永田町ストロベリィ

永田町ストロベリィ

内閣総理大臣の父親を持つ女子高校生と、一般の貧しい男子高校生の恋愛をポップに描いた学園ラブストーリー。「りぼん」2003年2月号から2004年10月号にかけて連載された作品。

正式名称
永田町ストロベリィ
ふりがな
ながたちょうすとろべりぃ
作者
ジャンル
恋愛
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世界観

高校生の恋愛が題材。内閣総理大臣の娘として育ち、純粋だがやや世間知らずな女子高生の一ノ瀬妃芽が、お金を得るため複数の女性と遊び歩く桐原夏野と出会い、反発しながらも惹かれていく姿が描かれる。妃芽が、立場上好奇の目や危険にさらされたり、妃芽と夏野が、お互いの価値観の違いで悩むなど、「総理の娘」という特殊な設定を活かして物語が展開される。

作品誕生のいきさつ

酒井まゆによれば、本作のタイトルである『永田町ストロベリィ』には、「大切に育てられた少女」という意味を込めたという。「永田町」は、そのまま日本の政治の中枢を表し、「大切に育てられた少女」にあたる主人公の一ノ瀬妃芽が、永田町で働く内閣総理大臣の娘であることを示している。「ストロベリィ」とは妃芽自身のことで、本来の名前の表記が「緋芽」、つまり「緋色の植物」と捉えられるために、このように付けられた。最終的には「緋」ではなく「妃」を用いた「妃芽」という名前になったため、少し由来がわかりにくいタイトルになってしまった、とも語っている。

作品構成

本作『永田町ストロベリィ』は、大きく分けて2部構成となっている。第1部は1学期の物語で、一ノ瀬妃芽が秀英高校に入学し、不特定の女性と金銭のために関係する桐原夏野に反発しつつも惹かれていく姿が描かれる。そして、第2部は2学期の物語で、妃芽の訴えにより、夏野が女性からお金をもらってデートをするなどの行為をやめ、交際を始めた2人が、価値観の違いや取り巻く環境の違いに悩みつつも、絆を深めていく姿が描かれる。

あらすじ

現内閣総理大臣の娘である一ノ瀬妃芽は、高校ではその素性を隠し、普通の学校生活を送ろうとしていた。そのため、非常に遠方の学校を選んだ妃芽だったが、入学式の日に出会った桐原夏野の、金銭と引き換えに複数の女生徒と遊び歩いている軽薄な姿に驚く。そんななか、あっさりと「現内閣総理大臣の娘」という素性が割れてしまったため、妃芽はトラブルに巻き込まれるが、そんな彼女を助けたのは夏野だった。

スピンオフ

スピンオフシリーズとして、主に「りぼん」の増刊号「りぼん春のびっくり大増刊号」などに掲載された「玉三郎シリーズ」がある。これは一ノ瀬妃芽が首相公邸で飼っているアザラシの玉三郎にスポットを当て、彼がなぜ首相公邸までやって来たか、彼の豪華な食事はどこから賄われているか、などの裏事情が語られる物語。その他にも、「りぼんオリジナル」2003年10月号に掲載された小宮衣理桐原夏野の中学生時代を描いた番外編や、2003年「りぼん秋のびっくり大増刊号」に掲載された、広山賢一の高校生時代を描いた『秘書山の青春スペシャル』なども存在する。

読者投稿

コミックス2巻に収録されている9話の扉絵には、「りぼん」2003年6月号で実施された「ファッションイラストグランプリ」の受賞者がデザインした洋服を、一ノ瀬妃芽桐原夏野が着た姿が描かれている。デザインされた洋服は、本編でキャラクターに着せられることになっていたが、受賞作がカラーイラストで投稿されたものだったため、カラーで表現したいと考えた酒井まゆが、扉絵の衣装として採用したという。

アシスタント

アシスタントとして、「りぼん」の漫画家である山口みずほが参加している。また、本作『永田町ストロベリィ』の登場人物の一部には、アシスタントスタッフの名前が用いられており、「小宮衣理」と「岡田舞」がそれに該当する。

