敷居の住人

敷居の住人

それぞれの悩みを抱える同年代の少年少女たちが、悩み苦しみながらも、あくまで平穏な日常を送る青春ストーリー。「月刊コミックビーム」1997年12月号から2002年7月号にかけて連載された作品。

正式名称
敷居の住人
ふりがな
しきいのじゅうにん
作者
ジャンル
青春
関連商品
Amazon 楽天

世界観

中高生の日常が題材。家庭に何らかの問題を抱えていたり、学校生活に上手くなじめない少年少女たちが出会い、傷つきながらも共に成長していく姿が描かれる。時間の経過と共に人間関係が変化し、思わぬキャラクター同士の結びつきが生まれるのも見どころのひとつ。

作品が描かれた背景

志村貴子は、コミックス2巻のあとがきで、本作『敷居の住人』が描かれた背景について次のように語っている。「本作は自分自身が中学生だった頃のことを思い出して書いている。当時の自分の心の中は、将来についての不安や、好きな異性に対する想い、幼児体験から受けた心の傷などが渦巻いていた。そのため、その体験や当時の気持ちを活かして作品作りをしている」。

あらすじ

本田千暁は、学校生活に意義が見いだせず、髪の毛を派手に染めたり、学校をさぼってゲームセンターで遊ぶ怠惰な日々を送っていた。そんなある日、千暁は偶然に自分の父親と思しき片岡という男性と再会。母親の本田ゆり子からは亡くなったと聞かされていた彼と、どう接するべきか悩む千暁だったが、2人は次第に交流を持つようになっていく。

作家情報

志村貴子は、主に青年向け雑誌で活躍中の漫画家。1997年『ぼくは、おんなのこ』が「月刊コミックビーム」に掲載されデビュー。他の作品に『娘の家出』、『こいいじ』などがある。誕生日は1973年10月23日。

登場人物・キャラクター

本田 千暁 (ほんだ ちあき)

市立西ヶ丘中学校3年1組に所属する男子生徒。前髪を目が隠れそうなほど伸ばし、派手な緑色の髪をしている。その髪色から、菊池奈々子には「ミドリちゃん」と呼ばれている。中性的で可愛らしい容姿から、異性のみならず同性からも人気がある。そのため近藤ゆかの通う聖カタリナ女子学園中等部で行われている「私鉄西ヶ丘沿線美少年グランプリ」で優勝したり、痴漢被害に遭ってしまうこともある。 繊細で精神的に波のある性格だが、やや配慮に欠けるところがあり、悪気なく他人を傷つけてしまうことがある。早く大人になりたいと願っているが、具体的にどうしたらいいかはわからず、染髪したり喫煙したり学校をさぼったりと、非行を繰り返していた。そんな折、亡くなったと言い聞かされてきた父親らしき人物である片岡に再会し、心乱されるようになる。

菊池 奈々子 (きくち ななこ)

本田千暁がゲームセンターで出会った中学3年生の女子生徒。前髪を左寄りの位置で斜めに分け、胸のあたりまで伸ばした茶髪ストレートロングヘアをしている。千暁とはアーケードゲームで対戦したのをきっかけに知り合い、その後、行動を共にするようになる。登校拒否中で中学校には通っておらず、両親も離婚寸前というつらい境遇にあるが、周囲にはそれを告げずごく普通に振る舞っている。 自分をゲームであっさり負かした兼田健太郎に想いを寄せているが、あっさり振られてしまい、どうしたらいいかわからずにいる。年齢を偽り、喫茶店でウェイトレスとしてアルバイトをしている。

村上 宗春 (むらかみ むねはる)

東中学校に通う3年生の男子生徒。本田千暁の友人。前髪を眉上で切ったストレートヘアと釣り目が特徴で、千暁や菊池奈々子からは「むーちゃん」と呼ばれている。お人好しで、やや気の弱い性格。千暁とは幼い頃から親しく、小学校6年生の時にM区へ引っ越すまではよく一緒に遊んでいた。引っ越し後も友人関係が続いており、ある日ゲームセンターで千暁を待っていた際に奈々子とも知り合う。 のちに奈々子に想いを寄せるようになり、千暁に協力してもらい、3人で行動するようになっていく。

片岡 (かたおか)

本田千暁と本田恵巳の父親で、本田ゆり子の元夫。前髪を真ん中で分けて額を全開にし、肩につくほどまで伸ばした赤毛をしている。ゆり子からはろくでもない存在と評されており、亡くなったことにされていたが、偶然千暁と再会する。現在は母親の勤める映画館で一緒に働いており、自分が父親であると認めたものの、千暁とどう接したらいいかわからず悩んでいる。

兼田 健太郎 (かねだ けんたろう)

