世界観
高校生の恋愛が題材。数学が苦手な女子高生の大高美桜が、博学多識な理系男子の滝直に惹かれ、独特の世界観を持つマイペースな彼と、「ゆるふわ」に関係を深めていく姿が描かれる。相手役である直の「数学などの理系科目が得意」という設定を活かし、作中には、数学や理科に関する雑学がふんだんに盛り込まれ、読み進めるうちに、理系科目の多彩な知識を得ることもできる。
作品誕生のいきさつ
本作『360°マテリアル』は、南塔子にとって初の連載作品である。そのため南は、当初読み切りとしてすでに発表していた『勉強の時間』の続編を、連載企画として考えていた。しかし案を練るうちに、まったくの別物となり、「一部キャラクターのデザインと設定が『勉強の時間』に似ている」という点のみを残して、新作として『360°マテリアル』が生まれた。
あらすじ
高校1年生の大高美桜は、ある日、同級生の滝直が交通事故に遭いかけたところを助け、それをきっかけに彼と親しくなる。マイペースな変人だと思っていた直の、実は穏やかで知性的な人柄に触れ、すぐさま美桜は彼に惹かれていく。しかし、直の独特の言動と世界観は、時に美桜を動揺させ、混乱の渦に陥れる。
スピンオフ
本作『360°マテリアル』には、主に増刊号や掲載誌「別冊マーガレット」の付録に掲載された、多数のスピンオフ作品が存在する。大高美桜と丸井侑輝の小学生時代のエピソードを描いた『360°マテリアル extra materials』、美桜の日常を母親の大高かの子の視点から描く『大高美桜のヒロイン的1日』など。
関連作品
関連作品として、本作『360°マテリアル』の基となった南塔子の別作品『勉強の時間』がある。『360°マテリアル』は『勉強の時間』を出発点に制作されたため、2作品の一部のキャラクターは、性格こそ違うが、容姿や設定は意図的に似せたものとなっている。また、数学が苦手な女子高校生が、数学が得意な男子高校生に勉強を教えてもらう形で親しくなる、という序盤の展開も同じとなっている。
関連商品
コミックス4巻の発売を記念して、本作『360°マテリアル』のデコメ素材のダウンロードプレゼント企画が行われた。企画内容は、コミックス4巻を2011年8月10日までに購入すると、付属の帯に記載されたURLから、デコメ素材が配布されるダウンロードサイトにアクセスできるというもの。
読者投稿
ファンレターへの返信とイラストリクエスト
コミックス2巻の巻末からは、南塔子が、読者から寄せられた手紙やメールに返信し、リクエストイラストを描くコーナーが設けられている。リクエストイラストは、当初返信コーナーに描く小さなイラストが主だったが、最終巻である8巻では規模を拡大し、他のおまけページでもリクエストに応えている。
みんなの「~なう」募集!!
コミックス6巻では、本作『360°マテリアル』の帯に載せるフレーズを募る「みんなの「~なう」募集!!」企画が行われた。企画内容は、語尾が「~なう」となる、作品に関するキャッチコピーを送ると、採用されたキャッチコピーが、帯に掲載されるというもの。また、応募者の中から抽選で100名には、本作のイラストが使用された特製図書カードがプレゼントされた。
登場人物・キャラクター
大高 美桜 (おおたか みお)
集南高校1年2組に所属する女子生徒。前髪を目の高さで切り、赤みがかった茶髪ストレートロングヘアを、段を付けて伸ばした髪型をしている。明るく心優しい性格だが、成績は中の中。スポーツも普通程度の腕前で平均的な人物。しかし、数学だけは極端に苦手で、常に赤点の危機に瀕している。滝直が交通事故に遭いかけたところを助け、それがきっかけで滝直と親しくなった。 飛行機雲に関する雑学を聞いて直の無邪気で博識な人柄に触れ、彼に強く惹かれるようになる。物事を深く考えすぎたり、気にしすぎてしまう性格から、マイペースでやや何を考えているかわからない直に、振り回されてしまうこともある。誕生日は1月5日で、身長は163センチ。
滝 直 (たき すなお)
集南高校1年2組に所属する男子生徒。大高美桜の想い人。黒髪を肩につかない長さまで伸ばし、全体を左寄りの位置から外側にはねさせる形で分けた髪型をしている。おっとりとしたマイペースな性格で、周囲からは一風変わった存在として知られている。しかし実際は穏やかで親しみやすく、数学をはじめとする理系科目が非常に得意で博識な人物。 特に得意分野については、無邪気にいつまでも語ったり、熱中しすぎたりしてしまう可愛らしい一面がある。飛行機雲に気を取られるあまり、事故に遭いかけたところを、美桜に助けられたのをきっかけに親しくなり、交際することになる。誕生日は5月5日で、身長は172センチ。両利き。海老原茜からは「ナオ」と呼ばれている。スポーツはあまり得意ではない。
