エイラと外つ国の王

エイラと外つ国の王

エイラは政略結婚により、ロートフェルゼに嫁ぐことが決まり、黒猫のロロンを連れてたった一人で敵国へと輿入れすることになる。しかしロートフェルゼは、嫁いだ者をその後見た者はいないとされ、不穏な噂の立つ国だった。そして一抹の不安を抱くエイラを迎えたのは、描かれた肖像画と寸分たがわぬ麗しい姿の王子アロルドだった。吸血鬼の一族に嫁入りした美しき姫と王子の愛と葛藤を描く、大河ダークファンタジー。「月刊ミステリーボニータ」2019年7月号から掲載の作品。

正式名称
エイラと外つ国の王
ふりがな
えいらととつくにのおう
作者
ジャンル
ダークファンタジー
 
恋愛
レーベル
ボニータ・コミックス(秋田書店)
巻数
既刊9巻
関連商品
Amazon 楽天

あらすじ

政略結婚

グランツフォレア半島の南に位置するゴルトフルーエは、北側に隣接する国ロートフェルゼと領地を巡って戦争が続いていた。そんな中、ロートフェルゼの使者により、ゴルトフルーエの姫エイラとロートフェルゼの第一王子アロルドの縁談が持ち込まれる。これにより、長いあいだ続いていた戦争を終結させ、同盟を結びたいという意向だった。ゴルトフルーエの王イデオンと王妃リディアは、この話に前向きな姿勢を見せ、エイラに打診するが、エイラの双子の兄エリアスは、まだ15歳の妹に結婚は早すぎると大反対する。さらにエリアスは、この結婚にもう一つ大きな懸念を抱いていた。それは、ロートフェルゼの城に嫁いだ歴代の娘たちの姿を、その後見た者はいないという噂だった。だがイデオンは、そんな不穏な噂を気にしつつも、きっと不幸な出来事が重なっただけにすぎないとその不安にふたをし、断腸の思いでエイラを嫁がせることを決める。一方のエイラは、王家の姫として覚悟を決めていたため、この縁談を承諾。敵国という不安もあったが、エイラは早く相手に会ってみたいという楽しみも感じていた。それは、肖像画に描かれたアロルドが非常に美しい青年だったからであった。そしてエイラは16歳の誕生日当日、大切な友達の黒猫ロロンだけを唯一のお供に、ロートフェルゼへと出発する。たった一人、不安げな面持ちのエイラを王宮で迎えたのは、ロートフェルゼの王レナルトと王女デシーリア、そして夫となる王子アロルドだった。エイラは、アロルドが肖像画と寸分たがわぬ美しい姿であることに驚き、優しく誠実で紳士的な振る舞いのアロルドに心惹かれていく。そんな中、三人の侍女たちとも良好な関係を築き、エイラの新生活は順調なすべり出しを見せるが、エイラとアロルドの結婚式当日、第二王子ダグラスが不穏な動きを見せる。

吸血鬼

エイラは、ダグラスから襲われかけたことで、ロートフェルゼの王宮にいるほとんどの者が、血の一族「吸血鬼」であるという事実を知る。そして、アロルド自らの口から語られたのは、もともと人間によっておさめられていたこの国が、何百年もの年月をかけ、レナルトデシーリアによって吸血鬼にされたという衝撃の事実だった。そしてアロルドは、この先何百年も生きることになるであろう自分の伴侶に、エイラが選ばれたことを明かす。それは、エイラを吸血鬼の一族に迎えることを意味していた。それまで、ロートフェルゼではこの国に嫁いできた姫に、一族に加わるか否かの選択権が与えられることはなく、血の交わりののち、仲間となって目を覚ますかもしくは死ぬかしかなかった。しかし、アロルドはエイラの気持ちを大切にしたいと考え、一族の仲間になるか、もしくはゴルトフルーエに逃げるかの選択肢を与え、もし帰りたいならば、逃亡のために手を尽くすと申し出る。ジョークと笑い飛ばすにはあまりにも不気味な話で、得体の知れない恐ろしさに、エイラは逃げ出したい気持ちを抱くが、何よりアロルドを愛する強い気持ちが、エイラに吸血鬼になるといういばらの道へ進むことを決意させる。アロルドは、そんなエイラの気持ちを受け、自分もエイラとこの先の長い日々を共に暮らしたいと、エイラに伝える。アロルドは、異性の血を受け付けないという特殊体質の持ち主だったが、たとえ体が拒絶しようとも、エイラの血を飲み干すという強い決意とともに、全身全霊をかけてエイラを愛することを誓い、自分の血を受け取ってほしいとエイラに優しくせまる。二人は意を決して血の交わりを行い、朝を迎えて無事目を覚ましたエイラは、自分の身に起きた変化に気づき、愕然とする。エイラは、男性の姿になってしまっていたのだ。その姿に、アロルドも驚きを隠せないが、同時にエイラが不完全体の吸血鬼になってしまった可能性を考え、このことが王や女王に知られれば処刑されるかもしれないと、エイラを城から逃がそうとする。しかしエイラは自分が男性体になったことで、異性の血が飲めないアロルドに血を与えることができると気づき、二人で一つの完全体となって、共に生きたいと願うのだった。

