概要・あらすじ
高校生の朝倉アキオは、車の解体工場で1台の事故車に出会う。この車は悪魔のZと呼ばれるいわくつきの車だったが、アキオは魅力を感じ、手に入れる。それからのアキオは悪魔のZにとりつかれたように、深夜の首都高を走り込む。その頃島達也は、以前親友を死に追い込んだ悪魔のZがまた走り出したと知り、廃車にしようとバトルを仕掛ける。
2人の超高速バトルに様々な人々が引き寄せられていく。
登場人物・キャラクター
朝倉 アキオ (あさくら あきお)
幼い頃に両親が離婚し、父親と横浜へ引っ越したが、中学3年生の時に父親が再婚したため、現在アパートで一人暮らししている高校3年生。車の解体工場で見かけた悪魔のZと呼ばれる青いフェアレディZ(S30Z)の魅力にとりつかれ、深夜の首都高を走り込んでいる。Zを整備するため、バイトを掛け持ちし、バイト代と時間をすべてZにつぎ込んでいる。 当然出席日数が足りずに高校を卒業できず、留年している。秋川麗奈から好かれているが、幼い頃に家族の別れを経験したため、あまり人と関わりを持ちたがらない。高校では女子からモテている。悪魔のZをよく擬人化し、あまりチューンをせず、そのままの姿で走らせ続けたいと思っている。
朝倉 晶夫 (あさくら あきお)
朝倉アキオより3代前の悪魔のZのオーナー。親が朝倉えりこの親と再婚したため、えりことは血は繋がらない兄妹。もともとスープラに乗っていたが、悪魔のZを手に入れてからZにのめり込んでいった。ブラックバードの島達也とは親友。彼と一緒に湾岸線を走っていたとき、事故で亡くなっている。
朝倉 えりこ (あさくら えりこ)
ロングヘアの女性。悪魔のZの以前のオーナー朝倉晶夫の妹。悪魔のZを兄より先に見つけて、兄に教えたため、兄が悪魔のZで事故死したことにずっと責任を感じていた。また、兄に恋心を抱いていたため、兄を奪った悪魔のZを憎んでいる。解体工場に出したはずの悪魔のZがまた走り出したのを知り、朝倉アキオを追いかけ続けた。 島達也とは友達。
秋川 零奈 (あきかわ れいな)
ロングヘアの女性でモデルや女優をしている。朝倉アキオと同い年。モデルの仕事をこなすうちに友達とも離れ、孤独を癒すために毎晩首都高を走り込んでいる。愛車はスカイラインGT-R(R32)。彼女の車は「山本自動車」の社長、山本和彦が仕上げたチューンドカー。悪魔のZと出会い、ドライバーの朝倉アキオに惹かれるが、なかなか思いを伝えられずにいる。 悪魔のZを追い続けていたため、いつのまにか高いレベルのR乗りに成長した。
島田 るみ (しまだ るみ)
朝倉アキオの通う高校の若い女性教師で担任。アキオの5歳上。留年したのに学校に出席してこないアキオを心配して、バイト先まで押しかけてきた。京都出身で、興奮すると訛りが出る。
島 達也 (しま たつや)
ブラックバードと呼ばれる現在首都高湾岸エリアで最高速と言われている黒いポルシェ911のドライバー。大学病院に務める若くて腕のいい外科医。実家も大病院で、一人息子。親友だった朝倉晶夫を死に追い込んだ悪魔のZを憎んでいる。一見クールだが、走りに関してはアグレッシブ。悪魔のZが速くなるにつれて、愛車をどんどん改造していった。
平本 洸一 (ひらもと こういち)
年齢は28歳前後。グリーンオートのメカニック。16歳から今のショップに勤め始め、自分の理想の車を造るために借金ばかり重ねていった。同棲していた彼女の流産がきっかけで自分の車を造るのをやめていたが悪魔のZと出会い、挑戦することに。選んだのはスカイラインGT-R(R32)。最初からバトルが終わったら手放すつもりだったので、オーナーが代わっても長く乗れるように過激なチューンは控えていた。
イシダ ヨシアキ
女性のグラビア撮影を得意とする腕のいいカメラマン。髪はオールバックで、口ひげをはやしたナイスミドル。愛車はフェラーリ・テスタロッサ。秋川麗奈とは仕事で知り合った。町工場でコツコツ働く父親を見て育ち、貧乏暮らしに嫌気が差していたので、売れっ子カメラマンになった現在は派手な暮らしをしている。 2回離婚していて、巷では女たらしで有名。派手に遊んでも心は満たされなかったが、悪魔のZと出会い、一緒に走るために北見淳に愛車の改造を依頼した。
