概要・あらすじ
ある日汀夕鈴は、父親である汀岩圭から割りのいいアルバイトを紹介される。それは、「狼陛下」の異名で国内でも恐れられている、珀黎翔の偽の花嫁になることだった。はじめは狼陛下の怖い部分を見て怯えていた夕鈴だが、彼の裏の顔である子犬のような純粋な素顔に驚きと同時に親しみを覚える。狼陛下の外向けの怖い姿にドキドキしながらも、子犬のような優しい素顔に癒され、夕鈴は波瀾万丈の日々を過ごしていく。
登場人物・キャラクター
汀 夕鈴 (てい ゆうりん)
元気と根性が取り柄の17歳の女の子。父親である汀岩圭が博打好きで金遣いが荒いため、反動で本人はこつこつ地道に稼ぐことが好き。根が優しいためか、騙されやすいという一面を持つ。父親の紹介で珀黎翔(狼陛下)の臨時花嫁アルバイトとして抜擢されたが、本人はこの仕事に向いていないと思っている。狼陛下の二面性は彼なりのキャラ作りだと考えているが、それでも怖い時の「狼陛下」モードにはドキドキしてしまい困っている。 逆に子犬のようなかわいさを見せる狼陛下にも、ドキドキしている。意外に行動派で、時折突拍子もない言動を見せる。
珀 黎翔 (はく れいしょう)
「狼陛下」の異名を持つ21歳の青年で、白暘国の現国王。内乱制圧、内政粛清などを手早く行った手腕は大臣たちにも認められており、若いわりにその能力は非常に高い。威厳に溢れ荒々しい「狼陛下」モードと、気を抜いた「子犬」モードという二面性を使い分ける。これは公務と平時においてオンとオフを切り替えているだけで、本人としては特に意識して別人格を作っているわけではない。 汀夕鈴に怯えられていることを自覚しており、彼女の前では極力「狼陛下」モードにならないように気をつけている。逆に夕鈴の行動には振り回されることがあり、自分自身もそれに戸惑っている。
李 順 (り じゅん)
珀黎翔(狼陛下)の一番の側近である24歳の青年。汀夕鈴以外で彼の二面性を知る、唯一の人物。臨時花嫁アルバイトをしている夕鈴の上司でもあり、夕鈴はよく「鬼姑」と呼んでいる。狼陛下に意見できる数少ない臣下だが、意見は言うもののそれに固執することはなく、彼の最終決定には絶対に従う。
柳 方淵 (りゅう ほうえん)
珀黎翔(狼陛下)の臨時補佐官を務める19歳の青年。のちに正式な補佐官に就任する。仕事はできるが対人関係に難があり、汀夕鈴ともよく口論をしている。ただし、夕鈴のことは狼陛下を支える優秀な人材の一人として認めている。本来仕事ができるはずなのにしないこと、さらに考え方が正反対ということもあり、氾水月のことを嫌っている。
許 祐 (きょ ゆう)
柳方淵と同じく臨時補佐官を務めていた青年で、方淵のことを快く思っていない。珀黎翔は「恐ろしい独裁者」で、汀夕鈴はそれに取り入った妃であると考えており、夕鈴を失脚させるために画策している。
張 元 (ちょう げん)
汀夕鈴が後宮の立ち入り禁止区域の掃除女として働き始めた時に出会った、後宮管理人の老人。夕鈴が臨時花嫁アルバイトに過ぎないことを知りながら、珀黎翔をメロメロにさせて世継ぎをもうけて欲しいと思っている、食えないお爺さん。
氾 史晴 (はん しせい)
名門貴族である氾家で現当主の座に就く40歳の男性。見た目は穏やかな中年だが、したたかで腹黒い一面を持つ。氾紅珠、氾水月には対応が甘く、とりわけ娘の紅珠には甘い。仕事はできるため珀黎翔には重宝されているが、家内に汀夕鈴を毒殺しようとした刺客、桃香を匿っている。
氾 紅珠 (はん こうじゅ)
氾史晴の娘で、氾水月の妹。年齢は14歳。汀夕鈴が来るまでは、正妃の座に最もふさわしいとされていた少女。元々珀黎翔(狼陛下)のことが好きだったが、夕鈴に対する悪い対応が理由で彼の怒りを買う。この時、怒った狼陛下から夕鈴にかばってもらったのをきっかけに、彼女のことを慕うようになる。
氾 水月 (はん すいげつ)
氾史晴の息子で、氾紅珠の兄。年齢は20歳。のんびりした性格で、楽器の演奏に長けている。狼陛下と呼ばれる珀黎翔のことが怖く、また働きたくないということもあり、出仕せずに引きこもりの日々を送っている。ようやく出仕するようになった後も、狼陛下と相対し何かと冷や汗をかいたり、すぐに帰るなどと言い出す。
桃香 (とうか)
氾家で匿っている刺客の女性。氾史晴の命令で汀夕鈴に毒を盛って殺そうとし、珀黎翔によって投獄されたが、すぐに逃げ出した。氾紅珠のために薬を作るなど、薬全般に詳しい。
浩 大 (こう だい)
珀黎翔(狼陛下)の抱える隠密で、23歳の青年ながら童顔。「お腹すいた」が口癖で、任務から狼陛下のもとへ帰ってきた時にまず言った言葉がそれだった。明るい性格だが、冷静に物事を見据える観察眼も持ち、狼陛下と汀夕鈴の関係も外側から見ておもしろがっている。自らのことを狼陛下の道具と語っている。
柳 義広 (りゅう ぎこう)
