あらすじ
第1巻
北極点を目指すイギリスの戦艦、シーホース号の前にダンテという少年が姿を現す。ダンテは世界のさまざまな知識が記録されている「要素」という本と、世界を形成する粒子を意のままにあやつる「魔導器」という道具を持っており、これらの力を使って単身北極までやって来たのであった。その目的は北極点に眠る「生命」という生命を司る本を手に入れ、不治の病に苦しむ幼なじみのエマを助ける事。ダンテはイギリス軍に力を貸し、共に北極点を目指すが、そこにフランス軍の歩行戦艦が出現する。この戦艦をあやつるのはダンテの幼なじみのナポリオで、彼もまたエマを救うべく「生命」の本を手に入れようとしていた。北極点到達をめぐって激しく争うダンテとナポリオ。ところが、突如姿を現したナポリオの兄のジョゼに「生命」の本を奪われてしまう。失意の内に故郷に戻ったダンテとナポリオだったが、ジョゼがエマのために本の力を使ってくれたため、彼女の病はすっかり直っていた。安堵した二人はそれぞれイギリス、フランス軍に入隊するべく故郷を去る。一方その頃、ジョゼは「生命」の力で、かつて世界に名を馳せた海賊達を復活させようとしていた。
第2巻
イギリス海軍の士官候補生となったダンテは、同期のパトリックやダミアンと共にレイゾナブル号でインドへとやって来る。彼らはインドの大富豪、マーラに嫁いだイギリス貴族の娘、フランシスを保護するよう命令されていた。マーラは病で明日をも知れぬ身となっており、彼が亡くなったらフランシスは、現地の風習に従って亡き夫と共に生きながら火葬にされるというのである。ダンテは魔導器の力で追手を蹴散らしながらフランシスを連れて逃走。レイゾナブル号へと辿り着くが、船は「生命」の本の力で蘇ったキャプテン・キッドの率いるゾンビ海賊に襲われていた。彼らはジョゼに命じられて、ダンテの命と彼の持つ「要素」の本を奪いに来たのである。キッドはレイゾナブル号からフランシスを誘拐し、救出に来たダンテ達も捕獲。彼らをまとめて葬り去ろうとする。絶体絶命のダンテだったが、そこにキッドの財宝を狙うナポリオが潜行戦艦で姿を現す。このスキを突いて海賊達を蹴散らしたダンテらはフランシスを連れて帰国。ナポリオも首だけになったキッドを持って、フランス本国に戻ったのであった。
第3巻
レイゾナブル号はイギリス前首相の息子であるウィリアム・ビットを乗せてアメリカ大陸に向かっていた。ところが、航海の途中、水夫として乗船していた黒人ハーフの青年、オルカに船を乗っ取られてしまう。ダンテらはヴァージニアで解放されるが、そこにフランス軍の支援を受けたアメリカ先住民が急襲して来たため、オルカと一時共闘。戦いの最中、ダンテはオルカが「生命」の力で蘇った不死者である事を知る。魔導器の力を使って、どうにか先住民達を撃退したダンテ達。ところが、小船で逃げたウィリアムが奴隷船に捕まり、行方不明となってしまう。奴隷として南部の農場に売られたウィリアムは過酷な労働を強要されるが、同行していた自由黒人のトビーに助けられ、どうにか生き長らえる。同じ頃、レイゾナブル号はナポリオ率いるフランス軍の攻撃を受けていた。ダンテはオルカと協力してナポリオのあやつる飛行戦艦を撃沈。ウィリアムもパトリックの率いる救出部隊によって保護される。ダンテ達に好感を持ったオルカは海賊から足を洗う事を決意。黒人と奴隷の現実を知ったウィリアムもまた、差別と偏見に満ちた世界の変革を心に誓うのであった。
第4巻