北見 淳 (きたみ じゅん)
年齢は50歳前後。悪魔のZのエンジンを組んだ「地獄のチューナー」と呼ばれる天才チューナー。1973年の富士サーキットにメカ兼ドライバーとしてデビューし、いきなりポールポジションを取っている。以来、一時期次々と速い車を組み上げていったが、乗りこなせるドライバーに恵まれず、組んだ車はほとんど事故を起こした。 いつしかチューニングを依頼する客もいなくなり、現在は自転車屋「北見サイクル」を経営している。左目の脇にキズがあり、ガラも悪く、愛想もない。しかし、気に入った相手の車はとことん面倒を見る義理堅い一面もある。
高木 優一 (たかぎ ゆういち)
年齢は50歳前後で北見淳の少し下。利益率のいい外車の整備を専門にしている「ボディショップSUNDAY」の社長。坊主頭に小太りで眼鏡をかけていて、いかにも胡散臭い人物。得意技は保険のかかった車の整備費に利益をノセること。若い頃は悪魔のZのボディを作った鉄とアルミの天才だったが、最近は自ら整備することはなかった。 朝倉アキオに出会い、情熱に突き動かされ、大破した悪魔のZのボディをもう一度自ら組み直した。アキオに対しては妙に強がるが、北見に対しては頭が上がらない。
マサキ
中古車ディーラー。年齢は35歳前後。若い頃は「RGO」の太田和夫が所属していた暴走族「スペクター」の後輩メンバーだった。22まで定職に就かず、太田のショップに入り浸っていたが、太田がショップのドライバーとして雇った。10年前谷田部サーキットで事故を起こして大けがを負い、現在も左足に後遺症が少し残っている。 悪魔のZと出会い、「RGO」で整備したRX-7(FD)で勝負した。自分で車を整備することはないが、どこをいじると速くなるかをメカニックに適切に伝える能力に優れている。走りのスタイルは「死んでもアクセルを踏んでるタイプ」と周囲から言われている。
太田 和夫
年齢は40歳前後。「RGO」の社長。パンチパーマで恰幅のいい中年の男性。歳は50歳前後。いつもタバコをくわえている。若い頃はスペクターという暴走族のメンバーだったが、やがて純粋に速さを求める仲間とチューニングショップを始める。マサキをドライバーとして雇い、順調に業績を伸ばして行った。 顧客の嗜好がライトになるにつれ、エンジンに手を入れるのを辞め、エンジン以外のパーツでセッティングし、エアロパーツと足回りに力を入れるようになった。悪魔のZに出会い、マサキをバックアップしたことで、チューニングにに対する情熱が再び戻ってきた。様々な種類のエンジンを手がけるが、とりわけロータリーに一番の愛着を持っている。
山本 和彦 (やまもと かずひこ)
髪を七三に分け、口ひげを蓄えたナイスミドル。歳は50歳前後。秋川零奈のスカイラインGT-Rを整備している「山本自動車(YMスピード)」の社長。大学卒業後、自動車メーカーに入ったが、3年で退職し、チューニングの世界に入った。最近はエンジンのチューニングはほとんどやらないが、零奈のスカイラインGT-Rだけは社長自ら整備している。 顧客の安全を第一に考え、過激なチューンを嫌っている。相沢圭一郎のスープラに関わり、再びチューニングに力を入れるようになった。ドライブの技術もなかなかで、アグレッシブな走りをする。
相沢 圭一郎 (あいざわ けいいちろう)
北見淳、高木優一、山本和彦、大田和夫などとともに15年以上前に公道で300km/hにトライしていた相沢洸一の息子。愛車は銀色のスープラ。大学生で、車に金をつぎ込むために六本木でホストのバイトをしている。幼い頃に亡くなった父親のことを知りたくなり、父親の乗っていた車と同じ色のスープラに乗って、速い車を追いかけるようになった。 ドライブの腕はなかなかだが、悪魔のZやブラックバードには追いつけなかった。ホストをしているが、実は人付き合いが苦手。
相沢 洸一 (あいざわ こういち)
北見淳、高木優一、山本和彦、大田和夫などとともに、15年以上前に公道で300km/hにトライしていた。銀色のダブルエックス(輸出名スープラ)に乗っていたが、15年前事故で亡くなる。走りに対する姿勢は朝倉アキオに似ていると言われている。
