概要・あらすじ
19世紀、フランス・パリ。14歳の少女・セリーヌ・フランソワは、先生の教えに従い、ルーアンの隣村から上京してきた。「月から来たような奴だ」と言われてきたセリーヌは、人とは違う不思議な雰囲気を持っていた。雇ってもらったカフェでは、笑顔が下手で接客に向かないと一日でクビになってしまう。突き飛ばされてもへこまず、すぐに立ち上がるセリーヌに興味を持った老紳士・ルネ・フォンティーヌは、セリーヌをお茶に誘った。パリに来た理由をルネが尋ねると、出稼ぎではなく「多くのことを経験するようにと先生から言われたため」とセリーヌは答えた。するとルネは縫製所の仕事を紹介し「仕事が終わったらここへ来なさい」とセリーヌにメモを渡した。セリーヌは縫製所でボタン付けのお針子仕事を終え、メモの場所に行くと、書店の中でルネが待っていた。ルネは今日の出来事を詳しく話してほいと言う。セリーヌは仕事の内容からお針子たちのおしゃべり、ほかの子のおしゃべりをとなりの子が聞いて怒っていたことなどをルネに話した。セリーヌの話を聞いたルネは「本を作るために君の目を貸してほしい」と言い、パリで働く人々の話を集め、風俗観察集を作りたいというのだ。自分はもう老人で、目もかすみ、足も悪い。自分の代わりにいろいろな場所へ行って、見てきたことを報告してほしいとセリーヌに頼むのだった。こうして、ルネの仕事の手伝いをすることになったセリーヌは、書店の上階の部屋を借り、ルネに指示された多種多様な職業を体験していき、セリーヌの目を通して見た「パリの街での出来事」を報告していく。
登場人物・キャラクター
セリーヌ・フランソワ
ルーアンの隣村出身の14歳の少女。肩にかかるくらいの長さの金髪で、目の色は青。故郷では「月から来たような奴」と言われていた。先生からの教えだけが頼りで、さまざまな経験をするためにパリにやって来た。読み書き裁縫など、一通りのことは先生から教わってきたが、感情が乏しく、自分が何を好きか、何をやりたいかがわかっていない。笑顔を作るのが下手で、愛想がなく無口。悪口を言われても落ち込むこともない。
ルネ・フォンティーヌ
パリ在住で70歳の老紳士。雑役女中を雇っているブルジョアで、以前は本を出版し、多くの従業員も雇っていた。事務所兼書店を所有しており、自社出版の本を販売している。街の人々はルネのことを大尉、編集長、本屋と呼ぶこともある。物腰は柔らかで、品のある男性。足が悪く、杖をついて歩く。鼻とアゴに髭を生やし、丸いメガネをかけている。