概要・あらすじ
乙宮灰音はかつて不良少女だったが、東宮閑雅に助けられたことがきっかけで不良をやめ、彼が通う良家の子女ばかりの私立名門校、帝国学園に入学することを決める。どうにか入学できた灰音だったが、帝国学園では生徒がランクによって分けられており、ランクが銅の灰音と金の閑雅では、会うことすら叶わない。そんなある日、まおらの手引きで閑雅の捜索に携わった灰音は、自分が昔会った閑雅とは違う雰囲気の閑雅に出会うのであった。
登場人物・キャラクター
乙宮 灰音 (おとみや はいね)
元ヤンキーの、元気な女子高校生。生徒会の雑務兼用心棒を務め、外道の解散に反対したメンバーたちを速攻で叩きのめすなど、不良をやめてもその戦闘力は健在。昔、乙宮家に5000万で売られた過去を持つが、現在は帝国学園でアルバイトをしながら、乙宮家でのびのびと育っている。東宮閑雅が出したとされている「忘れられない魔女の歌」という絵本に出会ったことがきっかけで閑雅に憧れ、ヤンキー時代に救ってもらったことで閑雅に想いを寄せるようになった。 だが、生徒会業務をこなしているうちに東宮高成に惹かれていく。
東宮 高成 (とうぐう たかなり)
東宮閑雅の影武者として、帝国学園の生徒会長兼皇帝を務めている男子高校生。閑雅の兄。当初は閑雅の影武者として冷静沈着に立ち回っていたが、乙宮灰音が来てからは、彼女に振り回されることがあり、笑顔が見られるようになった。「忘れられない魔女の歌」の絵本を書いた本人。はじめは灰音に対してきつくあたることがあったが、彼女の無邪気なアピールに、徐々にほだされていく。
東宮 閑雅 (とうぐう しずまさ)
東宮家の次期当主であり、本来ならば帝国学園の生徒会長兼皇帝となる男子高校生。病弱で、心臓に病を抱えているため、長時間運動することができない。そのため、ほとんどの生徒会業務や学園の出席を東宮高成に任せており、自分は滅多に表舞台に立たない。ヤンキー時代の乙宮灰音を救い、灰音が憧れた人物でもある。正式に皇帝として人前に出られるようになったら、高成から灰音を奪おうと考えている。
天宮 潮 (あまみや うしお)
乙宮灰音の親友の女子高校生。実家は茶道の家元。灰音がヤンキーだった頃に知り合った友達で、灰音のことを病的なまでに愛している。男子生徒からは「紫陽花の君」と呼ばれ、熱烈な支持を得ている。男嫌いだが、自分のことを支持する男子生徒とは保健室で逢瀬を繰り返している。ただし、キスは灰音と成宮千里とだけしかしていない。 灰音が東宮高成を好きなことが気に入らない。
まおら
ぱっと見は、女子高生に見える女装男子生徒。本名は「一ノ宮由貴」だが、本名で呼ばれることはほとんどない。辻宮真栗に想いを寄せているが、幼い頃に男子同士だと結婚できないことを知り、一縷の望みを託して女装して生活している。男装するとイケメンで、女生徒たちからはカッコいいと評判になった。
辻宮 真栗 (つじみや まぐり)
ゲイであることをカミングアウトしている男子高校生。東宮高成のことを東宮閑雅だと思っているため、愛称として「しーずん」と呼んでいる。高成だと判明した後は「たかたか」と呼ぶようになった。態度はヤンキー然としているが、乙宮灰音が弱音を吐いた時にはカツを入れるなど、いざという時には優しさを見せる。
十夜 (とおや)
東宮高成のお付きで、物腰柔らかく誠実な少年。生徒会業務に携わっているが、生徒会メンバーではない。5歳の時に高成に拾われ、それ以来ずっと高成に仕えている。ただし、高成のためにはなんでもするという行動原理のもと、時には非情な手段に出ることがある。
成宮 千里 (なりみや せんり)
帝国学園の保健医で、東宮家の執事を務める男性。天宮潮に心惹かれていて、潮の乙宮灰音に対する異常な執着についても知っている。かつて東宮高成と東宮閑雅兄弟の母親、東宮抄花とは恋仲で駆け落ちまでしたが、抄花を途中で死なせてしまい、その罪悪感からそれ以来人を好きになったことがない。
辻宮 征光 (つじみや ゆきみつ)
辻宮真栗の実の兄で、元外道メンバーの男子生徒。外道解散時に生徒会室に特攻をかけたが、乙宮灰音によってすべて撃退された。その後、他の外道メンバーと共に風紀委員長を務めている。外道解散の際に天宮潮に諭され、以降は潮のファンとなる。
理恵子 (りえこ)
乙宮灰音の銅ランク時代の友人の女子生徒。灰音が元ヤンキーだと知った後は敬遠していたが、のちに灰音と和解する。十夜と共に灰音と東宮高成の恋を応援していた。それをきっかけに十夜と仲良くなるも、十夜には振られてしまう。
