男の星座

男の星座

原作者の梶原一騎が自らを主人公に、フィクションを交えつつ半生を綴った自伝的作品。柔道少年梶一太は暴力事件を起こし、高校を中退する羽目になるが、漫画原作者の道を選び成功していく。彼が様々な格闘家や女性との出会いを通して挫折や成功を繰り返していく物語。大山倍達や力道山との関わりにかなりのスペースが割かれており、戦後の日本のプロレス、格闘技の裏面史を描いた実録物という側面を持つ。当初は「梶原一騎引退作品」と銘打って連載され、『巨人の星』や『あしたのジョー』などの名作が、いかにして生まれたかが描かれる予定だったが、連載の途中で梶原一騎が急逝したため、未完のまま終了となった。

正式名称
男の星座
ふりがな
おとこのせいざ
原作
作画
ジャンル
自伝・伝記
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概要・あらすじ

昭和29(1954)年12月22日、「プロレス巌流島の決闘」とうたわれた力道山木村政彦の世紀の一戦は、木村が力道山に惨敗を喫するという意外な結果に終わった。この一戦を東京蔵前国技館で観戦していた高校生で柔道少年の梶一太は、尊敬する柔道家、木村の敗戦にショックを受けるが、同時に木村の仇を討つべく、力道山への挑戦を表明した空手家の大山倍達に興味を持つ。やがて一太は暴力団と乱闘事件を起こして高校を自主退学するが、一念発起して雑誌「少年画報」の懸賞小説に応募。見事に入選し、「梶原一騎」のペンネームで少年小説家としてデビューすることになる。原稿が売れていく中でストリッパーの八神カオルと恋に落ちるも破局が訪れる。実父との死別や仕事を失う等の不幸に見舞われつつも、空手家大山倍達や伝説のレスラールー・テーズなど様々な格闘家との出会いの中で男として成長してゆく。

徐々に文筆業で身を立てつつあった梶一太が大手出版社から漫画原作の依頼を受ける場面で、物語は未完に終わっている。

登場人物・キャラクター

梶 一太 (かじ いった)

原作者の梶原一騎が、自らをモデルにした登場人物。子供の頃から頭に血が上りやすく、同級生に重傷を負わせて救護院に入っていた過去を持つ男性。実直で正義漢だがその反面短気で、後先考えずに手を出してしまうこともしばしば。柔道王の木村政彦のファンで、高校時代は柔道に明け暮れていたが、部活の合宿中に、地元の暴力団を相手に乱闘事件を起こして退学。コック見習として就職したレストランもクビになり、くすぶっていた時に、弟の梶真二の勧めで、雑誌「少年画報」にスポーツ小説を応募し、少年小説家としてデビューすることとなる。文筆業をめざす過程で力道山や大山倍達らの大物格闘家と交流し、成長してゆく。 海外のプロレス雑誌で大山倍達の活躍を見て、デビュー2作目の題材に大山を選び、本人に直撃取材を敢行。大山の実直な人柄や空手家としての実力に魅了され、親交を深めていく。たとえ相手の機嫌を損ねても、真実を確認せずにはいられない作家気質を持つ。度胸も人並み以上だが、酒や女に溺れやすいなど、精神的にやや脆いところがある。

大山 倍達 (おおやま ますたつ)

のちに極真空手を創設することになる、実在した空手家の男性。猛牛を素手で倒したという逸話を持つため、「ウシ殺しの大山」の異名を持つ。アメリカでプロレスラーとして活躍していたが、日本ではほぼ無名だったため、自分を雑誌で紹介してくれた梶一太への感謝の念から、一太のことを「センセイ」と呼んで、親しく付き合うようになり、その温厚な人柄とカリスマ性に心酔する。 世界各国を武者修行して回り、さまざまな格闘家を相手に勝利を収める。少林寺拳法の達人である陳白龍に敗北してから、どんな名人や達人も一時期の語り草にすぎないと悟り、何かを残したいという思いから、自身の空手の技を体系化した技術書を書き上げた。これが国際的ベストラーとなり、印税を元手に空手道場を設立。門下生の育成に力を尽くし、黒崎健時や春山章などの実力者を育て上げていく。実在の人物、大山倍達がモデル。

力道山 (りきどうざん)

国民的人気を誇った男性のプロレスラー。相撲取りからプロレスラーへ転向した。必殺技の空手チョップで大活躍して、日本中にプロレスブームを巻き起こし、伝説のプロレスラーとなる。北朝鮮出身で、本名の「百田光浩」は通名だが、日本人の英雄となったため、出自は伏せられている。自己顕示欲の権化のような人物で、自身のイメージを守ることに強くこだわるが、それは強烈なプロ意識ゆえである。梶一太が執筆した観戦記の内容にクレームを入れ、会見の場となった料亭の柱を空手チョップで叩き折って脅すが、一太がひるまなかったことに感心。以降、一太が原作を務めるプロレス絵物語『鉄腕リキヤ』の連載に協力するなど、彼に目をかけるようになる。その豪快で目立ちたがりで時に恐ろしい人物像や、大物芸能人との交流や恋愛模様が描写されている。実在したプロレスラー、力道山がモデル。

木村 政彦 (きむら まさひこ)

「鬼の木村」の異名を取った柔道家の男性。講道館柔道七段。「木村の前に木村なく、木村の後に木村なし」とうたわれた天才。プロレスに転向後、力道山とタッグを組み活躍する。しかし、引き立て役である自分の地位に不満を持ち、力道山に直接対決を要求。東京蔵前国技館にて力道山とシングルマッチを行う。しかし、一方的に攻められて血の海に沈む、という無残な敗戦を喫し、木村を信奉する梶一太に大きなショックを与えた。実在の人物、木村政彦がモデル。