海軍中尉に昇進したダンテは、レイゾナブル号で34名の囚人をオーストラリア大陸に移送する任務を受ける。乗員には航海の達人として名高い「キャプテン・クック」こと、ジェームズ・クックの姿もあった。オーストラリアに上陸したダンテはクックと共に大陸の奥地を探検するが、ジョゼの持つ「生命」の力で蘇った海賊女王のアルビダに遭遇。ダンテ達が森の動物を殺したと誤解され、彼女と戦闘になる。魔導器の力で応戦するが、動物達をあやつるアルビダの前に追いつめられるダンテ。だが、そこにかつて共に戦ったオルカが現れ、戦いは一時休戦となる。オルカは漂流していたところをフランス軍に拾われ、オーストラリアにやって来たのであった。オーストラリアに駐留するフランス軍の中にはナポリオの姿もあった。オルカからフランス軍のオーストラリアでの非道を知らされたダンテは、ナポリオを翻意させようと説得に向かうが、交渉は決裂。ナポリオの生み出した兵器の攻撃を受け、窮地に陥る。間一髪でオルカに救出されたダンテだったが、魔導器の力を使いすぎたためか、彼の右腕は不思議な痣(あざ)に覆われていた。
登場人物・キャラクター
ダンテ
イギリス海軍所属の士官の男性。世界のあらゆる知識を記録した「要素」の本と、世界を形成する粒子を意のままにあやつる「魔導器」を所持する。孤児だったが元冒険家であるコロンバスに引き取られ、彼の孫としてコルシカ島で育った。「要素」と魔導器は、コルシカ島時代にコロンバスから引き継いだものである。その後、コロンバスが死去したため、祖父の旧知であるネルソンの養子となり、祖父が付けてくれた「ダンテ」と養父が名付けた「ホレイショー」をつなげた「ダンテ・ホレイショー・ネルソン」を正式名とした。 卑怯な事を嫌う真っすぐな性格で、責任感が強く、行動力も人並み以上。さらに、状況を冷静に判断する沈着さと機転の早さを併せ持っており、作戦の立案や指揮能力にも長けているなど、指揮官としての優れた資質を有している。 祖父のコロンバスを海賊に殺されたため、海賊の事を激しく嫌っていて、当初は軍にもあまり好意的ではなかった。だが、北極での冒険の際にイギリス軍のエリオットらと行動を共にし、彼らの勇敢さを見た事から考えを改め、島育ちで海が好きだった事もあって、海軍への入隊を決意。 イギリス軍の軍艦、レイゾナブル号の乗組員となった。「最後の海賊王」と呼ばれたサミュエル・ティーチ一味の船団を壊滅させたという過去を持っていて、その時に魔導器の力を使いすぎたため、左目の視力がない。さらに、足や腕に刺青のような痣が浮かび上がるなど、魔導器の多用による影響が見られつつある。ナポリオ、エマはコルシカ島時代の幼なじみで、ナポリオの兄のジョゼとも旧知の間柄。 ナポリオとはよき悪友同士であったが、青年となったナポリオが自身の手で世界を統一するという野望をあらわにし始めた事から、彼との対立が深まりつつある。ジョゼの事は当初信用できる人物と見なしていたが、インドでキャプテン・キッドと戦った際、ジョゼが「生命」の本を悪用している事を知り、彼に対する警戒心を募らせている。 実在の人物、ホレーショ・ネルソンがモデル。
ナポリオ
ダンテの幼なじみの男性。あらゆるものを造りだす「構造」の本の所有者。フルネームは「ナポリオ・ボナパルト」で、ジョゼは兄。ダンテの祖父であるコロンバスが所持していた「構造」の本を継承し、本の力を手土産にフランス軍に入隊。歩行戦艦や飛行戦艦など、さまざまな超兵器を生み出した事からレオナルド・ダ・ヴィンチ以来の天才と称されており、フランス軍内で順調に出世しつつある。 ダンテと同じコルシカ島の出身だが、ボナパルト家はコルシカ島がフランス領になった際、真っ先に媚を売って島一の権力者となった事から、売国奴の息子として島民達から白眼視され続けてきた。そのため、家や父親の事を嫌っており、ジョゼの事も信用できないと警戒しているが、幼なじみのエマにだけは心を許している。 ダンテの事は認めてはいるが、島の子供達にいじめられていた時、エマの目の前で何度も彼に助けられ、そのたびにプライドを傷つけられていた。それゆえ、ダンテに対して友情を感じながら、一方で彼を憎むという複雑な感情を抱いている。何ものにも屈しないプライドの高さと心の強さを併せ持つが、姑息なところがあり、成長するにつれて、目的のためには手段を選ばない非情さを見せるようになる。 ダンテとの争いも当初は子供じみたものだったが、やがて自身の手で世界を統一するという野望を抱くようになり、ダンテと本格的に敵対していく事になる。実在の人物、ナポレオン・ボナパルトがモデル。
