あらすじ
ミケランジェロの情熱
貴族として生まれ育ったミケランジェロ・ブオナローティは、将来は役人として生きていくことを決められていた。しかしミケランジェロは、絵画や彫刻の仕事を請け負う工房に所属し、職人として生きていくことを望んでおり、勉強には身が入らないでいた。そんなある日、ミケランジェロが匿名で描いた絵を、ギルランダイドの工房から独立が決まっているマルコが、自らの作品であると主張する事件が発生。マルコにあこがれていたミケランジェロはその行ないにショックを受け、自らの才能で彼の眼を覚まそうと行動に移る。
父と対立するミケランジェロ
ミケランジェロ・ブオナローティは、ギルランダイドが親方を務める工房にスカウトされ、見習いとして働けることになった。ミケランジェロは、このチャンスを絶対に逃したくないと考えるが、ミケランジェロの父は学校を卒業して、役人になるべきだと大反対する。さらにミケランジェロの兄も、ミケランジェロ家は貴族とはいえ財力に乏しいことや、亡き母のために堅実な道を歩ませたいという父親の気持ちをミケランジェロに語る。しかし、ミケランジェロは職人への夢をあきらめきれず、絵画によって父親を説得することを思い立つ。
初めての試験
ギルランダイドが親方を務める工房では、定期的に職人たちの技術を確認するために試験が行われていた。試験は複数人のチーム制で取り組み、優秀な人材と未熟な人材の混合で行なわれる習わしがあった。ミケランジェロ・ブオナローティはフランチェスコ・グラナッチやロメオ・ガラヴァーニ、工房最年少の8歳の少年二人、そして問題児であるダリオ・コルシーニの6名で試験に取り組むことになる。やる気がないうえにフランチェスコの悪口ばかりのダリオに対して、ミケランジェロは憤りを覚えるものの、ダリオと同じ時間を過ごすうちに、彼は優れた才能の持ち主だと気づく。また、ミケランジェロは天才肌が故に人に教えることに慣れておらず、工房最年少の少年たちともうまくコミュニケーションが取れずに落ち込んでいた。それでもなんとかミケランジェロはチームをまとめ上げ、試験をクリアする。しかし、ギルランダイドからの評価は今一つで、ミケランジェロは自分のチームに何が不足しているのか思い悩む。そんな中、ミケランジェロのチームに次なる試験として、結婚を間近に控えたマチルダの肖像画の制作が命じられる。
登場人物・キャラクター
ミケランジェロ・ブオナローティ
ラテン語学校に通う貴族の少年。卒業後は役人となり、将来を約束された身の上。しかし、絵画や彫刻の仕事を請け負う工房に所属し、職人として働きたいという情熱を抱いている。のちにギルランダイドが親方を務める工房で働くことが許可され、芸術的な才能を開花させていく。職人を志したのは、幼い頃に石切り場の近くに住んでおり、働いている職人たちにあこがれを持っていたため。基本的に芸術以外には興味を示さず、夢中になると周りが見えなくなる。芸術面では天賦の才を持つため、人に教えるのを苦手としている。親しい者からは「ミケ」と呼ばれている。実在の人物、ミケランジェロ・ブオナローティがモデル。
フランチェスコ・グラナッチ
絵画や彫刻の仕事を請け負っているギルランダイドの工房で働いている青年。ミケランジェロ・ブオナローティが自らが所属している工房を頻繁に覗(のぞ)きに来ていることに気づき、声をかけたことで知り合いになる。ミケランジェロのデッサンを見て、優れた才能に驚き、それからは何かと気にかけている。本来であれば今すぐにでも工房にミケランジェロをスカウトしたいものの、フランチェスコ・グラナッチ自身が工房内でも若手であるために叶(かな)わずにいる。ミケランジェロがギルランダイドの工房に所属してからは、兄弟子として親切に接している。明るく気さくな性格で、ミケランジェロからも信頼を寄せられている。
ロメオ・ガラヴァーニ