ハーケル

ハーケルの王子オーヴェンは、北側の隣国ロートフェルゼが秘密裏にゴルトフルーエと同盟を結んだことを知り、自分たちを裏切ったと憤慨。もともと自国との同盟のために結婚し、妃にしたはずだったロートフェルゼの姫キルセナに対し、用はなくなったとばかりに暴力を振るい、手かせをはめて塔に閉じ込めてしまう。偵察によってその事実を知ったロートフェルゼの王レナルトと女王デシーリアは、すぐにでもキルセナを取り戻そうと、「翼」と呼ばれる獣人部隊をハーケルへと送り込み、キルセナ奪還をもくろむ。アロルドダグラスは、国境付近までキルセナを迎えに行くことになり、男性体のエイラは従者としてそれに同行することにした。その頃、ハーケルでは奪還部隊の一人、ミリヤによってキルセナが塔から連れ出され、国境付近を目指して空を飛んでいた。しかし、ハーケルから差し向けられた怪しげな術師によってあえなく撃ち落とされ、ミリヤは帰らぬ人となってしまう。その後、キルセナはミリヤから託された笛を手に、単身国境へと向かう。ボロボロになって到着したキルセナの姿に最初に気づいたのは、エイラだった。キルセナはロートフェルゼの一行と無事合流を果たし、自国へとたどり着くが、その際ずっと従者としてそばにいた男性の微妙な変化に気づく。そして平穏な日常を取り戻したある日、キルセナは借りたマントを返したいという理由で、アロルドに従者を部屋に呼ぶように頼む。エイラは、キルセナを警戒しつつ、用が済んだらすぐに出て行くつもりでいたが、エイラが男性としてアロルドからの寵愛を受けているとキルセナがカンちがいしていることを知り、アロルドの妻は自分なのだとつい秘密を口にしてしまう。そしてエイラは、アロルドとの血の交わりののち、男性体となって目を覚ましたこと、不完全体の吸血鬼となった事実を知られれば、身の危険が及ぶことをキルセナに打ち明ける。すると、アロルドと共に生きたいと願うエイラの健気な様子に心を打たれたキルセナは、彼女を受け入れる。エイラとなかよくなりたいと願ったキルセナは、エイラを部屋に引き止め、夜通しおしゃべりに興じ、エイラの味方になることを約束する。翌朝早く、自室に戻ろうとしたエイラは、のぼったばかりの朝日を浴びたことで女性体へと戻る。すると、そこを運悪く通りかかったダグラスにその姿を見られてしまう。

不完全体

エイラは、自分が不完全体の吸血鬼であることをレナルトデシーリアに知られ、地下牢に閉じ込められてしまうが、アロルドキルセナロロンのおかげで、なんとか城から脱することに成功する。その後、エイラはロロンと共に人目を避けて森へと逃げ込み、野宿を続けて5日が経過。城からの追っ手はエイラを捜そうと躍起になっていたが、別れ際にアロルドの血を飲んだおかげで、エイラの姿は男性体を維持しており、エイラにとってはむしろ好都合だった。そんな中、エイラとロロンは、森の中でひっそりと建つ小さな小屋を見つける。身を隠すために利用させてもらおうと、小屋に入った二人は、そこで恐ろしいうめき声を耳にする。小屋の奥にいたのは、手足を縛られた女性だった。彼女は血が欲しいともだえ苦しみ、エイラに襲い掛かろうとする。するとそこに、アイモウーリエと名乗る不完全体の吸血鬼の男女二人組が姿を現す。そして、エイラも同じく吸血鬼であることを知ったウーリエは、自分たちの説明を始める。この小屋は、有志の不完全体の吸血鬼によって作られた地下組織の隠れ家であり、不完全体の吸血鬼になった者のうち、人間に戻ることを希望する者だけを集め、「血断ち」の手伝いをしているというのだ。ひととおりの話を聞いたエイラは、驚きとともに一筋の希望を見いだす。そして、アイモとウーリエに女性に戻る姿を見せ、自分が王宮から逃げてきた姫であることを明かす。一方王宮では、アロルドがエイラを逃がしたことが発覚し、ダグラスの提案でアロルドは地下牢に閉じ込められていた。だが、エイラを逃がした時に偶然発見した小部屋で見た、自分そっくりの肖像画のことが気になって仕方なかったアロルドは、番人をうまく騙して牢を抜け出し、小部屋へと向かう。そして再び肖像画を見ようとした時、やって来たレナルトと鉢合わせしてしまう。アロルドが思い切って肖像画に描かれた男性についての話を切り出すと、レナルトはあらためて肖像画の前までアロルドを招き入れ、この男性がアロルドの実の父親であることを明かす。実はレナルトはアロルドの父親に大恩があり、アロルドを次期王として推挙するにはそこに大きな理由があったのだ。それを知ったアロルドは、その関係性を利用させてもらうと宣言し、不完全体の吸血鬼となったエイラを自分の妻として認めてほしいとレナルトに強くせまる。