大臣を務める50歳の男性。氾家とは犬猿の仲である柳家の現当主で、氾史晴とよく対立している。有能ではあるがあまり融通の利かない性格で、息子である柳方淵と似たところが多い。汀夕鈴や珀黎翔に対しては厳しくあたることもあるが、それは先代の国王の時代に後宮に関して後悔したことがあったため、今代では間違いが起きないようにと心がけているためである。
柳 経倬 (りゅう けいたく)
柳家の長男で21歳。柳義広の息子で、柳方淵の兄。自意識過剰で方淵をいつも下に見ているが、当の方淵からはバカな兄貴だと相手にされていない。方淵を蹴落とすためにさまざまな策を部下に画策させ実行させているが、どれも成功したことがない。
周 康蓮 (しゅう こうれん)
白陽国の宰相を務める39歳の男性。暗い印象を持ち、不吉な予言のようなものを伝える癖があるため、汀夕鈴からは怖がられている。しかし、宰相としては有能で珀黎翔から絶大な信頼を置かれている。本人は気づいていないふりをしているが、実は夕鈴が臨時花嫁アルバイトだと知っている数少ない一人である。
徐 克右 (じょ こくう)
ある将軍の怒りを買って、潜入調査や情報収集などをやらされている27歳の軍人男性。本来は力仕事や、戦うことを主としていて、本人の気質もそれに見合った快活で懐の大きい人物である。珀黎翔(狼陛下)と汀夕鈴の無茶ぶりによく振り回されている。
珀 瑠霞 (はく るか)
先国王の兄妹にあたり、珀黎翔(狼陛下)の叔母。綺麗な女性で、現在は蒼玉国に嫁いでいる。狼陛下は小さい頃にしか会ったことがなかった。人を振り回すことにかけては天性の才があり、汀夕鈴も恋話に宴にと引っ張り回されていた。
汀 岩圭 (てい がんけい)
汀夕鈴と汀青慎の父親。下級役人で、賭け事が好きな男性。賭け事でお金が足りなくなるたびに、几鍔のところに金を借りに行く。もちろん夕鈴はそれに対して戒めるのだが、汀岩圭は夕鈴から逃げることが得意なため、実際に目の前で怒られることは少ない。
汀 青慎 (てい せいしん)
13歳の汀岩圭の息子で、汀夕鈴の弟。穏やかで優しい気質をしていて、周囲に振り回されることも多いが、ちゃんと意見する時は言う、芯のしっかりした少年。今は官吏を目指して勉強中。珀黎翔が変装した姿である李翔と夕鈴の仲を応援している。
几 鍔 (き がく)
下町で金貸しをはじめ手広く商売をやっている几家の長男で、汀夕鈴の幼なじみ。年齢は20歳。賭け事で家にいないことが多い汀岩圭の代わりに、口では悪く言いながらも夕鈴のことを心配している優しい青年。夕鈴の本当の父親以上に、彼女のことを心配している。
明玉 (めいぎょく)
汀夕鈴の友人で、下町で働いている。表向きは王宮で下働きをしていると言っている夕鈴のことを心配している優しい女性。珀黎翔が変装した李翔と夕鈴の仲を勘ぐっている。
韋良 (いりょう)
珀黎翔(狼陛下)が追っている闇商人の男性。かつて狼陛下の父親が国王だった時代には官吏として働きたいと望んでいたが、先代の国王であった狼陛下の兄の治世に政治の腐敗を感じ、その夢を諦めたという過去を持つ。己の能力を活かせる場所を探しているうち、闇商人になってしまった。
荷 文応 (か ぶんおう)
壬州を治める地方役人の男性。壬州での珀黎翔(狼陛下)のお忍び視察を手伝ったり、汀夕鈴の晏流公の屋敷への潜入を手伝ったりと、2人には何かと振り回されている。しかし、狼陛下の無茶には昔から慣れており、一度腹を決めたら仕事はしっかりやり切る優秀な人物。
温老師 (おんろうし)
穏やかな性格の、壬州に住む晏流公の指南役の老人。珀黎翔(狼陛下)と晏流公との密会を手伝おうとしたものの、彼自身は蘭瑤に対して影響力を持たず、晏流公から蘭瑤が離れてくれないため、密会の手伝いができなかった。その後、何もできなかった温老師だったが、蘭瑤が古い友人と会うという名目で晏流公から離れたため、狼陛下は晏流公のことを遠目から見ることができた。
晏流公 (あんりゅうこう)
とてもおとなしい、12歳の少年。珀黎翔(狼陛下)の腹違いの弟で、蘭瑤の息子。いつか兄の狼陛下に会いにいき、彼の手助けをしたいと願っている。蘭瑤が晏流公を国王にしようと企んでいたことは、彼自身はまったく知らなかった。
蘭瑤 (らんよう)
先代の国王の妃の一人で、晏流公の母親。見た目はとても弱々しい雰囲気の物静かな女性だが、晏流公を国王にして都に戻ろうと考える激情家の面を併せ持ち、珀黎翔からは要注意人物としてマークされている。
場所
白陽国 (はくようこく)
珀黎翔(狼陛下)が治める国で、先代の国王である狼陛下の兄上の治世においては、政治は腐敗し、軍部も荒れていた。しかし、狼陛下が国王になった後は、内乱鎮圧、政治粛清を早急に行ったことで国内は安定している。
壬州 (じんしゅう)
白陽国の一部で、荷文応が治めている領地。晏流公と蘭瑤が身を寄せている場所でもあり、珀黎翔は晏流公を訪ねて、この地に視察に来たことがある。また、闇商人の韋良を追ううちに、汀夕鈴が訪れた場所でもある。