新米トレーナーと偏愛獣医のお仕事漫画
本作の舞台となるのは「海の島水族館」という、海岸沿いにある架空の施設。新人トレーナーの真知子が、イルカの採尿にチャレンジしていると、荒い息づかいの男が現れる。イルカのおデコを舐めたがるこの男は、新任獣医の海崎だった。本作はドジな新米トレーナーと、変態的なまでに海獣を愛する獣医を通じて、イルカやセイウチ、ラッコ、ペンギンなどに起きる様々なトラブルを解決していくお仕事漫画である。水族館への綿密な取材や獣医の監修により、観覧ではわからない海獣の生態や雑学、水族館と飼育の裏側を知ることができる。また、様々な経験を経て真知子が成長していく姿も本作の大きな魅力である。
実話をベースにしたエピソード
本作のストーリーの多くは、水族館への取材で得た実話をベースにしている。例えば、エサを食べなくなってしまったセイウチに、口移しでミルクを飲ませて、母乳と錯覚させるエピソードはほぼ実話だという。また、海岸に漂着した生後8か月のキタオットセイを保護するエピソードでは、海に返しても一人で生きていくのは難しいという判断で、しばらく水族館で預かるという決定が下る。しかし、「水族館は、人間が海の生態を知るために大自然から命を借りている」という海崎は、野生で生きていけなくなることを恐れ、独断である行動を起こす。本作は「何のために水族館があるのか」という問いに向き合い、コミカルながら真摯でハートフルなストーリーが展開される。
イルカショーにドハマりし本作が誕生
「ビッグコミックブロス」掲載の作者インタビュー(2018年3月12日)によれば、イルカショーにハマったことが本作制作のきっかけだという。「イシイ渡」は夫婦での共同ペンネームだが、結婚して神奈川県に引っ越したのをきっかけに、新江ノ島水族館に行った際、イルカショーにドハマリした。「イルカ1頭1頭のキャラクターを紹介してくれたり」「飼育員さんとイルカの関係を教えてくれたり」する新江ノ島水族館のショーが斬新で、「海獣にも、人間みたいに性格が色々あるのが面白い」と思ったという。そして様々な水族館に行くようになり、前身となる読み切り『海獣さんがっ!!!』を経て、本作の連載となった。
登場人物・キャラクター
七瀬 真知子 (ななせ まちこ)
海の島水族館の新人トレーナー、飼育員の若い女性。茶色のショートヘアが特徴で、ドジっ子だが真面目な頑張り屋。早く一人前になろうと日々奮闘する。海獣を偏愛する獣医の海崎とは同期で、凸凹コンビとして働くことになる。
海崎 直 (かいざき ただし)
海の島水族館の獣医の青年。黒縁メガネとスーツが特徴。人間にはS、動物にはM気質で、人間に対しては毒舌な一方、海獣に対して変態ともとれる異常な愛情を示す。しかし、獣医としての腕は確かで、海獣たちの危機を救う。真知子とは同期の凸凹コンビとして働く。
書誌情報
水族カンパニー! 4巻 小学館〈ビッグ コミックス〉
第1巻
(2017-06-12発行、978-4091895264)
第2巻
(2018-03-12発行、978-4091898135)
第3巻
(2018-12-12発行、978-4098601462)
第4巻
(2019-09-12発行、978-4098603985)