ヴィゼスト

グランツフォレア半島から海を隔てて東に位置する穏やかな国ヴィゼストには、姉妹の姫レナルルカがいた。彼女たちの父親である現王は、病で長きにわたって床に伏していたが、姉姫であるレナに国を導くようにと引導を渡し、この世を去る。これによって女王となったレナは、気丈にも新王としての決意を胸に生きることになる。同時に妹ルルカには、縁談が持ち上がっていた。相手はゴルトフルーエの王子エリアスで、以前ハーケルの王子オーヴェンからの求婚を断ったことがあったが、今度の縁談には前向きだった。一方、ロートフェルゼでは、不完全体の吸血鬼となったエイラが、アロルドの妃として正式に認められることとなった。さらに、侍女イリスへの隷属の魅了ダグラス自身によって解かれたことで、イリスはようやく自分を取り戻し、エイラのもとに戻ることができた。ようやくエイラにも平穏な日が戻ると思った矢先、ロートフェルゼにもヴィゼスト王逝去の知らせが入り、エイラと同じ年頃の姫が女王となることを知る。レナルトデシーリアの提案により、エイラとアロルドは弔問のためにヴィゼストに向かうことが決まり、ロロンとイリスもそれに同行することとなる。

登場人物・キャラクター

エイラ

ゴルトフルーエの姫で、エリアスの双子の妹。年齢は15歳。長く美しい銀髪を持ち、弱々しい印象を与えるが芯は強く、物おじしない性格をしている。敵国ロートフェルゼ側からの要望により、アロルドとの縁談を受け入れ、16歳の誕生日に輿入れすることになった。アロルドの肖像画を見てその美しさに心惹かれ、嫁ぎ先で実際にアロルドに会って、彼を愛するのに時間はかからなかった。その後、ロートフェルゼの王宮内にいる者たちがすべて吸血鬼であることを知り、恐怖する。しかし、自らも吸血鬼であるアロルドからすべてを打ち明けられ、告白を受けると、エイラ自身も吸血鬼となって今後の長い人生をアロルドと共に生きたいと強く願うようになる。そして、すべてを覚悟してアロルドと血の交わりを行って目を覚ますが、肉体が男性へと変化していた。これによって不完全体になったと判断され、レナルトとデシーリアから一時的に命を狙われることになるが、吸血鬼としてアロルドと添い遂げたいという強い意思を示し、和解した。吸血鬼になってからは、アロルドの血を飲むと体は男性へと変化し、顔立ちも兄のエリアスによく似た風貌へと変化するが、朝日を浴びることで元に戻る。また飲む血に関しては、アロルドのもの以外は受け付けない体質となっている。幼い頃からいっしょに過ごしている獣人ロロンとは、非常に親しい関係で、ロートフェルゼに嫁ぐ際には、お付きの者を連れていけない代わりに、ペットと偽って黒猫の姿のロロンを連れて行った。