著名人との関わり

コミックスの3巻には、「りぼん」の漫画家である春田ななとのコラボレーションイラストが掲載されている。これは、春田と酒井まゆが直接会っている際、お互いの作品のキャラクターを1枚のイラストに描いたもので、『永田町ストロベリィ』の桐原夏野と『サボテンの秘密』の山田未来のイラストが描かれた。またコミックス2巻には、春田が寄稿した一ノ瀬妃芽と夏野のイラストも掲載されている。

登場人物・キャラクター

一ノ瀬 妃芽 (いちのせ ひめ)

秀英高校1年F組に所属する女子生徒。父親は日本の内閣総理大臣。前髪を目の上で切り、腰のあたりまで伸ばした銀髪ロングウェーブヘアをしている。やや口が悪いが正義感が強く、真面目で一生懸命な性格。一方で、やや世間知らずでドジなところもある。父親が総理大臣ということもあり、中学時代は周囲から奇異の目で見られる生活を送っていた。 そのため高校は知り合いのいない地域の学校へ進学し、片道2時間かけて通っている。結局、簡単に正体を知られてしまい、さまざまなトラブルに巻き込まれるが、そのたびに助けてくれる桐原夏野に惹かれるようになっていく。成績は芳しくないが、政治経済だけは得意。誕生日は3月24日で、身長は149センチ。

桐原 夏野 (きりはら なつの)

秀英高校1年F組に所属する男子生徒。一ノ瀬妃芽のクラスメイト。前髪を右寄りの位置で斜めに分け、オレンジ色のストレートヘアをしている。非常に美しい容姿を持ち、中学校時代にファンクラブがあったほど女性人気を誇る。ある事情から、多額のお金を必要としており、「放課後デートは5000円、1日デートは2万円」といった形で、女生徒と一緒に過ごしてお金を稼いでいる。 お金に執着しているが、スマートで心優しく、妃芽の境遇を知ってからは、意地悪を言いつつも親身に接するようになる。誕生日は6月29日で、身長は173センチ。

小宮 衣理 (こみやえり)

秀英高校1年C組に所属する女子生徒。前髪を真ん中で分けて額を全開にし、肩の下あたりまで伸ばしたストレートセミロングヘアをしている。桐原夏野に想いを寄せている。そのため、夏野と親しく、また内閣総理大臣の娘である一ノ瀬妃芽に嫉妬し、因縁をつけてくる。しかし滝川芳樹に関する一件からは態度を改め、次第に仲良くなっていく。 夏野を真剣に想っており、彼の人柄を非常によく理解している。誕生日は1月5日で、身長は160センチ。

広山 賢一 (ひろやま けんいち)

20代後半の若い男性。一ノ瀬妃芽の父親の秘書を務めている。前髪を目が隠れそうなほど伸ばした、金髪ストレートヘアをしている。歴代最年少で内閣総理大臣の秘書に選ばれた、非常に優秀な人物。それを感じさせないほど穏やかでおっとりした性格で、公邸では玉三郎の世話もしている。動物の扱いに長けており、親しくなるのが得意。 一ノ瀬妃芽からは「広山」という苗字と「秘書」という職業をかけて、「秘書山」と呼ばれている。誕生日は10月2日で、身長は178センチ。

滝川 芳樹 (たきかわ よしき)

秀英高校3年生の男子生徒。生徒会長を務めている。前髪を真ん中で分けて目が隠れそうなほど伸ばし、肩につくほどの後ろ下がりのボブヘアをしている。長身で容姿に優れていることに加え、心優しい性格と学年トップの成績を持つ秀才。女子生徒からは、桐原夏野に次ぐほどの人気がある。一ノ瀬妃芽とは、新聞部から嫌がらせにあっていた妃芽を助けたため知り合い、以来何かと気にかけるようになる。 一見非の打ちどころのない人物だが、中学時代に夏野とトラブルを起こしたという悪い噂がある。また、妃芽自身よりも、妃芽のバックにある権力に惹かれている節もある。誕生日は5月18日で、身長は175センチ。

