概要・あらすじ
ずば抜けた運動神経を持ち、スポーツとケンカにかけては天才的な兄の渡洋一、7か国語を操る頭脳明晰な弟の渡真二。2人は近隣では知らぬ者のいない有名な兄弟だった。父親の提案で、夏休みに東南アジア一周の冒険旅行に行くことになり、洋一と真二は、両親やペットの動物たちと共にヨットで出航。航海は順調に進むが、一家は南シナ海で漂流者を装う2人組の香港マフィアを乗せてしまう。
彼らはヨットを乗っ取り、一家を皆殺しにしようと企んでいた。反抗する洋一だったが、父親が銃で撃たれて海に転落。さらに、嵐のためにヨットが転覆し、母親と兄弟もペットの動物たち共々、荒波に飲まれてしまう。やがて、洋一と真二は見知らぬ浜辺で目を覚ます。2人が流れ着いたのは、野生動物が闊歩する東アフリカであった。
登場人物・キャラクター
渡 洋一 (わたり よういち)
渡家の長男。スポーツとケンカが大好きな暴れん坊。空手と柔道二段、100メートルを10秒そこそこで走るなど、天才的な運動能力を誇る。一方で、勉強は大の苦手で、弟の渡真二とはまったくの正反対。しかし、兄弟仲は非常に良く、互いに協力し合いながら、過酷なアフリカの大自然を生き抜いていく。気が強く行動力が旺盛で、ピンチのときには真っ先に身体を張るが、熱くなりすぎて暴走してしまうことも多い。
渡 真二 (わたり しんじ)
渡家の次男。英語、フランス語、ドイツ語、スペイン語、イタリア語など7か国語を操り、スワヒリ語も、わずかな期間でマスターしてみせるなど、語学力は抜群。また、化学や工学などの知識も豊富で、天才的頭脳の持ち主。ただし運動はからっきしダメで、やや気の弱いところがある。兄の渡洋一とは性質・性格とも正反対だが、兄弟仲は非常に良く、何かと暴走しがちな洋一を、頭脳面でサポートする。
クウェリ
ナボ族の少年。渡洋一が、巨大なニシキヘビに襲われていたところを助けた。迷信深い部族の風習には否定的。集落に蔓延するペストの被害を防ぐため、白人の医師を呼ぼうとした。そのため、掟に背いた裏切り者として部族を追われ、洋一たちと旅をすることになる。ナボ族を抜けた両親を、白人に撃ち殺されたという過去を持つ。しかし、決して他人種に対して否定的ではなく、洋一たちとも友情を深めていく。
王 (わん)
渡一家が飼っているベンガル虎。ヨットが転覆した際に海に投げ出されたが、自力でアフリカに泳ぎ着く。のちに、渡真二がリカオンの群れに囲まれていたところで再会を果たし、彼を救う。日本を出航したときは、まだロッキーと同じくらいの体格だった。アフリカで渡兄弟と再会したときには、成獣とほぼ変わらない大きさになっており、ライオンやヒョウに立ち向かうなど、さまざまな場面で兄弟を助ける。 ロッキーの乳で育ったため、ロッキーを母親だと思っている。
ロッキー
渡一家が飼っているメスの成犬。王とマリンの育ての親。ヨットが転覆した際に海に投げ出されたが、自力でアフリカに泳ぎ着く。リカオンに襲われていたマリンの救出に駆けつけた。戦闘力では王に劣るが、賢く機転が利く。助けた漂流者が悪人であることにもいち早く気づき、渡洋一や渡真二が危機に陥った際には、自発的に囮になった。 危険を察知する能力も高く、王と共に、渡兄弟にとって頼れる存在となっている。
マリン
渡一家が飼っている子犬。ヨット転覆時に王、ロッキーと共に海に落ちたが、自力でアフリカの浜まで泳ぎ着く。漂着したヨットの食料を食べて生き延びていた。同じロッキーの乳で育ったため王と仲が良く、渡家にいたときは、まだ王が小さかったこともあり、よくじゃれあっていた。
渡家の父 (わたりけのちち)
渡洋一、渡真二の父親。個人医院を営んでいる。夏休みを利用し、友人から譲り受けたヨットで、妻と子供、ペットの動物たちと共に、東南アジア一周の冒険旅行に出る。しかし、航海の途中、香港マフィアに船を乗っ取られる。彼らの要求を拒否したため、銃弾を受けて海に転落。そのまま嵐に飲まれて行方不明になってしまう。
渡家の母 (わたりけのはは)
渡洋一、渡真二の母親。夫や子供たちと、ヨットで東南アジア一周の冒険旅行に出るが、香港マフィアに船を乗っ取られて夫が海に転落。嵐のためヨットも転覆してしまい、子供たちと共に海に投げされてしまう。その後、タンザニアの海岸に流れ着き、ピグミーのサンテナ族に保護される。恐怖とショックのあまり、過去の記憶を失ってしまう。
香港マフィア (ほんこんまふぃあ)
南シナ海の海上を漂流していた2人組の男。秘密警察の者だと身元を偽り、渡一家のヨットに乗船。銃で一家を脅して船を乗っ取った。反抗する渡洋一の腕を銃で撃ち抜き、渡家の父も海に落とすなど、暴虐の限りを尽くす。嵐に遭いヨットが転覆した際、怒りに燃える洋一の逆襲を受け、海の藻屑となった。
ムバヤ
