世界観
高校生の恋愛が題材。楽しい高校生活を望む小西紗和と、過去に受けた傷のため冷めた態度で暮らす松雪藍が、天羽学院高等部で出会い、親しくなっていく姿が描かれる。天羽学院が元男子校であるという設定を活かし、藍をはじめとする多数の「イケメン」男子生徒たちと紗和との恋愛模様や、クラスで唯一の同性である永島晶との友情が描かれるのが作品の特徴。
あらすじ
制服のデザイン目当てで天羽学院高等部に入学した小西紗和は、入学式の日、天羽学院が元男子校であることを知る。さらに学院内は総理事長の息子である松雪藍とその仲間たちの天下で、教室は荒れ放題。腹を立てた紗和は反旗を翻すが、藍の仲間から嫌がらせを受けるようになってしまう。しかし、嫌がらせが原因でプールに落ちた紗和を助けたのは、意外にも藍だった。
単行本の装丁
本作『ロッキン★ヘブン』のコミックスの表紙は「パールのアクセサリーをつけた同じ衣装の、主人公・小西紗和単独のイラスト」というコンセプトのもとに描かれている。そのため、紗和の髪型や背景色の差異でイラストの印象を変えつつ、非常に統一感のあるデザインとなっている。また、最終巻の8巻は一見違う衣装のようだが、実は同じ衣装の色違いであるなど、細かな点においても凝ったイラストとなっている。
スピンオフ
本作『ロッキン★ヘブン』には、主に増刊号に掲載された、多数の番外編が存在する。内容は登場人物たちの家族構成や幼少時代の出来事について描いた短編から、登場人物が天使と悪魔になったパラレルワールドを描く『天使のさわちゃん』、小西紗和の両親が交際に至るまでを描いた『Home,sweet home』まで、非常に多岐にわたる。また、最終巻の8巻では70ページ超のおまけページを活かし、完全描きおろしの『天使のさわちゃん』完結編に加え、小川朋樹と小西紗智のその後を描いた描きおろしエピソードも収録された。
関連商品
2008年11月、本作『ロッキン★ヘブン』の完結記念として、音楽CDの抽選プレゼント企画が行われた。企画内容は、コミックス8巻の巻末にあるクイズに答えて成績上位30名に入ると、作者酒井まゆ自身が作詞、作曲、編曲した本作のイメージソングCDが手に入るというもの。イメージソングの歌唱は酒井の友人が担当し、酒井は描き下ろしジャケットや歌詞カードの制作も手掛けた。
メディアミックス
登場人物・キャラクター
小西 紗和 (こにし さわ)
天羽学院高等部1年G組に所属する女子生徒。前髪を目の高さで切り、腰のあたりまで伸ばした明るい茶髪のロングヘアをしている。華やかな容姿に加え、誰にでも好かれる明るい性格の持ち主。天羽学院には制服が目当てで入学し、元男子校であることも知らなかった。荒れ果てた1年G組の実態を知り愕然とするが諦めず、松雪藍へ「絶対このクラスで楽しく過ごして見せる」と宣言する。 前向きで強い不屈の心を持つが、怒りの感情だけはうまく表現できない。そのため腹が立つことがあっても封じ込めてしまうことがあり、周囲にも心配されている。G組の面々と過ごすうち、やがて藍と親しくなっていくが、暗い過去を持つ藍と、どう接したらいいのか、時に悩むこともある。
松雪 藍 (まつゆき らん)
天羽学院高等部1年G組に所属する男子生徒。目が隠れそうなほど長く伸ばした前髪を右寄りの位置で斜めに分け、長めの明るい茶髪を外にはねさせている。中等部時代に起きたある事件を機に心を閉ざしており、クールで何事にも無関心な性格。高等部進学後も学院の総理事長である父親の松雪碧の権力を利用して、好き放題の学校生活を送ろうとしていた。 1年G組が松雪藍の友人で固まり、入学直後から学級崩壊状態だったのはそのため。しかし小西紗和と出会い、対立しながらも次第に心を開いていく。本質的には親切で心優しい性格だが、精神的に不安定なため、意図せず冷たい態度をとってしまうことがある。乗り物に非常に弱く、すぐに酔ってしまう。中等部時代に、ある事件を起こすまではバスケットボール部に所属していた。