杉坂 水貴 (すぎさか みずき)

南栄高校に通う2年生の男子生徒。前髪を目の上で切り、肩につかない長さの髪を後ろへ流してはねさせている。写真を撮ること、特に若い女性を撮るのが好き。突如一ノ瀬妃芽を被写体にしたい、と言って近づいてくる。女性に親切で、妃芽にも親身に接するが、それにはある事情があった。誕生日は4月5日で、身長は172センチ。

桐原 紅子 (きりはら こうこ)

桐原夏野の母親。年齢は32歳。循環器系の病気のため、帝都大学病院で入院生活を送っている。前髪を右寄りの位置で斜めに分け、胸のあたりまで伸ばしたロングヘアをしている。病気ではあるが、非常に元気で若々しい雰囲気の持ち主。夏野が「お母さん」と呼ぶと怒り、「紅子さん」と名前で呼ばせている。入院中も勝手に出前を注文したり、病室を抜け出してレンタルビデオ屋に出かけたりと、かなり破天荒な一面がある。 夏野と一ノ瀬妃芽のことは、好意的に暖かく見守っている。誕生日は4月28日で、身長は159センチ。

橋元 雪紘 (はしもと ゆきひろ)

衆議院議員・橋元雪也の息子。前髪を目が隠れそうなほど伸ばした、赤茶色のストレートヘアをしている。議員の家族が集まる謝恩パーティで、雪也に暴力を振るわれていたところを、一ノ瀬妃芽に助けられたことをきっかけに知り合う。ぶっきらぼうで冷めた雰囲気の、やや子どもっぽい性格だが、非常に優秀。R国語を話すこともでき、通訳に匹敵するほどの会話ができる。 雪也が不正を働いていることに胸を痛めており、雪也を止めたいと思いつつも一歩踏み出せずにいる。誕生日は1月26日で、身長は173センチ。

橋元 雪也 (はしもと ゆきなり)

橋元雪紘の父親。衆議院議員を務める中年の男性。前髪を上げて額を全開にした撫でつけ髪をしている。高圧的で暴力的な性格で、悪い噂が絶えない。一ノ瀬妃芽とは議員の家族が集まる謝恩パーティで会い、妃芽に嫌味を言って困らせる。また、息子の雪紘を快く思っておらず、暴力を振るったりと身勝手な人物。

一ノ瀬妃芽の父親 (いちのせひめのちちおや)

一ノ瀬妃芽、一ノ瀬阿紀、と一ノ瀬彗の父親。日本の内閣総理大臣を務める中年の男性。前髪を真ん中で分け、額を全開にしたストレートヘアをしている。多忙で妃芽とはあまり会えないため、妃芽には快く思われていない。しかし、総理としては非常に優秀で評判が良い。偶然、桐原紅子と知り合って彼女の容態を知り、陰ながら紅子の病に効く新薬の認可を行って、間接的に助けたこともある。 そのため、桐原夏野には感謝と尊敬をされている。

一ノ瀬妃芽の母親 (いちのせひめのははおや)

一ノ瀬妃芽、一ノ瀬阿紀、一ノ瀬彗の母親。前髪を真ん中で分けて額を全開にし、胸のあたりまで伸ばしたストレートロングヘアをしている。多忙なため、妃芽と一緒に過ごしたことはほとんどない。妃芽を広山賢一に任せきりにしていたため、妃芽は母親に嫌われていると思い込んでいた。しかし、ある件がきっかけで、妃芽は彼女の真意を知ることになる。 桐原夏野によれば、妃芽と顔立ちがよく似ており、妃芽は母親似だという。

秋山 香澄 (あきやま かすみ)

秀英高校1年F組に所属する女子生徒。一ノ瀬妃芽のクラスメイト。前髪を眉上で短く切ったショートカットヘアをしている。明るく積極的な性格。入学式の日、同じ中学校出身の生徒がいない者同士として、妃芽に声をかける。出身中学校は区立2中。

