque)が具合悪そうにしていたのをきっかけに声を掛けた。友人としてエリス(Baroque)を好ましく思っているが、エリス(Baroque)から恋愛感情を告げられた際には汚らわしいと拒絶した。立ち去ろうとした際にエリス(Baroque)に追いすがられ、二人そろって階段から転落して死亡した。
エリス(Yield)
エピソード「Yield」に登場する。狭い農村で暮らす少女で、A.E.2194に生まれた。背中まで伸ばした金髪で、前髪右側をリンゴのヘアピンで留めている。アデラとデューイの娘だが、デューイとは血がつながっていないのではないかと噂されている。若い頃のアデラに瓜二つだといわれている。デューイを一人の男性として愛しており、アデラを憎み、邪魔だと考えている。デューイとの性行為を経て妊娠した。
アデラ
エピソード「Yield」に登場する。エリス(Yield)の母親で、デューイの妻。金髪を肩の上で切りそろえた女性。デューイに対して冷たく素っ気ない態度で接しており、村人たちのあいだでエリス(Yield)は、アデラと、シモンの父親のあいだにできた子ではないかと噂されている。またそれを裏付けるように、エリス(Yield)の妊娠が発覚した際には、相手がシモンではないかと問いただした。
デューイ
エピソード「Yield」に登場する。エリス(Yield)の父親で、アデラの夫。短髪の中年男性で、サロペットを着用している。エリス(Yield)と性行為に及び、妊娠させた。しかし、デューイが心から愛しているのはアデラ一人であり、エリス(Yield)と性行為に及んだのは、エリス(Yield)がアデラによく似ているからという理由だった。アデラの代わりにエリス(Yield)を抱いておきながら「エリス(Yield)に誘われた」と言い訳しようとするなど、卑怯な一面がある。
シモン
エピソード「Yield」に登場する。エリス(Yield)の幼なじみで、ダッフルコートを着た少年。エリス(Yield)の性格のキツさや家庭環境を心配しており、エリス(Yield)が体調を崩した際には一番に声を掛けている。父親と母親の口論の内容から、エリス(Yield)と異母兄弟なのではないかと考えている。
ターラ
エピソード「Yield」に登場する。エリス(Yield)の親友で、どこかに嫁いでいった少女。噂話を好まない性格を自称しておきながら、村の噂話には詳しい。エリス(Yield)の相談にもよく応じており、崖の魔女のことをエリス(Yield)に教えたり、エリス(Yield)が身ごもった相手について問いただしたりした。
崖の魔女 (がけのまじょ)
エピソード「Yield」に登場する。村のはずれにある崖の下に住んでいる老婆で、ウエーブがかった長い白髪とわし鼻が特徴。ヘアバンドで髪を留めているが、顔の右半分だけは髪で隠している。男たちは気味悪がって近付かないが、女たちはこっそり通っては占いや祈禱をしてもらっている。産婆のような仕事もしており、エリス(Yield)が妊娠6か月以上経っていることを診断した。
エリス(Sacrifice)
エピソード「Sacrifice」に登場する。リリー(Sacrifice)の姉で、そばかすの目立つ少女。A.E.2278に生まれた。いつも幸せそうな器量よしのリリー(Sacrifice)にコンプレックスを抱いていた。しかし、お母さんが「リリー(Sacrifice)は人と違うから助けてあげて」と言い残して病死したことをきっかけに、彼女を全力で庇護することを誓った。仕立屋をしている大奥様や旦那様、若女将に保護された。大奥様の死後は昼は仕立屋、夜は酒場で一日中働き、リリー(Sacrifice)となかなかいっしょにいる時間が取れず、妊娠していることも知らなかった。リリー(Sacrifice)が火刑にされる直前、神父様を含む村の男たち全員がリリー(Sacrifice)を弄んだと察して激昂した。
リリー(Sacrifice)
エピソード「Sacrifice」に登場する。エリス(Sacrifice)の妹で、髪をツインテールにまとめた少女。村の男たち全員からかわいがられるほどの美貌の持ち主。知的障害があり、生きていくためにエリス(Sacrifice)のサポートが必要となっている。お母さんが病死してからは仕立屋をしている大奥様に保護され、旦那様からもかわいがられていた。のちに妊娠していることが発覚するが、男たちの誰も心当たりがないと証言したため、悪魔の子を孕んだとして火刑に処された。