城戸 智史 (きど さとし)
天羽学院高等部1年G組に所属する男子生徒。松雪藍の友人。前髪の真ん中を長く伸ばし、肩につかない長さのオレンジ色のストレートヘアをしている。明るく単純だが、やや不器用で素直になれない「ツンデレ」な性格。小西紗和に対しては出会った当初から比較的好意を持っており、次第に想いを寄せるようになる。しかし本命の異性にはうまくアプローチできない性格が災いし、気持ちを伝えられずにいる。 中等部時代、藍が事件を起こすまでは、バスケットボール部に所属していた。成績は今ひとつ。
椿 潤一 (つばき じゅんいち)
天羽学院高等部1年G組に所属する男子生徒。松雪藍の幼なじみ。前髪を目が隠れそうなほど伸ばし、後ろ髪は肩につくほどまで伸ばしている。丸眼鏡が特徴。穏やかで周囲に気を配れる落ち着いた性格の持ち主。藍の最大の理解者でもあり、彼の幸せを誰よりも願い、小西紗和との関係を応援している。真面目そうな容姿と人柄に反し、女性とのつきあいは派手。 しかし特定の相手とは交際せず、長らくある一人の人物を想い続けている。中等部時代、藍が事件を起こすまでは、バスケットボール部に所属していた。
永島 晶 (ながしま あきら)
天羽学院高等部1年G組に所属する女子生徒。前髪を眉上で短く切り、胸のあたりまで伸ばした紫色のストレートロングヘアをしている。クールでマイペースな性格で、将来の夢は漫画家。プロデビューを目指して少女漫画雑誌「Berry」に投稿活動を続けており、天羽学院を選んだ理由も、漫画の題材になる面白いネタがあるかもしれないと考えたから。 そのため趣味を優先し、周囲とは一歩距離を置いたところがある。小西紗和とは、G組で2人だけの女子生徒として知り合うが、明るく誰にでも好かれる性格の紗和にコンプレックスを感じ、苦手意識を持っていた。しかし紗和からの働きかけにより、次第に親しくなっていく。前髪は、漫画執筆時に邪魔になると、すぐに自分で切ってしまうため、常に短い。
小川 朋樹 (おがわ ともき)
天羽学院高等部1年G組に所属する男子生徒。松雪藍の友人。前髪を目の高さまで伸ばし、金髪を肩のあたりまで伸ばした長髪をしている。口につけたピアスと、頭に巻いたバンダナが特徴。派手な容姿から軽い性格に見られがちだが、人の心の機微に敏感。実家は美容室で、両親はオーナー、姉は美容師として働いている。自身もヘアメイクに関心を持っており、将来はプロになりたいと考えている。 中等部時代、藍が事件を起こすまでは、サッカー部に所属していた。
田口 草太 (たぐち そうた)
天羽学院高等部1年G組に所属する男子生徒。松雪藍の友人。前髪を真ん中で分けたストレートヘアをしている。四角い眼鏡をかけている。物静かな性格で、アニメや映画、パソコンなどが好きなオタク気質。友人たち同様中等部から天羽学院に通っているが、中学1年の頃は周囲になじめず、孤独な日々を送っていた。しかし城戸智史など周囲の働きかけでグループに加わることができたため、智史には密かに感謝している。 永島晶とは非常に好みが似ており、趣味の話題で盛り上がるうち、想いを寄せるようになっていく。中等部時代、藍が事件を起こすまでは、サッカー部に所属していた。
杉下 晴希 (すぎした はるき)