エマ
ダンテ、ナポリオの幼なじみの少女。フルネームは「エマ・ハート」。心優しき少女で、ダンテとナポリオの両方から慕われている。不治の病に冒されていたが、「生命」の本の力によって奇跡的に回復。北極から戻って来たダンテ、ナポリオと再会を果たし、二人を安堵させた。実在の人物、エマ・ハミルトンがモデル。
ジョゼ
ナポリオの兄。フルネームは「ジョゼフ・ボナパルト」。一見、誠実そうに見えるが、ゆがんだ野望を持つ得体の知れない人物。当初から「生命」の本を狙っており、ダンテとナポリオにエマの病の事を知らせて、彼女を救うためと言って、北極点に取りに行かせた。そして、二人から「生命」の本を奪うと、かつて世界で名を馳せた海賊達を次々に蘇らせ、自らの野心の道具として利用。 自身の前に立ちはだかるであろう、ダンテとナポリオを亡き者にし、彼らの持つ本を奪おうとしている。大国に支配された海の浄化を目的に掲げているが、真の狙いはどこにあるのかは不明。実在の人物、ジョゼフ・ボナパルトがモデル。
パトリック
イギリス海軍所属の軍人の男性。ダンテ、ダミアンの友人。親は教師をしているが、兄弟が多く貧乏なため、食に困らず勉強もさせてもらえて、家族に仕送りもできるという理由で海軍に入隊した。子供の頃から父親に武術を習っていて、特に剣の腕は一流。キャプテン・キッドの首を斬り落としたり、ウィリアム・ビットを救出したりと、部隊内で並ぶものはないほどの武勇を誇る。 性格も一本気で義理堅く、友人であるダンテが魔導器の力で傷つく事を好んでおらず、戦闘時はできるだけダンテが魔導器を使用せずにすむよう彼の事をサポート。考える事が苦手で、人を使うような度量がないと自認している事もあって、ダンテの指示に従って動く事を信条としている。
ダミアン
イギリス海軍所属の軍人の男性。ダンテ、パトリックの友人。今はちょうど戦争のない時期で、命を落とす心配もないので鍛えてもらってこい、と親に言われて海軍に入隊した。医者の家の生まれで、ある程度の医療知識を持っており、のちに軍医長補佐となる。気が弱く、ケンカも勉強も苦手だが芯は強く、自分のミスをカバーするためにダンテが魔導器を使って傷ついた事から、彼がどんなケガを負おうと、絶対に自分が治すと心に誓っている。 元いじめられっ子だったため、隠れたり逃げたりするのも得意で、キャプテン・キッドとの戦いでは、あらかじめ逃走経路を確保しておいたり、罠を仕掛けて追手を翻弄するなどの活躍を見せた。
オルカ
「生命」の本の力で蘇った黒人のハーフの青年。生前は無名の海賊で、海賊女王のアルビダの宝をいただこうと、彼女の墓所に侵入するが、欲に目がくらんだ仲間に撃たれて絶命。死の直前、霊廟の入り口を爆破してアルビダの遺体と共に埋まっていたため、ジョゼがアルビダを復活させた時、偶然ながらいっしょに生き返った。黒人の血が入っているため白人のやり方に批判的だが、配下の者は人種に関係なく平等に扱うなど性格はさっぱりしていて、きっぷがいい。 自分を蘇らせてくれたジョゼに感謝はしているものの、彼のやり方や性格を嫌っており、ダンテから「要素」の本と魔導器を奪えという命令を無視して独自に行動。再び海賊として活動するための船を得るべく、アメリカに向かうレイゾナブル号に「ジャック」という名で水夫として乗り込み、同乗していたウィリアム・ビットを人質に船を乗っ取った。 だが、上陸したヴァージニアでアメリカ先住民と戦闘になり、ダンテらと一時共闘。ダンテやダミアンの真っ直ぐさに好感を抱き、以後彼らに協力するようになる。不死人であるため、矢や槍が刺さってもビクともせず、馬を片手で放り投げるなど、恐ろしいほどの怪力を併せ持つ。 元海賊だけあって海に関する知識も豊富で、武勇と知略を兼ね備えたリーダーとして部下達から絶大な信頼を得ている。奴隷解放の時代が来る事を予測し、その時に備えるべくアメリカ北部を目指すが、アルビダに船を沈められて漂流。オーストラリアに向かうフランス軍の船に拾われ、やはりオーストラリアに来ていたダンテと再会する事となった。
