森林王「モリキング」の誕生
小学生の藍川翔太は、父親が買ってくれたカブトムシの幼虫に「モリキング」と名づけて大事に飼育していた。そんなある日、姉の勝子と共にさなぎの羽化を見届けていたところ、モリキングは突然変異し、頭から角を生やした全裸のイケメン青年へと変態する。翔太はモリキングの姿に無邪気に喜ぶものの、勝子は突然の不審者の出現に警戒心をあらわにする。なんとかモリキングを追い出そうと勝子は奮闘するが、モリキングのモラルが崩壊した奇々怪々な言動に勝子は頭を抱えてしまう。
「森林王」決定戦が開幕
モリキングは山梨県韮崎市の王都メガロコナラ出身で、虫たちの王「森林王」となる存在として誕生した。生まれてまもなくモリキングは世界を知るべく、幼虫の姿のまま外の世界に飛び出すもののペット業者に捕まり、藍川一家に買われて現在に至る。勝子はモリキングから事情を聞いて頭を抱えるものの、森林王にはさらに多くの候補者がおり、彼らも人間の姿に突然変異したことを知る。これ以上、モリキングとかかわっていられないと半ば放置状態にしていた勝子だったが、モリキング同様に森林王を目指す虫たちが次から次へと勝子の前に現れ、彼女をパニックに陥れる。
不条理な日常が繰り広げられる
長谷川智広の作品は、豊富なボキャブラリーによるシュールギャグが特徴で、主人公はいずれも常軌を逸している。本作も登場人物たちの容赦のないボケとツッコミの応酬が見どころとなっている。また、長谷川は大の『BLEACH』ファンであることを公言しており、本作にも『BLEACH』のパロディが散りばめられている。なお。長谷川は大の機械音痴で本作も全編とおしてアナログ原稿となっているが、本作の連載終了後、集英社の企画でデジタル原稿へと転向した。その顚末は『長谷川智広のデジタル作画奮闘記』に描かれており、本作のデジタル原画版を再執筆したものが掲載されている。
登場人物・キャラクター
モリキング
藍川家で飼われているカブトムシ。さなぎから羽化する際に突然変異して人間の姿へと変態した。性別はオスで、頭にカブトムシ特有の大きな一本角が生えている。眉目秀麗で、無駄に爽やかな雰囲気を漂わせている金髪イケメン。飼い主である藍川翔太とは、種族を超えた固い絆で結ばれている。しかし、意味不明な言葉と理解不能な謎の行動で、姉の藍川勝子からは不審者扱いされている。カブトムシ特有の圧倒的なタフネスさとパワーを誇り、本気で戦うときはまわし姿となる。すべての虫たちの王である「森林王」を目指し、日々精進を続けている。ただし、モリキング自身は「王とは民を導く者」との考えから、力による解決よりも対話によって森林王を目指したいと考えている。
藍川 勝子 (あいかわ しょうこ)
とある高校に通う1年生の女子。茶髪をポニーテールにしている。明るく朗らかな性格で、中学時代は柔道で全国大会を制覇した猛者。長女のために面倒見がよく、藍川勝子自身は虫嫌いなのに、虫が大好きな弟の藍川翔太と共にカブトムシのモリキングをいっしょに育てていた。モリキングが突然変異したあとは、真っ先にモリキングを不審者扱いして追い出そうとした。基本的にツッコミ担当で、モリキングの起こしたさまざまなトラブルの後始末をしている。なぜか突然変異した虫に好かれやすく、モリキング以外の虫ともよく遭遇する。
藍川 翔太 (あいかわ しょうた)
とある小学校に通う3年生の男子。眼鏡をかけた利発そうな少年で、昆虫が大好き。父親にカブトムシの幼虫を買ってもらい、「モリキング」と名づけて大切に育てていた。そんなある日、羽化をしたモリキングが突然変異を起こしてイケメンな人間の姿になるが、その事実をあっさり受け入れ、彼と友情を育むようになる。よくも悪くも純粋無垢な性格のため、姉の藍川勝子からよくツッコミを食らっている。カブトムシに限らず昆虫に関する造詣が深く、バトルのときに解説を担当することが多い。