俳優として活躍する男子高校生。小西紗和たちが2年生に進級したのと同時に天羽学院に転入してきた。前髪を左寄りの位置で斜めに分け、肩のあたりまで伸ばした髪を外にはねさせている。芸能界デビュー2年目にして女子中高生に高い人気を誇り、「JUTON スーパーボーイコンテスト」のグランプリ受賞者でもある。俳優とモデルを兼業する多忙な日々を送っており、天羽学院転入当初は、学生生活より仕事を優先しようと考えていた。 しかし紗和に出会い、考えを改めるようになる。自分のイメージを大切にし、周囲には爽やかな好青年として振る舞っているが、実は気が強く負けず嫌い。
白河 結李 (しらかわ ゆり)
私立英華女学園に通う1年生の女子生徒。松雪藍の元恋人。前髪を左寄りの位置で斜めに分け、肩のあたりまで伸ばしたふんわりとしたボブヘアをしている。可愛らしい容姿に加え、明るく親しみやすい性格で、藍以外の天羽学院高等部1年G組の男子生徒たちとも仲が良い。小西紗和とは天羽学院と英華女子学園の合同文化祭がきっかけで知り合うが、現在も藍を想っていると語り、紗和を焦らせる。
城戸 彩加 (きど あやか)
城戸智史の妹。智史とは1歳しか離れておらず、小西紗和たちが2年生に進級する際に天羽学院に入学して来る。前髪の真ん中を長く伸ばし、肩につかない長さのボブヘアをツインテールにしている。明るく元気だが、猪突猛進で少しわがままな性格。松雪藍に想いを寄せており、藍が冗談で言った「彩加が天羽学院に入学できたら交際してもいい」という約束を真に受けて受験し、合格した。 しかし藍は約束を覚えておらず、相手にされていないことに腹を立て、ある行動に出る。
小西 紗映 (こにし さえ)
小西紗和の母親。職業は獣医。前髪を真ん中で分けて額を全開にし、肩につかない長さのボブヘアを外にはねさせている。明るく賑やかな性格だが、13歳の時に両親を亡くし、小西和智と結婚するまでは天涯孤独な人生を送ってきた。高校卒業までは、当時住んでいた家の大家に面倒をみられる形で育ち、特待生として大学へ進学。唯一の家族である飼い猫の死をきっかけに獣医を志し、大学で知り合った和智のことは、出会った当初はからかってばかりいた。 しかし次第に和智の人柄に惹かれ、彼の気持ちに応える形で結婚した。娘と親しい1年G組の男子生徒たちの中では、椿潤一がお気に入り。旧姓は「深代」。
小西 和智 (こにし かずとも)
小西紗和の父親。多忙な妻の小西紗映に代わり、主夫として家におり、家事をしたり小西紗智の面倒を見ている。地元の名士の次男で、紗映とは対照的に、のんびりと育った穏やかな性格。紗映とは大学の獣医学部で知り合い、熱心にアプローチして結婚した。
小西 紗智 (こにし さち)
小西紗和の妹。紗和とは13歳年が離れており、年齢は2歳。前髪を目の高さで切り、髪は2つに結んでいることが多い。一人称は「ちゃっちゃん」。綺麗なものやかわいらしいものが好きで、小西家に訪れた小川朋樹をひときわ美しいと感じ、幼いながらに想いを寄せるようになる。紗和同様、名前は両親から一文字ずつ受け取る形で名付けられた。
松雪 碧 (まつゆき みどり)
松雪藍の父親で、天羽学院の総理事長を務める男性。前髪を左寄りの位置で斜めに分け、1対9にしている。非常に厳格な性格で、藍とは妻の松雪佳奈子の死をきっかけに折り合いが悪い。さらに天羽学院以外の高校へ進学しようとした藍を無理やり止めたことで関係が悪化しており、藍とはほぼ別居同然の生活を送っている。
松雪 佳奈子 (まつゆき かなこ)
松雪藍の亡くなった母親。前髪を左寄りの位置で斜めに分け、肩のあたりまで伸ばしたロングヘアを左側に集めてひとつにまとめている。藍が中学1年生の夏、松雪碧と口論になり飛び出した藍を追った際に、交通事故に遭って亡くなった。
宮地 (みやじ)
