駅から5分

東京のとある場所にある花染駅。駅から5分圏内に位置する場所で、町に住む人々の物語が展開していく。花染中学校、花染高校、茴香(ういきょう)女子大学、派出所、花染神社等を舞台に繰り広げられる各人のエピソードが、ストーリーの垣根を超えてそれぞれの場面の中で交差し繋がっていく群像劇。読者は全編を俯瞰でみる面白さも味わえる仕掛けになっている。くらもちふさこの別著作『花に染む』の続編。

正式名称
駅から5分
ふりがな
えきからごふん
作者
ジャンル
日常
レーベル
クイーンズコミックス(集英社) / 集英社文庫―コミック版(集英社)
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あらすじ

 第1巻

 エピソード1では花染中学校3年B組の藤巻 よし子が同級生の沢田から突然俺と付き合わないかと告白される場面から始まる。いいよと軽く返事をしてしまったものの、初めて男の子から告白されたよし子は動揺を隠せない。沢田は同級生らが彼はキケン因子だと噂をするような、少し悪びれた男子生徒だった。ところが、その直後、彼は交通事故に遭って学校をひと月休むことになる。冷静になったよし子は、自分には以前から憧れていた卒業生である先輩・圓城 陽大がいたことを思い出し、沢田と付き合うのは止めようと思い直すのだった。学校へ復帰してきた沢田は事故の後遺症で記憶喪失を患っていた。別人のようになって、よし子に告白したことも忘れている沢田によし子の心は揺れるのだった。 

エピソード2では長野県上ノ田役場に勤める山根 野生子が主人公。野生子は休暇をとって中学時代の同級生青野に会うために上京していた。野生子と青田は姉と弟のようにいつも一緒にいる仲だったが、青野は東京に引っ越してしまい、それっきり会うこともなく時が経っていた。青野の居所は20年前にもらった一枚の葉書だけが頼りだ。野生子はタクシーに乗って葉書の住所に向かう。ところが、途中、野生子が乗ったタクシーは道に飛び出してきた中学生の男の子をはねてしまう。結局、青野には会えずじまいで長野に戻った野生子は突然のトラブルがショックでもう東京には行きたくないと思う。しかし、事故に遭った少年のことが気になり、日を置いて再び上京し、同じ町に向かうのだった。事故現場まで何とかたどり着いた野生子はすぐ側にある派出所を見つけ、事故の事を尋ねようと中へ入った。するとそこにいたのは会いたかった元同級生の青野本人だったのだ。青野は花染派出所に勤務する警察官になっていた。 

 第2巻 

エピソード6は前のエピソードから続く茴香(ういきょう)女子大学の学生水野 楼良の恋愛話。楼良は電車で見かけて一目ぼれした圓城 陽大をネット上の掲示板、花染町BBS(掲示板)を頼りに探し当て、以来夢中で追いかけていた。陽大は同じ花染町にある神社の神主の息子で花染高校に通う高校三年生。事情で中学を2年間休学していたため、高校進学が人より遅れていた陽大は大学生の楼良と同じ歳、生徒会長であり、弓道部に所属している。楼良は彼の姿をひと目見るため、毎週弓道部の練習見学に足を運んでいた。生徒会執行部では陽大につきまとう楼良の話で持ち切りだ。生徒会執行部員のジャラは陽大に楼良を避けてしばらく弓道の休日練習は止めた方がいいのではないかと釘をさす。しかし、陽大はあまり気にしない様子だった。ある時、弓道練習の見学にきていた楼良は、陽大に弓道で勝負して私が勝ったらつき合ってくれませんかと申し出る。周りの皆は呆れるが、陽大は断らなかった。楼良は同じ茴香(ういきょう)女子大学弓道部に在籍する陽大の姉、圓城 雛の元で弓の特訓を受けて、陽大との勝負に臨むのだった。勝負の日、陽大が弓道場に行くと、お姫様のような長い巻き髪を短く切って別人のようになった楼良が待っていた。互いに弓を弾き合った後、陽大は楼良が姉の雛に手ほどきを受けたのだとすぐに見破るのだった。 

エピソード7では、第一巻にでてくる藤巻 よし子が再び登場する。よし子の弟・藤巻くん(通称まあくん)は小学生。まあくんは、塾の帰りに、迎えに来てくれた姉のよし子とおしゃべりをしながら歩く道がとても好きだった。それは豪邸ばかりが立ち並ぶ通り道で、昔、よし子とまあくんが住んでいた家があった。まるでグラバー亭のように立派で大きな家だった。よし子とまあくんの家族は事情でこの家から小さな家に移り住んでいる。まあくんはこの家にまた戻れますようにと、こっそりおまじないをかけていた。またパパの仕事がうまくいけば、いつかこの家に戻ることがきるよねと言うまあくん。しかし、よし子はその言葉を打ち消すように、あの家に住んでいたというのは作り話で、まあくんの記憶違いだと嘘をつくのだった。まあくんは動揺した。もしも作り話だったなら、おまじないも効かないのではと思ったからだ。まあくんは、大きな家に住んでいたと記憶している2歳の頃、いなくなったママを探して花染神社に迷い込んだ。そしてそこにいた中学生の圓城 陽大が強い子になれと言って教えてくれたおまじないを、まあくんはずっと信じてきたのだった。 

