人間と鬼の切ない恋愛ファンタジー
本作は「人外×人間」をテーマにした怪異恋愛譚で、鬼や妖怪が深い森に住む和風ファンタジーの世界観が広がっている。愛する者を失い、心に深い傷を抱える少年の綾人と、人間の感情を知らない鬼の千代を中心に、彼らが人間と妖の埋められない隔たりに苦しみながらも、共に生きていく切ないラブストーリーが展開される。また、物語の中盤からは、のっぺらぼうののんちゃんをはじめとする千代以外の妖怪たちも登場し、ほのぼのとした雰囲気の中でコミカルな日常が描かれる。
幼なじみを失った少年が鬼のもとを訪れる
鬼や妖怪が出没する深い森に、「千代」という名の鬼の少女が住んでいる。その森には人間がほとんど近づくことがなく、ある日、綾人は父親に殺された幼なじみの日和と共に森を訪れ、千代に彼女を生き返らせて欲しいと懇願する。しかし、千代の力では日和を蘇らせることはできず、願いが叶わないことに絶望した綾人は、千代に「僕を殺して」と懇願する。人間の感情を理解できなかった千代は、死を覚悟しながらも笑顔を見せる綾人に愛おしさを感じ、亡くなった日和の分まで笑顔で生きるようにと告げるのだった。
人間が鬼に恋を教える物語
千代は、成仏できていなかった日和の霊を通じて、日和と綾人の関係性を理解する。千代のおかげで日和の霊と対面できた綾人は心の安らぎを得て、日和の霊は無事に成仏を果たす。千代は綾人に惹かれる一方で、人間の感情にも興味を持ち、恋について教えて欲しいと頼む。それを聞いた綾人は、短い生涯を懸けて恋を教えると約束する。こうして、綾人は千代と共に過ごすうちに笑顔を取り戻し、9年の歳月が流れる頃には青年へと成長していた。ほかの妖怪たちとも友達になり、平和な日常が続く中、狸の妖怪、乱々が千代に鬼の姿から人間になれない術をかけ、彼女と共に生きる覚悟を綾人に問いかける。思いがけない試練に直面した綾人と千代だが、種族や寿命の違いを超えて千代と共に生きたいと願う綾人は、彼女に対する思いと願いを語り始める。
登場人物・キャラクター
千代 (ちよ)
鬼や妖怪が棲む森に暮らす少女。その正体は恐ろしい形相の赤い鬼だが、和服をまとった白髪の美少女に変身することができる。人間に変身する術は、狸妖怪の乱々から教わった。幼なじみの日和を失った綾人と出会い、彼から「僕を殺して」と懇願されたことで、綾人自身や人間の恋愛感情に興味を持つようになる。その後、綾人と共に暮らすことになるが、千代自身は1000年も生きられる鬼である一方、綾人は100年も生きられない人間であるという事実に悩むことがある。
綾人 (あやと)
人間の少年。初登場時の年齢は11歳。幼なじみの日和を父親に殺され、彼女を生き返らせるために鬼や妖怪が出没する深い森を訪れる。その森で千代に出会うが、日和を救うことができないと知り、生きる希望を失った綾人は「僕を殺して」と千代に懇願する。この出来事がきっかけで千代に気に入られ、生涯を懸けて彼女に恋を教えると誓う。9年後、綾人は長髪の心優しい青年に成長し、さまざまな妖怪たちと出会いながら千代と共に暮らし続けている。
書誌情報
人間に恋した鬼は咲う 全4巻 実業之日本社〈リュエルコミックス〉
第1巻
(2017-03-17発行、 978-4408414546)
第2巻
(2017-10-13発行、 978-4408414751)
第3巻
(2018-05-18発行、 978-4408414997)
第4巻
(2019-01-18発行、 978-4408415215)