概要・あらすじ
「黎明編」 古代日本の国を舞台に、ヤマタイ国に捕えられた少年ナギの物語。「復活編」 未来の月面都市を舞台に、事故の後遺症で人間が異物に見えるようになった青年レオナの物語。「異形編」 戦国時代、八百比丘尼という尼僧を斬った、男装の武者八犠左近介の数奇な運命を描く。
登場人物・キャラクター
火の鳥 (ひのとり)
光り輝く鳥の姿をした、不老不死の存在。その血には飲んだものを不老不死にする性質があり、古代より人類はそれを求めてきた。体は高熱を発し、宇宙空間でも生存する。高い知性を有し、人間ともテレパシーのような能力で意思の疎通が可能。 様々な時代の人間と関わり、その運命に影響を与えるが、どのような意図があるのかは計り知れない。
ヒナク
古代日本の小国ヒの国の女性。夫のウラジ、弟のナギと暮らしていた。破傷風に死にかけ、大国ヤマタイ国の間者(スパイ)であった薬師(くすし=医師の古称)のグズリの治療で命を救われる。 破傷風を治すために火の鳥の血を採ろうとして夫のウラジが亡くなった後、グズリと再婚する。
八犠 左近介 (やぎ さこんのすけ)
十五世紀末の戦国武将八犠家正の娘。父によって男として育てられ、男装の武者として成長する。十八歳の時、病にかかった父の治療をしようとした蓬莱寺の尼僧八百比丘尼を斬り殺すが、そのために寺から出られなくなる。
ムーピー
『火の鳥』「未来編」に登場する生物。三十五世紀にシリウス12番星で発見された不定形生物。高熱、超低温、真空でも生存する強靭な生命力を持つ。人間の思考に反応して望む夢を見せる能力を持ち、どのような姿にも変わるために愛玩用生物として急速に地球に広まるが、それに依存する人間が増えて社会問題化。 間も無く害獣として飼育が禁止され、駆除される。山之辺マサトと共に暮らしていたタマミもこのムーピーである。
ランプ
二十五世紀の月面にある研究施設の行政官。火の鳥の能力を解析して、危機的な地球の生態系を復活させるフェニックス計画の全権を握っている。事故で人工頭脳を移植された、旧知の若き科学者レオナが火の鳥の秘密を知っていると考えて、追求する。
ハリマ
七世紀半ばの古代朝鮮半島にあった国百済の王族。古代中国の王朝である唐との戦いに敗れ、捕虜になった時に顔の皮を剥がされて、狼の頭を被せられる。そのまま死にかけていたところを占い師のおばばに助けられ、吉兆があるという古代日本の倭国へと渡る。 その道程で倭国の将軍安曇連 猿田や倭国の土着神である狗族一族の娘マリモに出会う。命を助けた安曇連 猿田の計らいで、犬上の名を賜り、里長となるが、国内に広まる仏教から土着の神を守るために、内乱である壬申の乱で大海人皇子の軍に加わった。
レオナ
突如地球上のあらゆる生命体が死に絶え始めた二十五世紀の若き科学者。月面で発見された火の鳥の羽根を研究し、その力で地球上の生態系を復活させるフェニックス計画に参加していた。しかし、その分析中に爆発事故に巻き込まれて、瀕死の重傷を負い、損傷した脳の50%を人工頭脳と入れ替える。 その手術後、何故か人間が異物に見えるようになり、唯一人間に見えたのは廃棄寸前の旧式ロボットチヒロだけだった。
近江朝廷 (おうみちょうてい)
『火の鳥』「太陽編」に登場する政権。七世紀半ば、現在の滋賀県にあたる近江国にあった大王(おおきみ=天皇の古称)を中心とする政権。朝鮮半島での戦いに破れ、仏教を中心にした急激な国家改革を推進し、日本土着の神を排撃する。 大王が崩御した事で、その息子の大友皇子を擁立する勢力が権力を握り、その弟の大海人皇子を排除しようとしたために内乱である壬申の乱が勃発した。
ロック
三十六世紀の地球にある地下都市ヤマトの治安維持機関の特別管理官。地下都市間の戦争で滅亡した地球から、宇宙船で脱出しようとして、山之辺マサトを殺す。
猿田 彦 (さるた ひこ)