アロルド

ロートフェルゼの第一王子。自国のため、敵国ゴルトフルーエの美姫エイラとの縁談を受けることになった。エイラの肖像画を見てその美しさに心奪われ、実際にエイラに会って、彼女を愛するのに時間はかからなかった。心優しい美青年だが、実は吸血鬼。本来好むはずの異性の血を受け付けない体質で、男性の血を飲んで生き延びている。しかし、最近は血を飲むこと自体が嫌になり、もう長いあいだ血を口にしていない。そのため、頻繁に体調不良に襲われており、血を飲まないことで体に劣化の兆しが表れているのではないかと考えられている。吸血鬼という存在にもどこかで疑問を感じている様子で、相手を意のままにあやつろうという意思はなく、たとえアロルド自身が血を分けた相手であっても隷属の魅了を使わないという強い意思を持っている。次期国王として妃をめとらなければならないが、エイラにすべての事情を打ち明け、仲間になるのも自国に帰るのも自由だと、エイラに選択肢を与えた。しかしエイラからの強い希望により、彼女を吸血鬼として迎え入れることに決め、体質に合わないことを厭わず、死ぬ気でエイラの血を飲むことを宣言。エイラを生涯愛することを誓い、エイラに自分の血を分け与えた。その後は不完全体となったエイラを守り、男性の体となったエイラの血を飲むことで皮肉にも吸血鬼としての自分を維持することになる。また、それまで知らなかった自分の出自が、もともとロートフェルゼをおさめていた人間の王の直子だったことを知る。現国王レナルトと女王デシーリアとのあいだに血縁関係はなく、第二王子ダグラスとも実の兄弟ではないことは知っていたが、もともとの王の子だったことは知らなかった。その後、レナルトが大恩を感じているという元王の子という立場を利用し、エイラを自分の妃として認めさせることに成功する。これにより、エイラとの関係も深めていくことにつながった。好きな色は青色。

ダグラス

ロートフェルゼの第二王子。国王レナルトと女王デシーリアの直子であり、繁殖能力が低いとされているはずの吸血鬼の父母から生まれた生粋の吸血鬼。血縁関係はないものの、表向きはアロルドの弟として振る舞っている。目的のためには手段を選ばない辛辣な性格で、アロルドとはまた違った美しさを持つ。現状はアロルドが次期国王になることで物事が進められているが、それに納得できず、サラブレッドである自分こそが次の国王になるべきという強い考えを持っている。エイラが嫁いだ日、王宮の庭園でポーラを襲おうとして逃げられ、後日、イリスを襲った際にロロンに見られ、攻撃してきたロロンに反撃し、ケガを負わせた。吸血鬼として血の交わりを持つことに非常に貪欲で、簡単に女性に手を出す傾向にあり、部屋ではいつも多くの女性をはべらせている。アロルドが王になるのを阻止するため、その鍵をにぎるエイラを亡き者にしようと画策し、隷属の魅了によってイリスにエイラを殺すように命じた。しかし、その後エイラが不完全体の吸血鬼になったことに気づき、レナルトとデシーリアのもとに突き出した。次代の王に正しい者を選ぼうとしない父親への疑念が増幅し、まちがった王は廃すべきなのではと思い詰めるようになる。

ロロン

いつもエイラのそばにいる黒猫で、快活で警戒心が非常に強い。ふだんは黒猫の姿をしているが、実は獣人。人間の姿になることもでき、その時は耳と尻尾の生えた少年の姿になる。もともと行き倒れていたところを、エイラに助けられ、その後も城に置いてもらっていたため、エイラには恩義を感じている。エイラがロートフェルゼに嫁ぐことが決まり、エイラからの頼みでいっしょにロートフェルゼへと向かう。ある時、王宮の庭園でイリスがダグラスに襲われているのを目撃し、イリスを助けようとダグラスに攻撃するが、反撃されて深手を負ってしまう。実はもともと諜報員のような形で、ヴィゼストに仕える存在。5年ほど前、調査のために秘密裏にゴルトフルーエへと入り込み、ヴィゼストの姉妹姫であるレナとルルカに定期的な報告を続けていた。しかし、エイラにかわいがってもらい、親しくなったため、ロートフェルゼに同行したことをきっかけにヴィゼストへの調査報告を終了することを決めた。