アルビダ
「生命」の本の力で蘇った1200年前のスカンディナビア王国の王女。男性顔負けの武術の達人で、デンマークとの縁談を嫌い、デンマーク国王を殺して逃亡。自国の船団を奪い取って海賊となった事から「海賊女王」の異名を持つ。北の極寒の地下牢に遺体が幽閉されていたため、奇跡的な状態で保存されており、生前とほぼ変わらぬ姿で復活。 その際、彼女の墓所に侵入して命を落としたオルカも共に蘇った。クジラ、鳥、ワニ、カンガルーなど、さまざまな野生動物と心を通わせ、自在にあやつる力を持つ。マッコウクジラの群れをあやつってオルカの船を沈めたあと、ダンテの命を狙うジョゼによってオーストラリア大陸に送り込まれるが、ほとんどしゃべらない野生児のような女性であるため、ジョゼの命令をどこまで理解しているのかは不明。 生前は家族からの嫌われ者で、動物達を心の支えに育った事もあって、野生動物に強い愛着があり、自然を汚す者には激しい敵意を示す。実在したとされる人物、アルビダがモデル。
コロンバス
コルシカ島の牧師。ダンテの義理の祖父。元冒険家で、孤児だったダンテを引き取って自身の孫として育てるが、海賊に襲われて命を落とした。「要素」、「構造」の本と魔導器を所持していて、死の間際に「要素」と魔導器をダンテに継承。「生命」の本を封印するよう言い遺し、この世を去った。なぜ、一介の牧師である彼が、なぜこれらの超常の本と魔導器を所持していたのかは不明。
ネルソン
ダンテの義父。元軍人の老人。コロンバスの旧知で、ダンテは必ず人の上に立てる男になるので、手元で育ててほしいと遺言で頼まれ、彼を養子とした。ダンテの事を実の息子同然にかわいがっており、ダンテからも慕われている。
アンソン
ダンテ達が乗る戦艦レイゾナブル号の艦長を務める男性。誇り高きイギリス軍人で、いかなる危機にも真っ向から立ち向かう気概を持つ。旧知のエリオットから、ダンテは将来イギリス海軍を背負って立つ存在だと聞かされており、自身もまたダンテの才能に強く期待している。
クラウン
ジョゼに付き従う仮面の男性。ジョゼの持つ「生命」の本の力で蘇ったと思われるが、その正体は不明。過去に名を馳せた海賊達の遺品をコレクションしていて、海賊を、腐敗した政治に立ち向かった英雄とみなしている。そのため、海賊達を討ち滅ぼしたヨーロッパ諸国を憎んでいて、権力者が汚した海の浄化を掲げるジョゼに忠実に仕えている。
エリオット
イギリスの艦船、シーホース号の艦長の男性。北極点を目指すイギリス軍の冒険隊の隊長を務める。フルネームは「J・エリオット・ガーナム」。北極の氷塊と猛吹雪に行く手を阻まれ立ち往生していた時、やはり北極点を目指すダンテと出会い、彼の不可思議な力に救われる事となった。まだ少年であるダンテのアドバイスを謙虚に聞き入れるなど度量の大きい人物で、部下からの信頼も厚い。 戦闘経験も豊富で、ナポリオの歩行戦艦に襲われた際、セイウチの群れを利用して戦艦の脚部を破壊してみせた。ダンテの才能を高く評価しており、彼を立派に育て上げてほしいと、旧知のアンソンに頼む。
フランシス
イギリスの貴族であるニズベッド公爵の令嬢。フルネームは「フランシス・ニズベッド」。8歳の時、インドの大富豪であるマーラの妻となり、「マーラ夫人」と呼ばれるようになった。これは両親が借金のカタとして彼女をインドに置いていったからで、実際はマーラからは娘としてかわいがられていた。そのため、マーラを実の親と慕っており、本名よりもマーラが名付けた「ファニー」という愛称を気に入っている。 マーラが危篤となった際、殉死の儀式である「サティ」から逃れるためイギリスに戻る事になるが、当初は自分を見捨てた両親への反発と、マーラへの思慕から帰国を拒んでいた。しかし、ダンテ達の命懸けの行動を見て、徐々に心境が変化。マーラの遺言に従って生き抜く事を決意し、ダンテらの助けで両親とも決別した。
