不思議な雑貨店「UNREAL」
本作の舞台となる特殊なアンティークショップ「UNREAL」は、静岡県の海沿いの街「水無月市」に店を構えている。「ヤギオ」と名乗る青年が一人で切り盛りしており、店内には不思議な道具が数多く並んでいる。例えば、食べ物の質や量に応じて願いを叶える「悪食の天秤(てんびん)」や、差しているあいだは願いを叶えるものの、言葉を発すると重い代償を払わなければならない「ハウフリユの雨傘」などが販売されている。その怪しげな雰囲気に惹かれ、多くの客が来店する一方で、ミステリアスな魅力を持つ女性、マトバや、ヤギオに奇妙な執着を見せる青年の黒澤羊時も時おり姿を現す。彼らとUNREALのあいだには、はるか昔から続く因縁があることがのちに明らかになる。
「UNREAL」を訪れるさまざまな事情を抱えた客たち
「UNREAL」には、メルヘンやファンタジーを愛し、閉塞した現実に嫌気がさしているOLの津田彩花や、偏屈かつ他責思考で周囲から嫌われている政治家候補の赤坂、大切な人を失い世界に虚しさを感じている横井姫奈など、さまざまな客が訪れる。彼らはそれぞれの目的や好奇心から、不思議な道具を購入する。しかし、多くの客は目先の欲望に振り回され、購入した道具を使いこなせずに自滅してしまう。一方で、自分の本当の願いを叶えたり、道具の力でコンプレックスを克服する者もわずかながら存在する。ただし、店主のヤギオは客の幸福や不幸にはいっさい関心がなく、金銭以外の目的で道具を売っているのだった。
宗哉とヤギオの秘密
「UNREAL」のとなりにあるカフェ「海桐」に住む宗哉は、秀麗ながら非力な青年のヤギオの面倒を見るのが日常となっていた。宗哉は、本来かかわるはずのないヤギオに妙に心を惹かれていたが、その理由が自分でもわからず、不安と苛立ちを募らせていた。そんなある日、人気アイドルの赤羽凛糸がUNREALを訪れる。店に入るや否や、彼女はヤギオを「オトヤくん」と呼んだ。その名前を聞いた宗哉は、ヤギオの正体がかつての同級生で親友だった柳葉音矢であることを思い出す。宗哉は、ヤギオが自分の記憶とは異なる姿に成長していることに戸惑いながらも、マトバや羊時といった知人、そして新たに出会った兎鉤朝也にも相談し、改めて音矢と向き合う決意を固める。
登場人物・キャラクター
ヤギオ
アンティークショップ「UNREAL」の店主を務める青年。慇懃(いんぎん)無礼で口が達者で、訪れる客に巧みなセールストークを駆使して、さまざまな商品を販売している。金を稼ぐことには関心がなく、高価に見える品をあえて安価で売ることも珍しくない。彼の真の目的は商品の性能を試すことであり、内心では客のことを「実験体」として見ている。ただし、客に対して悪意があるわけではなく、幸せになるためのアドバイスを送ることもある。かつては「柳葉音矢」という名前の男子で、3歳の頃に美術館で「海方白磁」と呼ばれる芸術家の描いた絵を見て以来、生きる実感をまったく感じられなくなった。16歳の時に入水自殺を図ったが、同級生の宗哉に救われている。それ以来、宗哉を誰よりも大切に思い、現在「ヤギオ」として生きることを強いられている中でも、つねに彼のことを気にかけている。宗哉には自分の正体を明かさず、あくまで「UNREAL」の店主として接している。
濱家 宗哉 (はまいえ むねちか)
アンティークショップ「UNREAL」のとなりにある喫茶店「海桐」のマスター、濱家治親の孫にあたる少年。年齢は17歳。5歳の時に両親を事故で亡くし、それ以来、治親に育てられてきた。厳しくも優しい治親を慕い、彼のような誠実な人間になることを願っている。生活能力に乏しいヤギオの手助けをしており、時おり彼に対して気になる素振りを見せる。常連客のマトバからは思いを寄せられており、宗哉自身も彼女にほのかなあこがれを抱いている。一方で、羊時からは皮肉を言われることが多く、やや苦手意識を持っている。かつて自殺未遂をした音矢の心を救い、それ以来親友として接していたが、のちに音矢の存在を完全に忘れてしまう。しかし、「UNREAL」でヤギオの手伝いをするうちに、彼こそが音矢本人であることを思い出す。
クレジット
- 原作
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ヨダカ ケイ
書誌情報
不条理雑貨店UNREAL 4巻 新書館〈ウィングス・コミックス〉
第1巻
(2023-04-26発行、978-4403623561)
第2巻
(2024-01-26発行、978-4403623691)
第3巻
(2025-01-28発行、978-4403623882)
第4巻
(2025-09-26発行、978-4403623981)







