水の森

水の森

『アオアシ』で知られる小林有吾の初連載作品。現代の日本と東エルニア共和国を舞台に、現代に転生した「聖女ジャンヌ」こと水の森・ジャンヌ・マリーヌが、高校生として新たな人生を歩む姿を描いた転生ヒューマンドラマ。民衆のために革命を主導するが、人間たちの身勝手な行動に絶望したジャンヌだったが、日本で知り合った少年少女たちの心に触れることで、希望を取り戻していく。また現代と中世、日本と外国の対比が描写されている点も、本作の魅力となっている。講談社「月刊少年マガジン」2010年2月号から2010年9月号にかけて掲載されたのち、同社「マガジンイーノ」2010年11月号から2011年3月号にかけて掲載の作品。

正式名称
水の森
ふりがな
みずのもり
作者
ジャンル
ヒューマンドラマ
 
転生
レーベル
KCデラックス(講談社)
巻数
全3巻完結
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造物主に愛された聖女が現代日本に転生

本作は「聖女ジャンヌ」と呼ばれた英雄が現代の日本に転生するところから始まる。1431年6月8日、ジャンヌは「異端者」の汚名を着せられ、火刑に処されようとしていた。ジャンヌは人間に幻滅してしまい、もう人間界には居たくないと無実の罪を背負って火刑を受けようとしていた。その姿を見かねた造物主がジャンヌの前に現れ、かつて彼女に与えた能力を発動すれば、この場を切り抜けられることを告げる。しかし、ジャンヌは裏切りと保身しか考えていない人間とかかわることに疲れ果て、あえて能力を使わずに自ら死を望んでいた。すると造物主は、ジャンヌを失いたくない思いから、最も平和な時代の一つと認識している現代の日本に彼女を転生させ、新たな人生を歩むことをうながす。こうしてジャンヌは、日本の高校生「水の森・ジャンヌ・マリーヌ」として第二の人生をスタートさせる。

ジャンヌと心を通わせる少年少女たち

現代の日本に転生したジャンヌは、15世紀のフランスで人間に裏切られた経験や彼らの争いに巻き込まれることに絶望し、対人恐怖症に陥っていた。そのため、転生後は他人とのかかわりを避けるようになり、周囲からは気味悪がられてしまう。だが、凍えた心を抱える彼女の前に、つねにポジティブで熱血漢の陣内篤志や、篤志の妹で兄に劣らず前向きで社交的な優梨、同級生でありながらジャンヌを姉のように慕う金子葵など、純粋な心を持つ人たちと出会って、心境に変化が訪れる。さらに、当初はジャンヌを嫌っていた鎌田さとみやシャンランともなかよくなり、次第に過去のトラウマや心の傷を克服していく。

現代で新たなる戦争が勃発する

造物主が聖女ジャンヌの転生先として選んだのは、人類の歴史の中で最も平和の概念に近い、21世紀の日本。日本に転生したジャンヌは、聖カイン女学院に入学して現代の生活や知識を学び、人とのかかわりを避けながらも、日本という国が平和であることを実感する。そんな中、東エルニア共和国が内戦の真っただ中にあることを知ったジャンヌは、実際に東エルニア共和国へと足を運ぶ。そこでは、かつて経験した戦場と変わらない悲惨な光景が広がっており、いつの世も変わらぬ人間の業を前に絶望する。そんな中、瀕死の青年を発見し、彼の弟への最期のメッセージを託され、その役割を果たす。これを機に、転生後はできるだけ使わないようにしていた異能力を平和のために利用することを決意したジャンヌは、傷病者の治療や武器の解体を続け、やがて東エルニア共和国に平穏をもたらす。

登場人物・キャラクター

水の森・ジャンヌ・マリーヌ (みずのもり じゃんぬ まりーぬ)

女子高校「聖カイン女学院」に通う2年生の女子。かつて15世紀のフランスで羊飼いをしていたが、造物主によって強靭な体と治癒能力や気象操作をはじめ、さまざまな異能力を与えられる。その結果、荒廃したフランスを救うために革命を主導し、やがて「聖女ジャンヌ」と呼ばれてフランスの国民的な英雄となる。しかし、悪意ある人間たちによって利用され、ついには「異端者」の汚名を着せられ、火刑を宣告される。ジャンヌは無実の罪を背負って火刑台に上がるものの、造物主によって16歳の姿で21世紀の日本に転生し、「水の森・ジャンヌ・マリーヌ」として第2の人生を過ごすことになる。転生後は、新しい世界を知りたいとの思いから聖カイン女学院で勉学に励み、日本人離れした美貌と頭脳明晰さで注目されるようになる。一方で、どこか冷たい印象を与えるため、やっかみを受けることも少なくない。かつては能動的に異能力を発動させていたが、現在は人間に対する失望感と恐怖心から、肩を叩かれただけで無意識に落雷を発生させてしまうことがあり、のちに一部の人間から避けられる要因となってしまう。

造物主 (ぞうぶつしゅ)

鳥の姿をした謎の存在。一人称は「我々」。現在、水の森・ジャンヌ・マリーヌのそばにいるのは、造物主を司る意思の一つに過ぎないことが示唆されている。記憶操作や自然現象の誘発を自由自在にあやつることができるなど、神にも等しい力を有している。遙か昔から、歴史の変遷とともに姿を現し、目星をつけた人間に特殊な能力を与えてきた。ジャンヌもその一人で、彼女は特別な能力を得ながらも私利私欲のためにその能力をいっさい使おうとしなかったため、やがて数多の英雄の中でも特別な存在として認めるようになる。いかなる時もジャンヌの幸せを第一に考えており、彼女が幸福になるためなら、たとえ人類が滅亡しても構わないと考えている。一方で、ジャンヌの本心を探るためにあえて過激な言動に及ぶこともある。

書誌情報

水の森 全3巻 講談社〈KCデラックス〉

第1巻

(2010-07-16発行、 978-4063712506)

第2巻

(2010-11-17発行、 978-4063760101)

第3巻

(2011-04-15発行、 978-4063760538)

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