佐々木 元 (ささき げん)
エアロパーツ専門のショップ、スピードショップ マッハの社長。パンチパーマのヒョロっとしたおじさん。おしゃべりでお調子者。若い頃は、北見淳、大田和夫などとともに谷田部サーキットで最高速トライをしていた。多くのショップがツブれる中、セルシオなどのエアロパーツに特化することで、店を続けることができた。 奥さんには頭が上がらない。
富永 公 (とみなが こう)
ECU専門のショップ、トミナガスピードのオーナー。「ジェッティングの鬼」と呼ばれていた。昔黒木隆之に声をかけ、彼にCPUの解析をするよう勧めたことがある。相沢圭一郎とのバトルで朝倉アキオや島達也と知り合い、以後悪魔のZと島のポルシェのセッティングを担当する。 凝り性でエンジンをやるとキリがないので、セッティングに特化するようになった。
黒木 隆之 (くろき たかゆき)
オールバックに眼鏡をかけた落ち着いた雰囲気の男性。スカイラインGT-R専門のチューニングショップ「FLATレーシング」のオーナーでもある。学生時代にGT-R(R32)を買ってチューニングにハマり、借金していたが、富永公にCPU解析を勧められ、入力したロムを売ることで「FLATレーシング」の開業資金を得ることができた。 やさしい物腰だが、仕事に対してこだわりが強いため、他人に作業を任せられず、従業員も解雇した。悪魔のZと出会い、バトルを決意する。選んだ車はスカイラインGT-R(R33)。
山中 (やまなか)
大田和彦の経営するチューニングショップ「RGO」のチーフメカニック。現場を仕切っている。ブラックバードが「RGO」に挑戦してきたため、自分が手がけた「RGO」のデモカー、スカイラインGT-R(R33)でバトルをする。ドライブの技術は、サーキットだと速いが、公道では経験が足りていない。 性格は負けず嫌い。
神谷 英次 (かみや えいじ)
大阪にある「神谷青果」の社長。中学生の時、母親が家を出て行き、16歳のときに父親が「マキ」の母親「エリコ」と再婚。だが5年後、借金まみれの「神谷青果」をのこして父親は別の女性のところへ出て行く。エイジは「マキ」と「エリコ」とともに暮らし、会社の借金にもめどをようやくつけたところだった。 大阪では「ワークスR」というドライブもチューニングもするグループを作っていた。自分のランサーエボリューション5には「WORKS-R」のステッカーを貼り、自分で整備している。チューニングに関しては細かいところを実走でツメていくタイプ。東京から来た島と出会い、自分の腕を東京で試してみたくなり、上京を決意する。
シゲ
大阪にある小さな工場「稲田製作所」のオーナー。20年前、東京で北見淳たちと活動していたが、東京で開いた小さな工場も地上げに合い、失意の中大阪へ帰った。音のいい、独特なトルク特性をもつマフラーを作ることができる。神谷英次も彼のマフラーを愛用している。はるばる東京から来た北見と島達也のためにポルシェ911用のマフラーを製作した。 大阪での暮らしを大事にし、東京行きを諦めていた英次の背中を押す。
大田 リカコ (おおたりかこ)
RGOの社長、大田の娘。5歳の時におもちゃの工具を与えられてから、身の回りの物を分解し始め、中学に入ってからは、実家の倉庫にあったL型エンジンを分解して遊んでいた機械オタク。現在、ファミレスでバイトしている大学生。バイト先で神谷英次と知り合い、バイト帰りに悪魔のZを目撃する。 悪魔のZに挑戦するエイジの愛車・ランサーエボリューション5のエンジンを組み直す。リカコの組んだエンジンは独特な質感があると英次や朝倉アキオからほめられている。
城島 洸一 (きじま こういち)
自動車評論家。「ドライブGOGO」というテレビ番組の司会をしている。かつて「ZERO」というブーストアップ専門のショップでドライバーをしていて、「ビッグマウスの一発屋」と呼ばれていた。普段はベンツに乗っていたが、悪魔のZと出会ったことで、走りへの情熱を再燃させる。バトルには昔「ZERO」で仕上げた白いRX-7(FC3S)を選ぶ。 何でもカルく流す性格だったが、朝倉アキオと出会ってからは、自分の知識の全てをアキオに伝えようとしていた。
