異形頭さんとニンゲンちゃん

本作の主な舞台となる異世界には人間は存在せず、代わりに「異形頭」と呼ばれる種族が暮らしている。彼らは人間と同様に街を築き、生活様式もほとんど変わらない。時おり、なんらかの理由でこの異世界に迷い込む人間がいるが、彼らは専門の役職を持つ異形頭によって保護されている。しかし、人間には異形頭と同じ権利が与えられていないため、その立場は非常に低い。大多数の異形頭は人間を珍しい動物のように扱い、中には人間をペットとして共に生活する異形頭もいるが、そんな状況から恋愛関係に発展することは極めて稀である。特に、異形頭が人間に恋愛感情を抱くことは、社会的に異常または異端と見なされることが一般的である。

人間界で社畜として疲れ果てた日々を送っていたちかは、ある日、車の前に飛び込んだ瞬間に異世界へと転移してしまう。異世界では、異形頭のラズに保護され、「ペット」として迎え入れられる。共に生活する中で互いを理解し、次第に距離を縮めていく二人は、やがて両思いとなる。しかし、異形頭の社会の常識に囚われるラズと、自身の立場からペットであることに縛られるちかは、互いの本心をなかなか告げられずにいた。そんな中、ラズは転移のショックと人間界でのトラウマによって声を失ったちかを気遣い、人間の医者に相談し、彼女の声を取り戻すための手助けを始める。

ラズの献身的なサポートと、ちか自身が声を取り戻そうとする努力が実を結び始めていた。そんな中、彼女にパワハラを行っていた元上司が人間界から異世界に転移してきたことで、二人は思わぬ騒動に巻き込まれてしまう。ラズは元上司がちかに近づかないように阻止し、寸前のところで彼女を守り抜くことに成功する。この出来事を経て、ラズに感謝の気持ちを伝えたいと強く願うようになったちかは、ついに声を取り戻す。声を取り戻したちかは、ラズに名前と思いを伝え、晴れて恋人同士となり、種族や立場を超えた特別な関係を築いていく。しかし、ほかの異形頭たちの干渉や、ラズの過去や家族の問題が二人の前に立ちはだかり、彼らの日常に新たな波乱をもたらしていく。