ナボ族の老婆。神の使いを自称している呪術師。部族の神である「メコンの神」の名のもと、ナボ族の者たちに、他の部族への襲撃や略奪を行わせている。集落に発生したペストの原因を、神の怒りのためとし、白人の医師の助けが必要と主張するクウェリを、居合わせた渡洋一もろとも捕縛。神の怒りを鎮めるため、2人を生贄にしようとする。
ドクター
アフリカで活動している白人男性の医師。ペストの治療のため、運転手のトマとナボ族の集落に向かう。その途中、渡真二とペットの動物たちに出会い、彼らを保護した。ナボ族に捕らわれている渡洋一の救出と、兄弟の日本への送還を請け負う。しかし、白人を嫌う呪術師ムバヤの説得に失敗し、ヤリを肩に受けて重傷を負ってしまう。
トマ
ドクターの運転手をしているアフリカの黒人青年。ペストの蔓延を抑えるため、ドクターと共にナボ族の集落に向かう。文明を嫌う呪術師ムバヤの命令を受けたナボ族の者たちによって捕らえられ、渡洋一やクウェリと共に生贄にされそうになる。
トーマス
野獣保護管理官をしている白人男性。権力をカサに悪事を重ねる横暴な男性。渡洋一、渡真二、クウェリの3人を密猟者として拘束した際、王を私物化してロッキーとマリンはマサイ族の村に置いていこうとした。妹を殺されたという理由から、ナボ族を極端なまでに嫌っている。
マイケル
アメリカ空軍のパイロットの男性。同僚のテリーと共に、戦闘機で飛行中に事故を起こし、グレート・リフト・バレーに墜落。恐竜に襲われて左腕を失うが、渡洋一やクウェリたちに助けられて一命を取りとめた。病み上がりのためか気が立っており、周囲の者たちに何かと当たり散らす。
テリー
アメリカ空軍のパイロットの男性。同僚のマイケルと共に、戦闘機で飛行中に事故を起こし、グレート・リフト・バレーに墜落。恐竜に襲われていたところを、渡洋一やクウェリらに助けられた。気さくで人当たりがよく、グレート・リフト・バレーから脱出するべく洋一たちに協力する。
ムバハ
チタ族を率いる仮面の男性。鉤爪と鎌を組み合わせた首狩りガマと、犬やゴリラをも意のままに操る催眠術を使う。部族の者たちに恐れ崇められている。アフリカ全部族の王になるという野望を抱いており、部族統一の象徴といわれる「黄金の三種の神器」を集めている。
長老 (ちょうろう)
渡洋一たちが立ち寄った村の長老の男性。飼っていた犬を洋一たちに助けてもらった礼として、渡家の母を保護したヌホタのことを、一行に教えた。温厚、篤実な人物で、村人からの信望も厚い。トーマス殺害の容疑で手配されていたクウェリを見逃す。
ヌホタ
キクユ族出身の黒人男性の医師。巡視医として各地を回っている。サンテナ族の通報を受け、記憶喪失となっていた渡家の母を保護する。サンテナ族の村で出会った渡真二が彼女の息子だと気づかず、2人を会わせないまま、渡家の母親を連れていってしまう。
ティポ
子連れのメスゴリラ。チタ族の仕掛けた罠にかかっていた。人に懐かない凶暴なゴリラだった。子供と共に捕まっていたところを渡洋一に助けられたため、彼に恩義を感じ、ムバハの操るヒョウに襲われていた洋一を助ける。
集団・組織
ナボ族 (なぼぞく)
クウェリが属していた部族。戦闘的で文明化や都市化を嫌い、山奥で原始的な生活を営んでいる。「メコンの神」という独自の神を信仰し、呪術師のムバヤの指導のもと略奪や殺人も平気で行う。野蛮な部族と恐れられ忌み嫌われている。
マサイ族 (まさいぞく)
牧畜を生業としている部族。ケニア北部からタンザニア中部の草原に暮らしている。飼っている放牧牛が王に食われてしまったため、渡洋一、渡真二の兄弟とクウェリを密猟者とみなし、野獣保護管理官のトーマスに引き渡そうとする。
チタ族 (ちたぞく)
ムバハが指揮するピグミー族。残虐かつ無慈悲で白人旅行者をも襲うため、ほかのピグミー族から恐れられている。渡洋一、渡真二らを助けたサンテナ族の集落を襲い、多くの者たちを虐殺したため、洋一やクウェリの怒りを買う。
サンテナ族 (さんてなぞく)
チタ族と敵対するピグミー族。穏やかな部族で、記憶喪失となっていた渡家の母を保護し、巡視医のヌホタに預けた。黄金の三種の神器の1つである黄金の剣を、先祖代々の宝として保有しており、ムバハの命を受けたチタ族の襲撃を受けることになる。
場所
グレート・リフト・バレー (ぐれーとりふとばれー)
アフリカ大陸を南北に縦断する大地溝帯。全長1万キロ。地殻変動により陥没した断層の一部に、ティラノサウルスやステゴサウルスなど、絶滅したはずの白亜紀の恐竜が生息しており、迷い込んだ渡兄弟やクウェリたちを驚かせた。
その他キーワード
黄金の三種の神器 (おうごんのさんしゅのじんぎ)
黄金でできた剣、盾、ヤリ。アフリカ全部族の王の象徴とされる。3つの神器を揃えて組み合わせると、古代王の遺した財宝の地図が現れ、アフリカの部族を統一する王になれると言い伝えられている。黄金の盾とヤリをチタ族のムバハが、黄金の剣をサンタナ族の長老が、それぞれ所持している。