マーラ
東インド会社の重役を務めるインドの大富豪の老人。高等教育を受けた先進的な人物で、5年前に当時8歳だったイギリス貴族の娘、フランシスを妻とする。それは彼女の両親が借金のカタとして置いていったためで、父親代わりとして彼女の事を大切に育てた。フランシスからも本当の父親のように慕われていたが、マラリアをこじらせて重体となり、フランシスにイギリスに帰って本当の運命の相手を見つけるよう言い残して、この世を去った。
キャプテン・キッド (きゃぷてんきっど)
「生命」の本の力で蘇った海賊。フルネームは「ウィリアム・キッド」で愛船はアドベンチャー・ギャリー号。生前はイギリス公認の私掠船(しりゃくせん)の船長だったが、自国の船を間違って襲ってしまったため、海賊とみなされて縛り首となった。ジョゼの命を受けて、ダンテの持つ「要素」の本を奪うべく、配下のゾンビ海賊達と共にインドに来たレイゾナブル号を強襲。 フランシスをさらい、ダンテ達を窮地に追い込むが、パトリックによって首を斬り落とされる。しかし、それでもなお生きており、ナポリオによって首だけフランスに持ち去られた。実在の人物、ウィリアム・キッドがモデル。
チンムイ
マーラの遺産を狙うインド人の僧侶の男性。フランシスが生きてイギリスに戻ると、マーラの莫大な遺産は彼女とその家族のものになるが、フランシスが殉死した場合、財産は現地の者の略奪、分配の対象とみなされる。そのため、フランシスを亡き者にして遺産を独占しようと、すでに行われなくなっていた殉死の儀式「サティ」を独断で復活させ、さらにダンテの命を狙うジョゼとキャプテン・キッドに協力。 フランシスの身柄引き渡しを条件に墓地を掘り返し、インドの地で眠る海賊達の死体を兵隊用としてジョゼ達に提供した。
ニズベッド公爵 (にずべっどこうしゃく)
イギリスの貴族で、フランシスの父親。妻ともどもギャンブルやパーティーに明け暮れていて、マーラから大金を借りていたため、まだ8歳のフランシスを借金のカタとしてインドに残し、妻と共にイギリスに戻った。マーラが危篤となった際、イギリス軍にフランシスの保護を依頼するが、マーラの遺産を我が物にするのが目的で、娘の安全は二の次であった。
ウィリアム・ピット (うぃりあむぴっと)
イングランド前首相であるチャタム伯爵ウィリアム・ビットの息子。「ウィリアム公」と呼ばれる。アメリカ大陸の視察のためレイゾナブル号に乗り込むが、船の乗っ取りを狙うオルカに捕まり、彼の人質となった。ヴァージニアでレイゾナブル号の乗組員がアメリカ先住民と戦闘になった際、自分の世話役をしていたトビーの助けで逃亡するが、今度は奴隷船に遭遇。 奴隷として南部の綿花農場に売られ、辛酸をなめるが、トビーの命懸けの献身のおかげで生き延びる事ができた。鼻持ちならないわがままなお坊ちゃんで、黒人への差別意識が強く、当初はトビーやオルカの事も露骨に嫌悪していた。しかし、トビーによって救われ、黒人や奴隷の理不尽な現実を身をもって知った事から考えを改め、差別と偏見に満ちた世界を変えるために首相になる事を誓う。 実在の人物であるウィリアム・ピット(小ピット)がモデル。
トビー
自由黒人の老人。執事をしていたが、仕えていた主人が亡くなったため、レイゾナブル号の水夫となった。若くして亡くなった主人の姿をウィリアム・ビットに重ねており、オルカがレイゾナブル号を乗っ取った際、人質となったウィリアムの世話役となって献身的に世話。ウィリアムと共に奴隷船に捕まり、南部の綿花農園に奴隷として売られた時も、身代わりとなって拷問を受けるなど、彼の事をかばい続けた。