古代日本の大国ヤマタイ台国の将軍。幼い頃、故郷の村をヤマタイ台国に滅ぼされるが、女王ヒミコに命を救われ、以来忠誠を誓うようになった。幼い頃の自分に境遇が重なるナギを助け、武術を仕込む。 しかし、故郷の復讐に燃えるナギがヒミコを襲ったことで責任を問われて、蜂の棲む穴に閉じ込めらた。そこで鼻を刺されて腫上るが、ナギに助けられた。
八百比 丘尼 (やおび くに)
十五世紀末の戦国時代、蓬莱寺という寺に住む尼僧。八百年生きたとも噂され、寺に伝わる火の鳥の羽根の力でいかなる病人をも癒す。戦国武将八犠 家正の病を治すために呼ばれるが、その娘八犠 左近介に斬られる。
安曇連 猿田 (あずみのむらじ さるた)
古代の日本である倭国の将軍。朝鮮半島に出兵したが、古代中国の王朝である唐の軍勢に敗北し、傷ついて倒れているところをハリマに助けられた。倭国に戻り、ハリマを里長に推挙するが、間も無く勃発した内乱の壬申の乱では大海人皇子]の配下で参戦する。
猿田博士 (さるたはかせ)
二十五世紀の地球における最高の科学者。火の鳥の能力を解析して、危機的な地球の生態系を復活させるフェニックス計画の中心人物。
グズリ
古代日本の大国ヤマタイ国の薬師(くすし=医師の古称)。間者(スパイ)として小国ヒの国に潜入して、将軍猿田彦の軍勢を手引きする。破傷風で死にかけていたヒの国の女性ヒナクを医学知識で救い、結婚した。
狗族 (くぞく)
『火の鳥』「太陽編」に登場する種族。古代日本に棲む、土着の神の一族。狼の姿をしているが、人の姿にも変わることが出来る。一族の長ルベツに率いられている。外来の信仰である仏教を広める近江朝廷軍に対抗するため、壬申の乱には大海人皇子の軍勢に味方する。
山之辺 マサト (やまのべ まさと)
三十六世紀の地球にある地下都市ヤマトに住んでいた青年。飼育が禁止されていた不定形宇宙生物ムーピーのタマミと暮らすために地下都市ヤマトを脱出した。逃亡中にサルタ博士と出会うが、勃発した地下都市間の戦争を逃れて、やはり地下都市ヤマトを脱出してきた特別管理官のロックに殺される。 しかし、突然現れた火の鳥によって復活させられた。
チヒロ
二十五世紀の月面にある研究施設で廃棄されようとしていた旧式ロボット61298号。夢を見たこと事故で人工頭脳を移植された若き科学者レオナが、人間に見える唯一の存在。レオナの目からは、爆発事故で亡くなった恋人レイコと同じ顔に見えている。
タマミ
人間の女性の姿をした、不定形宇宙生物ムーピー。三十六世紀の地球にある地下都市ヤマトに住んでいた青年山之辺マサトと共に暮らしていたが、非合法であるムーピーの飼育が治安機関に発覚して脱出する。 逃亡中に出会った、人工生命体を研究する科学者サルタ博士によって、新しい生命体創造の実験体にされそうになった。
おばば
古代朝鮮半島の老婆。本名は不明。占いと医術を行う。死にかけていたハリマを助け、東に向えば吉兆が訪れるという、その運命を信じて、古代日本である倭国へと共に渡る。
マリモ
古代日本の土着の神である狗族の長ルベツの娘。雌の狼と、人間の娘の姿になる事が出来る。深手を負って瀕死のところを、倭国にやってきたハリマとおばばの介抱で助けられた。その後、想いを寄せるようになったハリマを追って、勃発した内乱である壬申の乱に加わる。
サルタ博士 (さるたはかせ)
三十六世紀の地球の科学者。地下都市ヤマトで、死に行く地球を救うために人工生命体の創造を試みるが、非合法だったために永久追放された。その後も研究は失敗が続いていたが、ある日地下都市ヤマトから逃亡してきた山之辺マサトとタマミに出会う。 ムーピーであるタマミの強い生命力に着目し、新しい生命体を創造しようとする。
ヒミコ
古代日本の大国ヤマタイ国の女王。呪術で国を支配している。老いていく自分に死の恐怖を感じ、不老不死となるためにヒの国 に棲む火の鳥の血を求めて、将軍猿田彦に攻めさせた。
八犠 家正 (やぎ いえまさ)
八犠 左近介の父親である戦国武将。無慈悲な性格で、娘である八犠 左近介を男として育てた。鼻に悪性腫瘍が出来、命の危険が迫ったため、いかなる病をも治すという尼僧八百比丘尼を呼び出す。
ルベツ