丸井 侑輝 (まるい ゆうき)
集南高校1年2組に所属する男子生徒。大高美桜の小学校時代からの同級生。前髪を眉上で短く切った、アッシュベージュ色のウルフカットをしている。やや単純だが心優しく、他者に気を遣う性格。美桜とは数学が苦手な者同士、「赤点コンビ」としてイッチーに目を付けられている。滝直も交えて、一緒に勉強するようになったため、3人で親しくなる。 それを機に美桜に想いを寄せるようになり、美桜が直と交際しているのを知りながらも、惹かれる自身に戸惑っている。海老原茜とは、直の家を訪れた際に知り合い、第一印象の悪さから、お互いにぎすぎすとした関係だった。しかし、次第に誤解が解け、親しくなっていく。バスケットボール部に所属している。誕生日は6月20日で、身長は185センチ。 チョコレートのアレルギーで食べられないため、バレンタインデーは悩みの種。
海老原 茜 (えびはら あかね)
中学3年生の女子生徒。滝直の幼なじみで、集南高校を目指して受験勉強中。前髪を目の上で切り揃え、胸のあたりまで伸ばした後ろ下がりのストレートロングヘアをしている。容姿は美しいが非常に気が強く、ややわがままな性格。隣家に住む直とは親しく、日常的に滝家を訪れたり、直に勉強を教えてもらったりしてている。直と親しくなり始めた大高美桜を快く思っておらず、美桜を敵視し、見下した意地悪な態度を取る。 幼い頃は、直より自分の方が身体が大きく、腕っぷしも強かったので、直を「守らなければいけない存在」と捉えている。幼い頃、直から贈られた四葉のクローバーを、今でも大切にしている。誕生日は8月29日で、身長は157センチ。中学校では剣道部に所属している。
望月 由仁 (もちづき ゆに)
集南高校1年2組に所属する女子生徒。大高美桜と清水瑠奈の友人。前髪を眉上で短く切り、外側に向かって長くなる形でカットし、金髪ロングヘアを頭頂部でお団子にしてまとめている。小柄で可愛らしい雰囲気だが、倹約家のしっかりした性格。常にアルバイトに明け暮れる多忙な日々を送っている。背が低いことを気にしており、指摘されると非常に怒る。 瑠奈とは幼稚園時代からの付き合い。嫌なことがあると、つい瑠奈にやつあたりしてしまう。6人兄弟の長女で、弟の反抗期に悩まされている。誕生日は10月25日で、身長は148センチ。
清水 瑠奈 (しみず るな)
集南高校1年2組に所属する女子生徒。大高美桜と望月由仁の友人。前髪を右寄りの位置で斜めに分けた黒髪ショートカットヘアの、長身で中性的な雰囲気の人物。由仁とは幼稚園時代からの付き合い。バレーボール部に所属している。誕生日は2月3日で、身長は170センチ。
石井 航太 (いしい こうた)
集南高校1年2組に所属する男子生徒。丸井侑輝の友人。目のあたりまで伸ばした前髪を上げてまとめ、額を見せたウルフカットをしている。賑やかで明るい性格。地声が大きくやや騒がしいのと、早とちり気味な一面があるため、周囲を困らせることもしばしば。バスケットボール部に所属している。身長は166センチ。
井上 柊二 (いのうえ しゅうじ)
集南高校1年2組に所属する男子生徒。丸井侑輝と石井航太の友人。髪全体を右側に集めてボリュームを付けた髪型をしている。穏やかで落ち着いた性格。清水瑠奈に密かに想いを寄せているが、それを快く思わない望月由仁に妨害されている。身長は178センチ。航太からは「井上柊二」を略して「いのじ」と呼ばれている。
星川 (ほしかわ)
集南高校1年3組に所属する女子生徒。前髪を右寄りの位置で分け、顎の高さまで伸ばしたボブヘアをしている。非常に可愛らしい容姿から「ミス集南」として知られる。ファッション雑誌「シックスティーン」に、読者モデルとして掲載されたこともある。ちなみにこのときは、モデルをしている従姉妹と一緒にいたことがきっかけで、紙面に登場することとなった。 滝直を少し気に入っていたが、マイペースな直には星川の美貌が通用せず、いまひとつ会話が成立しない。
岡 (おか)
集南高校に通う1年生の女子生徒。大高美桜の中学時代からの同級生。前髪を真ん中で分け、肩につかない長さまで伸ばしたパーマヘアをしている。正直で社交的な性格。滝直や清水瑠奈といった、美桜の周囲の人物とも親しくなりたいと考えている。
イッチー
集南高校の数学教師。三白眼の中年男性。前髪を眉よりかなり上で短く切った短髪ヘアをしている。少々意地悪なところがあり、成績の悪い生徒や、意欲の低い生徒には容赦がない。特にテストで赤点の危機にある大高美桜と丸井侑輝には厳しく指導しており、2人から恐れられている。のちに、2年生に進級した美桜たちの担任教師になる。 本名は不明。