イリス

ロートフェルゼの王宮で、エイラに仕えることになった三人の侍女のうちの一人。明るく元気一杯で、おしゃべりが大好き。最近田舎から出て来たばかりで失敗も多く、天然な性格をしている。しかし教養があり、もともとは実家の商家で手伝いをしていたため、数字に関しては非常に強い。エイラとはすぐに打ち解け、友達のようになかよくなるが、その後ダグラスから襲われ、不完全体の吸血鬼となってしまう。ダグラスからは隷属の魅了をかけられており、一つ目は人間の血を飲まないこと、二つ目はダグラスのもとに戻ること、三つ目はエイラを殺すことで、その力には抗うことができない。エイラを陥れ、殺害しようと考えるダグラスの片棒を担がされることになるが、心の底ではエイラを慕っているため、心と体の相反する行動に苦しんでいる。のちに、ダグラスの命でエイラ付きをはずされることとなり、ダグラス付きの侍女にさせられてしまうが、エイラによって助けられた。その後エイラの機転でダグラスから二つ目と三つ目の魅了を解かれ、無事エイラのもとへと戻ることになる。吸血鬼から人間に戻るために、「血断ち」をする予定ではあるが、エイラとアロルドがヴィゼストを訪れることになり、ひとまず吸血鬼のまま同行すると決めた。

マイヤ

ロートフェルゼの王宮で、エイラに仕えることになった三人の侍女のうちの一人。巻き毛の髪をまとめたかわいらしい雰囲気を漂わせている。いつも明るく、仕事仲間であるポーラやイリスとは仲がいい。吸血鬼に関してのことは何も知らない。

ポーラ

ロートフェルゼの王宮で、エイラに仕えることになった三人の侍女のうちの一人。王宮の庭園で、ダグラスから乱暴をされそうになっていたところを、エイラとアロルドに目撃され、未遂に終わった。その後、何かとがめられるのではないかとビクビクしている。仕事仲間であるマイヤやイリスとは仲がいい。吸血鬼に関してのことは何も知らない。

リーナ

ロートフェルゼの王宮で、侍女頭を務める吸血鬼の女性。凛としていて何事にも厳格な性格をしている。ゴルトフルーエから王宮に嫁いできたエイラに仕えることになったイリス、マイヤ、ポーラの三人を監督する責任者でもある。無表情ながら、いつもしっかりと仕事をこなし、気配りを忘れない。

サーラ

小鳥の姿の獣人。人間の姿になることもでき、その時はロングヘアで快活な女性となる。主にエリアスに従って働いており、ゴルトフルーエとロートフェルゼのあいだで伝達係として行動している。少々口うるさいところがある。

オーヴェン

ハーケルの王子。頭が固く、癇癪持ちで子供っぽい性格をしている。自国のために、ロートフェルゼの姫キルセナと結婚したが、ロートフェルゼがゴルトフルーエと同盟を結んだことを知って激昂。キルセナに暴力を振るい、手かせをはめたうえで塔に閉じ込めた。最近、海を挟んで南に位置する国ゲハイムニースの術師を出入りさせ、魔法陣を描かせているという不穏な噂が立っている。以前、ヴィゼストの妹姫ルルカに求婚して断られたことがある。

キルセナ

ロートフェルゼの姫で、アロルドとダグラスの妹。もともとは人間で、デシーリアと血の交わりを行ったことで完全体の吸血鬼となった。隣国のハーケルを油断させるために、ハーケルの王子オーヴェンのもとに嫁いだ。あわよくばキルセナ自身の力で秘密裏に吸血鬼の仲間を増やそうと考えていたが、その後、ロートフェルゼにエイラが輿入れしたことで、ゴルトフルーエとロートフェルゼが同盟を結んだことを知り、オーヴェンが激昂。暴力を受けたうえ、手かせをはめられて塔に閉じ込められてしまう。その後ミリヤによって助け出され、なんとか自国へと帰ることができた。その際に知り合ったのが男性の体になったエイラだった。男性としてエイラがアロルドの寵愛を受けているとカンちがいするが、その後誤解が解け、エイラこそがアロルドの妻であることを知った。エイラが不完全体の吸血鬼となったいきさつを聞いて以来、本当の姉妹のようになかよくなり、エイラのよき理解者として、何かと協力するようになる。

ミリヤ

ミミズクの姿の獣人で、シエルの兄。人間の姿になることもでき、その時は大きな翼を持った青年の姿で、シエルとよく似ている。ロートフェルゼで「翼」と呼ばれる存在の一員で、レナルトやデシーリアからの命でロートフェルゼのために行動している。ハーケルで塔に幽閉されたキルセナを奪還したが、仲間と合流する予定だった場所で、敵の追撃に遭って命を落とす。キルセナからは「ミミズクさん」と呼ばれていた。