宮々 みるこ (みやみや みるこ)
うさみみフードパーカーを常時着用している変わった女性教師。乙宮灰音と天宮潮の担任でもある。外見は子供っぽく無邪気だが、年齢は26歳で、生徒からは「詐欺」呼ばわりされている。水族館への遠足の際にも一番テンションが高かった。
山宮 千代子 (やまみや ちよこ)
「チョコ先生」の通称を持つ女性教師で、宮々みること幼なじみ。東宮高成と辻宮真栗、まおらのクラスの担任。成宮千里にほのかな恋心を持っている。勝気な性格だが少女趣味の一面を持ち、この事実はみるこ以外には隠している。
シュトラール=立宮3世 (しゅとらーる=たちみやさんせい)
乙宮灰音の下働き仲間の守衛。スイス生まれのドイツ系スイス人男性で、ちょっと髪の色素が薄い。飄々とした人物で、灰音をからかうことが今は一番の楽しみ。マルチメディア部部長である立宮由美子の兄で、その正体は学園長。
郵便屋 (ゆうびんや)
乙宮灰音の下働き仲間の郵便屋。帝国学園内の郵便配達をしており、よくオス猫の「ぱる君」を連れている。灰音のことをいつも気にかけていて、度々彼女にアドバイスを送っている。その正体はまおらで、皇帝である東宮高成をサポートするために、学園の情報係として動いている。
立宮 由美子 (たちみや ゆみこ)
マルチメディア部部長で、ゴシップが大好きな女子生徒。シュトラール=立宮3世の妹。東宮高成のことが大好きで、プラチナの地位にいる乙宮灰音のことは大嫌い。いつもゴシップを探して、部員と共に帝国学園内を駆け巡っている。
香宮 和仁 (かみや かずひと)
無口で冷静沈着な乙宮灰音の実の父親で、香宮舞加の夫。近寄りがたい雰囲気を醸し出しており、灰音と言葉を交わすことはほとんどない。乙宮樹から強引に舞加を奪ったが、それは舞加のことが真剣に好きだったため。一度心を失くした舞加が正気を取り戻してからは、2人で船旅に出たりと仲が良い。
香宮 舞加 (かみや まいか)
乙宮灰音とは仲が良かった。しかし、灰音の出生の秘密であった、灰音は香宮和仁との子供ではなく、乙宮樹との子供という事実を和仁に知られたことで、心を失ってしまう。のちに和仁への愛を思い出し、和仁と円満な夫婦生活を送っている。
香宮 小牧 (かみや こまき)
乙宮灰音の異母妹の女子中学生。幼い頃は灰音と仲が良かったが、灰音が乙宮家に引き取られてからは交流がなくなった。高飛車な物言いをするが、灰音の恋の行方を心配している。乙宮草芽のことが好きで、帝国学園高等部の文化祭で催された「告白大会」で、草芽に告白して、彼女から承諾を得た。
香宮 橘 (かみや たちばな)
乙宮灰音の異母弟である小学生。生まれてすぐに灰音と離れ離れになってしまったため、灰音のことを知らずにいた。多少意地っ張りな性格は香宮和仁に似ているが、灰音が姉と知ってからは灰音によく甘えてくる。
乙宮 樹 (おとみや いつき)
乙宮家具の社長。乙宮緑香と結婚する前に乙宮灰音を5000万円で買った、灰音の義父で、乙宮家の大黒柱の男性。灰音をとても大切にしており、彼女の恋を応援している。乙宮草芽を連れ子として連れてきた緑香に一目惚れして、結婚する。
乙宮 緑香 (おとみや りょくか)
乙宮灰音の義母であり、乙宮草芽の母親。乙宮樹の妻でもある。草芽は前の夫との子供。帝国学園の卒業生で、香宮舞加に憧れていた。樹のことが好きだったが、舞加と樹とのラブシーンを目撃して、叶わない恋だと諦めた。しかし、舞加が香宮和仁と結婚することになり、樹への思いは膨らんでいった。
乙宮 草芽 (おとみや くさめ)
乙宮灰音の義弟であり、実の母親は乙宮緑香で、義父は乙宮樹。帝国学園中等部。優秀な成績を修めており、帝国学園でのポイントを地道にためて、ランクを銅から銀に引き上げた珍しい人物。緑香からは「くーちゃん」と呼ばれている。
桐彬 (きりあき)
東宮閑雅に仕える東宮家の執事の男性。生真面目で冷静沈着。上司である成宮千里が苦手だが、自分の手に負えない事件が起こった際には千里に助けを求めることがある。表情に感情が現れにくいため、怖がられることが多い。
東宮 春日 (とうぐう かすが)
乙宮灰音のヤンキー時代の友達で、東宮高成と東宮閑雅とは親戚。本気になればお嬢様の格好や言葉使いもできるが、ヤンキー風のドスの効いた声の方が似合っている。灰音への強い思いから、彼女が不良グループを抜ける際には裏切られた意識が強く、散々灰音にリンチを加えた。