美和 (みわ)
高校2年生の女子生徒。滝直の元交際相手。大高美桜たちとは違う高校に通っている。前髪を真ん中で分けて額を見せ、胸のあたりまで伸ばしたロングヘアをしている。右目の下のほくろが特徴。直とは中学時代に交際しており、直にとっては初めての恋人だった。しかし美和自身は、中学校を卒業すると、学年の違いで1年間別々に過ごすことを危惧し、「高校では新たな相手と恋愛がしたい」という身勝手な理由で、一方的に別れた。 現在は別の男性と交際しているが、偶然再会した直を、今でも気にしている様子。
斉藤 (さいとう)
集南高校に通う1年生の女子生徒。丸井侑輝の知人。前髪を目の上で切ってカールさせ、胸のあたりまで伸ばした、ゆるくウェーブがかったロングヘアをしている。侑輝に想いを寄せて告白する。しかし侑輝は、追試が迫っており、また大高美桜を想っているため返答を保留。斉藤と交際するかどうか、悩むことになる。
波多野 真紀 (はたの)
集南高校2年2組に所属する女子生徒。大高美桜とは1年生の頃から同じクラス。2年生に進級したのを機に、美桜にその存在を意識されるようになる。前髪を目の上で切り揃え、顎の高さまで伸ばしたボブヘアをしている。いつも笑顔の、おっとりと物静かな雰囲気の人物。実は非常に負けず嫌いで、自分よりも優秀な滝直をひそかにライバル視していた。 そのため、2年生になって最初に行われたテストをきっかけに直と親しくなり、美桜を焦らせる。数学の話題では直と共感しあうことが多く、当初は友人として仲良くした。しかし、次第に美桜と直の関係をかき乱すような、意地悪な行動をとるようになる。
小橋 麻有 (こはし まゆう)
集南高校1年1組に所属する女子生徒。海老原茜の同級生。2年生に進級した大高美桜たちの後輩にあたる。前髪を目の高さで切り、肩につくほど伸ばしたセミロングヘアを、ツーサイドアップにしている。素直で積極的な性格。本命の男子以外には、ずばずばとものを言う毒舌家でもある。新入生用の部活紹介イベントで活躍していた丸井侑輝を気に入り、侑輝と親しい茜を、一緒にバスケットボール部のマネージャーになろうと誘ってくる。
荒川 (あらかわ)
集南高校に通う1年生の男子生徒。海老原茜の同級生。2年生に進級した大高美桜たちの後輩にあたる。前髪を真ん中で分けたストレートヘアをしており、頭頂部から一房飛び出した「アホ毛」が特徴。実年齢よりも幼く見える、可愛らしい雰囲気の少年。自分よりも優秀な茜を、入学時からライバル視。ことあるごとに意地悪を言ってくるが、実際は、茜が気になって仕方がないだけの様子。 容姿は幼いが、れっきとした高校生であるため、『名探偵コナン』の登場人物・江戸川コナンになぞらえて、周囲からは密かに「コナン」と呼ばれている。
大高かの子 (おおたか かのこ)
大高美桜の母親。前髪を真ん中で分けて額を全開にし、胸のあたりまで伸ばした巻き髪ロングヘアをしている。積極的で押しの強い性格で、娘の交際相手である滝直にも興味津々。バレンタインデーをきっかけに直を大高家に招き、マイペースな直を圧倒するほど質問攻めにする。
滝 ユキ (たき ゆき)
滝直の姉。前髪を目の高さで切ってカールさせ、胸のあたりまで伸ばしたロングウェーブヘアをしている。一見非常に可愛らしく、セクシーな雰囲気の女性だが、実際はずばずばとものを言う、はっきりとした性格。姉弟仲が良く、直の相談に乗ることもある。直の元交際相手である美和のことも知っている。
迷子の少年 (まいごのしょうねん)
大高美桜と丸井侑輝が、校外学習先の水族館で出会った少年。短髪ヘアにキャップを被り、眉が太い。館内で母親とはぐれてしまい、偶然出会った美桜と侑輝に助けを求める。美桜を「ママ」、侑輝を「パパ」と呼ぶ無邪気な性格に見えるが、実はしたたかで策略家な一面を持つ。
近所の老婦人 (きんじょのろうふじん)
年老いた女性。滝直と滝ユキの家の付近に住んでいる。前髪を上げて額を全開にした、ふんわりとしたショートカットヘアをしている。近所に住んでいるため、大高美桜と直を一方的に見知っていた。美桜に重い荷物を持ってもらったことから、明確に知り合う。これがきっかけで、のちに美桜と直を、意外な形で助けることになる。
その他キーワード
クジラのチャーム
滝直が美桜に贈ったチャーム。大高美桜たちが校外学習で水族館を訪れた際、直が売店で買ったもの。一見イルカのようだが、実際はコビレゴンドウクジラ。一個一個手作りで製作されているため個体差が大きい。どこか直を想起させるデザインをした個体を美桜が気に入ったため、直からプレゼントされた。贈られたその日から、美桜は鞄につけるほど大切にしていたが、それが原因でトラブルに発展してしまう。