シエル

ミミズクの姿の獣人で、ミリヤの弟。人間の姿になることもでき、その時は大きな翼を持った青年の姿で、ミリヤとよく似ている。「翼」と呼ばれる存在の一員で、自分たちの一族は、過去にハーケルでの異種弾圧から逃れ、流れ着いた先祖をロートフェルゼに救ってもらったことがある。そこに大恩を感じているため、レナルトやデシーリアからの命でロートフェルゼのために行動している。ミリヤと協力し、ハーケルで塔に幽閉されたキルセナを奪還するために動いていたが、合流予定の場所で落ち合うことができず、キルセナから兄が死んだ事実を聞かされることとなった。

ウーリエ

不完全体の吸血鬼の女性。自分を吸血鬼にした親吸血鬼から、特に目をかけられることなく自由に振る舞っている。そんな不完全体の吸血鬼同士で呼応し合い、作られた地下組織に属しており、秘密裏に不完全体の吸血鬼の「血断ち」を行い、人間に戻すための手助けをしている。希望する者を人間に戻すため、ロートフェルゼ国内にいくつかの隠れ家を有し、そこで約1か月間血を飲まずに耐え、血断ちをさせることで不完全体の吸血鬼を人間に戻す。そうして仲間を増やし、いつか完全体の吸血鬼の鼻をあかしたいと考えている。ウーリエ自身はこの地下組織の中でもかなり古株で、この計画に長く携わるために吸血鬼のままの状態を保っており、血断ちを行っていない。ただし、親吸血鬼から隷属の魅了がかけられ、人間の血を吸うなという魅了のみが有効となっているため、人を襲うことはない。ある時、森の中にある隠れ家で、エイラと知り合い、エイラが不完全体の吸血鬼であることや、地下牢に幽閉されていたこと、命を狙われ追われていることなど、彼女が抱える事情を知る。そして、すべてを知ったうえで、エイラと彼女を助けに来た第一王子アロルドと手を組むことを決め、将来的にアロルドが王となった際には、水面下で協力し合うことを誓約書に記し、約束を交わした。親吸血鬼は「ヴィニカ」という名の男性。基本的にいつもアイモと行動を共にしている。

アイモ

不完全体の吸血鬼の男性。自分を吸血鬼にした親吸血鬼から、特に目をかけられることなく自由に振る舞っている。そんな不完全体の吸血鬼同士で呼応し合い、作られた地下組織に属しており、秘密裏に不完全体の吸血鬼の「血断ち」を行い、人間に戻すための手助けを行っている。希望する者を人間に戻すため、ロートフェルゼ国内にいくつかの隠れ家を有し、そこで約1か月間血を飲まずに耐え、血断ちをさせることで不完全体の吸血鬼を人間に戻す。そうして仲間を増やし、いつか完全体の吸血鬼の鼻をあかしたいと考えている。アイモ自身はこの計画に長く携わるために吸血鬼のままの状態を保っており、血断ちを行っていない。ただし、親吸血鬼から隷属の魅了がかけられ、人間の血を吸うなという魅了のみが有効となっているため、人を襲うことはない。基本的にいつもウーリエと行動を共にしている。

レナ

ヴィゼストの姫で、ルルカの姉。しっかり者で、長く病に伏せていた父親である王が身まかり、新女王としてヴィゼストをおさめる立場となる。浅黒い肌で、美しいロングヘアをしている。

ルルカ

ヴィゼストの姫で、レナの妹。多くの縁談が持ち掛けられる中、結婚相手選びにはかなり慎重な姿勢を見せている。以前、ハーケルの王子オーヴェンから求婚されたことがあるが、その陰険な性格を知って断ったことがある。その後、父親である王が身まかり、レナが女王として君臨することが決まった時、ゴルトフルーエの王子エリアスから結婚の申し出を受ける。浅黒い肌で、ロングヘアを三つ編みにして束ねている。

レナルト

ロートフェルゼの国王で、吸血鬼の男性。優しく穏やかな性格をしている。何百年にもわたり、生き永らえているが、最近肉体の衰えを感じ始めている。もともとは、一吸血鬼としてデシーリアと共にロートフェルゼに入り込み、何百年もかけて仲間を増やしたことで、現在の王宮の状態を作り上げた。次期国王にアロルドを据えようと考えているが、いつまでもアロルドが花嫁をめとろうとしないため、頓挫している。しびれを切らしたデシーリアからは、アロルドの代わりにデシーリアとのあいだにもうけたダグラスを国王にするようにと勧められているが、アロルドを国王に据える気持ちは変わっていない。実は、もともとロートフェルゼの王として君臨していた人間の男性に大恩を感じており、数百年前、その王の子であるアロルドを彼の代わりに育てることを誓った。レナルト自身の息子であるダグラスではなく、アロルドを王に据えようとするのには、大きな理由があった。その後、アロルドの妻として迎えたエイラが、不完全体の吸血鬼となったことを知って地下牢に幽閉するが、自らの出自を知ったアロルドにより、エイラを認めるように強く求められ、最終的にはそれに応じる形となった。

