病弱な少年が「武」の心で成長を果たす
ローゼンバッハ公国で生まれた嵐流星は、生まれつき体が弱く病院生活を送っていたが、体質改善のために日本に帰国する。そして治療を受ける傍らで、父親の嵐武則から柔道を学んでいた。しかし流星の病気は完治することはなく、将来に希望を持てないまま、間近に控えた手術に恐怖心を抱いていた。そんな中、武則が強引にエントリーした第23回少年柔道親善大会に参加し、同年代の柔道経験者から次々と一本勝ちを収めたことで自信を取り戻し、手術も成功する。こうして、健康な体を手に入れた流星は、柔道をとおしてさらにたくましく成長していく。
スポーツと異なる実戦的な柔道
嵐流星や五条橋四郎の師に当たる嵐武則は、かつてローゼンバッハ公国で警護を務めており、日本に帰国してからは武心館の館長を務める傍らで、世界中の警察や軍に実戦的な柔道「警護柔術」を教えている。彼の提唱する「実戦的な柔道」は、投げ技以上に当て身などの打撃技が重要視され、その危険性から柔道大会を運営している関係者からは快く思われていなかった。だが、実戦的な武術を学びたい人々にとっては望ましいもので、四郎が武心館に所属しているのも武則から警護柔術を学ぶためである。流星もまた、武則から警護柔術を学んでおり、やがて武則と共に生まれ育ったローゼンバッハ公国へと赴くと、警護の仕事をとおして修練の成果を存分に発揮する。
ローゼンバッハ公国を脅かすテロリスト
嵐流星の生まれ故郷であるローゼンバッハ公国は、風光明媚な景観が魅力ながら、長らく政情不安に悩まされている。王室関係者は大小さまざまなテロ組織から暗殺者を差し向けられていたが、その度に嵐武則や柴尾真弓の父親によって撃退されてきた。現在は「カリ・ユガ」と呼ばれるテロ組織の脅威に晒されており、武則たちが滞在していた時以上の危機に見舞われている。カリ・ユガの構成員は、強さと異常性を兼ね備えた危険人物ばかりで、中でも「ふくろう」のコードネームで呼ばれる男は、ナイフを用いた暗殺術の達人だった。ローゼンバッハ公国の次期王位継承者であるプリンセス・イングラムは、カリ・ユガに対抗するため、警護柔術の心得がある武則や流星に協力を仰ぐこととなる。
登場人物・キャラクター
嵐 流星 (あらし りゅうせい)
柔道道場「武心館」のコーチを務める嵐武則の息子。小学生時代に大きな病気を患い、10歳になるまでほとんど病院内で鬱屈した日々を過ごしていた。心を鍛えるために父親から運動や柔道の練習をするように強要されているが、病弱の自分にはなんの意味もないと半ばあきらめていた。しかし、手術を控えた前日に参加した柔道大会で優勝したことで、自分の身体が強くなっていることを実感。そして手術も成功して健康な体を取り戻し、本格的に柔道に取り組むようになり、以前とは打って変わって前向きな性格となる。中学進学後は武心館に入り、道場生の奥山に勝利したことでその実力を認められる。その試合中、力の流れを読み取る能力を発揮したことで、同じ能力を持つ五条橋四郎からも一目置かれるようになる。
五条橋 四郎 (ごじょうばし しろう)
柔道道場「武心館」の大将と主将を兼任する、中学生の男子。資産家の息子ながら、母親に辛辣な態度で接する父親を憎んでいる。また、腹違いの兄・五条橋崇から命を狙われるなど、劣悪な家庭環境に翻弄されている。そのため、自分の周りには敵が多いことを自覚しており、柔道もあくまで彼らに対抗するための手段にすぎないと考えている。しかし、嵐流星の実力に興味を抱くなど、柔道に誇りを持っているために真摯に取り組んでいる。ある時、崇の雇った殺し屋に襲われ、流星に助けられるが、自分の命を守るためには非情にならざるを得ないと主張し、流星と相いれないことを実感する。しかし、流星が命懸けで自分を助けてくれたことを感謝しており、やがて彼との試合を通じてどちらの考えが正しいか見極めることを望むようになる。