第3巻

 エピソード12では第1巻で交通事故を起こしてしまった運転手が登場。タクシー運転手の成田は花染病院総合病院の前で客待ちをしていた。病院の外来帰りの年寄りを当てにしていたところ、ちょうど杖をついた老婆が乗り込んできた。車が走り出すと、老婆は探し物をしたり、独り言を言ったりと落ち着きがない。そして駅を通り過ぎたところでここはどこかと尋ねてきた。曲がって欲しかった角を通り過ぎてしまったようだ。老婆は、だったらじいさんに会いに行くのであっちへ行ってくれと杖で反対方向を指した。着いたところは墓場だった。老婆は成田にもう少し愛想よくした方がいいという言葉を残して、墓場の中へ歩いて去っていった。成田が花染駅で停車していると助手席の窓を叩く音がする。開けると会社をリストラされた友人戸田が顔を覗かせ、賭けレースへ行こうと誘ってきた。成田は行かないときっぱり断った。やってきた客を乗せてしばらく走ると、客が「そとば」と言う。何のことかと一瞬考えていた成田だったが、そこだの聞き違いだった。客を降ろした後に「そとば」とは何のことだったか考える成田。昼になり、成田が商店街でコロッケを買い求めると、店の女があんた死人みたいな顔色だと言う。成田は気分が落ちこみ全てに無気力な自分を感じていた。雨が降ってきた。次に雨に濡れた女の客が乗り込んできて、成田は気味が悪いと思っていた。女はまた「そとば」と言う。今度はそこでの聞き間違いだった。そとばとは何かと女に尋ねると、墓に立てる卒塔婆のことだと聞いてぞっとする成田。先月人身事故を起こしてから自分は気が変になったようだと思う。震えながら車を走らせていると墓場の前で車を止める別の女性の姿が見えた。長野から来た山根 野生子だった。成田は野生子を客として乗せていた時に人身事故を起こしたのだった。野生子は事故のお詫びがしたくて成田を訪ねてきたのだと言って土産を手渡した。成田は手に取ったおはぎを見て、今日一日の気疲れがとれたかのように腹が減ったとつぶやいた。

登場人物・キャラクター

藤巻 よし子 (ふじまき よしこ)

花染中学校に通う女子中学生。クラス委員をやっている優等生。小学生の弟(通称まあくん)と二人姉弟。大きな家に住むお金持ちの子供だったが、父親の仕事が上手くいかずに庶民的な場所へ転居した。生真面目な性格で、生徒会役員にも自ら立候補している。先輩である圓城 陽大のことを密かに慕っている。友達とは群れない一人でいることが多いタイプ。同じクラスの沢田に告白され、いいよと応えるが沢田が交通事故に遭って休学するため考え直す。しかし、また学校に戻ってきた沢田のことが気になり始める。

沢田 (さわだ)

花染中学校に通う男子中学生で、藤巻 よし子の同級生。キレやすい性格で、問題ばかり起こしているので、周囲からは危険分子として警戒されている。藤巻 よし子に告白してOKをもらうが、その後、交通事故に遭って記憶喪失になってしまう。学校に戻った後、記憶を取り戻すために以前自分で作った英単語カードを頼りによし子が好きだったことを思い出す。 

圓城 陽大 (えんじょう はると)

花染高校の男子高校生で生徒会長。貴公子のような上品な振る舞いで、後輩からの人気は高い。弓道部に所属している。花染神社の息子。茴香女子大学に通う圓城 雛は姉であり戸籍上の従姉にあたる。茴香女子大学の女子大生水野 楼良に好かれ告白される。弓で勝負して負けたら付き合ってと言われ、結果付き合うことになる。中学生の頃、花染神社に迷いこんだ藤巻 よし子の弟まあくんにスプーン曲げを見せておまじないを教える。

山根 野生子 (やまね のぶこ)

長野県にある上ノ田役場の住民課に勤める公務員。長身で長い髪を後ろで結わえている。極度の方向音痴。数十年間介護してきた祖母・たみを見送る。中学時代に隣家に住んでいて東京に越していった青野 総太からもらった葉書を大切に持っている。律儀な性格。青野に会うために上京し、乗ったタクシーが交通事故を起こす。運転手と事故に遭った少年が気になるばかりに再度上京し、偶然青野に再会する。

保田 るり (やすだ るり)

花染小学校に通う女子小学生。不仲な両親が離婚の話し合いをしている隙に1人で花染稲荷神社のお祭りに向かう。途中、花染駅のホームを通る近道をしては怒られるが、駅の椅子に放ってあった落とし物の財布を拾い、警察官の青田がいる花染派出所へ届ける真面目な子。外山 りおが声優を務めるTVアニメの『チャキポン』が好き。藤巻 よし子の弟である藤巻くん(通称まあくん)のことが好き。

