概要・あらすじ
1人の男が山の中に建つ朽ち果てた小屋を呆然と見つめていた。男の名は岡田正夫。彼はしがない派遣社員だったが、彼女に捨てられたうえ、派遣切りにあって仕事も失い、途方に暮れていた。そんな時、正夫は8年前に別れた父親、岡田憲三のことを思い出す。うだつのあがらないサラリーマンだった憲三のことを嫌っていた正夫だったが、父親が身を粉にして働いてくれたから、自分たちは人並みの生活ができていたのではないか。
そう思うようになった正夫は、憲三の消息を求めて彼の故郷を訪ね、山中に建っていた小屋のそばで憲三の墓を発見する。そして、憲三が山奥で自給自足の生活をしていたことを知るのだった。自分の知っている父親とのあまりのギャップに驚く正夫。父親の本当の姿を知るため、彼は憲三の遺した日記を頼りに、山でのサバイバル生活に挑む。
登場人物・キャラクター
岡田 正夫 (おかだ まさお)
前作の主人公である岡田憲三の息子。年齢は30歳。夢も目標もなくダラダラとした日々を送っていたが、付き合っていた彼女に振られ、派遣社員として働いていた宅配会社もクビになり失職。「どこで俺の人生狂っちまったんだ」と鬱屈していた時、かつて母親や姉とともに捨てた、憲三のことを思い出し、消息を求めて憲三の故郷を訪ねた。そこで、父親の死と彼が山奥でサバイバル生活をしていたことを知り、情けない男と軽蔑していた父親の思わぬ姿に驚愕。 もっと父親のことを知りたいという思いから、自身もまた自給自足の生活を開始する。
岡田 憲三 (おかだ けんぞう)
岡田正夫の父親。妻と子供たちに見捨てられてほぼ無一文になる。死ぬ時までとことん生きると覚悟を決め、年配の身でありながら、故郷の山中でサバイバル生活を開始。何ものにも縛られない幸福な時を過ごすが、サラリーマン時代に患っていた持病が悪化したため65歳でこの世を去った。山中にある墓は、一緒に暮らしていた美津子が建てたもの。 生前、山での生活や自身の夢について日記に綴っており、この日記を頼りに、正夫はサバイバル生活を始めることになる。
美津子 (みつこ)
岡田憲三と山中で暮らしていた女性。山で生活していた時に産んだ太郎という息子がいる。憲三のことを慕っていたが、太郎を山で育て続ける勇気が持てず、太郎が幼稚園に入る歳になったのを機に下山。その後、憲三のもとを訪ねた際に彼の遺体を発見し、遺骨を集めて山中の丘の上に葬った。定期的に憲三の墓参りに行っており、父親と同じ生活をするためにやって来た憲三の息子の岡田正夫と山中で遭遇。 次第に彼に惹かれていくが、下働きをしている温泉ホテルの若社長、直貴にプロポーズされて思い悩む。
太郎 (たろう)
美津子の小学2年生の息子。幼少時は岡田憲三、美津子と山中で暮らしていた。幼稚園に入る歳になったため、美津子とともに山を降りた。町での生活に馴染めず、かつての明るさを失ってしまっていた。しかし、山で暮らす岡田正夫のもとに通うようになってからは、子供らしい元気さを取り戻していく。
直貴 (なおき)
美津子が働いている温泉ホテルの社長の男性。東京でサラリーマン生活を送っていたが、先代社長である父親の意向を受け入れて後継者となった。まだ若いがかなりのやり手で、一時は倒産の危機にあったホテルを再建。さらなる事業の拡大を計画しており、妻として自分を助けて欲しいと、美津子にプロポーズする。
富裕子 (ふゆこ)
岡田正夫の母親。岡田憲三の妻だったが、定年を迎えた夫の全財産を奪い、離婚届だけを残して子供たちとともに家出。現在は子供らとも滅多に会わず、1人の生活を満喫している。実は若い頃から憲三との結婚は間違いだったと感じていたが、子供たちを育てるため、あえて結婚生活を続けていた。しかし、年々嫌悪感が降り積もり、やがて憲三のことを激しく憎悪。 夫や子供たちから解放され、すべての時間が自分1人だけのものになる時をひたすら待ち続けていた。
岡田 由美子 (おかだ ゆみこ)
岡田正夫の姉。かつての正夫と同じく、父親である岡田憲三のことを嫌っている。金銭欲が強く、かねてから父親の死亡による生命保険の支払いに期待していた。ところが、母親の富裕子が満期前にすべて解約していたため、保険金を手にすることはできなかった。
君塚 忠兵衛 (きみづか ちゅうべい)
岡田憲三がサバイバル生活をしていた山の一帯を所有している老人。普段は妻と農業をしている。山で生活する許可を得るため訪ねて来た岡田正夫の話を聞き、彼の意気を感じて、破格の条件で土地を売る約束をする。
美枝 (みえ)
岡田正夫がかつて付き合っていた女性。正夫との結婚を考えていた。しかし、正夫が上司とのいざこざを理由にあっさり会社を止め、派遣で食いつなぐようになって失望。いつまでも派遣社員でいるつもりはない、という正夫の言い訳を聞き入れず、彼のもとを去った。
ボタン
かつて岡田憲三と美津子が山で育てていた雌のイノシシ。憲三がこの世を去った後は自然に戻っていたが、岡田正夫の暮らす小屋にウリボウ(子供のイノシシ)たちを連れて出現。憲三の墓参りのために正夫の小屋を訪れていた美津子、太郎と再会を果たす。