概要・あらすじ
ある日、女子高生の石田まり子が、校舎の屋上から飛び降りて自殺した。まり子が自殺した原因が、教師の辻村によって妊娠させられたことだと知った男子高校生は、彼女の仇を討つべく、辻村を呪い殺そうとする。しかし、辻村に因縁調伏(いんねんちょうぶく)しようとしていることを知られ、逆に危機に陥ってしまう。そこに、「犬神博士」こと犬飼が姿を現すのだった。
登場人物・キャラクター
犬飼 (いぬかい)
祈禱師の男性。口の周りに髭を生やし、長い髪を後頭部で束ね、黒いハットとロングコートに身を包んでいる。大きな和風家屋に住んでいる。犬神と呼ばれる式神を召喚することができる。怪事件が起こる場所に突如として現れては、解決して去っていく。その素性は不明で、誰も知る者はない。犬神を自在に操るため、「犬神博士」とも呼ばれている。
犬神 (いぬがみ)
犬飼に使役される式神。見開いた鋭い目つきに鋭い歯を持ち、眉毛のない般若のような顔をしている。黒い袴を履き、白装束に身を包み、黒いスカーフを首に巻いている。豪華な装飾が施された剣と、さまざまな術を用いて、敵と戦う。
男子高校生 (だんしこうこうせい)
学生服の少年。黒髪の短髪で、普段は学生帽をかぶっている。同級生の石田まり子に淡い恋心を抱いていたが、教師の辻村に妊娠させられたことを知る。その後、まり子が自殺をしたため彼女の仇を討つべく、式神を操る「犬神博士」となって、辻村を呪い殺すことを決意。その行動を辻村に気づかれ、逆に地面に埋められて監禁されてしまう。 犬飼の操る式神の犬神に助けられて、一命を取り留める。
石田 まり子 (いしだ まりこ)
黒髪の女子高生。髪型は肩までのおかっぱ頭で、前髪を左に流している。制服はセーラー服で、男子高校生と同じ学校の同級生。教師の辻村と関係を持って妊娠させられてしまい、5月17日午前10時に、校舎から飛び降りて自殺してしまう。
辻村 (つじむら)
男子高校生の通う学校の教師。スーツに身を包み、黒いネクタイを締めた男性。髪をポマードで固め、眼鏡をかけている。普段は真面目な教師だが、本性は冷酷で残忍な性格の持ち主。鋭い蛇のような目に異様な力を宿し、彼の目で睨まれると、不良生徒もおとなしくなってしまう。
北条 (ほうじょう)
巫女の着物を着ている女性。黒髪で、前髪を真横に分けている。表向きは巫女として、呪詛された客を救うことを生業としているが、実は、外道使い。茶筒に入った外道を人の体に取り憑かせ、その相手から、あたかも呪詛を払ったように見せかける悪徳商法を行う。普段は化粧で顔を綺麗にしているが、実際はシミや皺だらけの素顔をしている。
外道 (げどう)
褌一枚の姿をした式神。肌が浅黒く頭は禿げ上がっている。普段は茶筒の中に入っている。北条の命令によって人の体に取り憑き、気を狂わせたり、体の一部を奇形にしたりと悪事を働き、悪徳商法の手助けをしている。
としおの父親 (としおのちちおや)
としおの父親。眼鏡をかけて、髪をポマードでセット、チェック柄のジャケットと黒いスラックスを着用している。5年前の縁日の夜に、一人息子のとしおが消息不明となった。その3日後に、としおを誘拐したという脅迫文をハガキで受け取った。その後、何の手がかりも得られぬまま5年が過ぎる。祈禱師の松本に、としおを探してほしいと依頼する。 以前、自宅で雇っていた元家政婦と関係持ち続けている。
松本 (まつもと)
祈禱師の男性。禿頭で丸いフレームのサングラスをかけ、白いワイシャツの上から、黒いVネックのセーターを着ている。普段は自宅でマッサージ師をしている。それは世を忍ぶ仮の姿で、実は行方不明者捜索のスペシャリスト。新聞に載るほどの祈禱師。孫娘と2人、一軒家で生活をしている。
元家政婦 (もとかせいふ)
