概要・あらすじ
売れない演歌歌手の五木みさおの夢は、有名になって紅白歌合戦に出場すること。それが亡くなった妻、五木純子との約束だった。一人娘である五木あわれの夢も、やはり父の紅白出場。父を有名にするために、サクラとして道でサインを求めたり、父の歌を学校で宣伝したりするなど、けなげな努力を欠かさなかった。しかし、みさおの持ち歌「男の操」はなかなか売れない。所属事務所の女社長である深情マリは、売れないみさおを歯がゆく思い、つらく当たる。1万円を10円玉に両替させたうえ、公衆電話から有線放送に自分の歌をリクエストさせるなどのイジメを繰り返すのだ。そんなみさおの心のよりどころは、妻が遺した大量のビデオ。映像に映る妻の姿と娘に励まされ、みさおは今日も元気にスナックや健康ランドでの営業に勤しむのだった。
登場人物・キャラクター
五木 みさお (いつき みさお)
売れない演歌歌手で、35歳の男性。持ち歌は「男の操」。「操」の文字が入った荒波模様の着物が特徴。妻の五木純子を亡くし、一人娘の五木あわれを男手一つで育てている。妻との約束である「紅白出場」を目指し、日々営業に励む。あわれからは「パパ上」と呼ばれている。五木ひろしの物まねが得意。
五木 あわれ (いつき あわれ)
五木みさおの一人娘で、小学生。父のことを「パパ上」、母である五木純子のことを「ママ上」と呼ぶ。みさおを紅白歌合戦に出場させるため、日々けなげな応援活動をしている。
五木 純子 (いつき じゅんこ)
五木みさおの妻。元アイドル歌手で、同じく元アイドルの深情マリとは同期で友達。娘の五木あわれからは「ママ上」と呼ばれる。夫のみさおの紅白出場を願いながら、病気で亡くなる。大量のビデオメッセージを遺しており、まるでビデオの中で生きているように描かれることもある。みさおやあわれの心の支えとなっている。
深情 マリ (ふかなさけ まり)
五木みさおが所属する芸能プロダクションの女社長で、年齢不詳。元アイドルで、五木純子とは友達だった。マネージャー、ディレクター、作曲家などとの恋の遍歴を重ね、芸能プロを築き上げる。みさおにつらく当たるが、愛情の裏返しである。
万田 春子 (まんだ はるこ)
五木みさおが住むアパートの隣人でOLの女性。恋愛や不倫の末に、人が信じられなくなっていた時、みさおに出会う。死んだ妻一筋で、日々純粋に生きるみさおに心惹かれる。以来、コップを壁にくっつけ、みさおの家の様子を伺う日常を送る。また、事あるごとに五木家におすそ分けを持ってくる。