王朝モザイク

王朝モザイク

平安時代の日本を舞台に、身分や立場の違いを超えて繰り広げられる、いくつもの男女の恋をオムニバス形式で描いたドラマティック・ラブストーリー。「YOU」2018年5月号と「ザ マーガレット」2019年10月号、2020年2月号、春号に掲載された作品。

正式名称
王朝モザイク
ふりがな
おうちょうもざいく
作者
ジャンル
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あらすじ

故郷を離れ、京都で検非違使をしていた宇方然示郎は、ある日、花見に来ていた若い貴族の青年の嵯峨萌と出会う。行き倒れの死体を見て気分を悪くした萌を介抱していた然示郎は、萌を呼びに来た侍女が、故郷で恋仲だったが身分違いで破局して川に身投げした女性、沙魚であることを知る。歓喜する然示郎をよそに、一瞬だけ驚いた表情を見せた沙魚は、自らを「水無瀬」と名乗ったうえで人違いだと言い残し、萌と共にその場を去ってしまう。その頃、京都では強欲商人や金満貴族ばかりを狙う夜党「梟党」がわが物顔に振る舞っていた。その取り締まりを命じられた然示郎は、必死の捜索の末、犯行後の梟党一味を取り囲むことに成功する。賊の中でもひときわ腕の立つ頭巾をかぶった剣士と切り結んだ然示郎は、激闘の末に剣士に深手を負わせるが、あと一歩のところで取り逃してしまう。血痕をたどり、嵯峨家の屋敷にたどり着いた然示郎たちが捜索を進めたところ、自室で傷を癒していた沙魚を発見する。その正体を知られた沙魚は、毒をあおって命を断とうとするが然示郎によって止められ、そのまま意識を失ってしまう。その夜、沙魚の身代わりとなる新しい女性の死体を探すため、罪人や貧民の最後の行き場になっていた羅城門を訪れた然示郎は、そこで彼とまったく同じことを考えていた萌と遭遇。涙と汚物にまみれながら、必死に沙魚を救おうとする萌の姿を見た然示郎は萌と共に死体探しを進め、目当ての心中死体を見つけ出すことに成功する。その後、ケガがもとで死んだことにされた沙魚をひそかに逃した然示郎は、地方への移住が決まった萌と沙魚が乗った牛車を、一人静かに見送るのだった。(Vol.1)

登場人物・キャラクター

宇方 然示郎 (うかた ぜんじろう)

エピソード「Vol.1」「Vol.3 前編」「Vol.4 後編」に登場する。京都の治安を守る検非違使をしている青年。本名は「宇方然示郎吉昌」。検非違使の赤い衣がよく似合う眉目秀麗な美青年。そのため、下っ端の検非違使にもかかわらず、女性からは人気がある。地方の名家である宇方家の跡取り息子で、家で雇っていた婢女の沙魚と恋仲になって真剣に結婚を考えていたが、身分違いであるために両親に仲を引き裂かれて破局。屋敷を追われた沙魚が川で身投げしてしまった出来事がきっかけとなり、ほどなくして故郷を離れ、京都で仕官することになった。沙魚から駆け落ちを請われた際に返事を保留してしまったことを今も後悔しており、その念を断ち切るため、検非違使の職務に打ち込んでいる。剣の腕前は所属する隊でも随一で、同僚からは頼りにされていた。京都で偶然に出会った嵯峨萌の侍女「水無瀬」が沙魚であることに気づくが、当の沙魚からは人違いだと、相手にされなかった。のちに京都を騒がしていた夜盗の一味「梟党」の首領となっていた沙魚と戦い、萌の屋敷で深手を負った沙魚を捕縛する。その後、沙魚を助けるために身代わりの死体を用意したうえで、沙魚に求婚した。萌と沙魚が京都から去ったあとも、検非違使として京都の治安を守り続ける日々を送っていたが、上司から信濃までお忍びで旅をする姫の皓の護衛を任されることになり、共に旅をする中で徐々に皓に惹かれていく。

揺良 (ゆらら)

エピソード「Vol.2」に登場する。京都に居を構える宮廷貴族の甘秋家の姫で、儚げな雰囲気を漂わせた美女。生まれつき病弱で、20歳まで生きられないと医者や陰陽師に宣告を受けている。両親も3年前に疫病でなくなったため、今は揺良の叔父に面倒を見てもらっている。花を愛しており、特に先祖から伝わる大輪の白菊が大のお気に入り。病弱なために結婚はできないと周囲に思われていたが、ある日奥庭に迷い込んだ下級貴族の橘定章を一目見て好きになり、恋仲になる。身分の違いを理由に叔父からは定章との結婚を反対され、政略結婚をさせられそうになるものの、甘秋家に伝わる「重陽の節句に一番大事な白菊を飾り、菊の庭で式を挙げれば正式な結婚とする」という掟を盾に、定章と結婚しようとする。

沙魚 (さお)

エピソード「Vol.1」に登場する。宇方然示郎の屋敷で婢女として雇われていた女性。おてんばでよく笑い、表情がくるくると変わる魅力的な美女。然示郎とは出会った瞬間に恋に落ち、いつしか結婚を意識するほどの仲になった。しかし、身分が違うために然示郎の両親に屋敷を追い出され、絶望のあまり川に身を投げてしまう。死んだと思われていたが、宮廷貴族の嵯峨萌に救われて彼の侍女となり、萌を支えるしっかり者として、嵯峨家の人間にも頼りにされる存在になる。故郷を出て京都で検非違使となっていた然示郎と偶然再会したものの、本名ではなく「水無瀬」を名乗り、あくまで別人を貫き通した。実は京都を騒がす夜盗「梟党」の首領で、夜な夜な強欲商人や金満貴族を襲撃して金品を奪っていたが、然示郎によってその正体を暴かれる。

