あらすじ
第1巻
見た目は厳ついヤンキーながら、心優しい好青年の桜井京は、街を歩いていた際に小さな男の子のたっくんにアイスでズボンを汚されてしまう。強面な京の姿を見たたっくんの母は戦慄するが、京はたっくんを優しく励まし、さらにたっくんの母に料理のアドバイスを残して颯爽と去っていくのだった。呆然とするたっくんの母だったが、我に返って家に戻り、京に教えてもらった料理のレシピを実践。出来上がったから揚げはたっくんの父にも好評で、一家は和やかな団欒の時間を過ごす。(「第1話」。ほか、14エピソード収録)
第2巻
桜井京は困っている人を見かけるとほっとけずに、手助けして去っていくことを繰り返すうちに、多くの人とつながりを持つようになっていた。そんなある日、京は人助けを通じて知り合った藤咲(兄)と藤咲夏生の兄妹や、梅ちゃん先生と共に鍋パーティーを行うこととなる。京のアドバイスでおいしく出来上がった鍋と、京特製の梅酒を堪能する三人だったが、夏生だけは未成年なためにお酒が飲めない。そんな夏生に京は、彼女が成人する3年後に向けて梅酒を作ることを提案。夏生はそんな京の優しい言葉に喜びをあらわにする。(「第20話」。ほか、14エピソード収録)
登場人物・キャラクター
桜井 京 (さくらい きょう)
金髪強面のヤンキー青年。目つきが鋭いために初対面の人たちには怯えられるが、見た目に反して老若男女問わず優しい気遣いの達人。よく街中で困っている人や悩んでいる人を見かけてはアドバイスを残して去っていく。その様子から「ヤンキーの皮かぶった優しさの権化」「颯爽の擬人化」といわれている。桜井涼の兄で、兄弟仲も良好。子供や動物が大好きで、たっくんとなかよくなってからは、たっくんの母に頼まれて保育園をたびたび訪れ、たっくんの世話をしている。最初はその見た目から保育園の保育士たちにも警戒されたが、すぐに打ち解けた。動物の中でも特に猫が大好きで、猫を前にするとふだんの鉄面皮からは考えられない百面相を見せる。藤咲夏生とはネコ友で、猫の話で盛り上がってなかよくなった。親戚の叔父が経営している「川ちゃんラーメン」でよくお手伝いをしているが、桜井京自身は、本職は別にあると語っている。橘大地とは中学校時代からの付き合いだが、人に優し過ぎる性格と一時期音信不通になっていた経緯から、さまざまな苦言を呈されている。実はスポーツ万能で腕っ節も非常に強く、街で引ったくりを見かけた際にはあっさり無力化した。
桜井 涼 (さくらい りょう)
男子高校生で、桜井京の弟。年齢は17歳。爽やかなイケメンで、人当たりのいい温和な性格をしている。そのため女子に人気があり、いつもたくさんの女子の取りまきに囲まれている。京を尊敬しているが、若干ブラコン気味なところがあり、兄をバカにされるとふだんの温厚さからは考えられないほど激怒する。自分でもそんな一面を嫌悪していたが、藤咲夏生に共感されて認められたことで彼女に好意を抱くようになる。しかし初恋ということと、夏生に対する思いは無自覚なため、何かと迷走することが多い。兄ゆずりの知識人で時々周囲にアドバイスをしている。
梅ちゃん先生 (うめちゃんせんせい)
保育園で働く女性。ショートボブの髪形で、左目の目元に泣きぼくろがある。園内では「梅ちゃん先生」のあだ名で、同僚からは「ミトちゃん」と呼ばれている。まじめな性格で、ヤンキーが大嫌い。桜井京に対しても初対面では悪い印象しか抱いていなかったが、彼の気遣いに触れるうちに考えを改め、好意を抱くようになる。しかし、意地を張って素直になれないところがあり、周囲からは「ツンデレ」と思われている。偶然、「川ちゃんラーメン」で京が働いているのを知って以降、店の常連となる。同じく店の常連である藤咲(兄)ともなかよくなり、休日は京と藤咲(兄)の三人で集まり、遊びに行くようになる。
藤咲 夏生 (ふじさき なつき)
猫好きの女子高校生で、黒い髪をストレートに伸ばしている。最近、「吉法丸」と名づけた猫を飼い始めたが、なかなか懐いてくれないのを悩んでいる。偶然、そのことを耳にした通りすがりの桜井京にアドバイスを受け、猫となかよくなる。それからは京ともネコ友となり、ちょくちょく行動を共にする。京と藤咲(兄)がなかよくなってからは、家にも招いて鍋パーティーを行ったり、吉法丸といっしょに遊んだりしている。兄と仲がいいため、桜井涼の気持ちにも共感した。それ以降、涼から好意を寄せられている。大学への進学を希望しており、塾に通っているが帰りが夜遅くなるため、よく兄や京に迎えに来てもらっている。
藤咲(兄) (ふじさき)
藤咲夏生の兄。多忙なサラリーマンながら、妹思いで手が空いているときは夜遅くまで塾に通っている妹を迎えに行ったりしている。妹を通して桜井京と知り合う。最初は京と妹の関係を心配していたが、京に労われたことで一気に打ち解け、友達となる。京の親戚が経営する「川ちゃんラーメン」にも通い始め、のちに店の客となった梅ちゃん先生とも友達となった。休日は京、梅ちゃん先生と集まって遊んだり、飲んだりしている。ふだんはおちゃらけているが、実は人の感情の機微に敏感で、妹と梅ちゃん先生が恋をしていることに気づいており、それとなくフォローして恋を応援している。