赤松 (あかまつ)

花染高校2年生の女子生徒。圓城 陽大が会長を務める生徒会執行部で入谷と共に執行役員として活躍している。役職は書記。両親の愛情が押しつけだと感じるようになり、ストレスで円形脱毛症になる。父の転勤を機に家族の中で自分だけ花染町に残り、ひとり暮らしをするようになった。花染町BBS(掲示板)で様々な街の人の声を拾い上げ質問に応えるなど管理の仕事もしている。花染中学校に通っていたぼっちゃり体型でアカブーというあだ名の妹がいる。

入谷 (いりや)

花染高校に通う男子高校生。生徒会執行部で副会長を担う。ロボットオタク。生徒会会長の圓城 陽大や書記役の赤松 妙子とは友人の間柄。機転が利き、花染町BBS(掲示板)における赤松のハンドルネームがレッドれんじゃーである事を見抜く。自身のハンドルネームはユリア。

水野 桜良 (みずの ろうら)

茴香女子大学の2年生。あだ名は姫。母親の前世はマリーアントワネットで、自身はオーロラ姫の生まれ変わりだと言っているため、大学の仲間からは不思議ちゃんキャラだと敬遠されている。合コンの頭数合わせに誘われて浮いてしまう。電車に乗っている時に圓城 陽大を見て一目惚れし、ネットの花染町BBS(掲示板)を使って陽大を探し出す。毎週、陽大の弓道の練習見学に行き、陽大に弓で勝負して、自分が勝ったら付き合ってほしいと申し出る。圓城 雛に弓を習い、勝負に勝って陽大と付き合い始める。

圓城 雛 (えんじょう すう)

茴香女子大学3年の女性大生。花染神社の神主の娘で圓城 陽大の姉。戸籍上は従姉になっている。陽大とは家庭の事情で複雑な思いを抱き合う関係。弓道部の主将。弓道部の部員を募り、学生たちの言葉遣いや風紀の乱れに頭を抱えている。圓城陽大のことが好きな水野 楼良に請われ、弓道を教える。体調を崩し花染神社内に倒れていたサラリーマンの林に気づき、助ける。林に言い寄られるが素っ気ない態度でかわすつかみどころのない性格

外山 りお (とやま りお)

声優。TVアニメ『チャキポン』の人気キャラクター、チャキポンの声がアタリ役となり一時人気声優となる。現在は仕事が減ってきて、イベントの司会、MCなど声優以外の仕事やアルバイトで生活している。人気声優の冬柴 佐和の先輩にあたる。自分を追い越して人気者となった冬柴に引け目を感じて、冬柴の家から離れた場所にある花染町へ引っ越す。声優である事に誇りを持っている。

冬柴 佐和 (ふゆしば さわ)

アニメの声優。根っからのアニメ好き。ひとつの役を何度でも違う人間が演じることができる俳優に比べ、ひとつのキャラクターには1人の声しかないから声優がいいというこだわりを持って声優を目指した。チョイ役が腐女子に受け、雑誌に掲載された自身の写真が良くてブレイクした。冬柴より早くアタリ役を持ち人気だった外山りおの後輩だが、現在は低迷している外山りおに反して、アニメの主役キャラクター、クライドを演じるなど、人気はかなり高い。

タミー

声優。花染中学校3年B組の女子中学生。生徒会長。藤巻 よし子や沢田の同級生。交通事故に遭って休んでいた沢田が学校に復帰するとところどころ台詞がカタカナになる独特な喋り方をする。アニメ好きのオタクで、外山 りおが声優をやっているTVアニメ『チャキポン』のファン。今、大人気の声優冬柴 佐和が出る声優イベントも見に行っていた。

丹野 祐実 (たんの ゆみ)

花染中学校3年B組に通う女子中学生。藤巻 よし子、沢田、荻野タミーらの同級生。タンツボと言うあだ名を付けた沢田のことを嫌う。しかし、沢田が記憶喪失で性格が変わってからは、彼が気になる存在になっている。両親は離婚しており、母親に引き取られている。父親は花染派出所の警察官、青野 総太。

場所

花染町 (はなぞめちょう)

『駅から5分』の舞台となる町。花染駅周辺には商店街や学校が集中し、栄えている。花染神社、花染派出所、花染高校、花染中学校など、すべて駅から5分圏内に存在する各々の場所で登場人物の物語が繰り広げられていく。

書誌情報

駅から5分 全3巻 集英社〈クイーンズコミックス〉 完結

第1巻

(2007年11月19日発行、 978-4088654393)

第2巻

(2008年9月19日発行、 978-4088654980)

第3巻

(2009年11月19日発行、 978-4088655666)

駅から5分 全2巻 〈集英社文庫―コミック版〉 完結

第1巻

(2016年12月16日発行、 978-4086196543)

第2巻

(2016年12月16日発行、 978-4086196550)

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