古代日本である倭国の土着の神である狗族の長。深手を負った娘のマリモを、朝鮮半島からやってきたハリマとおばばに助けれた。狼と人間、二つの姿を持つ。倭国の内乱である壬申の乱では、仏教を広める大津の朝廷に対抗するため、土着の神々を集めて、大海人皇子]の軍勢を助ける。
ウラジ
古代日本の小国ヒの国の女性ヒナクの夫で、少年ナギの義理の兄。破傷風にかかって死にかけたヒナクを助けようと、火山に棲む火の鳥の血を求めに行く。しかし、火の鳥を捕まえようと飛びつき、その体が発する高熱で焼死した。
大海人皇子 (おおあまのみこ)
七世紀半ばに実在した、古代日本である倭国の大王(おおきみ=天皇の古称)の弟。大王の崩御後、息子の大友皇子を擁立する大津朝廷と間に後継者の座を巡って内乱である壬申の乱が勃発。率いた軍に安曇連 猿田やハリマが加わる。
ナギ
古代日本の小国ヒの国に住む少年。姉のヒナク、その夫で義理の兄のウラジと共に暮らしていた。大国ヤマタイ国の間者(スパイ)であった薬師(くすし=医師の古称)のグズリの手引きで、侵攻した将軍猿田彦の軍勢に捕えられる。 しかし、復讐の念で邪馬台国の女王ヒミコを襲い、その責任で罰せられた猿田彦を救う。
場所
百済 (くだら)
『火の鳥』「太陽編」に登場する国。古代朝鮮半島に実在した実在の王国。七世紀半ば、古代の日本である倭国と共に古代中国の王朝である唐の軍勢と戦って敗れた。ハリマは、この国の王族であった。
蓬莱寺 (ほうらいじ)
『火の鳥』「異形編」に登場する寺院。八百年生きたとも噂される八百比丘尼という尼僧が暮らしている。寺には火の鳥の羽根が伝わり、その力で近郷近在の病人や怪我人を癒している。
ヒの国 (ひのくに)
『火の鳥』「黎明編」に登場する国。古代日本にあった小国。火の鳥が棲む火山のふもとにあり、国の長のカマムシを中心とする小規模な村落規模の国。少年ナギとその姉夫婦ヒナクとウラジが暮らす。
倭国 (わこく)
『火の鳥』「太陽編」に登場する国。古代における日本の呼称。七世紀半ば、朝鮮半島に出兵して王国百済と共に古代中国の王朝である唐の軍勢と戦い敗れる。その後、仏教を中心に急激な国家改革を進める近江朝廷と、それに反対する大王(おおきみ=天皇の古称)の弟大海人皇子の勢力との間に、壬申の乱という内乱が勃発する。
ヤマタイ国 (やまたいこく)
『火の鳥』「黎明編」に登場する国。古代日本にあった大国。呪術を使う女王ヒミコによって統治されている。老いていくヒミコが不老不死を求めて、その力を持つという火の鳥の血を求めて、ヒの国に侵攻した。
地下都市ヤマト (ちかとしやまと)
『火の鳥』「未来編」に登場する都市。三十六世紀の死滅しつつある地球で、人類が生存するために地下に建設した都市の一つ。山之辺マサトやロック、サルタ博士などが暮らしていた。
地下都市 (ちかとし)
『火の鳥』「未来編」に登場する都市。三十六世紀の死滅しつつある地球で、人類が生存するために地下に建設した都市。地下都市ヤマトなど地球上に何ヶ所か存在し、人類が暮らす最後の場所だったが、都市を管理するコンピューターの判断で地下都市間の戦争が勃発する。
イベント・出来事
壬申の乱 (じんしんのらん)
『火の鳥』「太陽編」に登場する戦い。七世紀半ばの日本である倭国で、崩御した大王(天皇の古称)の後継者の座を巡って、その息子の大友皇子を擁する近江朝廷と弟の大海人皇子が争った。近江朝廷側には仏教の神々が、大海人皇子の側には日本土着の神々がそれぞれ加わり、二つの信仰の戦いでもあった。
その他キーワード
フェニックス計画 (ふぇにっくすけいかく)
『火の鳥』「復活編」に登場するプロジェクト。あらゆる生物が死に絶え始めた、二十五世紀の地球の生態系を復活させるべく、月面で発見された火の鳥の不老不死の生命力を解析する。地球最高の科学者猿田博士が主導している。
クレジット
原作
火の鳥 (ひのとり)
火の鳥と呼ばれる超生命体が見守る古代から超未来にわたる人類の叙事詩。 関連ページ:火の鳥