ルー・テーズ

「地上最強の男」「鉄人」とうたわれたプロレスラーの男性。圧倒的な強さを誇り、連続2000試合不敗など多くの記録を達成した。得意技はバックドロップ。強烈なプライドとプロ意識の持ち主。気鋭の若手であるレオ・ノメリーニに敗れ、王座から一時転落した一戦について梶一太に取材を受けた際、試合内容を決めるのはプロモーターでもファンの人気でもなく、自分の意志であると語った。試合の展開も勝敗も、すべて自分がコントロールしているとほのめかし、一太をして「プロレス界の万能の支配者」と唸らせた。実在の人物、ルー・テーズがモデル。

梶 真二 (かじ しんじ)

梶一太の実弟。高校では常にクラス首席の秀才で、劣等生の一太とは真逆のタイプ。兄弟仲は良く、高校を退学してくすぶっていた一太に、少年小説の応募を勧めた。洞察力に長けた理知的な青年。良き理解者として兄の人生に関わり続ける。しかし、一太とバーの経営を始めた際には、店でくだを巻く暴力団を相手に大立ち回りを演じるなど、兄に劣らず短気でケンカっ早い。のちに大山倍達門下となり、極真会本部師範代を務めることになる。実在の人物で梶原一騎の弟、空手家・漫画原作者の真樹日佐夫がモデル。

梶 東輔 (かじ とうすけ)

梶一太、梶真二らの父親。高校の英語教師を経て、雑誌編集者となった。戦前は「中央公論」と「改造」で編集の仕事に従事。戦後は新生社の発行する雑誌の編集局長を歴任するなど、日本文壇史に関わってきた人物。戦中戦後と多くの作家と交流したが、世間の変化と妥協せず頑固に己をつらぬき、反骨心旺盛で経営側と対立したため無職となった。無口で無愛想な典型的肥後もっこすで、あまり多くを語ろうとはしないが、作家を目指す一太を静かに見守っている。文武両道で剣道の腕前もかなりのもの。実在の人物、高森龍夫がモデル。

八神 カオル (やがみ かおる)

浅草六区のストリップ劇場で働く、売れっ子のダンサーの女性。本名は珠枝。梶一太の初恋の女性。個人的な交際を夢見てのぼせ上がる一太にしつこくつきまとわれ、当初は迷惑に感じていたが、彼の意外な繊細さに魅かれて恋人同士になる。しかし、ダンサーとして成功していくにつれて、嫉妬と劣等感に駆られる一太との間に綻びが生じ始める

沢田 明彦 (さわだ あきひこ)

八神カオルに想いを寄せる若い男性。東宝系の劇場「日劇」営業部門に勤める慶応大学卒のエリート。肩の力の抜けた物腰の柔らかい人物だが、芯は強く、カオルへの想いを梶一太に堂々と宣言。一太の威嚇にもまったく動じず、彼に敗北感を味わわせる。

夕子 (ゆうこ)

暴力団の幹部の情婦。 京浜蒲田を縄張りとし、梶一太と対立している暴力団「O一家」の代貸の情婦。女優の若尾文子に似た美人。一太が開店したバーに難癖をつけ、様々な嫌がらせをしかける。「O一家」が経営するキャバレーのNo.1ホステスで、客として店に来た一太を罠にハメる。その際、激怒した一太に逆襲され、子分たちの目の前で尻を丸出しにされた。それに復讐すべく「O一家」の者たちを一太のもとに差し向ける。だが一方で、男気あふれる一太に魅力を感じてもいる。

春山 章 (はるやま あきら)

大山倍達の門下生。まだ19歳の青年ながら、大山門下の四天王の1人に数えられている天才的な空手家。『空手バカ一代』の登場人物・有明省吾のモデルになったとされる。純情で一本気な青年だが、長崎で原爆に被爆して肉親縁者をすべて失っており、自身も原爆症に蝕まれているため、刹那的なところがある。ただ、大山倍達を心底から尊敬しており、大山を馬鹿にする者は決して許さない。

ジャニー

オデン屋の屋台を営むゲイの中年。春山章に好意を寄せ、私設後援会長を自称している。春山が一緒ならタダで飲み食いをさせてくれるので、彼の屋台は大山倍達門下生のたまり場となっている。かつては「ジャニー・ギター」という高級ゲイ・バーを経営していたが、覚醒剤に溺れたため、No.2のリズというゲイに店を乗っ取られたという過去を持つ。

集団・組織

大山空手 (おおやまからて)

大山倍達の提唱した空手の流派。『男の星座』では、「ひとたび道着をまとい相対したなら親でも倒せ!!」の精神を旨として、他の流派では反則とされる顔面攻撃や金的蹴りも厭わない、実践的で過激な「ケンカ空手」として描写されている。

イベント・出来事

プロレス巌流島の決闘 (ぷろれすがんりゅうじまのけっとう)

『男の星座』の冒頭で行われたプロレスの試合。力道山と木村政彦が対戦した。木村から宣戦布告した試合だが、力道山の一方的な攻めで開始からわずか15分、KOによる力道山の勝利で決着が着いた。史上まれに見る真剣勝負として注目を集め、その真相を巡り後世に大きな影響を与えた。1954年12月22日に蔵前国技館で現実に行われた試合。

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