人類が団結して魔物に抗う異世界
月鍔ギンコが仏の力で送り込まれたのは、エルフやドワーフ、獣人などのさまざまな人種が団結して魔物に抗い続ける異世界。1000年前に冒険者アーサー・ペンドラゴンが「支配の魔法」の使い手である魔王ロキを討伐したことで、魔物たちは団結力を失い、戦いの趨勢(すうせい)は人類に傾いていた。しかし、ギンコが転移する5年前に魔王が復活し、魔物は再び徒党を組んで人類を襲うようになる。魔物との戦いは苛烈を極めるが、人類は共通の敵に立ち向かう同胞として結束しており、人類同士での争いは絶えて久しい。
「円卓」を筆頭に魔物に挑む「勇者」たち
異世界において、魔物から人々を守る戦士は「勇者」と呼ばれている。勇者の管理や支援を行う「勇者ギルド」という機関も設置され、強さと高潔な精神を兼ね備えていると認定された者だけが、勇者を名乗ることが許される。また勇者にはランクがあり、「ギルド証(通称・リンゴの証)」に星の数で表示される。特に優れた12人の勇者は「円卓」と呼ばれ、序列が設定されている。彼らは民衆のあこがれの存在で、フィギュア付きの「勇者チョコ」などのグッズも販売されている。なお、かつて魔王ロキを倒した冒険者アーサー・ペンドラゴンは「はじまりの勇者アーサー」として歴史に名を残しており、絵本も出版されている。
サムライという怪物
戦国時代の侍である月鍔ギンコは「人の敵は人」と悟っているが、魔物という共通の敵を前に結束している異世界の住人にとって、この真理は理解し難いものである。また、殺人を最大の禁忌と見なしている彼らにとって、困っている者を見捨てない高潔な精神を持ちながら、血の匂いを漂わせるほどに人を斬り続けてきたギンコは「狂った世界の怪物」にほかならない。
登場人物・キャラクター
月鍔 ギンコ (つきつば ぎんこ)
死に場所を求めて放浪する侍の少女。年齢は17歳で、身長142センチ。体は筋肉質で引き締まっており、至る所に傷がある。顔には真一文字に横切る刀傷があるが、これは女を捨てる覚悟を示すため、自ら刻んだもの。ポニーテール風の髪型で、三日月の紋が入った赤い着物と下駄、手甲を身につけている。主武装は関ヶ原で拾った無銘の刀で、本差を「銀横綱」、脇差を「銀大関」と名付けて愛用している。剣術のみならず武芸百般を修めており、120キロの大斧を軽々と振り回すほどの剛力を誇る。侍とは何たるかを父親から教わり、死力を尽くして戦った果てに死ぬことを悲願としている。父親との真剣勝負を経て、本懐を遂げるべく関ヶ原の戦いに参加するものの、鉢金に銃弾を受け、気絶して死に損なった。泰平の世が訪れてからは果たし合いに没頭し、いつしか「剣鬼」と恐れられるようになった。やがて強敵と巡り会えない絶望から仏門に帰依。仏の力で異世界へ転移し、魔物や超常の「勇者」との戦いに希望を見いだすようになった。なお、髪を束ねている赤い布は武士の気合で立ち上がっており、心が萎えると萎(しお)れてしまう。
ミコ
魔物に家族を殺された孤児。中性的な顔立ちで、碧眼の持ち主。金髪のセミショートヘアに大きな青い花飾りをつけている。また西洋風の剣を携え、グリーブを装着している。触媒とする植物の種類によって効果が変わる「花魔法」の使い手で、外傷を治癒する「癒し花」、花畑へ転移する「飛び花」など、さまざまな植物を持ち歩いている。元「槍の勇者」ギブリール=ルーが設立した孤児院「愛の家」で暮らしており、シスターでもあるギブリールから溺愛されている。賢さと礼儀正しさ、優しさを兼ね備えた人格者で、将来は勇者になって人々を救うことを夢見ている。幻の薬剤花・マナローズを探していた際に人喰い怪樹・トレントに襲われて窮地に陥るものの、悲鳴を耳にして駆けつけた月鍔ギンコの活躍により、九死に一生を得た。これをきっかけにギンコを信頼し、異世界の常識に乏しい彼女のナビゲーターのような役割を担うようになる。性別は明言されていないが、「お姉ちゃん」と呼ばれてショックを受ける場面がある。
書誌情報
異世界サムライ 4巻 KADOKAWA〈MFC〉
第1巻
(2023-06-22発行、 978-4046824646)
第2巻
(2023-10-20発行、 978-4046829382)
第3巻
(2024-02-22発行、 978-4046832849)
第4巻
(2024-08-22発行、 978-4046838490)