漫画家残酷物語

漫画家残酷物語

漫画家を職業にする登場人物たちを短編連作形式で描いた作品。主に青年向けの漫画を描く漫画家たちが、現実に直面して苦悩したり、抗ったりするさまを克明に描き出した、永島慎二の代表作。

正式名称
漫画家残酷物語
ふりがな
まんがかざんこくものがたり
作者
ジャンル
青春
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概要・あらすじ

人気の陰り始めた漫画家の川上みつをは、生活に困窮するようになっていた。そんななか、セールスに現れた女性から傷害保険の加入を勧められたことで、わざと右腕を怪我して保険金を得る計画を思いつく。保険に加入した直後、連載を打ち切られ仕事がなくなった川上は、計画を実行して保険金が支払われるまでの、未払いの原稿料で生活する間に、漫画家を辞める記念として発表する予定のない漫画を描き始める。

もはや漫画を描くことに魅力を感じなくなっていた川上だったが、書き進めるうちにその作品にのめり込んでいくのだった。(「傷害保険」より)

登場人物・キャラクター

川上 みつを (かわかみ みつを)

スリラー漫画でそれなりに人気を博した漫画家で、雑誌に連載も持っているが、漫画を描くことはあまり好きではなく、執筆は生活のためと割り切っている。人気を失い始めており、生活は行きつけの喫茶店のつけと、質屋に頼っている。保険のセールスに勧められたことで、右腕を怪我して漫画家を辞め、多額の保険金を得ようという計画を立てる。 連載を打ち切られたことで、計画を実行して保険金を得ようと考えていたが、未払の原稿料が尽きるまでの時間つぶしとして最後の作品を描き始め、漫画を描く面白さに目覚める。計画を中止して、漫画家を続けようと決意を新たにした矢先に、不運にも事故にあい、右腕を失ってしまう。

坂本 (さかもと)

『漫画家残酷物語』の「雪」に登場する人物。東京に住む漫画家で、児童向けの漫画を発表している。作品に対する理想が高く、短編を一作仕上げるのにも執筆期間を長く掛けてしまう。また、漫画を描く時間を削って副業を行うことを嫌い、サンドイッチマンのアルバイトをしている。そのため生活は貧しい。

永島 (ながしま)

『漫画家残酷物語』の「雪」に登場する人物。東京に住む漫画家。坂本とは知人同士で、道でサンドイッチマンをしている坂本と話をする。坂本と違って、連載をいくつも抱える人気漫画家。内心では理想の高い坂本のことを嫌っている。

(げん)

『漫画家残酷物語』の「雪」に登場する人物。東京に住む中年の労働者。職場からの給料の支払いが滞っており、困窮している。幼い娘がひとりおり、春用のセーターを買ってやるという約束をしているが、給料の支払いが遅れているためにその約束が果たせないことを気に病んでいる。

品川 功 (しながわ いさお)

『漫画家残酷物語』の「雪」に登場する人物。東京でテレビ番組の脚本家をしている男。自分の脚本を使用した「雪の降る街を」という番組を放送直前のところまでこぎつけていたが、「内容が実際の季節に見合わない」という理由から、土壇場で放送見合わせとなってしまい、途方に暮れている。

画家 (がか)

『漫画家残酷物語』の「雪」に登場する人物。売れない画家で生活に困窮している男。由子という病気で臥せっている妻を持つが、治療費を払えないことで医者から見放されている。治療費を稼ぐために、描き上げた絵のを持って街を駆けまわり、絵の買い手を探している。

春日 友治 (かすが ともはる)

『漫画家残酷物語』の「ラ・クンパルシータ」に登場する人物。少年雑誌に連載を10本持つ人気漫画家。知人の漫画家土地屋文男の墓参りに現れたひとり。土地屋が自殺した原因は、彼が受賞した作品が、自分の描いた漫画の絵柄を真似たものであり、そのことを後悔したためと考えている。

秋葉 秀一 (あきば しゅういち)

『漫画家残酷物語』の「ラ・クンパルシータ」に登場する人物。漫画を芸術作品だと信じている男。土地屋文男の墓参りに参加したひとり。土地屋が自殺した原因は、土地屋が好意を抱いていた女性と自分が結婚したからだと考えている。

夏山 悟 (なつやま さとる)

『漫画家残酷物語』の「ラ・クンパルシータ」に登場する人物。漫画映画製作に情熱を注ぐ男。土地屋文男の墓参りに参加したひとり。土地屋が自殺した原因は、土地屋を下宿まで送っていかずにひとりで帰した夜に、実は土地屋が重大な悩みを抱えていたからではないかと考えている。

冬木 しげる (ふゆき しげる)

『漫画家残酷物語』の「ラ・クンパルシータ」に登場する人物。土地屋文男の葬儀を行ったびんぼう寺のひとり息子であり、春日友治たちとは投書漫画を通じて知り合った。土地屋が自殺した原因は、彼が自殺をする前年に父親が死んだことにあると考えている。

土地屋 文男 (とちや ふみお)

『漫画家残酷物語』の「ラ・クンパルシータ」に登場する人物。漫画家の男。「児童文化協会漫画賞」という、文学賞で言えば直木賞や芥川賞に匹敵する、名誉ある賞を受賞したその夜のうちに自殺を遂げた。動機に不明な点が多く、知人たちはそれぞれに自分だけが真相を知っていると思い込んでいる。

秋葉 (あきば)

『漫画家残酷物語』の「嘔吐」に登場する人物。単行本をメインに執筆している漫画家。それなりに人気のある漫画家だったが、理想とする漫画と、仕事で描いている漫画のギャップに耐えられず、自分の単行本を読んでいる最中に嘔吐してしまう。それがきっかけで出版社からの依頼を断るようになり、牛乳配達員や肉体労働をしながら、自分の理想とする漫画を描き始めた。 三年後、作品を完成させて出版社に持ち込みを始めるが、どこの出版社からも掲載を断られ、悲観にくれてデパートの屋上から原稿を投げ捨て、自分も飛び降りて自殺未遂を行った末に失踪する。

友部 (ともべ)

『漫画家残酷物語』の「蕩児の帰宅」に登場する人物。母親からは政治家になるように望まれて、T大に通っていたが、途中で大学を辞め漫画家を志しはじめた。母親の危篤の知らせが届き帰省するが、最初の単行本を見てもらおうと印刷が終わるのを待っていたために臨終に間に合わず、兄達から絶縁されてしまう。

鳴山 清二 (なるやま せいじ)

『漫画家残酷物語』の「坂道」に登場する人物。大学に浪人しており、予備校に通っている19歳の男。しかし、すでに何冊かの漫画単行本を出版した経験があり、大学には行かずに漫画家を目指そうとしている。予備校には通わず、毎日出版社に通っては描き上げた原稿を編集長に見せて、連載を開始しようとしている。出版社の近くのある坂道で、毎日のようにすれ違う少女に恋をしている。

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