市立西ヶ丘中学校に教師として赴任してきた若い男性。産休を取った3年1組担任の代わりに本田千暁たちの担任を務めることになる。実は千暁とは赴任前、千暁が痴漢に遭い、服を汚されていたのを指摘したのをきっかけで知り合う。千暁とは顔立ちが非常によく似ており、周囲の人物に兄弟だと勘違いされるほど瓜二つ。飄々とした雰囲気のやや意地悪な性格で、加茂からは「教師に向いていない」と指摘されている。 ゲームにもめっぽう強く、菊池奈々子をあっさり負かすほどの実力者。

加茂 (かも)

市立西ヶ丘中学校で教師を務める中年の男性。バーコード頭と太い眉、厚い唇が特徴。その髪型から、周囲からは密かに「ハゲ」と呼ばれている。生徒指導も担当しており、派手な髪色に染髪したり、未成年ながら喫煙している本田千暁を案じている。兼田健太郎はかつての教え子にあたる。性格的に教師に向いているとは思えない健太郎が、教師として母校に戻ってきたことを不安視している。 濃い目のお茶が好き。

近藤 ゆか (こんどう ゆか)

聖カタリナ女子学園中等部2年A組に所属する女子生徒。前髪を右寄りの位置で斜めに分け、肩につかないほどの長さの髪をツインテールにしている。気が強く物怖じしない性格で、マナーの悪い見知らぬ相手を注意したり、痴漢を捕まえることもある。本田千暁と菊池奈々子、村上宗春とは映画館で1度だけ会ったことがある。校内ではアイドル視されている千暁と知り合いになったことを、ひそかに自慢に思ったり、また「千暁はそこまで美形だろうか」と疑問視したりと、複雑な感情を抱いていた。 その後ひょんなことから再会し、急接近していく。男性が嫌い。

中嶋 くるみ (なかじま くるみ)

市立西ヶ丘中学校3年1組に所属する女子生徒。前髪を目の上で切り、耳の高さで切りそろえたボブヘアで眼鏡をかけている。本田千暁に密かに想いを寄せているが、自分の容姿にコンプレックスがあるため近寄れずにいる。成績は非常に良く、聖カタリナ女子学園高等部を目指している。

山川 こういち (やまかわ こういち)

市立西ヶ丘中学校3年1組に所属する男子生徒。本田千暁の友人。前髪を真ん中で分けて額を見せ、癖のある髪をしている。太い眉と三白眼が特徴。学校では千暁と共に行動しており、一緒に登下校することもある。

本田 恵巳 (ほんだ えみ)

本田千暁の姉。ヘアバンドで前髪を上げて額を全開にして、胸のあたりまで伸ばしたストレートロングヘアと、やや厚めの唇が特徴。千暁に対しては強気で、寝起きの悪い千暁には容赦なく蹴りを入れたりすることは、山川にも知られている。菊池奈々子と同じ喫茶店でウェイトレスとしてアルバイトをしている。

本田 ゆり子 (ほんだ ゆりこ)

本田千暁と本田恵巳の母親。雇われママとしてクラブで働いている。前髪を真ん中で分けて額を全開にし、胸のあたりまで伸ばした巻き髪ロングヘアをひとつに結んでいる。塾にも行かず、非行に走っている千暁を案じている。自身は高校3年生で中退し、年下の片岡と結婚するがすぐに離婚。片岡の存在については、千暁には「亡くなった」と嘘をついていた。 猫アレルギーがある。

坂上 (さかがみ)

東中学校に通う3年生の男子生徒。村上宗春の友人。前髪を真ん中で分けて外にはねさせ、肩につくほどの長さの髪も外にはねさせた髪型をしている。端麗な容姿から、聖カタリナ女子学園中等部でも噂になるほどの存在。宗春からは異性に人気があることを妬まれつつも親しくしている。

中嶋くるみの姉 (なかじまくるみのあね)

中嶋くるみの姉。前髪を目の上で切り、胸のあたりまで伸ばしたロングヘアを、ばらばらな方向にはねさせている。大学生ですでに就職先が決まっているため時間に余裕があり、中学3年生で受験を控えた本田千暁に勉強を教えることになる。家庭教師のアルバイト経験があるので、非常に教えるのが上手いが、歯に衣着せぬ、ややきつい言動をする。

安達 祐佳里 (あだち ゆかり)

桜ヶ丘高校1年5組に所属する女子生徒。本田千暁の想い人。前髪を目の上で切り、肩につくほどの長さのセミロングヘアをヘアピンで留めてまとめている。千暁とは高校入学後に機に知り合ったため、同級生にあたる。千暁とすぐに親しくなるが、実は村上宗春に想いを寄せており、千暁づてに宗春のことを探ろうとしている。実家はラーメン店「ラーメンマニア」を経営している。

