概要・あらすじ
江戸時代。一家の主を殉職で失い、女だけになってしまった藤岡家は、まもなく生まれる子供が男の子ならば、という条件でお家取り潰しを免れる。やがて生まれた念願の男の子は、ケンノ介と名付けられ、祖母に異常に甘やかされて育つ。ある日、祖母はケンノ介が近所の子供にいじめられて、めそめそ泣き崩れる姿を目撃する。
不甲斐ない孫の姿に、祖母は手のひらを返したように、ケンノ介を厳しく育てようとするが、泣き虫は治らない。毎日ケンカに負けて帰ってくるケンノ介に絶望する祖母だったが、ある日ケンノ介にやられたという男の子が親に連れられて藤岡家を訪ねてくる。
登場人物・キャラクター
藤岡 ケンノ介 (ふじおか けんのすけ)
藤岡家の長男。藤岡家唯一の男子として、幼少時から一家の大黒柱としての宿命を背負い、異常に甘やかされて育つ。そのせいで、喧嘩もできない泣き虫になってしまうが、少しずつ心身ともに逞しく成長していく。祖母、母、姉3人がいる。
祖母 (そぼ)
ケンノ介の祖母。藤岡家と主君への奉公を第一に考える古風な老婆。感情の起伏が激しい。念願の男子誕生で、お家取りつぶしを免れたため、ケンノ介を異常に甘やかして育てる。ある日、ケンカに負けてただ泣き崩れるケンノ介を見てしまい、自分の教育方針が間違っていたことに気づく。
藤岡 辰ノ介 (ふじおか たつのすけ)
ケンノ介の父親。故人で作中には登場しない。真昼間、ひよどりの崖から転落して殉職。藩では「諸物おはこび役」という役職についており、勤勉な人物だったらしい。
五十嵐 (いがらし)
藤岡家が仕える藩の重役。広い見識を持つ人格者。亡き辰ノ介の一子、ケンノ介のことを心配し、身分を隠して接触する。また、だらけきった藩に刺激を与えるため、幼少のケンノ介に登城するように命令を出す。
上原 奈津 (うえはら なつ)
藩目付を務める上原の娘。剣術が得意な美少女。初めて自分を打ち負かしたケンノ介に恋をし、大量の荷物とともに藤岡家に押しかけてくる。
青木 (あおき)
城勤めをしている中年の武士。怖い顔をしているが、人を驚かすのが大好きな茶目っ気のある人物。お役目で印鑑を貰いに来たケンノ介を、死んだふりをして脅かす。
森 (もり)
城勤めをしている年老いた武士。唄が趣味で、部下を前に自慢の喉をふるう。お役目で印鑑を貰いに来たケンノ介にも唄を聴かせて、なかなか印鑑をくれない。
轟 珍重郎 (とどろき ちんじゅうろう)
城勤めをしている若い武士。わき目もふらずに勉学にいそしみ、28歳で印鑑を押せる立場に出世したことに猛烈に感動している。ケンノ介が持ってきた書類に印鑑を押そうとするが、緊張のあまり失敗してしまう。
集団・組織
藤岡家 (ふじおかけ)
『男ぞ!ケンノ介』に登場する家族。主の辰ノ介亡き後、男子がいないため、お家取りつぶしの運命にあったが、幸いにもケンノ介の誕生で存続する。ケンノ介の他に、祖母、母タエ、長女ヤヤ、次女ネネ、三女ナナがいる。ケンノ介のことで一喜一憂する祖母に、家族全員が振り回される。