天羽学院高等部に勤める中年の男性教師。担当教科は体育で、小西紗和たちが2年生に進級したのちは担任教師となる。前髪を真ん中で分けて額を全開にした髪型と、顔のしわが特徴。高等部の教師だが、中等部時代から悪評の絶えない松雪藍とその仲間たちを快く思っておらず、「クズ」呼ばわりするなど極端な言動をする。
寺田 (てらだ)
杉下晴希のマネージャーを務める若い女性。前髪を右寄りの位置で斜めに分けて1対9にし、長い髪をひとつにまとめ、眼鏡をかけている。晴希のことをとても大切に想っており、彼が芸能活動をしていくには、充実した学校生活が必要だと考えている。そのため天羽学院に入学してから、生き生きと暮らすようになった晴希に、安堵していた。
山代 (やましろ)
天羽学院のPTA会長を務める女性。前髪を真ん中で分けて額を見せ、肩の上で切り揃えたボブヘアで、丸眼鏡をかけている。杉下晴希の天羽学院転入を快く思っておらず、芸能人である晴希は学院の風紀を乱すと考えていた。そのため、晴希の周囲でトラブルが起きた際、晴希に責任を求めて退学させようとする。
吉村 美桜子 (よしむら みおこ)
天羽学院1年E組に所属する女子生徒。前髪を目の高さで切りそろえ、胸のあたりまで伸ばしたストレートヘアをしている。天華祭の準備中に親切にされたのがきっかけで、城戸智史に想いを寄せているが、自分に自信がなく声をかけられずにいる。
花岡 (はなおか)
小西紗智の、中学校での同級生。前髪を左寄りの位置で斜めに分け、胸のあたりまで伸ばしたストレートロングヘアをしている。片想いの相手が紗智に想いを寄せており、紗智のことを一方的に敵視している。そのため紗智に聞こえるように嫌味を言ったりと、嫌がらせをしてくる。
場所
天羽学院 (あまばねがくいん)
小西紗和たちが通う中高一貫の学院。松雪藍の父親である松雪碧が総理事長を務めている。元々は男子校だったが、紗和の入学した年から共学となった。そのため男女比率は5対1と男子に偏っており、さらに男子の7割は中等部からの進学組となっている。藍と碧が親子である関係から、藍とその友人たちは校内では野放しとなっており、高等部から入学した紗和は、その荒れ具合に驚くことになる。 制服は水色のシャツに、ストライプ柄が入ったデザインのブレザーが特徴で、紗和は制服が目当てで入学を決めたほどでもある。リボンとネクタイの色は学年で別れているが、着こなしは比較的自由で、違う色のシャツやアクセサリーの着用も可。
私立英華女学園 (しりつえいかじょがくいん)
天羽学院の姉妹校で、天羽学院近隣に位置する女子校。天羽学院が共学になるまでは交流が深く、中等部時代の松雪藍と白河結李もそれがきっかけで交際を始めた。高等部では毎年秋に天羽学院との合同文化祭「天華祭」を開催しており、期間中はお互いの校内を行き来することもある。
イベント・出来事
天華祭 (てんかさい)
天羽学院と私立英華女学園が、毎年秋に2校合同で行う文化祭。天羽学院の「天」と、私立英華女学園の「華」をとってこの名が付けられている。主に2年生が展示や模擬店を行い、1年生はそのサポートを行う。3年生は基本的に客として参加するが、有志が劇や音楽演奏といった出し物を行うことも許可されている。他校の生徒や一般客も多く訪れ、文化祭当日の校内は非常に賑わう。
カフェ☆Gエンジェル
小西紗和たちが2年生の時のクラスG組が「天華祭」で行った模擬店。形態は喫茶店だが、男子生徒たちが女装をして給仕するのが目玉となっており、城戸智史は縦ロールヘアのロリータファッション、田口草太はお団子頭にチャイナ服、椿潤一はストレートロングヘアに着物を着て接客をした。「天華祭」のシステム上、紗和たちは1年生の時に2年生のホストクラブを手伝ったが、智史によれば、この「カフェ☆Gエンジェル」は、その時のホストクラブの5倍ほどの集客を誇ったという。