黒くて長い髪にパーマをかけた女性。以前、としおの父親の家に住み込みの家政婦として通っていた。としおの父親と肉体関係を持っており、としおの母親にばれそうになって追い出された。借家で一人暮らしをしている現在も、としおの父親との関係は続いており、定期的に彼を家に迎え入れている。
としお
黒いシャツを着た黒髪の少年。5年前の縁日の夜に、としおの父親と共に不思議な魔術師の芸を見ていた。その芸とは、魔術師が、夜空に向かって一直線に伸びたロープに子供を登らせて、雲の中に消してしまうというもの。芸を見ている最中に、まるで神隠しにあったかのように消息を絶った。
文彦 (ふみひこ)
姫の弟。前髪を七三に分けた黒髪の男性。白いシャツの上に黒いVネックのセーターを着たり、黒いタートルネックのセーターにスーツを合わせたりしている。現在妊娠中の、久美子という婚約者がいる。かつて別の女性と婚約をしていたが、その女性は、妊娠して奇形児を早産した後、ノイローゼになって自殺している。
久美子 (くみこ)
文彦の婚約者の女性。黒くて長い髪にパーマをかけている。真珠のネックレスを首にかけ、黒いシャツの上から、大きな白い襟のついたジャケットとスカートを着用。結婚式の話をするため、文彦の実家を訪れた。その際、文彦の姉である姫に、現在妊娠していることを見抜かれる。
姫 (ひめ)
呪術者を生業としている女性。文彦の姉。黒くて長い髪を後頭部で束ね、前髪を眉毛の上で切り揃えている。普段は黒いタートルネックのシャツを着ているが、呪術者として行動する際は、巫女の格好をする。手から気を放射して、どんな病も退散させる。老人のリウマチや胃潰瘍を治して見せることにより、多くの信者を獲得している。一滴も血を流すことなく、長針で顔や首を貫通させることができる。
お父さん (おとうさん)
姫と文彦の父親。黒装束に身を包み、鼻の下に髭を生やしている。姫の持つ特殊能力を利用して知名度を上げ、信者を増やして「崇光神示教団」という宗教法人を設立しようと企てている。
石堂 (いしどう)
凶悪な殺人犯。丸いフレームの眼鏡をかけ、背中に黒い木箱を背負った男性。黒いシャツの上に丈の短いジャケットを羽織っている。かつて坊主に教わった呪法により、背中に背負っている木箱の中から式神を出し、竜巻を起こして事故と見せかけ、殺人を繰り返している凶悪犯。以前は坊主の力を怖れ、自分の彼女を取られたときに何もできなかった。 しかし、坊主の体力が衰えた現在、彼に引導を渡そうと計画している。
坊主 (ぼうず)
凶悪な祈禱師。白い着物を着た禿頭の男性。表向きは、寺の住職として人に道を説いている。その裏では、3人の人間を呪殺、5人を不具にした凶悪犯。現在は、急な体力の衰えによって床に伏している。先妻を癌で亡くし、現在は後妻と子供が1人いる。
シモン
黒魔術の導師。長い黒髪の美形の男性。鎖帷子の上から、胸に大きく十字架がデザインされた白装束に身を包み、フードの付いたマントを羽織っている。黒魔術結社・蠅の王クラブのリーダー。会員からは「シモン様」と呼ばれ敬愛されている。20年前に犬飼に両親を呪殺され、自身も呪いをかけられた。そおため、犬飼に憎悪を抱き続け、殺害を目論んでいる。
シモンの手下 (しもんのてした)
シモンの手下の男性。黒い鍔のついたキャップをかぶった禿頭の小男。白いシャツの上からセーターを着ており、黒い長ズボンの下にアーガイル模様の靴下を履いている。シモンの命令で犬飼暗殺を謀り、鞭で首を絞めようと試みる。
記者 (きしゃ)
記者の男性。短髪で、サイドと襟足を刈り込み、髪を真ん中で分け、スーツを着用している。大スクープを掴むため、多くの著名人を信者として抱える黒魔術結社蠅の王クラブに潜入する。
集団・組織
蠅の王クラブ (はえのおうくらぶ)
黒魔術の結社。禁欲者こそ地獄に堕ちた者とし、欲望の赴くままに乱交を行うクラブ。リーダーのシモンは黒魔術を使う導師で、依頼に応じて殺人をも犯す。ルシファーを神として崇め、黒い十字架を掲げた教会で宗教活動を行っている。