デシーリア

ロートフェルゼの女王で、吸血鬼の女性。気性が荒く、気の強い性格をしている。薬草に関する知識が豊富。何百年にもわたり、生き永らえているが、最近肉体の衰えを感じ始めている。もともとは、一吸血鬼としてレナルトと共にロートフェルゼに入り込み、何百年もかけて仲間を増やしたことで、現在の王宮の状態を作り上げた。レナルトが次期国王にアロルドを据えようとしていることに賛同はしているが、いつまでも花嫁をめとろうとしないため、事の進みが遅れていることに苛立っている。女性の血を吸おうとしないアロルドが、完全体ではないのではないかと訝しんでおり、アロルドの代わりにレナルトとのあいだにもうけたダグラスを国王に据えたいと考えている。その後、アロルドの妻として迎えたエイラが、不完全体の吸血鬼となったことを知り、エイラには下働きとして王宮にとどまるか、もしくは死かの二者択一をせまった。しかし、エイラが言うことを聞こうとしなかったため、地下牢に幽閉した。

アンブロス・ブラウソン

ロートフェルゼの国王レナルトの臣下の男性。卿の位を有する。美しい顔立ちだが、どことなく冷たい印象を与える。のちに、アロルドとエイラが弔問のためにヴィゼストを訪れることになった際に、同行することになる。

イデオン

ゴルトフルーエの国王で、エイラとエリアスの父親。領土を巡って戦争を続けていたロートフェルゼから、和平の証としてエイラを差し出すように要求され、それを受け入れた。今後の自国の平和と、エイラが一国の王妃となることには満足しているが、ロートフェルゼの噂が気に掛かり、エイラを嫁がせることは、内心不安に思っている。

リディア

ゴルトフルーエの王妃で、エイラとエリアスの母親。戦争を続けていたロートフェルゼから、第一王子アロルドとエイラの縁談の話があり、それを今後の平和が約束され、さらにエイラが一国の王妃となる絶好のチャンスととらえ、前向きに受け入れた。リディア自身がイデオンのもとに嫁いだのは16歳の時だったこともあり、15歳のエイラが嫁ぐことにはまったく抵抗はない。また、エイラには幼い頃から王家に生まれた宿命として、外つ国への輿入れを覚悟するようにと言い聞かせていた。そのため、エイラの縁談に難色を示すエリアスを強くたしなめ、エイラを笑顔で送り出した。

エリアス

ゴルトフルーエの王子で、エイラの双子の兄。年齢は15歳。エイラのことを非常に大切に思っており、ロートフェルゼ側からの一方的な要望によって決定した、エイラとアロルドとの縁談には大反対した。エイラが嫁いでからも、サーラに依頼して様子を確認してもらうなど、エイラのことをいつも気に掛けている。のちに、ハーケルの動きを怪しみ、友好関係にあるヴィゼストと自国を守るための同盟を結ぶ目的で、ヴィゼストの姉妹姫の妹にあたるルルカに求婚することとなる。

場所

ロートフェルゼ

グランツフォレア半島の北側に位置する国。南の片側に隣接する二国の中で、ハーケルとは自国の姫キルセナを輿入れさせることで友好関係をかろうじて維持している。もう一国のゴルトフルーエとは、領土を巡って戦争を続けていたが、ゴルトフルーエの姫エイラと自国の王子アロルドの縁談によって同盟を結び、戦争を終結させた。もともと一小国だったが、最近破竹の勢いで勢力を拡大し、隣接する国々を脅かすようになり、不穏な噂もささやかれている。それは、この国に入った娘は誰一人出てくる者はいないというもの。歴代何人もの娘がこの国に嫁いできたが、その後再び姿を見る者はなかったという。それらすべては吸血鬼が国を率いているために起きている。国をおさめる王レナルトと女王デシーリアにより、たくさんの人間を吸血鬼にしようとの試みが行われたが、ほんの一握りの者だけが完全体となり、大半が死ぬか、もしくは不完全体の吸血鬼となった。また、これまでロートフェルゼに嫁いできた女性たちに、一族に加わるか否かの選択権が与えられたことはなく、基本的には同意のない血の交わりにより、変化させられた。しかし、仲間に引き入れようとしても、不完全体になることが多く、そのほとんどが表向きには寒い国の病にかかって死んだものとして処理されてきた。一方で、一族に加えられた一握りの完全体には地位が与えられ、国王の側近として採用され、不完全体となった吸血鬼のうち一部の者は下働きに就いているため、王宮内の貴族は吸血鬼のみで成り立っている。