絵画や彫刻の仕事を請け負っているギルランダイドの工房で働いている青年。ミケランジェロ・ブオナローティと同年齢で、彼より1年前に弟子入りしている。工房にやって来たばかりのミケランジェロに対して、必要なのは職人であり、芸術家は要らないと言い放った。その後もミケランジェロに何かと冷たく接していたが、仕事を通して次第に打ち解けていく。また、下宿先ではミケランジェロと同室で生活しており、文句を言いながらも彼の世話を焼いている。ぶっきらぼうな口調で言いたいことははっきりと主張するが、裏表がなく実直な性格の持ち主。実家も以前は工房を開いており、ミケランジェロのような天才肌がいたことで人間関係が悪化し、解散した過去を持つ。
ダリオ・コルシーニ
絵画や彫刻の仕事を請け負っているギルランダイドの工房で働いている青年。工房内で実施される試験の際、ミケランジェロ・ブオナローティと同じチームに所属したことで知り合いになる。やる気がまったくなく、まじめに仕事に取り組む気のない問題児。周囲からも相手にされておらず、工房では浮いた存在になっているが、本来は高い技術力を誇る。同じ時期に工房で働き始めたフランチェスコ・グラナッチに対しては、誰にでも親切にする偽善者のようだと避けている。
マルコ
絵画や彫刻の仕事を請け負っているギルランダイドの工房で働いている青年。現在所属している工房から、独立に向けて動いている。ミケランジェロ・ブオナローティが名前を隠して描いた絵画を、マルコ自身の作品として役人たちの前で発表し、独立後に大きな仕事をもらおうと画策する。ずるがしこい性格ながら、模写が得意で絵画の才能もある。
ギルランダイド
絵画や彫刻の仕事を請け負っている自分の工房で、親方として弟子たちを指導している男性。イタリアのフィレンツェでは有名な存在で、数多くの弟子を持つ。ミケランジェロ・ブオナローティの描いた絵を見て彼の才能を見抜き、ギルランダイド自身の工房で働かないかと声をかけた。ふだんは穏やかな性格で、弟子たちにも優しく接しているが、仕事に関しては非常に厳しい。
レオナルド・ダ・ヴィンチ
ミラノに住んでいる少年。刺激のない毎日に退屈している。工房で働く前のミケランジェロ・ブオナローティが、フィレンツェの街に無許可で描いた彼の絵を見て、作者は知らなかったものの、その熱量に心を揺さぶられた。優れた芸術の才能の持ち主で、完璧な人体を描きたいがために解剖実験に参加するなど、周囲からすると奇人扱いされることもある。フィレンツェを訪れた際にギルランダイドの工房を見学したことがあり、彼とは顔見知りの間柄。実在の人物、レオナルド・ダ・ヴィンチがモデル。
ルカ
ミケランジェロ・ブオナローティと同じラテン語学校に通う貴族の少年。ミケランジェロが役人ではなく、絵画や彫刻の仕事を請け負う工房で、職人として働きたいと考えていることを知っている。ミケランジェロの優れた芸術の才能や性格を理解しており、役人よりも職人の方が向いていると応援している。裕福な貴族の出身ながら少しも気取ったところがなく、明るく親しみやすい性格の持ち主。
ミケランジェロの父 (みけらんじぇろのちち)
ミケランジェロ・ブオナローティの父親。貴族の当主兼役人として働いている。先代までは裕福な貴族であったものの、ミケランジェロの父自身が家督を継いでから収入が減り、緩やかに没落しつつあることを気に病んでいる。また、妻を早くに亡くして男手一つで育ててきたため、ミケランジェロには、堅実な道を歩んでほしいと望んでいる。
マチルダ
結婚を間近に控えた貴族の令嬢。結婚祝いとして父親から肖像画をプレゼントしてもらう予定だが、その工房では納得できるものを制作してもらえず、ギルランダイドの工房に依頼する。その際にミケランジェロ・ブオナローティ、フランチェスコ・グラナッチをはじめとした職人たちと知り合いになる。内心ではマチルダ自身を自由自在にあやつろうとする父親に反抗的な気持ちを抱いており、結婚に対しても後ろ向きである。
書誌情報
片翼のミケランジェロ 5巻 集英社〈ジャンプコミックス〉
第2巻
(2022-07-04発行、 978-4088831725)
第3巻
(2022-11-04発行、 978-4088832944)
第4巻
(2023-03-03発行、 978-4088834122)
第5巻
(2023-07-04発行、 978-4088835754)