林 (はやし)
御殿場在住のプライベーター。年齢は50歳前後。ロータリーエンジン専門のチューナーで、北見淳も一目置く存在。チューナー仲間には「伝説のプライベーター」と呼ばれている。城島洸一の乗っていたRX-7(FC3S)の現在のオーナーで、くたびれていたFCをキチンと整備していた。
後藤 元 (ごとう げん)
スカイラインGT-R専門のチューニングショップ「ACE」の社長。客のGT-Rを友也のインテグラTYPE-Rに追いかけ回されたため、「ACE」のデモカーで友也とバトルした。友也を気に入り、一緒にZを追撃するため、スカイラインGT-R(R32)を仕上げる。仕事に妥協ができないタイプで、会社は赤字状態。 友也を弟のようにかわいがった。
友也 (ともや)
写真専門学校の学生だが、あまり真面目に通っていない。他人を否定しない優しい性格。北原の家に居候している。中古のインテグラTYPE-R(インテR)に乗り、首都高でスカイラインGT-Rを追いかけ回していたところ、GT-R専門のチューニングショップ「ACE」の社長後藤に目をつけられた。 「ACE」の車で首都高を走り込むうちに悪魔のZと出会い、一緒に走り始め、かなりのレベルのドライバーに成長した。
山下 (やました)
フェアレディZ(Z32)専門のチューニングショップ「山下ファクトリー」のオーナー。10年前に閉店した「PMCレーシング」というショップのメカニックをし、そのころ富永公とも仕事をしていた。クルマを手放そうとしていた森下マコトと知り合い、自分の仕上げたZ32を運転させる。
森下 マコト (もりしたまこと)
キャバ嬢のバイトをしながら車に乗る女子大生。同い年でモデルの秋川零奈に憧れている。彼氏の影響でクルマにハマり、スバルのインプレッサに乗っていたが、彼氏との別れを機に手放す。悪魔のZやブラックバードと出会い、山下がチューニングしたフェアレディZ(Z32)で悪魔のZに挑む。 ドライブに関しては、FR車でもトラクションをかけるのがウマく、路面を掴むように走ることができる。
岸田 ユウジ (きしだうゆうじ)
カメラマンのアシスタントをしている、21歳の男性。山本和彦の異母弟で岐阜県出身。父親の影響を受けて、戦闘機好き。父親「信彦」の死をきっかけに和彦を訪ねてくる。和彦とともにゼロ戦のようなクルマを作ることを目標に、ホンダS2000をターボ化する。ドライバーとしては未熟だったが、朝倉アキオも島達也も一緒に走ることを望んだ。 性格は控えめで自己主張が苦手。
荻島 信二 (おぎしま しんじ)
RX-7(FD)が大好きな短髪で30歳の男性。バイトで雑誌「GTカーズ」の編集部に入り「FDマスター」と名乗り、たくさんの記事を書いていた。雑誌の廃刊後、不動産会社の営業に転職。1台の車にこだわり続ける意味を知るため、ブラックバードを探して病院中心に営業に回っていた。「RGO」の大田に気に入られ、不動産会社を辞めて「RGO」へ。 ブラックバードのポルシェ、悪魔のZと出会い、彼らとともに走ることを望む。性格は素直だが、FDを否定されると不機嫌になる子供っぽい一面を持つ。
その他キーワード
悪魔のZ (あくまのぜっと)
『湾岸ミッドナイト』に登場する朝倉アキオの愛車。青いフェアレディZ(S30Z)。北見淳が見つけ出し、ツインターボ化して馬力を与えたエンジンと、高木優一が制作したボディで構成されている。600馬力の過激なセッティング。北見も谷田部サーキットで記録を出したが、乗りこなせずに東名で大事故を起こした。その後もオーナーが代わる度に事故を繰り返すが、また別のオーナーの心を捉え、何度でも蘇った。 いつしかオーナーを事故に誘う車として「悪魔のZ」と呼ばれるようになった。
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書誌情報
湾岸ミッドナイト 全42巻 講談社〈ヤンマガKCスペシャル〉
第1巻
(1993-01-05発行、 978-4063233728)
第42巻
(2008-12-26発行、 978-4063617443)