嵯峨 萌 (さが もゆる)

エピソード「Vol.1」に登場する。京都に住んでいる宮廷貴族の男性。優しい性格で柔和な雰囲気を漂わせているが、臆病で気が弱いところがある。生家は名門だが、代々の浪費がたたって没落し、嵯峨萌の代になって住んでいる屋敷を売る話が出るまでに困窮している。6年前、川岸で行き倒れていた沙魚を助けて侍女として迎え入れ、「水無瀬」と名づけてさまざまな教育を施した。いつしか彼女と愛し合うようになり、しっかり者の沙魚につねに支えられる立場になる。沙魚が夜盗「梟党」の首領であることは知らなかった。検非違使の宇方然示郎と切り結んで深手を負い、捕まってしまった沙魚を守るため、単身で羅城門に乗り込んで身代わりとなる死体を探そうとしていた。

橘 定章 (たちばな さだあきら)

エピソード「Vol.2」に登場する。宮廷に出入りを禁じられている下級貴族で、貴公子風の美青年。菊の香りに誘われ、とある屋敷の奥庭に迷い込んだ際に、屋敷の娘である揺良と出会う。一目で揺良を見初めて恋仲になり、後見人である揺良の叔父に揺良との結婚を申し込むものの、身分の低さを理由にけんもほろろの対応を受け、会うこと自体を禁じられてしまう。その後も揺良をあきらめることはなかったが、主命によって美濃に数日赴任すると決まった際は、重陽の節句までに帰京すると揺良に約束する。帰京中に事故に遭って一時的に行方知れずとなるが、9月9日にみごとな菊花石を土産に持参して帰京し、甘秋家の慣習に従って揺良との結婚を果たした。実は宮廷貴族の若君で、末っ子として甘やかされて育ったため、下位の官位からやり直しを命じられていた。

釣穂 (つるほ)

エピソード「Vol.2」に登場する。宮廷貴族の女性で、揺良の叔父の妻。上昇志向が強く、夫の出世に執念を燃やし、つねにハッパを掛けている。叔父といっしょに揺良の屋敷に頻繁に出入りしており、揺良に悪い虫がつかないように見張っている。下級貴族の橘定章が揺良に結婚を申し込んだ時も、冷淡な反応を見せていた。

揺良の叔父 (ゆららのおじ)

エピソード「Vol.2」に登場する。宮廷貴族の男性で、揺良の叔父にあたる。両親が病死した揺良の後見人として、彼女の面倒を見ている。根は悪い人間ではないが、揺良の個人的な感情には無頓着で融通がきかず、揺良の叔父自身の出世のために揺良を政略結婚させようとしている。妻の釣穂とも政略結婚しているが、彼女のことは心から愛している。上昇志向が強い釣穂の期待に応えるために、さらなる出世もくろんでいる。周囲から「大夫」という官職の名で呼ばれている。

(ひかる)

エピソード「Vol.3 前編」「Vol.4 後編」に登場する。京都に住んでいる宮廷貴族の姫で、人目を引く美少女。宮廷の堅苦しい格好を嫌い、少年のような姿をしている。じっとしているのが苦手で、思い立ったら行動しないとすまない性格をしている。異母兄である冬平の形見を、彼のかつての思い人である楓に届けることを決意し、検非違使の宇方然示郎と共にお忍びで信濃国へと旅立つ。旅の中で優しく頼りがいのある然示郎に惹かれていくが、彼の心の中に今も沙魚がいることを知ってしまい、人知れず苦しんでいた。

鬼女紅葉 (きじょもみじ)

エピソード「Vol.3 前編」「Vol.4 後編」に登場する。信濃国を拠点にしている野盗「鬼もみじ党」の首領で、鋭い目をした美女。苛烈な性格で都会や貴族を嫌っており、敵に対しては容赦しない。鞭の名手で、京都からやって来た宇方然示郎を捕えた際は、鞭で拷問していた。もともとは信濃の名族である岩屋家の姫で、本名は「楓」。京都で宮廷貴族に仕え、冬平と恋仲になるものの、身分の低さから不興を買って都を追放された。その後、信濃国に赴任してきた国司の藤原浮忠に言いがかりをつけられて岩屋家を滅ぼされ、野党の首領となった過去を持つ。そのため、浮忠に強い恨みを抱いている。

藤原 浮忠 (ふじわらの うきただ)

エピソード「Vol.4 後編」に登場する。信濃国に住んでいる国司の男性。金に目がない守銭奴で、金を得るためなら卑劣な手段でも平然と行う強欲な性格をしている。信濃国に赴任した際に、地元の名家である岩屋家の財産に目をつけ、武力をもって強引に滅ぼしてしまった。そのため、民草からも非常に嫌われている。皓の母親とは遠い昔に知り合いだったが、身分の差から恋文を出せなかった。その無念が、藤原浮忠が守銭奴になった遠因となっている。

冬平 (ふゆひら)

エピソード「Vol.3 前編」「Vol.4 後編」に登場する。京都に住んでいた宮廷貴族の青年で、皓の異母兄。故人。おおらかで優しい性格をしている。貴族としては何かと型破りな皓のよき理解者となり、彼女がどんなことをしてもいつも優しく見守っていた。恋人となった楓との仲を両親に引き裂かれ、絶望のあまり病に伏せ、若くして亡くなった。

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