ゴルトフルーエ

グランツフォレア半島の南側に位置する国で、ハーケルと東西で土地を二分し、東側半分を有している。国王イデオンと王妃リディアによって統治されている。北側に隣接するロートフェルゼと領土を巡る戦争を続けていたが、自国の姫エイラとロートフェルゼの王子アロルドの縁談によって戦争を終結させ、平和の同盟を結ぶこととなった。しかし、ハーケルからは自国の領土である離れ小島のブラオゾ島が狙われている状況にあり、未だ安心できる状態ではない。東側の海を隔てた先にあるヴィゼストとは、友好関係にあるが、はっきりとした同盟を結んだわけではない。ハーケルが自国を狙って攻めてくることを鑑み、その対抗策としてヴィゼストとの同盟を結ぶべく自国の王子エリアスをヴィゼストの妹姫ルルカに求婚させようと試みる。

ハーケル

グランツフォレア半島の南側に位置する国で、ゴルトフルーエと東西で土地を二分し、西側半分を有している。人間以外の異種を弾圧し、排除し続けるお国柄で、他国との関係に非常に敏感。王子であるオーヴェンは頭が固く、癇癪持ちの問題児である。ロートフェルゼとの友好関係を維持するため、ロートフェルゼの姫キルセナを受け入れ、オーヴェンと結婚させたが、その後ロートフェルゼとゴルトフルーエのあいだに同盟が結ばれたことを知り、自国がないがしろにされたと激昂。キルセナを塔に閉じ込め、国としてロートフェルゼに反旗を翻すことになる。最近は海を挟んで南に位置する国、ゲハイムニースの術師が出入りしているとの噂があり、何やら魔法陣を描いていると不穏な噂が立っている。そのため、自国からゲハイムニースに渡るための足掛かりとなる、ゴルトフルーエ領土の離れ小島であるブラオゾ島を手中におさめようと画策している。

ヴィゼスト

グランツフォレア半島の海を隔てて東に位置する国。西側半分が海に面し、穏やかな気候で美しい景色が魅力。この世界には珍しく竜がいる国としても有名。姉妹の姫であるレナとルルカがいて、ルルカは以前、ハーケルのオーヴェンからの求婚を断ったことがある。その後、友好関係にあるゴルトフルーエの王子エリアスから求婚を受けることとなる。レナは、病気で伏せていた父親である王が身まかり、新しく女王として君臨することになる。

その他キーワード

吸血鬼 (きゅうけつき)

ロートフェルゼにはびこる血の一族。生き物の血を飲むことで続いてきた眷属で、赤い瞳を持ち、人間からは忌み嫌われている存在。不死ではないものの、非常に長生きで、それなりの年を経るとゆるやかに劣化が始まる。... 関連ページ:吸血鬼

隷属の魅了 (れいぞくのみりょう)

吸血鬼の中で、自分が血を分けた相手に対してのみ使うことができる呪いのようなもの。自分が主となり、血を分け与えて作り出した不完全体の吸血鬼にのみ有効で、自分の言うことを聞き、下僕になるように、あらゆることを命じることができる。親吸血鬼からこれをかけられた不完全体の吸血鬼は、従わざるを得ず、自我を保つことはできるが、主の命令に逆らうことはできない。完全体の吸血鬼になれば、隷属の魅了がかからず独自の判断を貫くことが可能。主である親吸血鬼が亡くなった場合、その吸血鬼がかけた隷属の魅了は解けてなくなり、その吸血鬼が抱えていた不完全体の吸血鬼は一気に自由の身となる。そのため、パニックを起こさないためにも、周りの吸血鬼が、解放された不完全体を殺害するなどして一斉に処分にあたることになっている。力が強く、隷属の手下が多い吸血鬼ほど、死ぬときは大ごとになる。

書誌情報

エイラと外つ国の王 9巻 秋田書店〈ボニータ・コミックス〉

第6巻

(2022-06-16発行、 978-4253264198)

第7巻

(2022-12-15発行、 978-4253264204)

第8巻

(2023-09-14発行、 978-4253265867)

第9巻

(2024-03-14発行、 978-4253265874)

SHARE
EC
Amazon
logo