ジェームズ・クック (じぇーむずくっく)
冒険家として名高いイギリス海軍の軍人の男性。「キャプテン・クック」の名でも知られる。ニュージーランド、トンガ、イースター島などを発見した事から、航海の達人とうたわれている。オーストラリア大陸の発見者でもあり、同地に囚人を運ぶ事になったレイゾナブル号に同行するが、その理由は地上の楽園であるオーストラリアが流刑地になった事で汚されないか、監視するためであった。 冒険家だけあって博識かつ好奇心旺盛で、ダンテと共にオーストラリア奥地の調査に向かうが、アルビダに森の動物を虐殺したと誤解され、彼女の攻撃を受ける事になる。さらに、オルカからフランス軍によるオーストラリア侵略の事実を知らされて心を痛める。 実在の人物であるジェームズ・クックがモデル。
その他キーワード
魔導器 (まどうき)
「要素」の本といっしょにコロンバスから受け継いだもので、懐中時計のような形をしている。世界を形成している小さな粒子を固めて意のままにあやつる事が可能で、中央部のボタンを押すと能力が発動。雲を突くような巨人や空飛ぶ絨毯、敵を撃つ光の鳥など、さまざまなものを生み出す事ができる。ただし、契約者であるダンテ以外の者が使用する事はできない。 非常に強力なものだが、一方で発動には触媒として契約者の細胞、つまり体の一部が必要になるため、力を使うと爪が割れたり、足を骨折したりするなど、契約者の体がさまざまに傷つくという副作用がある。発動した力が巨大であるほど傷のつき方も大きく、ダンテが左目の視力を失ったのも、かつて魔導器で力を使いすぎたためである。 一方で、ダンテが使用時に負った傷の治りが早くなりつつあり、同時に彼の腕や足に刺青のような痣(あざ)が浮かび上がってくるなど、まだまだ隠された謎があると思われる。
本 (ほん)
超常的な力を持つ巨大な本。「要素」「構成」「生命」の3冊の存在が確認されている。いずれも通常の本よりもはるかに大きく、ダンテは特製サイズのカバンに入れ、背負って持ち運びしている。本の形を取っているが、生命と自我を持っており、所有者と認めた者にさまざまな知識や特別な力を与える。ただし、本の力を使えるのは契約者のみで、他の者が手に入れようとすると、激しく発火して触れられる事を拒む。 実は超古代アトランティスの神書で、古代インカ帝国の神殿に神として祀られていたものもあるというが、その実像は謎に包まれている。
要素 (えれめんと)
超常的な力を持つ3冊の本の1冊。呼び名は「エレメント」。コルシカ島でコロンバスが魔導器といっしょにダンテに与え、以後は彼が契約者となった。まだ測量されていない地域の地形や、そうした地域に住む先住民の言語・風習など、世界に関するあらゆる知識が蓄積されていて、所有者が何を知りたいかによって、書かれている内容も臨機応変に変化する。 さらに、契約を交わした者との意思疎通も可能で、ダンテと会話する際には彼が話しやすいようエマの姿で現れる。
構成 (びるど)
超常的な力を持つ3冊の本の1冊。呼び名は「ビルド」。「要素」と共にコロンバスが所持していたが、ナポリオが契約者となった。物を創造する力を持つ本で、主人のリクエストに応えて、どんなものでも設計する事が可能。潜水艦や飛行艇など、18世紀の技術をはるかに超えたオーバーテクノロジー兵器をも生み出す事ができる。契約を交わした者との意思疎通も可能で、ナポリオに造らせた特殊な水晶に文字を浮かび上がらせる事で彼と会話している。
生命 (らいふ)
超常的な力を持つ3冊の本の1冊。呼び名は「ライフ」。生命を司る力があり、いかなる病気も治す事ができる。さらに、死者を蘇生する事も可能で、蘇った者は首と胴が切り離されても死なない、人間離れした怪力を持つなど、不死身のモンスターと化す。また、魂を持たずに蘇せる事で、意志のないゾンビとしてあやつる事もできる。人の手には余るもので、ダンテは亡きコロンバスの遺言に従い、エマの病気を治したあとマリアナ海溝に沈めるつもりだったが、ジョゼが奪取。 本の力を使って、かつて名を馳せた海賊達を次々に蘇らせている。