東宮 夾果 (とうぐう きょうか)
東宮高成と東宮閑雅の義母で、東宮抄花の双子の姉。高成と閑雅のことを大事に思っている。なかでも影武者の高成については特別な感情があるようで、高成が座敷牢に軟禁された時は、助けに来た乙宮灰音を手助けした。
東宮 抄花 (とうぐう しょうか)
東宮高成と東宮閑雅の実の母親で、東宮夾果の双子の妹。閑雅と同じ病気を患っている。夾果の影武者を務めており、その境遇を哀れんだ成宮千里と共に駆け落ちしたものの、途中で亡くなってしまう。
学園長 (がくえんちょう)
帝国学園の学園長。実は乙宮灰音と共に下働きの守衛をしているシュトラール=立宮3世。灰音を動揺させるために、学生時代の乙宮樹と香宮舞加の写真を渡したり、灰音に出生の秘密を聞かせたりするなど、灰音にとって良いことも悪いことも吹き込む。
琴宮 水城 (ことみや みずき)
乙宮草芽の親友の男子生徒。女好きで、女の子の扱いがうまい。香宮小牧を狙っていたが、帝国学園高等部で行われた文化祭の告白大会で小牧と草芽のカップルが成立してしまったため、彼の恋は実らなかった。
オコリマクリ
まおらが飼っているペットで、ミニチュアの羊。常に怒った表情をしている。まおらのポシェットのように見えるが、れっきとした動物。郵便屋さんのペットである猫の「ぱる君」と仲良し。
集団・組織
高等部生徒会 (こうとうぶせいとかい)
金のランクを持つ高等部生徒会会長、通称「皇帝」をトップとする生徒会組織。生徒会役員はまおらが個別にデザインした、他の生徒とは違う制服を身にまとっている。また、生徒会室には常に制服が常備されている。
外道 (げどう)
辻宮征光を現リーダーとして、帝国学園の暗部を司る不良グループ。不良グループを隠れ蓑に、裏では代々生徒会が解決できないような案件を請け負っている。東宮高成が外道制度を廃止し、外道メンバーは全員が風紀委員の役職に就いた。
マルチメディア部 (まるちめでぃあぶ)
立宮由美子を現部長とした、帝国学園内のマスコミ集団。ゴシップが大好きで、東宮高成や乙宮灰音のことを追い続けている。灰音はこのマルチメディア部に香宮家との因縁を暴露され、良い印象を持っていない。部長である由美子が一方的に高成を慕っていることから、常に灰音をマークしている。
場所
帝国学園 (ていこくがくえん)
初等部から大学院まで備える、良家の子女たちしか入学できない私立の名門校。基本的には社長などの子息や令嬢が通う学校だが、稀に外部からの転入生もいる。乙宮灰音も一応社長令嬢のため、ランクは銅ではあるが、入学が認められた。
空中庭園 (くうちゅうていえん)
ランクが銀以上の生徒だけが立ち入ることができる場所。東宮高成が会議をサボる口実に使った場所でもある。また、乙宮灰音が東宮閑雅とキスをしたのもこの場所。「忘れられない魔女の歌」という本に出てくる「ワルツハーゲン」という森をイメージして作られている。
その他キーワード
ランク
帝国学園にはランク制があり、金、プラチナ、銀、銅の4段階となっている。金は高等部生徒会会長のみに与えられる名誉あるランクで、「皇帝」と呼ばれ、ランクが銀の生徒でさえ、謁見するには手続きが必要となる。プラチナは皇帝の恋人にのみ与えられるランクで、待遇は銀より上。銀は帝国学園に多額の寄付をすることで与えられるランクで、金持ちや名家の生徒が多い。 また、帝国学園に貢献することによって与えられるポイントを貯めて、銀のランクになれる場合もある。銅は一般生徒のランク。入学時、乙宮灰音は銅ランクだったが、東宮高成の恋人になったことから、プラチナのランクを与えられた。
忘れられない魔女の歌 (わすれられないまじょのうた)
東宮高成が作った絵本。乙宮灰音は幼少時の誕生日に、香宮和仁からこの本をプレゼントされ、東宮閑雅のことが好きになった。だが、実際に絵本を描いたのは高成で、灰音はこの事実を後に知ることとなり、高成に興味を抱いていく。
帝国学園の伝統 (ていこくがくえんのでんとう)
カップルになった2人が、お互いの制服のタイを交換するというもの。女子はネクタイで、男子はリボンタイのため、これを交換することによって初めてカップルとして認められる。東宮高成は当初、女性を避けるために辻宮真栗とタイを交換していたが、のちにプラチナに選ばれた乙宮灰音とタイを交換することになる。