岡田 舞 (おかだ まい)

秀英高校1年F組に所属する女子生徒。一ノ瀬妃芽のクラスメイト。前髪を目の高さで切り揃え、セミロングヘアをツインテールにしている。入学式の日、妃芽と秋山香澄と3人、同じ中学校出身の生徒がいない者同士で集まり、桐原夏野についての噂で盛り上がる。出身中学校は双葉西中。

校長 (こうちょう)

一ノ瀬妃芽が通う高校の校長を務める中年の男性。バーコード頭に小太りな体型で、眼鏡をかけている。総理の娘が自分の高校を選んだ、という事実を誇りに思っており、周囲に自慢したいと考えていた。そのため、妃芽が内密にしてほしいと言っているにもかかわらず、簡単に秘密をばらしてしまう。そこで妃芽は、中学校時代までと同じ奇異の目にさらされるようになってしまう。

玉三郎 (たまさぶろう)

一ノ瀬妃芽が飼っているアザラシ。主に広山賢一が世話をしている。川に迷い込んでいたところを保護し、公邸で飼われることになった。野生で暮らしていた頃から非常に美食家で、伊勢エビなど美味しいものしか食べない。

小宮衣理の兄 (こみやえりのあに)

秀英高校3年B組に所属する男子生徒。小宮衣理の兄。前髪を眉上で短く切った短髪ヘアをしている。明るく親しみやすい性格だが、ややお調子者なところがあり、衣理に怒られることも多い。中学時代に滝川芳樹と桐原夏野の間に起きたいさかいについて知っており、芳樹によくない噂があることを、一ノ瀬妃芽に伝える。

一ノ瀬 彗 (いちのせ けい)

一ノ瀬妃芽と一ノ瀬阿紀の兄。年齢は27歳で、職業は政治家。前髪を左寄りの位置で斜めに分けたストレートヘアをしている。あまり家に戻ってくることはないが、妃芽を非常に大切に想っており、やや溺愛気味なところがある。そのため、彼女に近づく桐原夏野を快く思っていない。

一ノ瀬 阿紀 (いちのせ あき)

一ノ瀬妃芽の兄で、一ノ瀬彗の弟。年齢は26歳で、職業は政治家。前髪を真ん中で分けたストレートヘアで、眼鏡をかけている。兄の彗同様、あまり家に戻ってくることはないが、妃芽を非常に大切に想っている。

保健室教諭 (ほけんしつきょうゆ)

桐原夏野と小宮衣理の通っていた中学校で、保健室教諭を務める若い女性。前髪を目の上で切り、セミロングヘアをポニーテールにしている。男性のような口調で話す、明るく親しみやすい性格。当時保健室によく顔を出していた夏野とは親しかった。夏野と衣理が仲良くなったため、3人で保健室で過ごすようになる。実は陰で夏野と関係していた。

梨華 (りか)

広山賢一の元交際相手の女性。前髪を左寄りの位置で分け、肩につくほどのセミロングヘアをしている。賢一とは、高校3年生の頃まで愛知県の高校に一緒に通って交際していた。賢一が政治関係の職業につくため、東京の大学に進学すると知って別れた。自分自身の気持ちよりも周囲の意向を大切にする賢一の性格を案じており、賢一が1人の人間として幸せになれるか不安視している。

R国首相の息子 (あーるこくしゅしょうのむすこ)

日本が外交に力を入れているR国のバーツ首相の息子。年齢は、一ノ瀬妃芽や橋元雪紘と同年代。前髪を真ん中で分けたストレートヘアをしている。下まつげが長いため、妃芽からは密かに「下マツゲ王子」と呼ばれている。クリスマスに、突如父親とともに日本を訪問することになり、同年代の人物と交流したいと希望している。そのため、妃芽と雪紘は、交流会に参加することになった。 しかし、そこでトラブルが発生してしまう。

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