レイゾナブル号 (れいぞなぶるごう)
アンソンが艦長を務めるイギリス海軍の軍艦。ダンテ、パトリック、ダミアンが士官候補生時代から乗組員を務めている船で、彼らを乗せてインド、アメリカ、オーストラリアなどさまざまな地に赴く事になる。型は古いが、64基もの砲台を搭載しており、戦闘能力は決して低くはない。
歩行戦艦 (きゅいらっせ まるしゃん)
ナポリオが「構成」の本から得た知識をもとに造りだした戦艦。船の部分は通常の帆船だが、船体部分に4本の巨大な脚が付いており、氷の大地である北極を歩いて移動する事ができる。さらに、艦橋部分にキャタピラが内蔵されており、いざという時は船体から切り離して単独で行動する事が可能となっている。
潜行戦艦 (きゅいらっせ しゅぶめるしぶる)
ナポリオが「構成」の本から得た知識をもとに造りだした戦艦。潜水能力を持ち、水中深く潜って、敵船の砲撃を受けずに航行する事が可能。さらに、水面に向かってドリル状の武器を突き出す「神撃の巨大槍(ウェノーメ・ロンス・デ・デュウ)」を装備しており、これで敵船の船底を破って撃沈する。
飛行戦艦 (きゅいらっせ ぶろん)
ナポリオが「構成」の本から得た知識をもとに造りだした戦艦。飛行能力を持ち、18世紀の時点ではまだ実用化されていなかった水素ガスの力で浮遊。戦艦部分に多数の大砲を搭載しており、敵の攻撃が届かない空高くから砲撃を加える事ができるなど、圧倒的な戦闘力を誇るが、ダンテとオルカによって船体に火矢を撃ち込まれて撃沈した。
魔導車隊 (まじら まにら ふろとともびる)
ナポリオが「構成」の本から得た知識をもとに造りだした鋼鉄製の戦闘車両部隊。石油を動力源としていて、自力で走行する事が可能。さらに、車両の前面部に無数の槍やトゲ付きの鉄板などを装備していて、立ちはだかる者を蹴散らす事ができる。
楽団戦艦 (きゅいらっせ おきすとら)
ナポリオが「構成」の本から得た知識をもとに造りだした陸上戦艦。巨大なオルガンのような形をしていて、石油を動力源にキャタピラで走行。同乗している楽団が行進曲を奏でながら進軍する事から「楽団」の名を冠している。
サティ
インドに古くから伝わる伝統儀式。未亡人となった女性を夫の遺体と共に焼くというもの。野蛮かつ残虐な悪習慣であるという事から、ほとんど行われなくなっていたが、マーラの遺産を狙うチンムイが、相続者であるフランシスを亡き者にするため強行しようとした。
書誌情報
海王ダンテ 13巻 小学館〈ゲッサン少年サンデーコミックス〉
第1巻
(2016-07-12発行、 978-4091273543)
第2巻
(2017-01-12発行、 978-4091274731)
第3巻
(2017-07-12発行、 978-4091276285)
第4巻
(2018-01-12発行、 978-4091280664)
第5巻
(2018-06-12発行、 978-4091283047)
第6巻
(2018-11-12発行、 978-4091286949)
第7巻
(2019-03-12発行、 978-4091290861)
第8巻
(2019-09-12発行、 978-4091294098)
第9巻
(2020-02-12発行、 978-4091295873)
第10巻
(2020-06-12発行、 978-4098501397)
第11巻
(2020-10-12発行、 978-4098502615)
第12巻
(2021-04-12発行、 978-4098504930)
第13巻
(2021-10-12発行、 978-4098507627)