館 広一 (やかた こういち)

桜ヶ丘高校に通う1年生の男子生徒。本田千暁の友人。前髪を目の上で切り、耳が隠れるほどの長さのやや長めの髪をしている。千暁とは同級生にあたり、高校入学後に音楽の趣味が近いことをきっかけに知り合い、親しくなる。その後は毎日のように一緒に遊ぶようになり、堤本勇次も含めた3人で地元のパンクバンドの追っかけをするようになる。 家族は6人兄弟で、母親の出産を見ていた経験から、知人が産気づいても冷静に対応することが可能。千暁のことは「本ちゃん」と呼ぶ。

堤本 勇次 (つつもと ゆうじ)

桜ヶ丘高校に通う1年生の男子生徒。本田千暁と館広一の友人。前髪を眉上で短く切った短めの髪をして眼鏡をかけている。千暁とは高校入学後に音楽の趣味が近いことをきっかけに知り合い、親しくなる。周囲に気を遣う性格で、精神的に不安定な千暁のことを案じている。千暁のことは「本ちゃん」と呼ぶ。

山本 (やまもと)

桜ヶ丘高校で養護教諭を務める女性。前髪を真ん中で分けて額を見せ、胸のあたりまで伸ばしたストレートロングヘアをひとつに結んで、眼鏡をかけている。養護教諭だが生徒にはあまり優しくなく、本田千暁が保健室を訪れるたびに嫌味を言う。千暁が保健室にいることで、特に用事のない女子生徒たちが保健室に集まることを不快に思っている。

片岡の母親 (かたおかのははおや)

片岡の母親。映画館を経営しており、チケットの販売などを担当している。ヘアバンドで前髪を上げて額を全開にし、肩のあたりまで伸ばした癖のあるセミロングヘアをしている。えらの張った頬が特徴。孫にあたる千暁には寛容で、片岡が正体を打ち明けて以来、親しく接するようになる。

イワシ

本田千暁の飼い猫。性別はメス。雨の日に捨てられているところを千暁に発見されるが、本田ゆり子が猫アレルギーであるために自宅で飼えず、片岡の家に預けることになる。千暁をはじめとする周囲の人間たちにすぐに懐き、千暁の拠り所となる。

圭吾 (けいご)

15歳の少年。本田千暁が芸能プロダクションのオーディションに合格後、レッスンの時に知り合った。前髪を真ん中で分けて額を見せ、外にはねさせた髪型をしている。純粋で真面目な性格で、真剣に芸能人になりたいと考えており、その夢のために恋人とも別れたという過去を持つ。

兼田健太郎の恋人 (かねだけんたろうのこいびと)

兼田健太郎の恋人。前髪を真ん中で分けて額を全開にし、ウェーブがかったボブヘアをひとつに結んでいる。明るく世話焼きな性格で、健太郎とは学生時代からの付き合い。健太郎を通じて本田千暁や菊池奈々子とも知り合うが、健太郎を想っていた奈々子は、彼女の存在に打ちのめされることとなる。

紺野 (こんの)

近藤ゆかの通う高校で科学教師を務める若い男性。前髪を眉上で短く切った短い髪で、眼鏡をかけている。ゆかのクラスを教えたことはないが、ゆかに想いを寄せ、ストーカーじみた電話をかけるようになる。だがゆかはこれに応じ、次第に電話で親しく話す仲になっていく。

鎌倉のお姉さん (かまくらのおねえさん)

本田千暁と菊池奈々子が鎌倉で知り合った若い女性。前髪を目の上で切りそろえ、肩につくほどの長さのボブヘアを外にはねさせている。交通費がなくなり、帰れなくなっていた2人を偶然車で発見したことで知り合う。しかしその後体調を崩し、逆に2人が彼女の世話をすることになる。

早川 (はやかわ)

菊池奈々子の、中学校時代のクラスメイト。前髪を目の高さで切り揃えたショートカットヘアをしている。クラスでは委員長を務めており、不登校だった奈々子に「卒業式に来てほしい」と手紙を書いた。その誘いに奈々子が応じることはなかったが、のちにその手紙が意外な展開をもたらすことになる。

工藤 (くどう)

本田千暁と山川こういちの、小学校時代の同級生の男子生徒。千暁とはあまり親しくなかったが、本田ゆり子はよく記憶しており、自分こそが工藤の初恋の相手だったのではないかと考えている。突如亡くなり、彼の死を機に千暁は自分の今後について考えるようになり、さらには、夢の中にまで工藤が登場するようになる。

SHARE
EC
Amazon
logo