お母さん (おかあさん)
エピソード「Sacrifice」に登場する。エリス(Sacrifice)とリリー(Sacrifice)の母親。女手一つで二人を育てた働き者で、大奥様の覚えもよかった。リリー(Sacrifice)がかかった感染症にかかり、リリー(Sacrifice)が完治する代わりに病状が悪化。エリス(Sacrifice)にリリー(Sacrifice)の世話をするようにと遺言を残して病死した。
神父様 (しんぷさま)
エピソード「Sacrifice」に登場する。エリス(Sacrifice)たちの暮らす村を取り仕切る教会の神父。髪を七三になでつけており、人のよさそうな顔をした初老男性。カソックの上から白いケープを羽織り、さらにその上からストラを垂らしている。リリー(Sacrifice)が幼少の頃からずっと「神に愛されている」と繰り返し語り、かわいがっていた。
大奥様 (おおおくさま)
エピソード「Sacrifice」に登場する。お母さんの病死後、エリス(Sacrifice)とリリー(Sacrifice)を引き取った老婆。二人を本当の孫のようにかわいがっていた。仕立屋を工場ごと営んでおり、近隣住民たちからも経営手腕を高く評価されていた。しかし大奥様の死後、仕立屋の経営は悪化の一途をたどる。
旦那様 (だんなさま)
エピソード「Sacrifice」に登場する。大奥様の息子で若女将の夫。大奥様の死後は仕立屋を工場ごと引き継いだが、商才がまったくなく、儲け話に飛びついては大損をして経営を悪化させていった。またそれが原因で、若女将との口論が絶えなくなっていく。
若女将 (わかおかみ)
エピソード「Sacrifice」に登場する。旦那様の妻。黒髪をシニョンでまとめた、気の強い女性。儲け話に飛びついては金だけを毟り取られて大損を繰り返す旦那様に愛想を尽かしていた。リリー(Sacrifice)が妊娠していることにいち早く気づき、その相手が旦那様ではないかと疑っていた。
ヒルデガルト
エピソード「Lの楽園→side:A→」に登場する。オルフェとエリス(娘)が暮らす家のハウスキーパーを務める初老の女性。金髪をシニョンにまとめ、メイド服を身につけている。オルフェによって突然の解雇を言い渡され、荷物をまとめようとしたところをオルフェによって扼殺された。
エリス(StarDust)
エピソード「StarDust」に登場する。箱舟市で暮らしている女性で、A.E.2450に生まれた。背中まで伸ばしたウエーブがかった黒髪で、地味な見た目をしている。症例番号は80231Eで、Rナンバーに次ぐ希少なEナンバーの持ち主。バーでパブロに口説かれ、一晩で恋に落ちた。箱舟市の工場から送られてくるデータを整理する電脳群(CPS)の監視を、主だった仕事にしている。仕事のパートナーであるリリー(StarDust)を妹のように思っていた。パブロと出会ってからはつねにパブロ好みの服を着用し、仕事をしようともしないパブロの生活を率先して支えている。そのことをリリー(StarDust)に心配されたが、そんな彼女の思いを拒絶。その後、パブロの浮気が発覚し、髪を金色に染めて真っ赤なドレスとヒール、ルージュを引いて変貌を遂げる。
パブロ
エピソード「StarDust」に登場する。箱舟市で暮らしている男性。肩の下まで伸ばした黒髪を真ん中分けにしており、白い服を好んで身につけている。エリス(StarDust)がバーにいるところを口説いた。芸術家崩れでプライドばかりが高く、女性に生活を支えてもらって生きている、絵に描いたようなヒモ男。家の中には大量のキャンバスが置かれている。創作活動が進まないと酒に溺れ、エリス(StarDust)に暴力を振るった。箱舟市の住民に課せられている定期検査の義務を怠っている。症例番号は箱舟市の住民の半数にあたるAナンバー。また、金曜日になるといつも帰宅しない。レオからは「上辺だけで中身のない男」「凡庸」と評されている。
ジェームズ・ミルナー
エピソード「StarDust」に登場する。エリス(StarDust)の担当医師を務める男性で、スキンヘッドで大きな目をつねに見開いている。症例番号は0001R。エリス(StarDust)の人間関係をすべて把握しており、パブロが定期検査を受けるよう、エリス(StarDust)に勧めた。救いを求める者に「Ark」は与えられると信じており、エリス(StarDust)にとってはリリー(StarDust)こそが「Ark」だと語った。