宮ちゃん先生 (みやちゃんせんせい)
保育園で働く女性で、長い黒髪をポニーテールにしている。明るく快活な性格で、子供たちとも仲がいい。園内では「宮ちゃん先生」のあだ名で呼ばれる。同僚の梅ちゃん先生の恋を応援している。保育園には家から通っており、家は保育園のすぐ近くにある。
赤松(姉) (あかまつ)
藤咲夏生の友達で女子高校生。少しウエーブの入った髪をセミロングに整えている。お年頃なため恋に関心があり、夏生が桜井京に恋をしていると誤解し、夏生の恋を応援し始める。周囲には赤松(妹)を自慢の妹と紹介している。ふだんは姉妹仲が非常にいいが、妹の部活動を応援しているときは意見が衝突してケンカすることがある。
赤松(妹) (あかまつ)
中学2年生の女子生徒。黒い髪を無造作に伸ばし、肌を日焼けさせたスポーツ少年のような見た目をしている。一人称が「俺」で、サッカー部で男子に混じってサッカーをしているのでよく男子にまちがわれるが、れっきとした女の子。桜井京をヤンキーと思って怖がっていたが、捻挫が悪化して困っていたところを助けてもらってなかよくなる。その後は親や赤松(姉)とケンカした際に京に相談をしたりしている。
バイトのお兄さん (ばいとのおにいさん)
ファミリーレストランでアルバイトをしている青年。大学の課題で忙しい中、アルバイトをしてお金を稼いでいる苦学生。眼鏡をかけた気弱そうな外見をしており、性格も繊細。自らも細かいことにすぐ気持ちが左右される「繊細ヤロー」と自覚しており、多くの気苦労を抱えていたが、お客として来た桜井京に気遣ってもらったことで少し前向きになる。繊細な性格をしているだけあって仕事は非常に丁寧で、ぜんざいなどデザートの盛り付けが上手。
橘 大地 (たちばな だいち)
きうちゃんの父親で、橘由季の夫。黒い髪を切りそろえたサラリーマンで体格がよく、目つきが鋭い。桜井京とは中学時代からの友人で、口では厳しいことを言いつつ、彼を心配している。中学時代は黒い髪を肩まで伸ばしていた。京が一時期、音信不通になっていたことを心配しており、京にまた失踪しないように忠告した。
橘 由季 (たちばな ゆき)
きうちゃんの母親で、橘大地の妻。髪を長く伸ばした女性で、竹を割ったようなサバサバした性格をしている。子煩悩で、きうちゃんのことが大好き。最近、きうちゃんの様子が変わったことに気づいており、誰かに恋をしていると思っている。実は桜井京の中学時代の先輩。中学時代は「女帝」の名で恐れられており、ナンパしてきた不良の集団を返り討ちしていたほどの猛者。中学時代は夫である大地も交えてよく京といっしょに行動していた。きうちゃんの恋の相手が京だと知り、安心して彼に娘を託した。
きうちゃん
橘由季と橘大地の娘で、引っ込み思案な性格をしている。両親が共働きであるため、夜遅くまで保育園に預けられているが、それに対して駄々をこねたりしない健気ないい子。ただ、内心さびしいと思っており、同じく夜遅くまで預けられていた友達のたっくんが、最近は桜井京のお迎えで早く帰ってしまうのを寂しく思っていた。当初は京のことを「こわいおにいさん」と思っていたが、彼が自分の寂しさを理解し、いっしょにいてくれたことで一気に親しくなり、幼いながら京に恋心を抱くようになった。周りに遠慮するいい子なため、自分の気持ちを押し殺しがちだったが、京と触れ合ううちに素の自分を出せるようになっていく。
たっくん
元気一杯な男の子で、きうちゃんと同じ保育園に通っている。桜井京のズボンをアイスで汚してしまったのをきっかけに知り合う。最初は京の外見に怯えていたが、彼が優しく接してくれたことですぐに懐いた。最近はたっくんの母に頼まれた京に保育園の送り迎えをしてもらっており、保育園でも京となかよく過ごしている。きうちゃんともなかよし。
たっくんの母 (たっくんのはは)
たっくんの母親で、セミロングヘアにしている。たっくんが桜井京のズボンを汚してしまったことで大慌てするが、逆に京に気遣われ、料理のアドバイスまでもらう。その後は京となかよくなり、たっくんの保育園の送り迎えをお願いするようになる。京とは家族ぐるみの付き合いで、たびたび料理のアドバイスを受けている。
たっくんの父 (たっくんのちち)
たっくんの父親。平凡なサラリーマンだが、働いている会社はややブラック気味で、最近は残業をなくすために早朝出勤を義務付けられており、非常に多忙な日々を送っている。落とし物を拾ってもらったのをきっかけに桜井京と出会い、妻と息子が世話になっていることを知り、京となかよくなる。実は元野球少年で、「ビーベアーズ」というプロの野球チームのファン。京となかよくなったことがきっかけで野球少年の血が騒ぎ、彼とキャッチボールをする約束を交わす。