レオ
エピソード「StarDust」に登場する。パブロの知り合いの男性。黒髪で右目だけを隠しており、ベルトがアクセントになったスーツにハット、赤いジャボタイを身につけている。いつも皮肉屋っぽい言動で人に接している。エリス(StarDust)にパブロとの付き合いをやめるように忠告した。生きた時代は異なるが、ジャン=バティストに酷似している。
ムニン
エピソード「魔女とラフレンツェ」に登場する。オルドローズが友人として接していたカラス。オルドローズを「真紅の髪の魔女」と呼ぶことが多く、そのたびにオルドローズから咎められている。声まねが得意で、人の言葉を話すことができる。オルドローズの死後、ほどなくして死亡した。
リリー(StarDust)
エピソード「StarDust」に登場する。監視用電脳群(CPS)に備わっている疑似人格(PSC)で、箱舟市の工場から送られてくるデータを整理している。髪をツインテールにまとめた14歳の少女の姿をしており、非常にかわいらしい。登場する時代は異なるが、リリー(Sacrifice)と酷似している。エリス(StarDust)の仕事のパートナーであり、エリス(StarDust)の担当医師であるジェームズ・ミルナーによれば、エリス(StarDust)の「Ark」だという。エリス(StarDust)と同じく症例番号80231Eが、左太ももに表示されている。エリス(StarDust)がパブロに騙されているのではないか、無理をして付き合っているのではないかと心配していたが、当のエリス(StarDust)に拒絶されてからは姿を見せなくなった。
集団・組織
箱舟教団 (あーかにてぃ)
エピソード「Ark」「StarDust」に登場する。救いを求める者を楽園に導く箱舟を作り、哀れな魂を大地から解き放つことを目的とした宗教組織。救いを求める者には「Ark」が与えられると考えている。エピソード「Ark」においてはエリス(Ark)に「Ark」としてナイフを渡しており、エピソード「StarDust」においてはエリス(StarDust)の「Ark」はリリー(StarDust)だと語っている。自分たちを「選ばれた民」と称しており、すべての真実を解き明かし、全能の神に成り代わるという目的のため、実験と観察を繰り返している。
場所
嘆きの川 (なげきのかわ)
エピソード「魔女とラフレンツェ」に登場する。果ての森に流れており、冥府と現世の境となっている川。深く、流れが速い。現世で息を引き取った者が半亡者となって訪れ、嘆きの川を渡って川向こうの森へ入ると亡者となる。神がこの世界を見捨て去る前に残した、生と死を分ける仕組みそのもの。守り手と呼ばれる黄泉の番人が存在し、守り手であるオルドローズやラフレンツェが純潔な体である限り、干上がることがない。しかしラフレンツェがオルフェに恋をし、純潔を捧げたために干上がってしまった。
箱庭 (はこにわ)
エピソード「Ark」に登場する。エリス(Ark)が救いを求めて訪れた、レンガ造りの神殿のような外観の施設。特定の状況を設定し、状況を変数として与えることで心の神秘にせまるための実験施設。しかしのちに、箱舟から得られるものはただの数式的結果にしか過ぎないことが判明し、より多くの症例番号を同時に扱い、研究することができる大都市の箱舟市が作られた。
箱舟市 (あーくしてぃ)
エピソード「StarDust」に登場する。箱舟教団の教えが粛々と受け継がれている都市。低い場所でも標高500メートルにある。およそ130キロ四方に広がる大都市で、箱舟市で生まれた者は一生市外に出ることがない。電磁車(リニア)が走っており、第三外苑区(サードガーデン)にある星屑公園(スターダストパーク)からは地平線の彼方まで見渡すことができる。住民全員に、数字とアルファベットを組み合わせた症例番号が割り振られている。また全員に定期検査が義務づけられており、液体で満たされた検査室で体の隅々までスキャン、点検される。この検査によって個人の情報が管理されており、担当医師は患者が打ち明けていない人間関係などについても把握している。
クレジット
- 原作
-
Sound Horizon
- 構成